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2 ある聖夜のころ
五 外さない
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シャワーを浴びて着替えたあとに、思い出した。
「あ、そうだ。これ」
クローゼットに置いてあった、しっかりめのショッパー。
中身は指輪。相当高価なもの。
四月には帰ってこなかったので、七月に帰国したときに、ふたりで買いに行ったんだけど、内側に石をいれたので、受取日がずれて、俺がひとりで受け取りにいった。
で、半年ぶり。どうしようかと思ってたよ。
二人で並んでベッドに腰掛けて、膝の上で箱を開ける。指輪がふたつ。
シンプルな幅広の平打ちでプラチナ。内側に宝石。
裏石を入れる場合、自分の指輪に自分の誕生石を入れる人が多いそうなんだけど、和臣さんは自分のほうに俺の誕生石を入れたがったので三月のアクアマリンという石。そして和臣さんの希望で、俺のほうには四月の誕生石だというダイヤモンド。
物凄く恥ずかしがる俺に、お相手の方の誕生石を選ぶ方もいますよ、と言った店員さんの笑顔を思い出す。
男同士で指輪買うなんて経験、自分がするなんて思わなかったよ。っていうか指輪自体買ったことなかったし。店員さんは慣れてるっぽかったな。そういうもんなのか。
水色の石がついているやや大きいほうを取ると、和臣さんが左手を出してくる。おずおずと指をとると、和臣さんは笑った。
「多紀くん、それ人差し指」
「あ」
緊張しつつ、和臣さんの薬指をとって、嵌めてみる。で、俺の左手を和臣さんは取って、指輪をはめた。
両手をとりあったまま、引き寄せられる。唇を重ねる。
なんちゅう幸せそうな顔するんだよ。照れるし。
「ちゃんとした恋人みたい……」
俺はちゃんとしてるつもりですけど。おたくは?
「プレゼント、交換できてよかったですね」
和臣さんはこくこく頷いて、指輪にキスして頬ずりをしている。
「えへへ……一生外さないんだ……」
「つけっぱなし派ですか?」
どうするのが適切なんだろ。
「あー……会社はよくないかな……。職場以外では行き帰りもずっとつけていよう……多紀くんは、指輪つけて会社行ける?」
「うちは逆に、独身でもつけてる人が多いです。みんな既婚者のふりしてますね」
「え? なんで?」
「登録スタッフに言い寄られて困ったことがある人がいて、トラブル避けだそうで」
佐伯さん。西さんも似たような経験をしたみたいで、西さんはもともと既婚者だけど外していたところ、付けるようになったし、佐伯さんは独身だけど付けてる。
「そうなんだ。多紀くんはつけてないの?」
「ないですけど、今のところトラブルもないです」
「……多紀くんが無防備に女の子と話してると思うと妬ける」
「おばちゃん担当だから、飴ちゃんはもらえるんですけど、女の子から言い寄られるような経験はないですね……」
いいんだか悪いんだか。ほんとモテないよね、俺。
顔は平凡。平凡としか形容できない。
性格は悪くないとは思うんだけど、いつもお友達。話しやすいとは言われるので、なんでも聞く係。それでいいよって西さんには言われる。むしろ聞く係は重要だとか。案外、聞くに徹するってできないものらしい。ほんとかな。
「それならいいか……でもちょっと傷ついてるから慰めてほしい」
と言うので、和臣さんの頭に手をやる。なでなですると、すぐご機嫌になってる。
世話が焼ける人だな。
和臣さんは俺の膝を枕に横たわる。膝の上に猫が乗っているみたいに。
シャワーを浴びて乾かしたばかりの、少しだけ濡れている感じの残る髪。温かい肌。少し汗ばんだ額とか。ゆっくりと撫でてみる。目を閉じている。
長い睫毛、薄い瞼。垂れ目。ちょっと気弱そうに見える、きれいな顔。色白。
「指輪、プレゼントし合ったでしょ?」
「うん」
「じゃあ、大丈夫でしょ」
「うん……」
追い打ちのように屈んでキスをしたら、真っ赤な顔をして、ふにゃふにゃになっていた。
「あ、そうだ。これ」
クローゼットに置いてあった、しっかりめのショッパー。
中身は指輪。相当高価なもの。
四月には帰ってこなかったので、七月に帰国したときに、ふたりで買いに行ったんだけど、内側に石をいれたので、受取日がずれて、俺がひとりで受け取りにいった。
で、半年ぶり。どうしようかと思ってたよ。
二人で並んでベッドに腰掛けて、膝の上で箱を開ける。指輪がふたつ。
シンプルな幅広の平打ちでプラチナ。内側に宝石。
裏石を入れる場合、自分の指輪に自分の誕生石を入れる人が多いそうなんだけど、和臣さんは自分のほうに俺の誕生石を入れたがったので三月のアクアマリンという石。そして和臣さんの希望で、俺のほうには四月の誕生石だというダイヤモンド。
物凄く恥ずかしがる俺に、お相手の方の誕生石を選ぶ方もいますよ、と言った店員さんの笑顔を思い出す。
男同士で指輪買うなんて経験、自分がするなんて思わなかったよ。っていうか指輪自体買ったことなかったし。店員さんは慣れてるっぽかったな。そういうもんなのか。
水色の石がついているやや大きいほうを取ると、和臣さんが左手を出してくる。おずおずと指をとると、和臣さんは笑った。
「多紀くん、それ人差し指」
「あ」
緊張しつつ、和臣さんの薬指をとって、嵌めてみる。で、俺の左手を和臣さんは取って、指輪をはめた。
両手をとりあったまま、引き寄せられる。唇を重ねる。
なんちゅう幸せそうな顔するんだよ。照れるし。
「ちゃんとした恋人みたい……」
俺はちゃんとしてるつもりですけど。おたくは?
「プレゼント、交換できてよかったですね」
和臣さんはこくこく頷いて、指輪にキスして頬ずりをしている。
「えへへ……一生外さないんだ……」
「つけっぱなし派ですか?」
どうするのが適切なんだろ。
「あー……会社はよくないかな……。職場以外では行き帰りもずっとつけていよう……多紀くんは、指輪つけて会社行ける?」
「うちは逆に、独身でもつけてる人が多いです。みんな既婚者のふりしてますね」
「え? なんで?」
「登録スタッフに言い寄られて困ったことがある人がいて、トラブル避けだそうで」
佐伯さん。西さんも似たような経験をしたみたいで、西さんはもともと既婚者だけど外していたところ、付けるようになったし、佐伯さんは独身だけど付けてる。
「そうなんだ。多紀くんはつけてないの?」
「ないですけど、今のところトラブルもないです」
「……多紀くんが無防備に女の子と話してると思うと妬ける」
「おばちゃん担当だから、飴ちゃんはもらえるんですけど、女の子から言い寄られるような経験はないですね……」
いいんだか悪いんだか。ほんとモテないよね、俺。
顔は平凡。平凡としか形容できない。
性格は悪くないとは思うんだけど、いつもお友達。話しやすいとは言われるので、なんでも聞く係。それでいいよって西さんには言われる。むしろ聞く係は重要だとか。案外、聞くに徹するってできないものらしい。ほんとかな。
「それならいいか……でもちょっと傷ついてるから慰めてほしい」
と言うので、和臣さんの頭に手をやる。なでなですると、すぐご機嫌になってる。
世話が焼ける人だな。
和臣さんは俺の膝を枕に横たわる。膝の上に猫が乗っているみたいに。
シャワーを浴びて乾かしたばかりの、少しだけ濡れている感じの残る髪。温かい肌。少し汗ばんだ額とか。ゆっくりと撫でてみる。目を閉じている。
長い睫毛、薄い瞼。垂れ目。ちょっと気弱そうに見える、きれいな顔。色白。
「指輪、プレゼントし合ったでしょ?」
「うん」
「じゃあ、大丈夫でしょ」
「うん……」
追い打ちのように屈んでキスをしたら、真っ赤な顔をして、ふにゃふにゃになっていた。
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