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秋の話
十 昼寝のあと、静かに(※)
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まだ明るい。枕元に置いた腕時計を見ると、午後三時。
「レン?」
「はい」
昼寝から覚め、まどろんでいる。
食事のあと、和室に布団を敷き、昼寝をしていた。
向かい合って眠っていたふたりは、目を覚まして、ルイスはレンの頬に手のひらを寄せ、レンはその手のひらの上に、黙って手を重ねた。
建物が脆弱で防音性が低く、商店街の表通りに面しており、喧噪が聞こえてくる。遮光性が十分ではないカーテンは音と午後の光を通している。
寝起きでうつらうつらしながら、どちらともなくキスをし、お互いの服を脱がせていく。ゆっくりと身体をまさぐる。下を脱いで、十分に慣らしてから、ルイスはレンをうつ伏せに寝かせ、上に覆いかぶさってゆっくりと挿入した。
「ふっ、う、んん」
レンは枕を抱えて、喘ぎ声をこらえている。ルイスはレンの着ているシャツをずらして背中を指でたどる。皮膚を爪で引っかいたりする。
「っ、痛……」
「ごめん。痛い?」
「い、いえ、大丈夫、です」
耳の縁を噛んだり、吐息を吹きかけたりする。規則的に動かす結合部だけが、うるさいくらいに粘着質な音を立てている。
ルイスはレンの耳元で静かに囁いた。
「可愛い、レン」
そう囁いたきり、ルイスは会話をやめた。初めてここでセックスをしたときは真夜中から明け方だった。いまは午後で、表通りには人がいる。物音を立てすぎるのはいけない。
それに、何も言わずにレンの反応だけを観察するのも、ルイスとしては楽しい。レンは痩せていて背中がきれいなので、背筋を眺めているのが好きだ。肌がきれいでずっと撫でていたいとルイスは思う。突いたり引いたりするたびに洩れる声も可愛い。
「ん、ん、っ」
「レン、苦しい?」
「いえ、あっ」
控えめに、だが気持ちよさそうに喘ぐレンに、ルイスはつい意地悪になる。レンの双丘を指で広げたりと遊ぶ。つながっているところを見るのが好きだ。
ルイスは時々身を起こしたり、レンの上に覆いかぶさったりしながら、小刻みに腰を動かしている。目を閉じていると自分がどうなっているのか想像してしまい、レンは熱くなる。ルイスが起き上がると、自分では見えない場所に、ルイスの視線を感じる。恥ずかしいが、抗えない。感度があがる。
「っ、う、ん、ん」
部屋があたたかいので、じんわりと汗が出てくる。汗ばんだレンのうなじを吸うようにしてルイスが呼吸をする。汗を舐める。
「レン。気持ちいい。腰、あげて」
ルイスの声が色っぽい。甘い。優しいのに容赦がなくて厳しい。
レンはルイスの指示どおり、腰をあげて、四つん這いになった。ルイスは上半身を起こし、あまり音を立てないようにしながらも、レンを激しく犯し始める。突かれるたび、レンは息を洩らした。
「っ、ん、っ、う、ぅ、ぅん、んっ」
ルイスは獣のように覆いかぶさって、レンの片手を、レンの雄に誘導する。レン自身に握らせ、その上から手伝うように握った。腰の動きに合わせて上下する。
しだいにレンを追い詰めていく。レンはいつもルイスに追い詰められている。
「ルイスさん、俺、もう、あ」
レンが限界に近いことを知り、ルイスはいつもレンが欲しがっているようにした。ルイスが手伝わずとも、レンが自分の性器を激しく扱く様子は、ただ快感を求めて貪っているようで、煽情的だとルイスは思う。
「あ、ううう」
ルイスがレンの耳朶を食んだ瞬間、レンは達した。ルイスはあわてて枕元のティッシュをとってレンの精液が布団にこぼれないように受け止める。
部屋が暑く、レンは真っ赤になっている。涙目になって射精し終わる。吐息も熱い。
「レン、熱いね」
ルイスは一度引き抜いて、レンを仰向けにさせた。汗に濡れた髪を掻き分けたりして、火照ったレンの熱をさます。額に口づけると肌がしょっぱい。
「すみません、俺、我慢できなくて」
「いいですよ」
と言いながら、ルイスはレンの両足を抱え上げて正常位で、もう一度挿入する。レンに口づけながら根元まで入れた。内腿の皮膚の柔らかさを確かめながら、ゆっくりと引いたり押したりする。
「んんん」
ルイスはレンと指を絡ませた。右手も左手も、恋人のようにつなぐ。
「レン、全身熱いですよ。大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です、は、あ、っ」
射精したばかりだが、レンは気持ちよさそうに動きに合わせて腰を擦りつける。
「ルイスさん、そこ好き」
「知ってる」
レンは握られる手に力を込める。
「ん」
「あ、っ、好き」
「うん」
まるで告白されているようで、ルイスはレンに応えようと手を握ったり、口づけたりする。レンをかき抱いて、最後までしたい。
「レン、レン」
「ルイスさん、んっ、んっ」
「っ、レン……!」
かすれた声をあげて、レンの中でルイスは達した。レンの身体を抱きしめ、受け入れるようにレンもルイスにしがみつく。身を震わせてやり過ごすルイスが、レンを見つめる。
空色の瞳に午後の光が揺れている。映っているのはレンの姿だ。ルイスの汗ばんでいる顔にレンは両手を添えた。頬を挟む。ルイスのほうからレンに口づける。
午後が過ぎていく。喧噪は少し遠く、部屋にはふたりだけで、夢中になったあとにただ口づけをして、それだけで満たされる。
好きだ、とレンは思った。
ルイスが好きだ。恋に落ちてしまい、どうしようもない。
だが言えない。口には出せない。ルイスを好きなことは現実感がない。
「レン」
ルイスはレンを抱く。レンも応えるように抱きしめる。
あれだけ注目を浴びているのだから、おそらくルイスはモテる。わざわざレンを選ばなくても、好きなものを好きなように選ぶことができる。
こうしているのは刹那的だとレンは思った。
「レン?」
「はい」
昼寝から覚め、まどろんでいる。
食事のあと、和室に布団を敷き、昼寝をしていた。
向かい合って眠っていたふたりは、目を覚まして、ルイスはレンの頬に手のひらを寄せ、レンはその手のひらの上に、黙って手を重ねた。
建物が脆弱で防音性が低く、商店街の表通りに面しており、喧噪が聞こえてくる。遮光性が十分ではないカーテンは音と午後の光を通している。
寝起きでうつらうつらしながら、どちらともなくキスをし、お互いの服を脱がせていく。ゆっくりと身体をまさぐる。下を脱いで、十分に慣らしてから、ルイスはレンをうつ伏せに寝かせ、上に覆いかぶさってゆっくりと挿入した。
「ふっ、う、んん」
レンは枕を抱えて、喘ぎ声をこらえている。ルイスはレンの着ているシャツをずらして背中を指でたどる。皮膚を爪で引っかいたりする。
「っ、痛……」
「ごめん。痛い?」
「い、いえ、大丈夫、です」
耳の縁を噛んだり、吐息を吹きかけたりする。規則的に動かす結合部だけが、うるさいくらいに粘着質な音を立てている。
ルイスはレンの耳元で静かに囁いた。
「可愛い、レン」
そう囁いたきり、ルイスは会話をやめた。初めてここでセックスをしたときは真夜中から明け方だった。いまは午後で、表通りには人がいる。物音を立てすぎるのはいけない。
それに、何も言わずにレンの反応だけを観察するのも、ルイスとしては楽しい。レンは痩せていて背中がきれいなので、背筋を眺めているのが好きだ。肌がきれいでずっと撫でていたいとルイスは思う。突いたり引いたりするたびに洩れる声も可愛い。
「ん、ん、っ」
「レン、苦しい?」
「いえ、あっ」
控えめに、だが気持ちよさそうに喘ぐレンに、ルイスはつい意地悪になる。レンの双丘を指で広げたりと遊ぶ。つながっているところを見るのが好きだ。
ルイスは時々身を起こしたり、レンの上に覆いかぶさったりしながら、小刻みに腰を動かしている。目を閉じていると自分がどうなっているのか想像してしまい、レンは熱くなる。ルイスが起き上がると、自分では見えない場所に、ルイスの視線を感じる。恥ずかしいが、抗えない。感度があがる。
「っ、う、ん、ん」
部屋があたたかいので、じんわりと汗が出てくる。汗ばんだレンのうなじを吸うようにしてルイスが呼吸をする。汗を舐める。
「レン。気持ちいい。腰、あげて」
ルイスの声が色っぽい。甘い。優しいのに容赦がなくて厳しい。
レンはルイスの指示どおり、腰をあげて、四つん這いになった。ルイスは上半身を起こし、あまり音を立てないようにしながらも、レンを激しく犯し始める。突かれるたび、レンは息を洩らした。
「っ、ん、っ、う、ぅ、ぅん、んっ」
ルイスは獣のように覆いかぶさって、レンの片手を、レンの雄に誘導する。レン自身に握らせ、その上から手伝うように握った。腰の動きに合わせて上下する。
しだいにレンを追い詰めていく。レンはいつもルイスに追い詰められている。
「ルイスさん、俺、もう、あ」
レンが限界に近いことを知り、ルイスはいつもレンが欲しがっているようにした。ルイスが手伝わずとも、レンが自分の性器を激しく扱く様子は、ただ快感を求めて貪っているようで、煽情的だとルイスは思う。
「あ、ううう」
ルイスがレンの耳朶を食んだ瞬間、レンは達した。ルイスはあわてて枕元のティッシュをとってレンの精液が布団にこぼれないように受け止める。
部屋が暑く、レンは真っ赤になっている。涙目になって射精し終わる。吐息も熱い。
「レン、熱いね」
ルイスは一度引き抜いて、レンを仰向けにさせた。汗に濡れた髪を掻き分けたりして、火照ったレンの熱をさます。額に口づけると肌がしょっぱい。
「すみません、俺、我慢できなくて」
「いいですよ」
と言いながら、ルイスはレンの両足を抱え上げて正常位で、もう一度挿入する。レンに口づけながら根元まで入れた。内腿の皮膚の柔らかさを確かめながら、ゆっくりと引いたり押したりする。
「んんん」
ルイスはレンと指を絡ませた。右手も左手も、恋人のようにつなぐ。
「レン、全身熱いですよ。大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です、は、あ、っ」
射精したばかりだが、レンは気持ちよさそうに動きに合わせて腰を擦りつける。
「ルイスさん、そこ好き」
「知ってる」
レンは握られる手に力を込める。
「ん」
「あ、っ、好き」
「うん」
まるで告白されているようで、ルイスはレンに応えようと手を握ったり、口づけたりする。レンをかき抱いて、最後までしたい。
「レン、レン」
「ルイスさん、んっ、んっ」
「っ、レン……!」
かすれた声をあげて、レンの中でルイスは達した。レンの身体を抱きしめ、受け入れるようにレンもルイスにしがみつく。身を震わせてやり過ごすルイスが、レンを見つめる。
空色の瞳に午後の光が揺れている。映っているのはレンの姿だ。ルイスの汗ばんでいる顔にレンは両手を添えた。頬を挟む。ルイスのほうからレンに口づける。
午後が過ぎていく。喧噪は少し遠く、部屋にはふたりだけで、夢中になったあとにただ口づけをして、それだけで満たされる。
好きだ、とレンは思った。
ルイスが好きだ。恋に落ちてしまい、どうしようもない。
だが言えない。口には出せない。ルイスを好きなことは現実感がない。
「レン」
ルイスはレンを抱く。レンも応えるように抱きしめる。
あれだけ注目を浴びているのだから、おそらくルイスはモテる。わざわざレンを選ばなくても、好きなものを好きなように選ぶことができる。
こうしているのは刹那的だとレンは思った。
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