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4 ある休み明け(和臣視点)
八 不機嫌な恋人
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「多紀くん。ごめんね。機嫌なおしてほしいな……」
可愛く言ってみても、多紀くんは口をきいてくれない。
朝。午前八時前。
朝食を用意するのは俺の役目で、用意していると多紀くんは起きてきて、不機嫌な顔で食べ始めた。
お茶を沸かして、俺も多紀くんの隣に掛ける。おはようという挨拶に、おはようございますという挨拶を返してくれて、そこから無言。
めちゃくちゃ怒っているね。
それもそうか。明け方まで、激しく犯し続けた。いまだかつてないほど。多紀くんは途中で寝ていた。それでも構わず犯して起こして泣かせた。
それにしても、怒っている顔も可愛い。一所懸命怒ってる。
眠そう。ごめん。仕事があるのに。
でも俺、うとうとしてる多紀くんの雰囲気、すごく好きなんだよね……。
「今日、俺、晩ごはんいらないからね。用意しなくていいよ」
晩飯作りは多紀くんの役目なので、前もって言っておく。
「……外ですか?」
「同期会。暑気払い」
「……それって、女子いますよね」
いるとは思う。
同期は男だけではないし、いつもの同期会メンバーは、もちろん男女混合。今日は十人から十五人ほどの予定。
「いるよ」
「……ひとつお聞きしたいんですけど。俺の高校の同窓会と、カズ先輩の同期会って、何が違うんですか?」
「うーん……?」
何が違うといわれても。
でも俺、同期に興味ない。多紀くん以外の人間に欲情しない。
それに多紀くんは嫉妬はしていない。同条件なのに過酷な仕打ちを受けて怒っているだけ。
自分のほうは嫉妬されてあんなことされたのに、俺のほうは女子のいる飲み会に行くのかって怒り。
多紀くんが嫉妬してくれるんだったら、俺だって同期会なんて行かない。
別に行きたくて行くわけじゃない。メリットとデメリットを天秤にかけた結果。
嫉妬してほしいな。しなさそう。
俺が同期会に行ったって、たとえ合コンに行ったって、多紀くんはきっと嫉妬しない。
俺が他の人に目移りすることはないけれど、もし目移りしたとしても、あっさり別れ話になってしまいそう。
嫌だな……。
「俺、女子に興味ないよ。男にもないけど」
「俺だって、恋人がいるのに余所見するような人間じゃないです」
「それもそうだね」
相当不機嫌。可愛い。
だけど、目的を持って多紀くんに接してくる女性は今後増える。そうなったとき、多紀くんには耐性がない。
俺は昔から慣れている。常に恋愛対象。他人に冷たくすることに慣れている。
多紀くんは他人をうまくあしらえないと思う。
俺は、いつか、多紀くんが真実の恋に落ちる日が来るのではないかと、恐れている。
想像するだけで胸が痛くなる。息が苦しくなる。死にたくなる。
なのにいつも考えている。手に入れてしまったからこそ、失うのが怖い。
こんなことなら手に入れなければよかったとさえ思うほど怖い。
「俺のこと信じてない先輩なんか、もう知りません」
そう言って、多紀くんは席を立った。朝食はたいらげている。支度をしてばたばたと出て行ってしまう。
ああ、怒らせたな……。本当に怒ってるな。許してくれるかな。
でも、多紀くん。俺と君とでは、好きの重さが全然違うんだよ。
俺が多紀くんを好きである重さと、多紀くんが俺を好きだという重さは、まったく違う。
多紀くんの好きは、過去の経緯を何も知らないし、仲良しの先輩の域を出ていないとすら思う。
とにかく、帰ったら謝らないと。
でも怒っている顔も寝ぐせも可愛かったな……。
立ち上がって皿を片付ける。
多紀くんのお箸……舐めちゃいたいな……。
可愛く言ってみても、多紀くんは口をきいてくれない。
朝。午前八時前。
朝食を用意するのは俺の役目で、用意していると多紀くんは起きてきて、不機嫌な顔で食べ始めた。
お茶を沸かして、俺も多紀くんの隣に掛ける。おはようという挨拶に、おはようございますという挨拶を返してくれて、そこから無言。
めちゃくちゃ怒っているね。
それもそうか。明け方まで、激しく犯し続けた。いまだかつてないほど。多紀くんは途中で寝ていた。それでも構わず犯して起こして泣かせた。
それにしても、怒っている顔も可愛い。一所懸命怒ってる。
眠そう。ごめん。仕事があるのに。
でも俺、うとうとしてる多紀くんの雰囲気、すごく好きなんだよね……。
「今日、俺、晩ごはんいらないからね。用意しなくていいよ」
晩飯作りは多紀くんの役目なので、前もって言っておく。
「……外ですか?」
「同期会。暑気払い」
「……それって、女子いますよね」
いるとは思う。
同期は男だけではないし、いつもの同期会メンバーは、もちろん男女混合。今日は十人から十五人ほどの予定。
「いるよ」
「……ひとつお聞きしたいんですけど。俺の高校の同窓会と、カズ先輩の同期会って、何が違うんですか?」
「うーん……?」
何が違うといわれても。
でも俺、同期に興味ない。多紀くん以外の人間に欲情しない。
それに多紀くんは嫉妬はしていない。同条件なのに過酷な仕打ちを受けて怒っているだけ。
自分のほうは嫉妬されてあんなことされたのに、俺のほうは女子のいる飲み会に行くのかって怒り。
多紀くんが嫉妬してくれるんだったら、俺だって同期会なんて行かない。
別に行きたくて行くわけじゃない。メリットとデメリットを天秤にかけた結果。
嫉妬してほしいな。しなさそう。
俺が同期会に行ったって、たとえ合コンに行ったって、多紀くんはきっと嫉妬しない。
俺が他の人に目移りすることはないけれど、もし目移りしたとしても、あっさり別れ話になってしまいそう。
嫌だな……。
「俺、女子に興味ないよ。男にもないけど」
「俺だって、恋人がいるのに余所見するような人間じゃないです」
「それもそうだね」
相当不機嫌。可愛い。
だけど、目的を持って多紀くんに接してくる女性は今後増える。そうなったとき、多紀くんには耐性がない。
俺は昔から慣れている。常に恋愛対象。他人に冷たくすることに慣れている。
多紀くんは他人をうまくあしらえないと思う。
俺は、いつか、多紀くんが真実の恋に落ちる日が来るのではないかと、恐れている。
想像するだけで胸が痛くなる。息が苦しくなる。死にたくなる。
なのにいつも考えている。手に入れてしまったからこそ、失うのが怖い。
こんなことなら手に入れなければよかったとさえ思うほど怖い。
「俺のこと信じてない先輩なんか、もう知りません」
そう言って、多紀くんは席を立った。朝食はたいらげている。支度をしてばたばたと出て行ってしまう。
ああ、怒らせたな……。本当に怒ってるな。許してくれるかな。
でも、多紀くん。俺と君とでは、好きの重さが全然違うんだよ。
俺が多紀くんを好きである重さと、多紀くんが俺を好きだという重さは、まったく違う。
多紀くんの好きは、過去の経緯を何も知らないし、仲良しの先輩の域を出ていないとすら思う。
とにかく、帰ったら謝らないと。
でも怒っている顔も寝ぐせも可愛かったな……。
立ち上がって皿を片付ける。
多紀くんのお箸……舐めちゃいたいな……。
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