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4 ある休み明け(和臣視点)
三 すべてを知りたい
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午後十時。
マンションのドアを開ける。廊下に明かりが灯っている。ほっとする。多紀くん、帰ってきてる。知ってるけど。
閉めながら言う。
「ただいま」
水を出す音がしている。
自分が脱いだ革靴を揃えるにあたり、多紀くんの革靴にぴたっと寄せる。ふふふ。二十六センチ。
次いで、多紀くんの革靴の中に手を入れてみる。まだ少し温かい。湿っぽい。帰ってきたばかり。
靴に仕込んだGPSタグ、気づかれていない。カバンにもひとつ。カバンを盗まれた反省をもとに、靴にもつけている。いつ気づくのだろう。いつまでも気づかないに違いない。
振り返る。ちょうど、多紀くんが洗面所からひょこっと顔を出す。
愛しの多紀くん。
歯を磨いてる。歯ブラシになりたい。多紀くんの口の中、奥歯の形を知りたい。舌が届かないんだよね。
洗面所に戻って、ぺってしている。飲みたい。
「おかえりなさーい」
元気で可愛い。多紀くんはどれほど疲れていても、いつも笑顔で明るい。ワイシャツとスラックス姿。
ネクタイと上着はキッチンかな。あとで嗅がないと。
「多紀くんもおかえり。いま帰り?」
「はい。いま帰ってきたとこです」
「遅かったんだね」
知ってるけど。
「多紀くん、ごはん外で食べたんだったね」
N社長お気に入りの中華屋。
「はい。西さん来てて、一緒に中華屋です」
洗面鏡を眺めながら口を拭っている多紀くんを、背後から抱く。脇腹。おなか。温かい。
こめかみや耳の裏に唇を寄せる。汗っぽい。耳朶を食む。柔らかい。
「汗くさいですよ。帰りにバスケしてたんで」
「そうなんだ」
運動をしていたことは知っている。複合スポーツ施設に位置情報がとまっていた。バスケをしていたんだ。羨ましい。俺も多紀くんとバスケしたい。
先日は卓球をしていた。羨ましい。俺も多紀くんと卓球したい。
N社長はなぜ俺に先んじて多紀くんとスポーツしているの。そのポジションが欲しい。その会社に出向したい。四六時中一緒にいたい。多紀くんの言行をつぶさに観察していたい。
「カズ先輩、飲み会ですか? 結構飲みました?」
「二杯だけ。急に接待が入っちゃって。ごめん、酒と煙草臭いね」
「いえ。でも今って管理部なんですよね」
「うん。営業部時代のね」
「大変ですね。お疲れさまです」
「ありがとう。多紀くんもお疲れさま」
多紀くんとお酒を飲みたい。楽しく気持ちよく飲んで、気持ちよくなりたい。
「お風呂ちょうど入れたんですけど、酔ってるならシャワーのほうがいいですね。それか、少し休んで酔い覚ましてからにします?」
「うん」
二杯は呑んだうちに入らないけれど。
絶対に多紀くんのあとがいい。お風呂のお湯に多紀くんの汗が溶けてるから。
多紀くんのダシ汁。バスケして汗だくか。いいダシ出そう。洗わずに浸かってほしい。
多紀くんの頬に頬を寄せる。頬をついばむ。
多紀くんは顔を振り向かせる。唇同士が触れる。少し歯磨き粉味。
舌を入れたい。多紀くんは歯磨き後だからやめておく。
だけど、多紀くんのほうから舌を出してくる。その舌に吸いつく。肉厚でやわらかくて甘噛み。美味しい。
「ん、ん」
「多紀くん、また、歯磨かないと」
「あとで……これ好き……」
「ん、多紀くん、んん……」
多紀くんは振り向く。多紀くんの頬を両手で包む。本格的な口づけになっていく。俺の舌を吸いながら抱きついてくる。可愛い生き物。
ひとしきりキスしたら満足そう。離れると顔が赤くなっている。可愛い。
「おかえりなさい、せんぱい」
可愛い可愛い可愛い可愛い。
「ただいま」
「帰ってきたら先輩がいなくて寂しかったです……」
イきそう。
「多紀くん可愛い……」
多紀くんは、恥ずかしそうに俯いている。なにその表情。優勝。
「へへ。ごはん何食べました?」
「実は食べてないんだ。タイミング失って」
食べちゃいたい。多紀くんを。
「えっ、ごはん食べてないんですか?」
「うん」
「ええええ、冷凍庫におにぎりありますよ。疲れてるでしょ。用意しましょっか?」
「ううん。自分で用意するから大丈夫。ありがとう。先にお風呂入っちゃって。汗、流したいでしょ」
「了解です。汗かいて臭いんで、ぱぱっと入っちゃいますね」
と、脱いで浴室に入っていく。臭くなんかないよ。何時間でも嗅いでいたい。多紀くんの汗を含有している空気で肺を満たしたい。
無防備な全裸の後ろ姿。背中、ほくろ。傷跡。つい目で追ってしまう。
触れたい。撫でたい。押し倒したい。挿れたい。体を支配したい。声を出させたい。喘がせたい。イかせたい。イくとこ見たい。中で出したい。中で出されているときの煽情的な表情を観察したい。支配されて快感の奴隷となったあの顔。全部見たい。
多紀くんが浴室の扉を閉める。シャワーの音。
その隙に、多紀くんが洗濯機に放り込んだワイシャツや靴下を取り出して嗅いでみる。多紀くんの汗のにおい。勃ってくる。
シャワーの音が止んだので、洗濯機に放り込む。
浴室の扉が開いた。
「冷蔵庫に俺の渾身の味玉がありますよ。力作」
「食べていいの?」
「いいですよ、もちろん」
多紀くんが握ったおにぎりと、力作の味玉か。死んでも食べる。あ、スーツの上着とネクタイを嗅がないと。
できることが多くて幸せだな……。
マンションのドアを開ける。廊下に明かりが灯っている。ほっとする。多紀くん、帰ってきてる。知ってるけど。
閉めながら言う。
「ただいま」
水を出す音がしている。
自分が脱いだ革靴を揃えるにあたり、多紀くんの革靴にぴたっと寄せる。ふふふ。二十六センチ。
次いで、多紀くんの革靴の中に手を入れてみる。まだ少し温かい。湿っぽい。帰ってきたばかり。
靴に仕込んだGPSタグ、気づかれていない。カバンにもひとつ。カバンを盗まれた反省をもとに、靴にもつけている。いつ気づくのだろう。いつまでも気づかないに違いない。
振り返る。ちょうど、多紀くんが洗面所からひょこっと顔を出す。
愛しの多紀くん。
歯を磨いてる。歯ブラシになりたい。多紀くんの口の中、奥歯の形を知りたい。舌が届かないんだよね。
洗面所に戻って、ぺってしている。飲みたい。
「おかえりなさーい」
元気で可愛い。多紀くんはどれほど疲れていても、いつも笑顔で明るい。ワイシャツとスラックス姿。
ネクタイと上着はキッチンかな。あとで嗅がないと。
「多紀くんもおかえり。いま帰り?」
「はい。いま帰ってきたとこです」
「遅かったんだね」
知ってるけど。
「多紀くん、ごはん外で食べたんだったね」
N社長お気に入りの中華屋。
「はい。西さん来てて、一緒に中華屋です」
洗面鏡を眺めながら口を拭っている多紀くんを、背後から抱く。脇腹。おなか。温かい。
こめかみや耳の裏に唇を寄せる。汗っぽい。耳朶を食む。柔らかい。
「汗くさいですよ。帰りにバスケしてたんで」
「そうなんだ」
運動をしていたことは知っている。複合スポーツ施設に位置情報がとまっていた。バスケをしていたんだ。羨ましい。俺も多紀くんとバスケしたい。
先日は卓球をしていた。羨ましい。俺も多紀くんと卓球したい。
N社長はなぜ俺に先んじて多紀くんとスポーツしているの。そのポジションが欲しい。その会社に出向したい。四六時中一緒にいたい。多紀くんの言行をつぶさに観察していたい。
「カズ先輩、飲み会ですか? 結構飲みました?」
「二杯だけ。急に接待が入っちゃって。ごめん、酒と煙草臭いね」
「いえ。でも今って管理部なんですよね」
「うん。営業部時代のね」
「大変ですね。お疲れさまです」
「ありがとう。多紀くんもお疲れさま」
多紀くんとお酒を飲みたい。楽しく気持ちよく飲んで、気持ちよくなりたい。
「お風呂ちょうど入れたんですけど、酔ってるならシャワーのほうがいいですね。それか、少し休んで酔い覚ましてからにします?」
「うん」
二杯は呑んだうちに入らないけれど。
絶対に多紀くんのあとがいい。お風呂のお湯に多紀くんの汗が溶けてるから。
多紀くんのダシ汁。バスケして汗だくか。いいダシ出そう。洗わずに浸かってほしい。
多紀くんの頬に頬を寄せる。頬をついばむ。
多紀くんは顔を振り向かせる。唇同士が触れる。少し歯磨き粉味。
舌を入れたい。多紀くんは歯磨き後だからやめておく。
だけど、多紀くんのほうから舌を出してくる。その舌に吸いつく。肉厚でやわらかくて甘噛み。美味しい。
「ん、ん」
「多紀くん、また、歯磨かないと」
「あとで……これ好き……」
「ん、多紀くん、んん……」
多紀くんは振り向く。多紀くんの頬を両手で包む。本格的な口づけになっていく。俺の舌を吸いながら抱きついてくる。可愛い生き物。
ひとしきりキスしたら満足そう。離れると顔が赤くなっている。可愛い。
「おかえりなさい、せんぱい」
可愛い可愛い可愛い可愛い。
「ただいま」
「帰ってきたら先輩がいなくて寂しかったです……」
イきそう。
「多紀くん可愛い……」
多紀くんは、恥ずかしそうに俯いている。なにその表情。優勝。
「へへ。ごはん何食べました?」
「実は食べてないんだ。タイミング失って」
食べちゃいたい。多紀くんを。
「えっ、ごはん食べてないんですか?」
「うん」
「ええええ、冷凍庫におにぎりありますよ。疲れてるでしょ。用意しましょっか?」
「ううん。自分で用意するから大丈夫。ありがとう。先にお風呂入っちゃって。汗、流したいでしょ」
「了解です。汗かいて臭いんで、ぱぱっと入っちゃいますね」
と、脱いで浴室に入っていく。臭くなんかないよ。何時間でも嗅いでいたい。多紀くんの汗を含有している空気で肺を満たしたい。
無防備な全裸の後ろ姿。背中、ほくろ。傷跡。つい目で追ってしまう。
触れたい。撫でたい。押し倒したい。挿れたい。体を支配したい。声を出させたい。喘がせたい。イかせたい。イくとこ見たい。中で出したい。中で出されているときの煽情的な表情を観察したい。支配されて快感の奴隷となったあの顔。全部見たい。
多紀くんが浴室の扉を閉める。シャワーの音。
その隙に、多紀くんが洗濯機に放り込んだワイシャツや靴下を取り出して嗅いでみる。多紀くんの汗のにおい。勃ってくる。
シャワーの音が止んだので、洗濯機に放り込む。
浴室の扉が開いた。
「冷蔵庫に俺の渾身の味玉がありますよ。力作」
「食べていいの?」
「いいですよ、もちろん」
多紀くんが握ったおにぎりと、力作の味玉か。死んでも食べる。あ、スーツの上着とネクタイを嗅がないと。
できることが多くて幸せだな……。
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