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番外編15 リクエストなどなど2
新居に引っ越す話
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今日は引っ越し。
晴れ。気持ちいい天気。
午前中は、今日まで住んでる賃貸のほうで家財一式を搬出、午後から新居に荷物を運び込んでもらうことになった。
新居は一週間前に引き渡し完了していたんだけど、賃貸の解約が月末までで、ぎりぎりまで前の部屋に住んでた。会社近いし、スケジュールの都合で。
引っ越したらここには戻らないんだと思ったら、感慨深かったな。何年も住んだ。あそこで、本当に色んなことがあってさ。思い出がたくさん詰まった場所。
新居は賃貸から三駅ほど離れた築十年のファミリーマンションで2LDK。
会社との距離は少し離れてしまったものの、歩けない距離ではないし、相場より安い。いい物件なのになぜだろうと思ったら、売り主が早く現金化したかったらしい。
間取りの真ん中に玄関がある形の、分譲マンションの一室。
玄関入って狭い廊下。左手側に風呂トイレと寝室、右手側にリビングダイニングキッチンと洋室とクロークとベランダ。
午前中に引っ越しの積み込みを終えた後、からっぽの部屋を掃除して、和臣さんと外で昼飯にしていたら、和臣さんは次郎お兄さんから緊急のお呼び出し。
午後の搬入には間に合うように帰ると言いながら出ていった。
俺は和臣さんを見送り、搬入前に掃除しておこうと新居にやってきた。というわけである。
契約前に清掃会社が入って掃除してくれたけれど、それから二週間程度経っている。軽く乾拭きしておこう。
契約直後に二人で見に来たとき、つまり一週間前。この部屋で和臣さんに抱かれて、そのときにも掃除したけど、なにか残ってたら嫌だし、チェックしておきたい。
まず玄関だな。ドアとか壁とかに押し付けられて……跡はないや。よかった。床にも何もない。
それから洗面所と風呂か。
水もお湯も出たから、シャワーを浴びたんだった。排水溝は大丈夫。
浴槽内でもやられたな。タオルとローションとゴムを隠し持ってきたってことは、あのとき、やるつもりで来たな、あの人。しれっとした顔していたくせにさぁ。
壁に押し付けられることが多いんだ。額や手もつくし、いろんな液体がほとばしってしまうので、壁を入念にチェック。
「ここを寝室にしようか」と言いながら、ベッドの位置と向きを検討するために二人で寝転がってそのままやられたんだった。
フローリングだと背中痛いのに。和臣さんも膝が痛そうだったな。自業自得だよ。
L字型キッチン。ここでも立ちバックでやられたし。
リビングは……あっ、そうだ。掃き出し窓に手をついたんだった。んで、バックで。
まだカーテンをつけていなくて、見られちゃうって言ったのに。全然ひとの話聞いてない。というかむしろ興奮してたわ。
まったく同じ事実を認識していても、俺と和臣さんは考えることが異なるという典型例。
八階だけど、周りもマンションだし、気になるって。あ、窓に指紋ついてる。拭いておこう……。はぁ。
リビングの隣に和室。ここを寝室にする案もあって、ここだと背中痛くないねって言われながらやられたわ。
終わったあとで、でも和室で寝るの苦手だからやっぱりあっちが寝室だねとか言っていた。やりたかっただけだな。
風を通しておこう。
窓を二箇所開けて、ベランダに出る。
見下ろすと、和臣さんが遠いところを歩いてきているのが見えた。通りすがりの若い女の子たちに二度見されてる。やめておいたほうがいいよ、危険人物。
歩きながら、和臣さんが顔を上げた。見下ろしている俺と目が合って、眩しそうに、嬉しそうに、ふにゃふにゃの笑顔で手を振ってくる。
「……………………仕方ないな」
俺は手を振り返した。
和臣さんはスキップし始めた。目立つよ。
〈新居に引っ越す話 終わり〉
晴れ。気持ちいい天気。
午前中は、今日まで住んでる賃貸のほうで家財一式を搬出、午後から新居に荷物を運び込んでもらうことになった。
新居は一週間前に引き渡し完了していたんだけど、賃貸の解約が月末までで、ぎりぎりまで前の部屋に住んでた。会社近いし、スケジュールの都合で。
引っ越したらここには戻らないんだと思ったら、感慨深かったな。何年も住んだ。あそこで、本当に色んなことがあってさ。思い出がたくさん詰まった場所。
新居は賃貸から三駅ほど離れた築十年のファミリーマンションで2LDK。
会社との距離は少し離れてしまったものの、歩けない距離ではないし、相場より安い。いい物件なのになぜだろうと思ったら、売り主が早く現金化したかったらしい。
間取りの真ん中に玄関がある形の、分譲マンションの一室。
玄関入って狭い廊下。左手側に風呂トイレと寝室、右手側にリビングダイニングキッチンと洋室とクロークとベランダ。
午前中に引っ越しの積み込みを終えた後、からっぽの部屋を掃除して、和臣さんと外で昼飯にしていたら、和臣さんは次郎お兄さんから緊急のお呼び出し。
午後の搬入には間に合うように帰ると言いながら出ていった。
俺は和臣さんを見送り、搬入前に掃除しておこうと新居にやってきた。というわけである。
契約前に清掃会社が入って掃除してくれたけれど、それから二週間程度経っている。軽く乾拭きしておこう。
契約直後に二人で見に来たとき、つまり一週間前。この部屋で和臣さんに抱かれて、そのときにも掃除したけど、なにか残ってたら嫌だし、チェックしておきたい。
まず玄関だな。ドアとか壁とかに押し付けられて……跡はないや。よかった。床にも何もない。
それから洗面所と風呂か。
水もお湯も出たから、シャワーを浴びたんだった。排水溝は大丈夫。
浴槽内でもやられたな。タオルとローションとゴムを隠し持ってきたってことは、あのとき、やるつもりで来たな、あの人。しれっとした顔していたくせにさぁ。
壁に押し付けられることが多いんだ。額や手もつくし、いろんな液体がほとばしってしまうので、壁を入念にチェック。
「ここを寝室にしようか」と言いながら、ベッドの位置と向きを検討するために二人で寝転がってそのままやられたんだった。
フローリングだと背中痛いのに。和臣さんも膝が痛そうだったな。自業自得だよ。
L字型キッチン。ここでも立ちバックでやられたし。
リビングは……あっ、そうだ。掃き出し窓に手をついたんだった。んで、バックで。
まだカーテンをつけていなくて、見られちゃうって言ったのに。全然ひとの話聞いてない。というかむしろ興奮してたわ。
まったく同じ事実を認識していても、俺と和臣さんは考えることが異なるという典型例。
八階だけど、周りもマンションだし、気になるって。あ、窓に指紋ついてる。拭いておこう……。はぁ。
リビングの隣に和室。ここを寝室にする案もあって、ここだと背中痛くないねって言われながらやられたわ。
終わったあとで、でも和室で寝るの苦手だからやっぱりあっちが寝室だねとか言っていた。やりたかっただけだな。
風を通しておこう。
窓を二箇所開けて、ベランダに出る。
見下ろすと、和臣さんが遠いところを歩いてきているのが見えた。通りすがりの若い女の子たちに二度見されてる。やめておいたほうがいいよ、危険人物。
歩きながら、和臣さんが顔を上げた。見下ろしている俺と目が合って、眩しそうに、嬉しそうに、ふにゃふにゃの笑顔で手を振ってくる。
「……………………仕方ないな」
俺は手を振り返した。
和臣さんはスキップし始めた。目立つよ。
〈新居に引っ越す話 終わり〉
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