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秋の話

六 観察

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 ルイスの朝は早い。
 午前五時。十月半ばになると、五時はまだ暗い。
 日曜日だ。明日は何時までレンといられるのだったろうか。自分の睡眠時間は四時間程度でいいのだが、他人はそうではないことくらいはルイスもわかっている。
 四時半過ぎに目が覚めて、隣で眠るレンに安心した。すぴすぴと寝息を立てている様子を、横向きになって、黙って三十分も眺めてしまった。
 レンは端正な顔立ちをしている。アジア人っぽくてあっさりだ。小顔で顎も細い。目が奥二重で細く、睫毛が長い。唇は薄い。鼻は高いほう。色白で、脂肪がなく痩せていて、体が薄い。手足が長い。肌は綺麗で、皮膚が薄くて、そばかすはなく、首筋に淡いほくろがひとつある。
 黒髪ストレートヘアのセンター分け。耳の形がいい。穴は塞がっているようだが、両耳にピアスの痕がひとつずつある。いつ頃開けたものなのだろう。
 前に会ったときは別の髪型だった。短いのは見たことがないので、長めが好みなのだと思う。長めといっても、長すぎず、清潔そうな感じだ。髪を染めていることもある。初めて会ったころはもう少し茶色かった。ルイスはそう思った。
 手足が大きくて骨張っている。全体的に本当に身体が薄い。食べても太らないらしい。抱いていると骨格がよくわかる。体重が軽く、身体が柔らかく、背が高いわりには取り回しがしやすい。
 レンが隣で寝ている。時間が止まればいいとルイスは思う。
 レンがいつも隣で寝ているのならば、ルイスだって早めに寝るし、いつまでだってこうして寝ていたい。つくづく時間のなさが悔やまれる。
 ルイスが起きた気配のせいか、レンはゆっくりと目を開けた。起こしてしまった。

「ん、ルイスさん」

 ルイスはレンの髪を撫でる。

「もう少し寝ていていいですよ。まだ五時ですから」
「はい……」

 レンはそう返事をすると、ぬくもりを求めるように、横向きに寝ているルイスの懐にもぐりこむ。寒いのだろうかと思い、ルイスは上掛けを引き寄せて、レンの肩を覆った。
 レンのにおいが、自分のにおいと同じだ。同じシャンプーやボディソープを使ったせいだ。
 こんな風に、彼をどんどん侵食してしまいたい。ルイスはそう思う。
 本当なら、自分なしではいられないようにしてしまいたい。閉じ込めてしまいたい。そういう激しい感情もある。しかし、出会ったときからすでにひとりで立っている彼を、束縛することはできないとはわかっている。
 非現実的なことを考えても仕方ないと、ルイスは、いずれ現実化させる予定のレンとの同棲生活について検討することにした。
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