エリート先輩はうかつな後輩に執着する

みつきみつか

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2 ある聖夜のころ

十一 持っていない(※)

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 それは唐突に始まった。

「多紀くん、今してみようよ」

 まるでとてもいいアイディアを思いついたみたいな、弾んだ声。

「え?」
「自分の触ってみて。通話したまま」
「なんでですか?」

 とりあえず、理由を訊いてみる。

「俺が聞きたいから。多紀くんがひとりでしてる声。ね、減るもんじゃないでしょ?」
「減ります」

 当然、出したら出した分は減る。わかってると思うけれど。

「大丈夫。また増えるから。触ってみて。どうなってる?」

 断れない。どうせ最後はこの人の思う通りになっちゃうし、拒否しても粘っても無駄。
 俺は着替えたスウェットの下に手を入れてみる。
 どうなってるも何も、どうもなってないよ。普通にしゃべってるだけでどうにかなってたら変態でしょ。

「和臣さんはしないんですか」
「あ、じゃあ、しよ。一緒にしよ。あー、指入れたいな。多紀くん、自分の指、俺の指だと思って舐めて。で、お尻の穴を触ってみて」
「と、遠いです……」
「後ろからして。今ってベッド? スピーカー?」
「はい」
「じゃあ、下脱いで。四つん這いになって、ローション付けて、後ろに手を回して、指入れて」

 なにその指示の的確さ。手慣れてない?
 普段はさほどおしゃべりじゃないくせに、エッチのときだけは立て板に水。

「自分で入れたって、気持ちよくないです」
「んー。手で自分の触って。いつもみたいに扱いて。で、目を閉じて」
「はい……」

 自分のものを扱く。指も入れて、ちょっと出し入れする。指示通り。

「声を出してね。俺にされてるときみたいに、大きな声ね」
「か、和臣さんは?」
「俺も触ってるよ。扱いてる。とっくに勃ってる。多紀くんの声聴いてると勃っちゃう」

 普通にしゃべってるだけで勃ってたのかよ。変態。

「あー、多紀くんに咥えてもらいたいな……。多紀くんが一所懸命してくれてるの見るのが好き……多紀くんのお口を思い出してる。舐めて。咥えてよ。好きでしょ」
「っ……」
「たくさん舐めてもらって、入れたくなったらすぐに入れていいよね、これ。一気に奥まで入れたいな。多紀くんの穴を広げて……掘って、多紀くんの中ガンガン突きたい、中にこすりつけて、鳴かせたい」
「あ……」
「多紀くんはひーひー鳴いて、もっとしてって言うね。いつもそうだもんね。お尻でエッチされたくて仕方ないんだもんね」
「和臣さん、ちょ、ちょっと待って……」

 手が止まらなくなる。
 扱くのも、尻の穴に指を入れて動かすのも。
 興奮で、息が荒くなってくる。

「どうしたの? 大きくなってる? 気持ちいい?」
「ん、うん……」
「じゃあ、もっと喘いで、イくとき、ちゃんというんだよ」
「は、はい」
「先っぽどうなってる?」
「ガマン汁出てます」
「じゃあ、先っぽぐりぐりして」
「あっ……」
「俺にされるみたいにしてみて」

 してみる。和臣さんが興奮して俺のを扱くときの、いつもの乱暴さ。目を閉じて、声を聞きながら指示通りしていると、自分でしている感覚が麻痺してきて、まるでされているみたいに思えてくる。

「痛いです……」
「多紀くん、いい子だね。いうこと聞いてるね。指はちゃんと入れてる?」
「入れてます」
「何指?」
「な、中指」
「そこ、俺が広げたいよ。多紀くんの穴ぬるぬるにして、みちみちにしてやりたい、多紀くんの広がってるの、目に焼きついてるよ、締め付けてくるところ。狭くて熱いね……」
「待って和臣さん」

 声が犯してくる。触られていないのに、肌に触れる指先を思い出して熱い。

「多紀くん。指一本?」
「はい」
「二本入れて」
「はい……」

 指示通り、中指にくわえて、薬指を入れる。

「多紀くんの指になりたいな。締めてるんでしょ。そこに入れたいな。俺の入れたい」
「も、もうだめ、和臣さん。イ、イく……」
「入れられながらイく?」
「はい……」
「早いよ。でも可愛い。大きいの入れてあげる。多紀くんを犯して、ぐちゃぐちゃにする。また中出しするけど、いいよね」
「あっ、イく……!」
「俺も出そう、ん……」
「あっ、はあ……はあ……」
「出した?」
「……はい」

 ふふ、と笑い声。少し息が荒い。

「俺も。たくさん出てる……」
「っ……」

 はあ、と和臣さんは濡れたため息を吐いた。満足そう。

「やっぱり生の声はいいね。多紀くん。今度からひとりでするときは、かならず連絡してね。一緒にしよ。決まり。俺もしたいときは連絡するね」
「和臣さん、ひとりでしたりするんですか?」
「するよ。ふつうに。するよね?」
「え、まあ、はい」
「いつも多紀くんの写真を見ながらしてる。写メ。今も見てた。ふふふ、可愛い」
「……どうしてそんな写メ持ってるんですか?」

 いつ撮ったんだ?

「これは秘蔵の隠し撮りのもの。隠し撮りフォルダ⑨。就職したばかりの十八歳の多紀くん。ひとりでカフェでアイスコーヒーを飲んでるところ。ストロー噛んでて可愛い。お気に入りのカフェだったね。移転しちゃって残念だったね」

 そうそう。会社の近くに美味しいコーヒーの店があってさ。移転したんだよな。
 なんで撮ってるねん。開き直るな。

「……じゃあ、俺にも送ってください」
「何を?」
「写真」
「え? 多紀くんの?」
「なんでですか。和臣さんの」
「なぜ俺の写真を俺が持ってるの?」

 言いたいことはわからないでもないよ。俺だって自撮りする習慣ないから、自分の写真なんて持ってない。
 かといって、俺の写真を和臣さんが持っているのはどう考えてもおかしいだろ。
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