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第三章 オクトーバーフェスト、二次会
三 洗濯マウント
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「いっ」
テーブルの下で太ももをつねられた俺は痛みに思わず声をあげる。
となりの犯人を見ると、つよつよきらきらのイケ面が、何食わぬ顔をしている。
休日だから髪をおろしていて、少しワックスでまとめて、いつもよりさらに柔らかい雰囲気だ。太ももをつねった犯人のくせに、そんなことは微塵もしなさそう。
きらきらが飛んできてまぶしい。
はー。いったい何のつもりなんだろ。
俺は言った。
「すみません、ちょっと靴に石が入ってきて。あっ、そうだ。休日の過ごし方いきましょう! はい、俺から!」
話題を出したくせに、俺、休みの日、何してるっけ。
家事?
「家事してます! はい次、高岡主任!」
「僕も家事してます。得意です」
うわ、被せてきた。
全部勝ってる格下相手に大人げなくマウントをとってくる。一人暮らしで家事をしているのは確かだろうけど。
俺が家事といってもフーンだった女性の目の色が変わる。
高岡主任はさらに追加。
「料理は簡単なものなら一通りできます。洗濯が好きですね」
別のテーブルで聞き耳を立てていたらしき女性の「洗濯されたい」という合いの手が聞こえてきた。
洗濯されたいって何?
それから休日の過ごし方ではなく家事の程度が話題になっちゃって、てきとうに話をしていると、音楽が変わった。
女性がテーブルを立って、次のテーブルへ。話題が終わってよかった。
家事は話題としてだめだな。婚活イベントだから正解かと思ったものの、盛り上がって深堀りになっちゃう。
話しづらいひともいるだろうしね。家事ができればいいけど、できないのが悪というのは言い過ぎだし、相性によるよね、きっと。
この手のイベントはもっと軽めに、単なる出会いの場に徹したほうがよさそう。
今度は年上お姉様のぐいぐい系で、高岡主任をばっちり狙ってる。前のめりだ。
俺が話題を提供する必要はなさそう。助かった。
俺は無言で展開を傍観。
「高岡主任って完璧ですよね……いい旦那様になりそうです!!」
「完璧じゃないですよ。ずぼらです」
「華やかでスタイリッシュで家庭的でずぼら……素敵……!!」
ずぼらが素敵だと……?
高岡主任は苦笑。
「今でこそ見た目だけはそれっぽくがんばってますが、内面は地味ですよ」
そこに地味系技術部くん。
「入社直後は見た目も地味だったじゃんね。雰囲気は仲間意識だったのに」
「そうそう。なつかしいよね」
「当時はビン底眼鏡だったな~」
「技術応援いったらみんな眼鏡でね」
「いつの間にかひとりだけコンタクトに変えちゃって。大変身」
地味系技術部くん、そういや高岡主任と同期だ。俺と社シスくんの一個上。仲いいな。
と、社シスくん。
「えー、知らなかったですね。何か心境の変化でも?」
「そうだね……。異動先で色々失敗ばかりして……かっこつけたくって、自信が欲しくて、異動時代に頑張ったんだ」
「やだ逆に可愛い~」
女性たちの黄色い声。
高岡主任は何をいってもウケるな。逆の意味がさっぱりわからないわ。
それからも俺は様子をみたり、音楽が変わり、女性は席交代。適度に話題のテーマを提供しつつ。
他のテーブルの男性陣が気になるから、様子をうかがうべく席を立ちたいのに、隣の高岡主任がテーブル下で太ももを掴んできて立たせまいとしてくる。
かといって、俺が女性から声を掛けられると急に話に割り込んできて、あの手この手で話題をかっさらっていく。
攻防。嫌がらせ確定。
それもそっか。
俺は高岡主任に、恨まれてる。
付き合っていた頃、高岡主任は、俺のことがそれなりに好きだったらしい。
俺から振るかたちで別れたのを根に持っているとみられる。許せないって言ってたし。
だから、俺が婚活なんかしてさっさと誰かと付き合うと腹が立つんだろうな。
俺は高岡主任のことを、性格がいいひとだと思ってた。でも少しは人間くさいところがあるみたいだ。
高岡主任を見る。
高岡主任は、女性から結川に対する何度目かの質問を勝手に捌いた後、俺の視線に気づいて、得意そうに微笑んでいる。
そんな妨害工作、しなくても大丈夫だよ。
俺は過去の責任をとって、高岡主任が誰かと幸せになるのを見届けるつもり。
俺が俺の幸せを求めて誰かと付き合ったりするのはそれからにするんだ。
テーブルの下で太ももをつねられた俺は痛みに思わず声をあげる。
となりの犯人を見ると、つよつよきらきらのイケ面が、何食わぬ顔をしている。
休日だから髪をおろしていて、少しワックスでまとめて、いつもよりさらに柔らかい雰囲気だ。太ももをつねった犯人のくせに、そんなことは微塵もしなさそう。
きらきらが飛んできてまぶしい。
はー。いったい何のつもりなんだろ。
俺は言った。
「すみません、ちょっと靴に石が入ってきて。あっ、そうだ。休日の過ごし方いきましょう! はい、俺から!」
話題を出したくせに、俺、休みの日、何してるっけ。
家事?
「家事してます! はい次、高岡主任!」
「僕も家事してます。得意です」
うわ、被せてきた。
全部勝ってる格下相手に大人げなくマウントをとってくる。一人暮らしで家事をしているのは確かだろうけど。
俺が家事といってもフーンだった女性の目の色が変わる。
高岡主任はさらに追加。
「料理は簡単なものなら一通りできます。洗濯が好きですね」
別のテーブルで聞き耳を立てていたらしき女性の「洗濯されたい」という合いの手が聞こえてきた。
洗濯されたいって何?
それから休日の過ごし方ではなく家事の程度が話題になっちゃって、てきとうに話をしていると、音楽が変わった。
女性がテーブルを立って、次のテーブルへ。話題が終わってよかった。
家事は話題としてだめだな。婚活イベントだから正解かと思ったものの、盛り上がって深堀りになっちゃう。
話しづらいひともいるだろうしね。家事ができればいいけど、できないのが悪というのは言い過ぎだし、相性によるよね、きっと。
この手のイベントはもっと軽めに、単なる出会いの場に徹したほうがよさそう。
今度は年上お姉様のぐいぐい系で、高岡主任をばっちり狙ってる。前のめりだ。
俺が話題を提供する必要はなさそう。助かった。
俺は無言で展開を傍観。
「高岡主任って完璧ですよね……いい旦那様になりそうです!!」
「完璧じゃないですよ。ずぼらです」
「華やかでスタイリッシュで家庭的でずぼら……素敵……!!」
ずぼらが素敵だと……?
高岡主任は苦笑。
「今でこそ見た目だけはそれっぽくがんばってますが、内面は地味ですよ」
そこに地味系技術部くん。
「入社直後は見た目も地味だったじゃんね。雰囲気は仲間意識だったのに」
「そうそう。なつかしいよね」
「当時はビン底眼鏡だったな~」
「技術応援いったらみんな眼鏡でね」
「いつの間にかひとりだけコンタクトに変えちゃって。大変身」
地味系技術部くん、そういや高岡主任と同期だ。俺と社シスくんの一個上。仲いいな。
と、社シスくん。
「えー、知らなかったですね。何か心境の変化でも?」
「そうだね……。異動先で色々失敗ばかりして……かっこつけたくって、自信が欲しくて、異動時代に頑張ったんだ」
「やだ逆に可愛い~」
女性たちの黄色い声。
高岡主任は何をいってもウケるな。逆の意味がさっぱりわからないわ。
それからも俺は様子をみたり、音楽が変わり、女性は席交代。適度に話題のテーマを提供しつつ。
他のテーブルの男性陣が気になるから、様子をうかがうべく席を立ちたいのに、隣の高岡主任がテーブル下で太ももを掴んできて立たせまいとしてくる。
かといって、俺が女性から声を掛けられると急に話に割り込んできて、あの手この手で話題をかっさらっていく。
攻防。嫌がらせ確定。
それもそっか。
俺は高岡主任に、恨まれてる。
付き合っていた頃、高岡主任は、俺のことがそれなりに好きだったらしい。
俺から振るかたちで別れたのを根に持っているとみられる。許せないって言ってたし。
だから、俺が婚活なんかしてさっさと誰かと付き合うと腹が立つんだろうな。
俺は高岡主任のことを、性格がいいひとだと思ってた。でも少しは人間くさいところがあるみたいだ。
高岡主任を見る。
高岡主任は、女性から結川に対する何度目かの質問を勝手に捌いた後、俺の視線に気づいて、得意そうに微笑んでいる。
そんな妨害工作、しなくても大丈夫だよ。
俺は過去の責任をとって、高岡主任が誰かと幸せになるのを見届けるつもり。
俺が俺の幸せを求めて誰かと付き合ったりするのはそれからにするんだ。
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