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34話 番外編④
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ライアン視点
「くそ、どうしてボクが退学になるんだ!」
ハタマ村に追放されたボクは、ぶつぶつと文句を言いながら慣れない畑作業をしていた。
「ほら、口を動かしている暇があったら手を動かしなさい!」
この村の領主のバーバラという女はとても恐ろしい……日の出と共にボクを畑に駆り出して、夕暮れまで働かされる。
「ほら、ボォーっとしてないで働きなさい!」
「はっ、はい! すみません!」
全身筋肉痛で体が悲鳴をあげる。でも不思議な事にバーバラに罵倒されるのを望んでいる自分がいた。
忙しさのあまりボクの頭がおかしくなったのかな?
「ちょっと肥料を持ってこっちに来て!」
「はい!」
「あと、クワを貸してちょうだい!」
「はい!」
「今日中に耕すわよ!」
「はっ、はい!!!」
ボクは全身の痛みに耐えながら仕事に打ち込んだ。あまりの忙しさにあっという間に時間が過ぎていった。
* * *
「ライアンくんは働き者だね~」
「君みたいな若い男の子が来てくれて助かったよ!」
気がつくとボクはすっかり村の人々と馴染んでいた。
「ライアン君が作ってくれたお薬は良く効いたよ。またお願いね」
「あっ、はい、お役に立てて光栄です」
この村の周辺は自然豊かで様々な薬草が生えている。そこで学校に通っていた時に学んだ知識を使って薬を作ったら、大絶賛してくれた。
今まで薬の知識は金儲けをするための道具としか思っていなかった。でもコレほど喜んでくれるとなんだか悪い気がしない。
「ライアン! 何をしているの! 早く仕事に行くわよ!」
村の人々と楽しく雑談をしていると、バーバラがボクの腕を掴んで畑に連れて行く。その様子を村の人々は暖かい目で見守っていた。
「2人は本当に仲がいいわね~」
「バーバラちゃんもライアン君が来てからいつも楽しそうだな~」
会話の内容までは分からなかったけど、なんとなくボクたちの事を話している気がした。
「さぁ、今日はこの畑の作物を全部収穫するわよ!」
「えっ、全部ですか? 流石にそれはキツイのでは……」
「文句を言わないで早くやるわよ!」
バーバラはボクに鎌を渡すと黙々と作業を始めた。
「ちょっと! 何をしているのよ! もう少し下の方を切って回収しなさい! あとそんな体勢でやったら腰を痛めるでしょ? 気をつけなさい!」
「すっ、すみません……あれ? もしかしてボクの事を心配してくれるのですか?」
しばらく一緒にいて分かったのだが、バーバラは意外と面倒見がいい。
何も知らないボクにこの村の事を紹介してくれたし、なんだかんだ言いながらいつも一緒にいてくれる。
「心配? そっ、そんなわけないでしょ! バカな事言ってないで早く手を動かしなさい!」
バーバラはまたボクを罵倒すると、プイッとそっぽを向いて作業を始めてしまった。
「あれ? もしかして……照れているのですか?」
「うるさいわね! 終わらなかったらライアンだけ居残りで働かせるわよ!」
「すっ、すみません!!!」
流石にこれ以上怒らせると身が危ない。ボクはしっかりと腰を下ろすと、黙々と作業を始めた。
* * *
ロレッタ視点
「で、それから2人はどうなの?」
恒例のお茶会の日がきて、私はカトリーヌに近況報告を尋ねてみた。
「もうデートは行ったの?」
隣に座っているバーバラも興味深そうに目を輝かせる。でも、当の本人は恥ずかしそうにしていた。
「えっと……うん、何度か食事には誘われて、2人で出かけた事はあるよ」
カトリーヌの初々しい報告に私とバーバラは黄色い声援をあげた。やっぱり恋バナは盛り上がるわね。
「へぇ~ その後は? 食事の後はどうしたの? カトリーヌからも誘わなかったの?」
バーバラが身を乗り出して攻める。カトリーヌはキョトンとして首を傾げたが、言葉の意味を理解すると、顔を真っ赤に染めて激しく首を振った。
「そっ、そういうのはまだ早いです!」
「えっ、何が早いの? 私は次の食事に誘わなかったの? って意味で聞いたんだけど……一体何を勘違いしたのかな?」
バーバラはイタズラっぽい笑みを浮かべてクスクスと笑う。カトリーヌはぷくーっと頬を膨らませると反撃に出た。
「ばっ、バーバラの方こそどうなのですか? 噂によるとライアンと仲良くしているみたいですけど?」
「えっ、ライアンと私? あっ、あいつなんて子分みたいなものよ!」
明らかにバーバラは動揺しながら否定する。どうやら噂は本当らしい。
「ねぇ、2人とも、せっかくだから今度の建国祭の時に誘ってみたら?」
もうすぐ私たちが住んでいるペルシス王国で、建国祭が行われるらしい。年に一度のお祭りで隣国からも王族や貴族が来るそうだ。
「えっ、でも……断られたら怖いし……」
「らっ、ライアンがどうしても……って言うなら一緒に行ってあげてもいいけど……」
さっきまで言い合っていた2人だが、今度はモジモジしながら顔を見合わせる。
「ふふっ、がんばってね!」
その後も恋バナで盛り上がり、今回も気がつくと日が暮れ始めていた。
* * *
ジャングラー王子視点
ガレルカ王国の王子ジャングラーは、ペルシス王国から届いた招待状を眺めながら不敵な笑みを浮かべた。
「建国祭……これはチャンスだ!」
国内においては絶対的な権力を保有しているが、他国にまでは通用しない。それが昔から気に入らなかった。
(俺は選ばれた人間だ。いつか必ず世界を統一してみせる!)
頂点にたった自分を想像すると思わず笑みが溢れる。まずは手始めにペルシス王国から攻めよう。
あの王国は他国よりも広大で栄えている。ここを落とす事が出来れば世界統一に大きく一歩近づく!
「欲しい……あのペルシス王国が欲しい!」
一度欲しいと思うと、昔からどんな手を使ってでも手に入れてきた。しかしロレッタという王妃は相当なやり手らしい……
真正面から立ち向かっても返り討ちにされる。だったら……
「祭りに紛れて一番大切なものを奪う。そして混乱している隙をついて一気に攻め落としてやる!」
噂によるとロレッタ妃は出産間近らしい。だったらその産まれてきた子を誘拐すれば王国は大混乱になる……
それに人質としても最高だ。最悪、王国を落とす事が出来なくても、子供を交渉の材料に利用すれば有利な条約を結ばせる事も出来る!
俺は腕を組んで唸ると、建国祭に向けて念入りな計画を立てた。
To Be Continued
──────
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「くそ、どうしてボクが退学になるんだ!」
ハタマ村に追放されたボクは、ぶつぶつと文句を言いながら慣れない畑作業をしていた。
「ほら、口を動かしている暇があったら手を動かしなさい!」
この村の領主のバーバラという女はとても恐ろしい……日の出と共にボクを畑に駆り出して、夕暮れまで働かされる。
「ほら、ボォーっとしてないで働きなさい!」
「はっ、はい! すみません!」
全身筋肉痛で体が悲鳴をあげる。でも不思議な事にバーバラに罵倒されるのを望んでいる自分がいた。
忙しさのあまりボクの頭がおかしくなったのかな?
「ちょっと肥料を持ってこっちに来て!」
「はい!」
「あと、クワを貸してちょうだい!」
「はい!」
「今日中に耕すわよ!」
「はっ、はい!!!」
ボクは全身の痛みに耐えながら仕事に打ち込んだ。あまりの忙しさにあっという間に時間が過ぎていった。
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「ライアンくんは働き者だね~」
「君みたいな若い男の子が来てくれて助かったよ!」
気がつくとボクはすっかり村の人々と馴染んでいた。
「ライアン君が作ってくれたお薬は良く効いたよ。またお願いね」
「あっ、はい、お役に立てて光栄です」
この村の周辺は自然豊かで様々な薬草が生えている。そこで学校に通っていた時に学んだ知識を使って薬を作ったら、大絶賛してくれた。
今まで薬の知識は金儲けをするための道具としか思っていなかった。でもコレほど喜んでくれるとなんだか悪い気がしない。
「ライアン! 何をしているの! 早く仕事に行くわよ!」
村の人々と楽しく雑談をしていると、バーバラがボクの腕を掴んで畑に連れて行く。その様子を村の人々は暖かい目で見守っていた。
「2人は本当に仲がいいわね~」
「バーバラちゃんもライアン君が来てからいつも楽しそうだな~」
会話の内容までは分からなかったけど、なんとなくボクたちの事を話している気がした。
「さぁ、今日はこの畑の作物を全部収穫するわよ!」
「えっ、全部ですか? 流石にそれはキツイのでは……」
「文句を言わないで早くやるわよ!」
バーバラはボクに鎌を渡すと黙々と作業を始めた。
「ちょっと! 何をしているのよ! もう少し下の方を切って回収しなさい! あとそんな体勢でやったら腰を痛めるでしょ? 気をつけなさい!」
「すっ、すみません……あれ? もしかしてボクの事を心配してくれるのですか?」
しばらく一緒にいて分かったのだが、バーバラは意外と面倒見がいい。
何も知らないボクにこの村の事を紹介してくれたし、なんだかんだ言いながらいつも一緒にいてくれる。
「心配? そっ、そんなわけないでしょ! バカな事言ってないで早く手を動かしなさい!」
バーバラはまたボクを罵倒すると、プイッとそっぽを向いて作業を始めてしまった。
「あれ? もしかして……照れているのですか?」
「うるさいわね! 終わらなかったらライアンだけ居残りで働かせるわよ!」
「すっ、すみません!!!」
流石にこれ以上怒らせると身が危ない。ボクはしっかりと腰を下ろすと、黙々と作業を始めた。
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ロレッタ視点
「で、それから2人はどうなの?」
恒例のお茶会の日がきて、私はカトリーヌに近況報告を尋ねてみた。
「もうデートは行ったの?」
隣に座っているバーバラも興味深そうに目を輝かせる。でも、当の本人は恥ずかしそうにしていた。
「えっと……うん、何度か食事には誘われて、2人で出かけた事はあるよ」
カトリーヌの初々しい報告に私とバーバラは黄色い声援をあげた。やっぱり恋バナは盛り上がるわね。
「へぇ~ その後は? 食事の後はどうしたの? カトリーヌからも誘わなかったの?」
バーバラが身を乗り出して攻める。カトリーヌはキョトンとして首を傾げたが、言葉の意味を理解すると、顔を真っ赤に染めて激しく首を振った。
「そっ、そういうのはまだ早いです!」
「えっ、何が早いの? 私は次の食事に誘わなかったの? って意味で聞いたんだけど……一体何を勘違いしたのかな?」
バーバラはイタズラっぽい笑みを浮かべてクスクスと笑う。カトリーヌはぷくーっと頬を膨らませると反撃に出た。
「ばっ、バーバラの方こそどうなのですか? 噂によるとライアンと仲良くしているみたいですけど?」
「えっ、ライアンと私? あっ、あいつなんて子分みたいなものよ!」
明らかにバーバラは動揺しながら否定する。どうやら噂は本当らしい。
「ねぇ、2人とも、せっかくだから今度の建国祭の時に誘ってみたら?」
もうすぐ私たちが住んでいるペルシス王国で、建国祭が行われるらしい。年に一度のお祭りで隣国からも王族や貴族が来るそうだ。
「えっ、でも……断られたら怖いし……」
「らっ、ライアンがどうしても……って言うなら一緒に行ってあげてもいいけど……」
さっきまで言い合っていた2人だが、今度はモジモジしながら顔を見合わせる。
「ふふっ、がんばってね!」
その後も恋バナで盛り上がり、今回も気がつくと日が暮れ始めていた。
* * *
ジャングラー王子視点
ガレルカ王国の王子ジャングラーは、ペルシス王国から届いた招待状を眺めながら不敵な笑みを浮かべた。
「建国祭……これはチャンスだ!」
国内においては絶対的な権力を保有しているが、他国にまでは通用しない。それが昔から気に入らなかった。
(俺は選ばれた人間だ。いつか必ず世界を統一してみせる!)
頂点にたった自分を想像すると思わず笑みが溢れる。まずは手始めにペルシス王国から攻めよう。
あの王国は他国よりも広大で栄えている。ここを落とす事が出来れば世界統一に大きく一歩近づく!
「欲しい……あのペルシス王国が欲しい!」
一度欲しいと思うと、昔からどんな手を使ってでも手に入れてきた。しかしロレッタという王妃は相当なやり手らしい……
真正面から立ち向かっても返り討ちにされる。だったら……
「祭りに紛れて一番大切なものを奪う。そして混乱している隙をついて一気に攻め落としてやる!」
噂によるとロレッタ妃は出産間近らしい。だったらその産まれてきた子を誘拐すれば王国は大混乱になる……
それに人質としても最高だ。最悪、王国を落とす事が出来なくても、子供を交渉の材料に利用すれば有利な条約を結ばせる事も出来る!
俺は腕を組んで唸ると、建国祭に向けて念入りな計画を立てた。
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