元カレが社内で迫ってくる

みつきみつか

文字の大きさ
51 / 56
番外編 ピロートーク(修視点)7話

四 五十回(※)

しおりを挟む
 夜、午後七時半。
 退社予定時刻の前倒しに成功した。緊張はピークに達している。心臓はバクバクだ。
 素知らぬ顔で徹平くんの日報をチェックし、外回りしていた徹平くんの一日の行動日記だと思うとなぜか勃起してしまい、営業所のトイレで一度抜くなどしてしまった。
 落ち着け、僕。
 営業所を施錠し、ふたり一緒に出て、車で僕のアパートに向かう。途中の店で予約していた弁当を二人分買い、アパートの部屋に入った。

「お邪魔しまーす」

 と革靴を脱いで揃える徹平くんの振り返りざまに抱き寄せて、五十回目のキスをした。ずっとキスしたかったからだ。
 キスの回数を数えている自分はだいぶおかしい。百回を超えたら数えるのはやめようかなと思っている。
 徹平くんの唇は少し厚くて、食むと柔らかくて夢中になってしまう。
 徹平くんに少しずつ踏み込んでいる。そんな気がする。抗いようもなくもつれ合う。好きなひととキスをすると、そこから先は全自動のようだと思う。
 体温が上がる。
 徹平くんに触れるよろこびに満たされていく。

「んん……」

 目を閉じて、眉を寄せて唇を食べられている徹平くんがあまりにも可愛い。
 スーツの上着をするりと脱ぎ捨て、ワイシャツごしに抱き合うとあたたかくて、異常なほどいいにおいがする。
 お互いに仕事終わりで汗をかいているはずなのに、自分はさておき、徹平くんはちっとも嫌なにおいがしない。
 むしろいいにおいがする。ずっと嗅いでいたい。もっと濃いにおいを探してしまいたい。

「修さん、俺、おかしくて……」
「ん?」
「その、まだ、ちゃんと、その、役割とか話してないのに、なんていうか、俺、修さんに、抱かれたくて……へんですかねぇ」
「……抱きたいから、大丈夫」

 まったく疑う余地なく抱くつもりだった。
 徹平くんは目を泳がせて、手で胸を押さえている。

「今日、ずっとドキドキしてました」
「……僕もだよ」

 たまらずキスをして、舌を絡ませた。
 食事が後回しになるには理由として十分だった。シャワーを浴びるだけの分別を持ち合わせていることが不思議だった。
 僕が先に浴びて、一応部屋着になって、ベッドで徹平くんを待つ。風呂から出てきた徹平くんはきちんと部屋着を着ていた。
 おいでと引き寄せて、ベッドに横たわる。キスをした。五十二回目。
 徹平くんはかなり緊張しているらしく、肩が強張っている。僕もだよ。本当に。

「先にごはん食べよっか? い、急がないから、ゆっくりしよう。疲れてるなら寝てもいいよ」

 ぜんぶ嘘っぱちである。
 ごはんは後回しにしたい。すごく急いでる。ゆっくりなんて無理。疲れているかもしれないけど、今夜、平和に寝る選択肢はない。
 絶対に抱く。下半身はすでに臨戦態勢だ。腰が熱い。動かしたくてたまらない。
 しかし、焦っていると知られるのはまずい。一度抜いただけあって、多少取り繕う余裕はある。
 いや、取り繕えている自信はない。たぶん、徹平くんにはバレバレの、ものすごい視線で徹平くんを見ている。
 落ち着け、僕。
 なんとか目をそらした。いや、そらすしかなかった。

「どうする? どっちでも、ぜんぜん」

 どっちでもはぜんぜんよくない。

「いえ、大丈夫です! やっぱり、その、少し、は、恥ずかしいだけで、修さんに抱かれると思うと、でも、あの、つ、続けたい、ですっ!」

 心の底から安堵する。
 と同時に、肉欲に支配されていく。僕もすごく続けたい。

「触ってもいい?」
「……はい」

 胸の突起を手のひらでやんわり刺激すると、徹平くんも同じようにしてくる。徹平くんは耳まで真っ赤で、涙目になって可愛かった。
 キスをしながら胸を強めに揉み、尖ってきた乳首を手のひらですりすりと布越しにこすっていると、徹平くんの股間が膨らんでいると気づいたので、乳首を指と指ではさんで軽くつねる。

「あっ……修さん」
「うん」

 もちろん、優しくした。尖りの両側から挟むようにして、くりくりと指で弄んでいると、徹平くんの腰がはねる。前回もこれを悦んでいたから、もう一度その表情が見たかった。徹平くんはこれが好き。
 徹平くんは、僕にされたことを自分もするようになるので、僕の乳首を同じようにしてきて、同じ感覚を味わう。くすぐったいな。
 持ち上がっている部屋着の股間は、先端に染みを作り、かたちがはっきりとしている。下着すらも染みていた。

「脱がせていい?」
「修さんも……」
「徹平くんが脱がせて」

 あっという間に下着だけになって、肌を合わせて、キスをしながら乳首を擦りあった。
 そうしていると、途端に性器を擦り合いたくなる。徹平くんを抱きしめた。あたたかい。徹平くんも僕の背中に腕を回してくる。
 当然、下着越しに、濡れた性器を押しつけることになる。

「修さん、かたい」
「はぁ、徹平くんも」
「っ、は、すご」

 痛いほど勃起した性器を、体ごと揺さぶるように夢中でこすった。
 胸を合わせるとお互いの乳首もこすれて、徹平くんは真っ赤になり、瞳をうるませ、興奮している。

「っ、っ、ん、んんっ」

 徹平くんに、修さん、と呼ばれて我に返った。ごめんなさい、というので何かと思ったら、徹平くんは、下着の中で射精している。
 僕は耐えている。一度抜いたのがよかった。抜いていなかったらおそらく耐えられなかった。

「っ、修さんが、発情してるって思ったら、我慢できなくて、ごめんなさい……」

 あまりのかわいさに、たまらなくなって何度も口付けて、徹平くんの舌をつかまえて、あつい口内を、やりたいように蹂躙する。
 五十何回目かわからなくなった。こういうのもキスなのだろうか。キスなのは違いないのだが、セックスだと思う。
 徹平くんとセックスしている。
 落ち着け、僕。

「徹平くん……!」
「修さん、俺……おかしくなりそう」

 とろん、とした徹平くんのまなじりに浮かぶ涙を舌ですくいとると、自分のなかで何かが弾けた。
 早く犯したい。
 まだセックスじゃない。少しは踏み込んでいるけれど、性器でつながりたい。
 徹平くんの体内に、興奮して腹につきそうなほどいきりたつこれを挿れて、貫いたら、徹平くんの初めてを奪うことができる。
 早く、徹平くんを自分のものにしたい。
 誰もいれたことのない領域でセックスされたときの徹平くんの表情を、この目に焼き付けたい。

しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

【本編完結】才色兼備の幼馴染♂に振り回されるくらいなら、いっそ赤い糸で縛って欲しい。

誉コウ
BL
才色兼備で『氷の王子』と呼ばれる幼なじみ、藍と俺は気づけばいつも一緒にいた。 その関係が当たり前すぎて、壊れるなんて思ってなかった——藍が「彼女作ってもいい?」なんて言い出すまでは。 胸の奥がざわつき、藍が他の誰かに取られる想像だけで苦しくなる。 それでも「友達」のままでいられるならと思っていたのに、藍の言葉に行動に振り回されていく。 運命の赤い糸が見えていれば、この関係を紐解けるのに。

一軍男子と兄弟になりました

しょうがやき
BL
親の再婚で一軍男子と兄弟になった、平凡男子の話。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

嫌われ魔術師の俺は元夫への恋心を消去する

SKYTRICK
BL
旧題:恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する ☆11/28完結しました。 ☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます! 冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫 ——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」 元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。 ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。 その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。 ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、 ——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」 噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。 誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。 しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。 サラが未だにロイを愛しているという事実だ。 仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——…… ☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

分厚いメガネ令息の非日常

餅粉
BL
「こいつは俺の女だ。手を出したらどうなるかわかるよな」 「シノ様……素敵!」 おかしい。おかしすぎる!恥ずかしくないのか?高位貴族が平民の女学生に俺の女ってしかもお前は婚約者いるだろうが!! その女学生の周りにはお慕いしているであろう貴族数名が立っていた。 「ジュリーが一番素敵だよ」 「そうだよ!ジュリーが一番可愛いし美人だし素敵だよ!!」 「……うん。ジュリーの方が…素敵」 ほんと何この状況、怖い!怖いすぎるぞ!あと妙にキモい 「先輩、私もおかしいと思います」 「だよな!」 これは真面目に学生生活を送ろうとする俺の日常のお話

「これからも応援してます」と言おう思ったら誘拐された

あまさき
BL
国民的アイドル×リアコファン社会人 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 学生時代からずっと大好きな国民的アイドルのシャロンくん。デビューから一度たりともファンと直接交流してこなかった彼が、初めて握手会を開くことになったらしい。一名様限定の激レアチケットを手に入れてしまった僕は、感動の対面に胸を躍らせていると… 「あぁ、ずっと会いたかった俺の天使」 気付けば、僕の世界は180°変わってしまっていた。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 初めましてです。お手柔らかにお願いします。

処理中です...