エリート先輩はうかつな後輩に執着する

みつきみつか

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5 ある休み明け(多紀視点)

九 何も言わない(※)

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 同期会の一次会は解散して、他の人は二次会。俺は和臣さんと帰宅。
 マンションに着いた。
 午後十時。
 道中、一言も口をきかずに、帰ってきてもただいまも何も言わずに、玄関に入って革靴を脱ぎ散らかして廊下にあがった瞬間、壁に押しつけられる。
 力強いのに、思いのほか優しい口づけ。
 角度を変えて唇を重ね合わせるうちに、食むようになって、少し唇を開いたりして、濡れた感じになってきて、そのうち舌先を出して、先っぽでキスするうちに、舌を絡めるような動きになってくる。
 舌を捉えて、歯列をなぞる。
 抱き合いながら。
 声が洩れる。熱くなってくる。気持ちのいいキス。

「ん、んん……」
「多紀くん……」

 と和臣さんが呟いた瞬間、俺は和臣さんの両腕に腰のあたりを抱かれて、そのまま肩に担ぎあげられた。気づいたら視線は和臣さんの背中。

「うわっ」

 和臣さんはどたどた歩いて、リビングを入って寝室。
 俺はベッドの上に放り出される。
 和臣さんはベッドに膝をついてネクタイを緩めながらにじり寄ってくる。俺もネクタイを緩めて、和臣さんに両腕を伸ばす。口づけながら、性急に脱がせ合っていく。
 和臣さんのワイシャツのボタンを外したり、ベルトのバックルを解いたり。
 ファスナーを下ろそうとするけれど、パンパンで引っかかって下ろせない。勃起しすぎなんですけど。先にボタン、ホック、またファスナー。下着の隙間に手を入れる。熱いって。
 俺のほうも、和臣さんに脱がされて、ワイシャツもはだけているし、下もおろすだけ。
 冷静になって自分で脱げばいいんだけど、抱き合ったら何も考えられなくなる。キスしっぱなしで、とにかくお互いに相手を脱がそうとしてる。
 二人とも横向きに倒れて、キスしながらお互いにまさぐる。やっとのこと全部脱いで、全裸になって押し付け合うみたいに全身をすり寄せる。
 体温。あったかい。離れられない。

「多紀くん、多紀くん……」

 和臣さんの手が俺の股の下を探る。ぬちゃ、と指先が入ってくる。片足をあげて、俺は性器同士をこすりつけて、片手で扱く。お互いの先走り汁が混ざる。

「は……はあ……」

 和臣さんは時々俺の名前を呼ぶ以外、何も言わない。
 俺も何も言わない。言えるか。だから何も言うな。
 指が二本、三本と増えて、慣れてくる。
 正常位。俺は下になって、和臣さんは俺の両足を肩に乗せる。
 目を合わせながら入ってくる。

「っ……」
「多紀くん……」

 入れながら覆いかぶさってくる。たまらなさそうな顔。
 俺もたぶん、似たような表情をしてる。口づけあって、唾液を送りこんだりして、混ぜるみたいにする。
 興奮しすぎ。俺も、和臣さんも。
 相手とどうなりたいのか、どうしたいのかを確かめ合うだけ。
 とけそう。

「あ、ああっ、か、かずおみさん」
「多紀くん……!」

 両手の指を繋いだ。和臣さんは、俺を見つめてくる。答え合わせみたいに。
 奥に入ってきて、止まる。

「多紀くん」
「和臣さん……っ」

 和臣さんは、俺を見つめて、汗ばんでひっついている俺の額の前髪を両手で分けたりしながら。
 口づけて、額を寄せたり、頬を寄せたり。ぽた、と水が落ちてくる。
 泣いてる。

「多紀くん、多紀くん……!」
「好きです」

 隙間なく抱きつく。和臣さんも俺の背に腕を回して、抱きついてくる。

「多紀くん」
「好きです」
「一日百万回言って。これから毎日」

 俺は噴き出した。
 ノルマきついな……。
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