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2章
2「熊、熊ちゃん。聞いてよ、俺…」
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「あ!おーいっ!『腕のいい職人』連れてきた!」
次の日、あの姪っ子はどこか不機嫌そうにしている青年を連れて食堂にやってきた。
「ほら、行こ!」と腕を引っ張られているその青年は、彼を見るなりすっと睨むような目つきになる。
「こんなに早く来てくれたんだ、悪いね。わざわざありがとう」
「…いえ、別に」
「もー、お兄ちゃん!せっかく工房の外へ来たのに、なんでそんな不機嫌なの?」
「お兄ちゃ…おい、そう呼ぶなって言ってるだろ!」
「はぁ…ごめんね。早いほうがいいと思って昨日あの後すぐに話をしたんだけど、こうして引っ張ってきたから機嫌損ねちゃってるみたいで」
「ううん、俺は大丈夫だよ。むしろ来てもらって申し訳なく思ってるんだ」
彼は運んでいた荷物を置くと、周りの女性達に声をかけて姪っ子たちの元へと寄っていく。
「あ、あんた来てたの。今私はちょっと手が離せないから、自分でお茶でも淹れて持ってってよ」
「え…でも今こっちの雰囲気が…」
「いい。お茶淹れて持ってきて」
鞄から道具を取り出しながら冷たく言う青年に「うん…」と返事をすると、姪っ子は彼に小さく「ごめんね」と言ってお茶を淹れに行った。
「あんた、どっから来たんだ。なんであいつに衣を仕立てさせるんだ」
「あ…俺、鉱業地域から来たんだ。昨日、おばさんがあの子を紹介してくれて…」
「昨日会ったばかり?なんであんな親しげなんだ、変だろうが」
「まぁ、そうだけど。でもあの子はずっとあの調子でしょ、なんか俺も引っ張られてさ、つい くだけて話しちゃ…」
「足、こっちに」
「う、うん」
青年は遠くで叔母に「その前掛け、どう?」と話しながらお茶を淹れている姪っ子を見てはため息をつく。
彼はその様子に(もしかして)と思ったものの、青年が足の採寸を終えるまで何も言わずにいた。
「…終わったよ」
「ありがとう。あのさ、1個聞いてもいい?」
「なんだよ」
彼は声を潜めると、「あの子のこと、好きなんだろ」とニコニコしながら言う。
「な、何言って…」
「うわうわ、やっぱり図星だ!」
「う、うるさい!」
「そうかぁ、不機嫌だったのは俺があの子と仲良さそうにしてたからかぁ」
「お、お前、デタラメなことばっかり…!」
「安心しなよ、俺はもう相手がいるからさ。へぇ…『お兄ちゃん』って呼ばれるのも悪くないと思うけど、そうだよな、『妹』じゃ嫌だよなぁ」
青年はムキになって言い返そうとするも、しどろもどろになっている。
その様子がまた面白く、彼は笑い転げそうになるのを抑えるので必死だった。
「なになに、なんでそんなに仲良くなってるの?」
「仲良くなんてなってない!」
「なってるでしょ、さっきと全然違うじゃない。お兄ちゃんも随分機嫌良くなっ…」
「お前っ!お兄ちゃんって言うなって…」
「あ!そうだぞ!そんなふうに呼んだらこいつが可哀そ…」
「お、お前も!いい加減黙ってくれ…!!」
3人の賑やかな声は食堂中に響く。
3人の内の1人は全く楽しそうではないものの、その様子は調理をする人々にとって微笑ましい光景だった。
ーーーーーー
「ちょっと重いけど、これもお願い」
「うん。…え、これくらいならなんともないよ」
「まぁ、さすが!私達にはとても運べないわよ…せめて2人がかりじゃないと」
彼の靴と衣は1週間ほどで出来上がるはずだ。
それまで、彼は善意で集められた古着などを着ながら仕事をする。
届けられた野菜や卵、牛乳、魚といった食材はもちろん、その日作る料理に合わせて鍋や道具を倉庫から運び出すのは、たしかに女性達だけでは大変だ。
彼はすっかり女性達と打ち解け、楽しく話をしながらそれらの仕事をしていた。
「今日は肉を煮込むのにその鍋と…あとそこの1式を使うの、お願いできる?」
「もちろん、任せて」
彼は女性に言われた鍋を持ち上げようとして気付く。
この鍋は彼が『熊』と初めて会った日、荷物持ちを頼まれたあの日に『熊』が自分で運んでいたものだ。
(あぁ…あれが全部の始まりだったっけ。あの時、熊ちゃんが話しかけてくれたから、俺は今こうして…)
ふと微笑みながら鍋を持ち上げるものの、それは想像していた重みとは全く違い、彼は思わず持ち上げたそれを置いてしまう。
(中に何も入ってない…よな?これ、もっと軽いはずじゃないか?)
「あら、大丈夫?それ、すごく重いでしょう?気をつけて持ってね」
「あ…ううん、見た目とは違うなと思ってびっくりしただけだよ。これ、こんなに重いものなの?」
「そうよ、その鍋はちょっと特別な材質で出来てるの。持ち運ぶのは大変なんだけど、やっぱりそれで煮込むと出来が良くて…いつも彼が持ってくれるから、結構よく使ってるわ」
(熊ちゃんが…これを?)
彼は再び鍋を持ち上げてみる。
重さが分かっている分、先程よりは持つのは大変ではない。
しかし、これを持ったまま長距離を歩くのはやはり難しいだろう。
(い、いやいや…きっと別の鍋だった…んだよな?だってあの時、熊ちゃんは鍋の中に他の道具も入れてたし、1度も休まずにあの距離を歩いて…見た目からしても、俺の方が筋肉があるし…)
彼が信じられない思いで調理場へと向かうと、調理に取りかかろうとしていた『熊』は包丁を置いて彼に駆け寄り、鍋を受け取る。
そう思って見てみると、『熊』はどんな物を持つのにも涼しい顔をしているようだ。
(そうだ…俺を担いでここまで走ったのだって、雨が降ってたから普通に走るよりも大変だったはずなのに…)
(信じられないけど、やっぱりそうとしか思えない…このゆったりした感じは子熊だからじゃないんだ、逆に大きくて力があるからなんだよ。悠然とした熊…名前の通りじゃないか?だとしたら、『熊ちゃん』じゃなくて…)
「…どうした?」
「えっ?あ、いや、なんでもないよ…く、『熊』」
「…『熊』?」
彼は目を瞬かせている『熊』をその場に残し、そそくさと倉庫へ戻っていった。
ーーーーーー
「…よぉ」
「あっ!…あれ、1人で来たのか?」
数日後、夕方になってあの靴職人の青年が食堂へとやってきた。
彼はすぐに青年に駆け寄り、「なんで2人で来なかったんだ?」と尋ねる。
「う、うるさい!別に良いだろ…靴の試し履きだ、足を貸せ」
「もう?早いね、さすが『腕のいい職人』だな」
「別にこれくらいは。遅いくらいだろ」
彼はさっそく差し出された靴に足を滑り込ませ、何歩か歩いてみた。
「うわぁ…すごい、ぴったりだ」
「いや、ここと…こっちも少し調整しないと」
「え、これくらい良いだろ。十分履けるよ」
別にいい、という彼に青年は「バカにすんな!」と言い放ち、手を掴んでそばの椅子に座らせると、そのまま靴のあちこちを手で確かめながら手帳に何かを書き付けていく。
「きちんと合うのを仕立てないとだめだ、こんな中途半端なのを渡すもんか!俺はまだまだ仕立てに時間もかかるけど、職人なんだぞ!」
「分かった、分かったって。悪かったよ…でも本当に履き心地が良いんだ。俺、こんなぴったりの靴を履くのはいつぶりだか…」
彼は鉱業地域にいた時、そうそう身なりに気を遣うこともなく、靴も『履ければいい』という意識でいたため、なにかを自分のために誂えてもらうというのはおよそ子供の時以来だった。
(食事も腹が一杯になればよかったし、靴も衣も身につけられれば何でも良かったからなぁ…)
しみじみと思っていると、青年は手帳に目を落としながらぼそりと呟く。
「…まぁ、お前の足は形が綺麗だから…仕立てがいがあるよ」
「え?なんだって?」
「なんでもない!早く脱げ、調整が済んだら持ってきてやる」
「あっははは!お前ってなんだか可愛いよなぁ、照れてんのか」
「か、可愛…!?やめろ、俺に構うな!」
「なんだよ、いいだろ『お兄ちゃん』!」
青年は彼を無視することに決めたのか、さっさと荷物を片付ける。
彼は声を潜めると「次は2人で来いよ」と穏やかに言った。
「お前達、お似合いだと思うよ」
「…なんでお前に分かるんだよ!知り合ったばかりのくせに!」
「まぁ、そうだけど。でも俺は本当にそう思う。お前もすごくいいやつだから」
工房へ帰っていく彼の耳は、真っ赤に染まっていた。
ーーーーーー
「なぁなぁ、熊!俺さ、なんか緊張するよ…こんな新しい衣!」
彼は机の上に置かれた衣をキラキラとした目で見つめ、『熊』に興奮した様子で話しかけていた。
採寸から1週間と少しが経ち、ついに新たな衣と靴が彼の元に届けられたのだ。
夕方、靴と衣が届けられた時のことを彼は思い出す。
「どれが好みに合うか分からなかったから、様式が違うのを3着用意してみたわ。とりあえずこれを着て過ごしてみて。他にも洗い替えとかで必要になったら、1番良さそうなやつで用意するから」
「3着も?ありがとう、大変だったんじゃないか?」
「ううん」
姪っ子は声を潜め、「靴を作る彼の横で縫ったから…」と言う。
「ちょっと遅くまで一緒にいたりして、楽しかった…」
「あっははは!それは良かったな、微笑ましいったらないよ。あいつも一緒に来ればよかったのにな」
「うん、来たがってた。でもちょうど工房から抜けられなくなっちゃって…早く届けてやりたいからって私に靴を託したの。また今度不具合がないか見に行くって言ってたわ」
彼は渡された靴と衣を眺め、「そういえば」と姪っ子に尋ねる。
「練習だったとはいえ、先に俺へ衣を渡しちゃって大丈夫なのか?」
「うん!それ繕った後に続けて仕上げたやつ…もう彼に渡したから」
「そうなんだ!あいつ、すごく喜んだんじゃないか?」
「どうかな…?昨日渡したんだけど、すごくって感じじゃなかった気がする…でも、いつか着てくれるよね?」
「大丈夫だって!あいつが喜ばないわけないよ!」
ーーーーーー
彼はふと笑みをこぼす。
(あの2人も、すごくいいやつだな。靴もこの衣も…大切にしないと)
「なぁ、熊!俺さ、明日はどれを着たらいいかな?どれが似合うと思う?」
「…うん」
返事に元気がないように思えた彼が『熊』の方を見ると、『熊』は目を伏せていて、やはりどこか様子がおかしい。
彼が「どうかした?」と尋ねても、首を横に振るだけだ。
「どうしちゃったんだよ?」
「…なんでもない」
「なんでもないってことはないだろ。明らかに変だぞ」
彼がすぐ隣まで移動すると、『熊』はそっと顔を背けてしまう。
「熊?なぁってば」
「……」
部屋に長いこと沈黙が流れ、ようやく『熊』が口を開く。
「君は…僕に縛られる必要はないんだ」
「なんのことだ?」
「…」
再び黙ってしまった『熊』に、彼はさらに問いかける。
「縛られるってなんだ?熊が俺を?そんなつもりないけど」
「…君は好きなようにしていい。そういうことだ」
「だから、それってどういう意味なんだよ?」
『熊』の顔を覗き込もうとするも、さり気なく逃げられてしまう。
彼は『熊』の手を握りしめ、「こっちを向いてよ」と頼んだ。
「なんで避けるんだ?…俺、分かんないよ、熊は何が言いたいんだ?」
「……」
「こら、逃げるなって」
『熊』が手をひこうとするのを固く握りしめて止めていると、そのうちようやく1言ずつ『熊』は話し始めた。
「君はもう…前までとは違う。優しいのは僕だけじゃないって…知ったはずだ。だから、僕に縛られなくていい」
「え…」
「僕は変わらず君を守る。だけど、それを負担に思わなくていい。自分の好きなように、幸せを求めていいんだ。だから、君があの兄妹のどちらを好きになったとしても…」
彼はようやくそこではっとした。
(く、熊…!お前ってやつは…!)
「…なぁ、もしかして、俺があの2人のうちのどっちかを好きになると…思ってるのか?」
「……」
「熊!違うよ、熊!そんなわけ無いだろ、まさかそれで勝手に1人落ち込んでたのか!?」
「……」
「そんな…そんなわけ無いのに!」
彼があまりにも否定するため、『熊』もムッとした表情になる。
「どうしてそうなるんだ?なんでそんなふうに思ってるんだよ?」
「君は…だって君は!」
「なんだ?」
「君は…別に男が好きというわけでもないだろうし…僕といるのもあんな状況で出会ったせいだから…それに、いきなり僕を『熊』って呼ぶように…」
「あぁ、もう!全部説明するよ!」
彼はさらに固く手を握りながら話す。
「たしかに、俺はあのイカれた中からお前が助けてくれたことを感謝してる。だけど、はっきり分かるよ、俺は『助けてくれたやつ』を好きになったんじゃない、『お前自身』を好きになったんだ。男とか女とか関係ない、そうじゃないんだ。お前を『熊』って呼ぶようになったのも、もっとお前を知ったからなんだぞ!お前、本当は『熊ちゃん』って感じじゃないじゃないか…その、『お前』って言ってるけど、一応歳上だし…力も俺よりあるなんて知らなかったんだ、『熊ちゃん』よりも『熊』って感じだと思ったからそう呼ぶようになったんだよ!」
彼はまだ続ける。
「大体、あの2人が兄妹なわけがあるか、ただ単に両片想いの2人だ!俺はただ面白がって絡んでるだけなのに、本気で俺がどっちかとそういう仲になろうって思ってると思ったのか?そんなわけない!」
ひとしきり話し終えると、彼は少し間をおいてから「ほら、こっちを向いて」と目を伏せたままの『熊』の体を自分に向けさせた。
「熊、熊ちゃん。聞いてよ、俺…本当にお前が好きなんだ」
「……」
「まだ俺は1週間と少ししかここに住んでないし、正直言ってまだ完全に落ち着いてるわけじゃない。だけど、お前が俺のことをすごく大切にしてくれてるっていうのが毎日分かるんだ。それがすごく嬉しくて、幸せなんだよ。俺はここに、お前のそばにいるから笑っていられるんだ。他の人や場所だと、不完全なんだよ」
そう語りかけるものの、依然として『熊』は目を伏せたままだ。
(熊は…きっと俺が何を話しても信じられないんだ。俺はあんなイカれた所にいたし、あんな姿も見せたから…でも、この気持ちは本当なんだって信じてほしい)
彼が『熊』の頬に手をそっとあてると、『熊』はビクッとしながらようやく目を合わせてきた。
しかし、その目にはやはり陰りがある。
(あぁ…あの熊の安心感をくれる目はどうやってやるんだ?こんなに信じてほしいのに、どうしたらいいのか…)
「なぁ…俺、どうしたらいい?信じてよ…お願いだから…」
懇願するように言っても、『熊』は戸惑うような表情を浮かべるだけで、身じろぎ1つしない。
戸惑っているのは彼も同じだ。
辺りがあまりにも静かすぎるせいで気を逸らすものがなく、ただどうすればいいのか分からずにいる。
胸の奥底から寂しさが込み上げてきたその時、彼の頬に『熊』の大きく温かな手が添えられた。
「……」
彼は目を閉じ、その温かな手のひらに頬を擦り寄せてからほんの少し顔を『熊』へと近付ける。
『熊』の瞳が大きくなり、その中に映る彼自身もはっきりとしてきた時には、すでに鼻と鼻が触れ合うほどの距離になっていた。
「……っ」
瞳を揺らし、身を引こうとする『熊』。
だが、彼はそんな『熊』を追いかけるように近付き、そっと自身の唇を重ね合わせた。
「………」
鼓動と呼吸の音だけが響く中、彼は唇の感覚と頬を撫でていく温かな吐息がもたらす大きな幸福感を味わう。
ゆっくりと離れようとすると、今度は『熊』の方から唇を押し付けられ、再び言い表せないほどの幸福感に包まれた。
「……」
ようやく僅かに離れ、鼻を触れ合わせながら『熊』の瞳を見る。
その瞳からは陰りが消え去り、代わりにあの穏やかな眼差しが戻ってきていて、彼は泣き出しそうになるのをこらえながら、精一杯の笑みを浮かべて囁いた。
「やっと…信じてくれたな、俺の気持ちを」
『熊』は瞬きをして応える。
「あまりにも信じてくれないからさ…俺、すごく寂しかったんだ。…これからは、信じてくれる…?」
「…うん」
『熊』の答えが嬉しく、彼は晴れやかな笑顔で囁く。
「口づけって…いいね。熊が初めてで…本当に嬉しい」
「初めて…」
「そうだよ、初めて。だって…ただ抱くのには、口づけはいらないもんな…」
彼にとって、これは本当に初めての口づけだった。
今まで彼を抱いてきた男達は快楽を貪ることしか考えておらず、体に口づけたり噛んで跡をつけることはあったものの唇を触れ合わせることはしなかったからだ。
「俺自身を見てくれたのは熊が本当に初めてなんだよ。だから…」
彼は『熊』に強く抱きしめられ、かすかに笑い声を上げながらそれに応じてやる。
「はぁ…どっちかっていったら、俺の方が心配しないといけないんじゃないか?熊はずっと前からあんなに女の人達に囲まれてたんだろ…」
「…僕は君を選んでる」
「あっははは!うん、そうだな。俺達はお互いそうなんだよ…」
彼は『熊』に真っ直ぐに向き合う。
「好きだ…ずっとそばにいてくれ」
『熊』も真っ直ぐに彼を見つめる。
「…僕も、君が好きだ。僕のそばにいて、離れていかないで…」
2人は再び唇を重ね合わせた。
次の日、あの姪っ子はどこか不機嫌そうにしている青年を連れて食堂にやってきた。
「ほら、行こ!」と腕を引っ張られているその青年は、彼を見るなりすっと睨むような目つきになる。
「こんなに早く来てくれたんだ、悪いね。わざわざありがとう」
「…いえ、別に」
「もー、お兄ちゃん!せっかく工房の外へ来たのに、なんでそんな不機嫌なの?」
「お兄ちゃ…おい、そう呼ぶなって言ってるだろ!」
「はぁ…ごめんね。早いほうがいいと思って昨日あの後すぐに話をしたんだけど、こうして引っ張ってきたから機嫌損ねちゃってるみたいで」
「ううん、俺は大丈夫だよ。むしろ来てもらって申し訳なく思ってるんだ」
彼は運んでいた荷物を置くと、周りの女性達に声をかけて姪っ子たちの元へと寄っていく。
「あ、あんた来てたの。今私はちょっと手が離せないから、自分でお茶でも淹れて持ってってよ」
「え…でも今こっちの雰囲気が…」
「いい。お茶淹れて持ってきて」
鞄から道具を取り出しながら冷たく言う青年に「うん…」と返事をすると、姪っ子は彼に小さく「ごめんね」と言ってお茶を淹れに行った。
「あんた、どっから来たんだ。なんであいつに衣を仕立てさせるんだ」
「あ…俺、鉱業地域から来たんだ。昨日、おばさんがあの子を紹介してくれて…」
「昨日会ったばかり?なんであんな親しげなんだ、変だろうが」
「まぁ、そうだけど。でもあの子はずっとあの調子でしょ、なんか俺も引っ張られてさ、つい くだけて話しちゃ…」
「足、こっちに」
「う、うん」
青年は遠くで叔母に「その前掛け、どう?」と話しながらお茶を淹れている姪っ子を見てはため息をつく。
彼はその様子に(もしかして)と思ったものの、青年が足の採寸を終えるまで何も言わずにいた。
「…終わったよ」
「ありがとう。あのさ、1個聞いてもいい?」
「なんだよ」
彼は声を潜めると、「あの子のこと、好きなんだろ」とニコニコしながら言う。
「な、何言って…」
「うわうわ、やっぱり図星だ!」
「う、うるさい!」
「そうかぁ、不機嫌だったのは俺があの子と仲良さそうにしてたからかぁ」
「お、お前、デタラメなことばっかり…!」
「安心しなよ、俺はもう相手がいるからさ。へぇ…『お兄ちゃん』って呼ばれるのも悪くないと思うけど、そうだよな、『妹』じゃ嫌だよなぁ」
青年はムキになって言い返そうとするも、しどろもどろになっている。
その様子がまた面白く、彼は笑い転げそうになるのを抑えるので必死だった。
「なになに、なんでそんなに仲良くなってるの?」
「仲良くなんてなってない!」
「なってるでしょ、さっきと全然違うじゃない。お兄ちゃんも随分機嫌良くなっ…」
「お前っ!お兄ちゃんって言うなって…」
「あ!そうだぞ!そんなふうに呼んだらこいつが可哀そ…」
「お、お前も!いい加減黙ってくれ…!!」
3人の賑やかな声は食堂中に響く。
3人の内の1人は全く楽しそうではないものの、その様子は調理をする人々にとって微笑ましい光景だった。
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「ちょっと重いけど、これもお願い」
「うん。…え、これくらいならなんともないよ」
「まぁ、さすが!私達にはとても運べないわよ…せめて2人がかりじゃないと」
彼の靴と衣は1週間ほどで出来上がるはずだ。
それまで、彼は善意で集められた古着などを着ながら仕事をする。
届けられた野菜や卵、牛乳、魚といった食材はもちろん、その日作る料理に合わせて鍋や道具を倉庫から運び出すのは、たしかに女性達だけでは大変だ。
彼はすっかり女性達と打ち解け、楽しく話をしながらそれらの仕事をしていた。
「今日は肉を煮込むのにその鍋と…あとそこの1式を使うの、お願いできる?」
「もちろん、任せて」
彼は女性に言われた鍋を持ち上げようとして気付く。
この鍋は彼が『熊』と初めて会った日、荷物持ちを頼まれたあの日に『熊』が自分で運んでいたものだ。
(あぁ…あれが全部の始まりだったっけ。あの時、熊ちゃんが話しかけてくれたから、俺は今こうして…)
ふと微笑みながら鍋を持ち上げるものの、それは想像していた重みとは全く違い、彼は思わず持ち上げたそれを置いてしまう。
(中に何も入ってない…よな?これ、もっと軽いはずじゃないか?)
「あら、大丈夫?それ、すごく重いでしょう?気をつけて持ってね」
「あ…ううん、見た目とは違うなと思ってびっくりしただけだよ。これ、こんなに重いものなの?」
「そうよ、その鍋はちょっと特別な材質で出来てるの。持ち運ぶのは大変なんだけど、やっぱりそれで煮込むと出来が良くて…いつも彼が持ってくれるから、結構よく使ってるわ」
(熊ちゃんが…これを?)
彼は再び鍋を持ち上げてみる。
重さが分かっている分、先程よりは持つのは大変ではない。
しかし、これを持ったまま長距離を歩くのはやはり難しいだろう。
(い、いやいや…きっと別の鍋だった…んだよな?だってあの時、熊ちゃんは鍋の中に他の道具も入れてたし、1度も休まずにあの距離を歩いて…見た目からしても、俺の方が筋肉があるし…)
彼が信じられない思いで調理場へと向かうと、調理に取りかかろうとしていた『熊』は包丁を置いて彼に駆け寄り、鍋を受け取る。
そう思って見てみると、『熊』はどんな物を持つのにも涼しい顔をしているようだ。
(そうだ…俺を担いでここまで走ったのだって、雨が降ってたから普通に走るよりも大変だったはずなのに…)
(信じられないけど、やっぱりそうとしか思えない…このゆったりした感じは子熊だからじゃないんだ、逆に大きくて力があるからなんだよ。悠然とした熊…名前の通りじゃないか?だとしたら、『熊ちゃん』じゃなくて…)
「…どうした?」
「えっ?あ、いや、なんでもないよ…く、『熊』」
「…『熊』?」
彼は目を瞬かせている『熊』をその場に残し、そそくさと倉庫へ戻っていった。
ーーーーーー
「…よぉ」
「あっ!…あれ、1人で来たのか?」
数日後、夕方になってあの靴職人の青年が食堂へとやってきた。
彼はすぐに青年に駆け寄り、「なんで2人で来なかったんだ?」と尋ねる。
「う、うるさい!別に良いだろ…靴の試し履きだ、足を貸せ」
「もう?早いね、さすが『腕のいい職人』だな」
「別にこれくらいは。遅いくらいだろ」
彼はさっそく差し出された靴に足を滑り込ませ、何歩か歩いてみた。
「うわぁ…すごい、ぴったりだ」
「いや、ここと…こっちも少し調整しないと」
「え、これくらい良いだろ。十分履けるよ」
別にいい、という彼に青年は「バカにすんな!」と言い放ち、手を掴んでそばの椅子に座らせると、そのまま靴のあちこちを手で確かめながら手帳に何かを書き付けていく。
「きちんと合うのを仕立てないとだめだ、こんな中途半端なのを渡すもんか!俺はまだまだ仕立てに時間もかかるけど、職人なんだぞ!」
「分かった、分かったって。悪かったよ…でも本当に履き心地が良いんだ。俺、こんなぴったりの靴を履くのはいつぶりだか…」
彼は鉱業地域にいた時、そうそう身なりに気を遣うこともなく、靴も『履ければいい』という意識でいたため、なにかを自分のために誂えてもらうというのはおよそ子供の時以来だった。
(食事も腹が一杯になればよかったし、靴も衣も身につけられれば何でも良かったからなぁ…)
しみじみと思っていると、青年は手帳に目を落としながらぼそりと呟く。
「…まぁ、お前の足は形が綺麗だから…仕立てがいがあるよ」
「え?なんだって?」
「なんでもない!早く脱げ、調整が済んだら持ってきてやる」
「あっははは!お前ってなんだか可愛いよなぁ、照れてんのか」
「か、可愛…!?やめろ、俺に構うな!」
「なんだよ、いいだろ『お兄ちゃん』!」
青年は彼を無視することに決めたのか、さっさと荷物を片付ける。
彼は声を潜めると「次は2人で来いよ」と穏やかに言った。
「お前達、お似合いだと思うよ」
「…なんでお前に分かるんだよ!知り合ったばかりのくせに!」
「まぁ、そうだけど。でも俺は本当にそう思う。お前もすごくいいやつだから」
工房へ帰っていく彼の耳は、真っ赤に染まっていた。
ーーーーーー
「なぁなぁ、熊!俺さ、なんか緊張するよ…こんな新しい衣!」
彼は机の上に置かれた衣をキラキラとした目で見つめ、『熊』に興奮した様子で話しかけていた。
採寸から1週間と少しが経ち、ついに新たな衣と靴が彼の元に届けられたのだ。
夕方、靴と衣が届けられた時のことを彼は思い出す。
「どれが好みに合うか分からなかったから、様式が違うのを3着用意してみたわ。とりあえずこれを着て過ごしてみて。他にも洗い替えとかで必要になったら、1番良さそうなやつで用意するから」
「3着も?ありがとう、大変だったんじゃないか?」
「ううん」
姪っ子は声を潜め、「靴を作る彼の横で縫ったから…」と言う。
「ちょっと遅くまで一緒にいたりして、楽しかった…」
「あっははは!それは良かったな、微笑ましいったらないよ。あいつも一緒に来ればよかったのにな」
「うん、来たがってた。でもちょうど工房から抜けられなくなっちゃって…早く届けてやりたいからって私に靴を託したの。また今度不具合がないか見に行くって言ってたわ」
彼は渡された靴と衣を眺め、「そういえば」と姪っ子に尋ねる。
「練習だったとはいえ、先に俺へ衣を渡しちゃって大丈夫なのか?」
「うん!それ繕った後に続けて仕上げたやつ…もう彼に渡したから」
「そうなんだ!あいつ、すごく喜んだんじゃないか?」
「どうかな…?昨日渡したんだけど、すごくって感じじゃなかった気がする…でも、いつか着てくれるよね?」
「大丈夫だって!あいつが喜ばないわけないよ!」
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彼はふと笑みをこぼす。
(あの2人も、すごくいいやつだな。靴もこの衣も…大切にしないと)
「なぁ、熊!俺さ、明日はどれを着たらいいかな?どれが似合うと思う?」
「…うん」
返事に元気がないように思えた彼が『熊』の方を見ると、『熊』は目を伏せていて、やはりどこか様子がおかしい。
彼が「どうかした?」と尋ねても、首を横に振るだけだ。
「どうしちゃったんだよ?」
「…なんでもない」
「なんでもないってことはないだろ。明らかに変だぞ」
彼がすぐ隣まで移動すると、『熊』はそっと顔を背けてしまう。
「熊?なぁってば」
「……」
部屋に長いこと沈黙が流れ、ようやく『熊』が口を開く。
「君は…僕に縛られる必要はないんだ」
「なんのことだ?」
「…」
再び黙ってしまった『熊』に、彼はさらに問いかける。
「縛られるってなんだ?熊が俺を?そんなつもりないけど」
「…君は好きなようにしていい。そういうことだ」
「だから、それってどういう意味なんだよ?」
『熊』の顔を覗き込もうとするも、さり気なく逃げられてしまう。
彼は『熊』の手を握りしめ、「こっちを向いてよ」と頼んだ。
「なんで避けるんだ?…俺、分かんないよ、熊は何が言いたいんだ?」
「……」
「こら、逃げるなって」
『熊』が手をひこうとするのを固く握りしめて止めていると、そのうちようやく1言ずつ『熊』は話し始めた。
「君はもう…前までとは違う。優しいのは僕だけじゃないって…知ったはずだ。だから、僕に縛られなくていい」
「え…」
「僕は変わらず君を守る。だけど、それを負担に思わなくていい。自分の好きなように、幸せを求めていいんだ。だから、君があの兄妹のどちらを好きになったとしても…」
彼はようやくそこではっとした。
(く、熊…!お前ってやつは…!)
「…なぁ、もしかして、俺があの2人のうちのどっちかを好きになると…思ってるのか?」
「……」
「熊!違うよ、熊!そんなわけ無いだろ、まさかそれで勝手に1人落ち込んでたのか!?」
「……」
「そんな…そんなわけ無いのに!」
彼があまりにも否定するため、『熊』もムッとした表情になる。
「どうしてそうなるんだ?なんでそんなふうに思ってるんだよ?」
「君は…だって君は!」
「なんだ?」
「君は…別に男が好きというわけでもないだろうし…僕といるのもあんな状況で出会ったせいだから…それに、いきなり僕を『熊』って呼ぶように…」
「あぁ、もう!全部説明するよ!」
彼はさらに固く手を握りながら話す。
「たしかに、俺はあのイカれた中からお前が助けてくれたことを感謝してる。だけど、はっきり分かるよ、俺は『助けてくれたやつ』を好きになったんじゃない、『お前自身』を好きになったんだ。男とか女とか関係ない、そうじゃないんだ。お前を『熊』って呼ぶようになったのも、もっとお前を知ったからなんだぞ!お前、本当は『熊ちゃん』って感じじゃないじゃないか…その、『お前』って言ってるけど、一応歳上だし…力も俺よりあるなんて知らなかったんだ、『熊ちゃん』よりも『熊』って感じだと思ったからそう呼ぶようになったんだよ!」
彼はまだ続ける。
「大体、あの2人が兄妹なわけがあるか、ただ単に両片想いの2人だ!俺はただ面白がって絡んでるだけなのに、本気で俺がどっちかとそういう仲になろうって思ってると思ったのか?そんなわけない!」
ひとしきり話し終えると、彼は少し間をおいてから「ほら、こっちを向いて」と目を伏せたままの『熊』の体を自分に向けさせた。
「熊、熊ちゃん。聞いてよ、俺…本当にお前が好きなんだ」
「……」
「まだ俺は1週間と少ししかここに住んでないし、正直言ってまだ完全に落ち着いてるわけじゃない。だけど、お前が俺のことをすごく大切にしてくれてるっていうのが毎日分かるんだ。それがすごく嬉しくて、幸せなんだよ。俺はここに、お前のそばにいるから笑っていられるんだ。他の人や場所だと、不完全なんだよ」
そう語りかけるものの、依然として『熊』は目を伏せたままだ。
(熊は…きっと俺が何を話しても信じられないんだ。俺はあんなイカれた所にいたし、あんな姿も見せたから…でも、この気持ちは本当なんだって信じてほしい)
彼が『熊』の頬に手をそっとあてると、『熊』はビクッとしながらようやく目を合わせてきた。
しかし、その目にはやはり陰りがある。
(あぁ…あの熊の安心感をくれる目はどうやってやるんだ?こんなに信じてほしいのに、どうしたらいいのか…)
「なぁ…俺、どうしたらいい?信じてよ…お願いだから…」
懇願するように言っても、『熊』は戸惑うような表情を浮かべるだけで、身じろぎ1つしない。
戸惑っているのは彼も同じだ。
辺りがあまりにも静かすぎるせいで気を逸らすものがなく、ただどうすればいいのか分からずにいる。
胸の奥底から寂しさが込み上げてきたその時、彼の頬に『熊』の大きく温かな手が添えられた。
「……」
彼は目を閉じ、その温かな手のひらに頬を擦り寄せてからほんの少し顔を『熊』へと近付ける。
『熊』の瞳が大きくなり、その中に映る彼自身もはっきりとしてきた時には、すでに鼻と鼻が触れ合うほどの距離になっていた。
「……っ」
瞳を揺らし、身を引こうとする『熊』。
だが、彼はそんな『熊』を追いかけるように近付き、そっと自身の唇を重ね合わせた。
「………」
鼓動と呼吸の音だけが響く中、彼は唇の感覚と頬を撫でていく温かな吐息がもたらす大きな幸福感を味わう。
ゆっくりと離れようとすると、今度は『熊』の方から唇を押し付けられ、再び言い表せないほどの幸福感に包まれた。
「……」
ようやく僅かに離れ、鼻を触れ合わせながら『熊』の瞳を見る。
その瞳からは陰りが消え去り、代わりにあの穏やかな眼差しが戻ってきていて、彼は泣き出しそうになるのをこらえながら、精一杯の笑みを浮かべて囁いた。
「やっと…信じてくれたな、俺の気持ちを」
『熊』は瞬きをして応える。
「あまりにも信じてくれないからさ…俺、すごく寂しかったんだ。…これからは、信じてくれる…?」
「…うん」
『熊』の答えが嬉しく、彼は晴れやかな笑顔で囁く。
「口づけって…いいね。熊が初めてで…本当に嬉しい」
「初めて…」
「そうだよ、初めて。だって…ただ抱くのには、口づけはいらないもんな…」
彼にとって、これは本当に初めての口づけだった。
今まで彼を抱いてきた男達は快楽を貪ることしか考えておらず、体に口づけたり噛んで跡をつけることはあったものの唇を触れ合わせることはしなかったからだ。
「俺自身を見てくれたのは熊が本当に初めてなんだよ。だから…」
彼は『熊』に強く抱きしめられ、かすかに笑い声を上げながらそれに応じてやる。
「はぁ…どっちかっていったら、俺の方が心配しないといけないんじゃないか?熊はずっと前からあんなに女の人達に囲まれてたんだろ…」
「…僕は君を選んでる」
「あっははは!うん、そうだな。俺達はお互いそうなんだよ…」
彼は『熊』に真っ直ぐに向き合う。
「好きだ…ずっとそばにいてくれ」
『熊』も真っ直ぐに彼を見つめる。
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2人は再び唇を重ね合わせた。
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