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番外編21 和臣の妄想Ⅰ
一 大事な話
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和臣の妄想Ⅰ
※第一部第一章で、紗英とお見合いした和臣が、豊橋出張の多紀に会いに行かず、出張帰りの多紀にフツーに告白していたら…というifものです。
----------------------------
一
『タキくん、金曜日の夜、空いてる?』
「空いてます! メシ行きますか?」
『うん。ゆっくり話せる? 会って、大事な話をしたいんだ』
だいじ。
なんだろ。大事な話だなんて。
あっ、だいじって読むんじゃなくて、おおごと? まさかね。そんなわけないや。
先日交わしたカズ先輩とのメッセージを読み返しつつ、金曜日の夜、俺はカズ先輩の到着を待っている。
カズ先輩が予約しておいてくれた、和食の店。ここ、カズ先輩と初めて来て、天丼を食べた店だ。久しぶりだなー。ひとりでは敷居が高いんだ。
しばらく待っていると、カズ先輩が駆け足でやってきた。店の前に立っている俺に駆け寄ってくる。俺は腕時計をチラ見。待ち合わせ時間ぴったりだ。
「お疲れさまです!」
「お待たせ! ごめん、お疲れ様!」
「俺も今来たとこです!」
どこから走ってきたのか、カズ先輩は息を切らせている。
それにしても、カズ先輩ときたら息を切らせても美人。本日、デコ出し七三がめちゃめちゃ似合う。
持ち前の透き通るような色白と、整えた眉、くりっとした目の大きさと鼻の高さ、まつげ上下ばさばさ、輪郭はシャープで顎が細くて。スーツがよく似合って、なのに甘い雰囲気。きれいで、きらっきら。美しい男。
就職したときに量販店で買った俺のスーツよりも遥かに高そうな、清潔感のある紺のスーツ、白いワイシャツに青いネクタイ。黒の革靴、革ベルトがやわらかい印象の腕時計。
背がすごく高いし、首や手足は長いし伸びやかで、スタイルが黄金比みたいに絶妙。さらには難関私大卒、大手商社。高身長高学歴高収入。
うーん、今夜も決まってる。
上から下まで、隅々まで隙のない、完璧な美貌のビジネスマン。ついでに声も良い。低くて甘い。
こんなにも男として最高級のスペックなのに偉ぶったところが一切なくて話しやすい。
こんなひとが営業として会社にやってきたら、俺、なんでも契約しそう。
「今日、すんごいですね」
俺は思わず声に出してしまった。
カズ先輩は汗っぽくなった首元をきれいにアイロンをかけた紺のハンカチで押さえながら。
「え? なにか、変かな」
「変なんじゃなくて……すごく……重要な商談を任されてそうな、恐ろしいかっこよさで……」
カズ先輩は、なんだか緊張しているみたいな面持ち。
「……成功するかな、その商談」
「俺なら今すぐハンコ押しちゃいます」
カズ先輩は、俺の言葉にふふっと笑った。表情が固く強張っていたけど、雰囲気がゆるむ。昔と違ってカズ先輩はこういうふうに優しく笑う。
俺もつられて笑った。
※第一部第一章で、紗英とお見合いした和臣が、豊橋出張の多紀に会いに行かず、出張帰りの多紀にフツーに告白していたら…というifものです。
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一
『タキくん、金曜日の夜、空いてる?』
「空いてます! メシ行きますか?」
『うん。ゆっくり話せる? 会って、大事な話をしたいんだ』
だいじ。
なんだろ。大事な話だなんて。
あっ、だいじって読むんじゃなくて、おおごと? まさかね。そんなわけないや。
先日交わしたカズ先輩とのメッセージを読み返しつつ、金曜日の夜、俺はカズ先輩の到着を待っている。
カズ先輩が予約しておいてくれた、和食の店。ここ、カズ先輩と初めて来て、天丼を食べた店だ。久しぶりだなー。ひとりでは敷居が高いんだ。
しばらく待っていると、カズ先輩が駆け足でやってきた。店の前に立っている俺に駆け寄ってくる。俺は腕時計をチラ見。待ち合わせ時間ぴったりだ。
「お疲れさまです!」
「お待たせ! ごめん、お疲れ様!」
「俺も今来たとこです!」
どこから走ってきたのか、カズ先輩は息を切らせている。
それにしても、カズ先輩ときたら息を切らせても美人。本日、デコ出し七三がめちゃめちゃ似合う。
持ち前の透き通るような色白と、整えた眉、くりっとした目の大きさと鼻の高さ、まつげ上下ばさばさ、輪郭はシャープで顎が細くて。スーツがよく似合って、なのに甘い雰囲気。きれいで、きらっきら。美しい男。
就職したときに量販店で買った俺のスーツよりも遥かに高そうな、清潔感のある紺のスーツ、白いワイシャツに青いネクタイ。黒の革靴、革ベルトがやわらかい印象の腕時計。
背がすごく高いし、首や手足は長いし伸びやかで、スタイルが黄金比みたいに絶妙。さらには難関私大卒、大手商社。高身長高学歴高収入。
うーん、今夜も決まってる。
上から下まで、隅々まで隙のない、完璧な美貌のビジネスマン。ついでに声も良い。低くて甘い。
こんなにも男として最高級のスペックなのに偉ぶったところが一切なくて話しやすい。
こんなひとが営業として会社にやってきたら、俺、なんでも契約しそう。
「今日、すんごいですね」
俺は思わず声に出してしまった。
カズ先輩は汗っぽくなった首元をきれいにアイロンをかけた紺のハンカチで押さえながら。
「え? なにか、変かな」
「変なんじゃなくて……すごく……重要な商談を任されてそうな、恐ろしいかっこよさで……」
カズ先輩は、なんだか緊張しているみたいな面持ち。
「……成功するかな、その商談」
「俺なら今すぐハンコ押しちゃいます」
カズ先輩は、俺の言葉にふふっと笑った。表情が固く強張っていたけど、雰囲気がゆるむ。昔と違ってカズ先輩はこういうふうに優しく笑う。
俺もつられて笑った。
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