元カレが社内で迫ってくる

みつきみつか

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番外編 ピロートーク(修視点)7話

七* 不慣れ

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「ん……修さん?」
「ん?」

 一瞬、どこにいるのかわからなかった。
 目を開けると自分のマンションの部屋で、ベッドでふたり抱き合っている。どうやら少し寝ていたみたいだ。
 徹平くんは、眠たげに目をしょぼしょぼさせつつ、僕を見つめている。

「どうしました?」
「んと、徹平くんとの、むかしのこと思い出してた」

 そうだ、初めてのときのことを思い返していたんだ。
 島根で徹平くんと付き合っていた、あのふたりだけの世界がなつかしい……。
 付き合いはじめて、毎日一緒に過ごして、いろんな場所でデートして、食事も楽しんで……。
 ずっと光の中にいたような、たった三ヶ月の出来事。
 あのとき僕は、好きな人と恋人になるという幸せのすべてを味わった。
 別れてからの台北は抜け殻だった。
 あの頃、仕事があってよかったな。新天地にはやることが山積みで、おかげさまで、何も考えずに済んだ。
 仕事に邁進していたら、感情がどんどん鈍くなり、徹平くんといた鮮やかな世界は遠くなって、視界に映るものすべてがモノクロのように思えたのだった。
 食事は餌、休日は寝るだけ。あの単調な時間が、ドン底の僕を助けてくれた。
 だけど。
 本社に戻ると決まり、三年ぶりに徹平くんの配属先を恐る恐る調べ、「結川徹平 本社(管理部総務課労務チーム)」になっているのを見て、なんだかわけのわからない感情が溢れて、泣いてしまった。
 大好きだった。
 別れたくなかったよ。徹平くんを大切にしていたはずなのに、僕はいったい、どの時点で、何を間違えてしまったんだろう。
 僕にとって、ほんの少し触れるだけで泣けてしまうほど、大切で幸せだったあの眩しい日々が、徹平くんにとってはなかったことでも大丈夫と断言できる程度の価値しかなかったという現実は、三年という年月をかけても、到底受け入れられなかった。
 誤解でよかったなぁ……。
 三年ぶりに再会して、紆余曲折の末、徹平くんとよりを戻せた。いろいろとショックだったな。望んでもいない婚活をさせられたりさ。
 でも、切り替えが早いはずの徹平くんも、別れた直後の異動先で落ち込んでいたらしいと知れた。
 二度と離さないように徹平くんの手を握る。
 相変わらずかわいいな……。
 徹平くん。
 まつげ長いね。イタチに似てるけど、イタチより百倍かわいい。髪がさらさらでくすぐったい。いいにおい。

「むかしのこと? どんなですか?」
「初めてしたときのことだよ」
「……修さんのえっち」
「徹平くんが言ったんだもん。あのときの徹平くんもかわいくて……すごくよかった」

 三年前の情事の子細をまざまざと思い出してしまい、結果、半勃ちになっている。
 当時、初めてのセックスで、お互いに相性抜群だとわかり、若かったのも手伝って何度も求めあった。
 たしかに、三回泊まった。僕の部屋二回、徹平くんの部屋一回。
 金曜の夜から日曜日の夕方ぐらいまで一緒にいて、盛りのついた猿のようにやりまくったのだ。本当に気持ちよくて、股間が溶けるかと思った。
 僕の数え方は……自分は十八回だと思っている。もう出ないというほど出した。

「初めてのときかぁ。とにかく無我夢中で……」

 徹平くんのほうは二泊三日を一回と数えているらしい。
 細かい部分は記憶していないのだろうか。
 そんなことある?
 細かくなくない?
 あんなにやりまくったんだよ??
 自分は淡泊だと思っていたのに、絶倫じゃないかと認識をあらためたほど、ほとんどの時間を全裸で過ごしたんだよ??
 僕たち、ずっとつながってたよね??

「まだ不慣れですけど、修さんとするの気持ちいいので……これからも、たくさんしたいです」

 徹平くんは恥ずかしそうに頬を染めて言う。
 うん。
 僕としては、徹平くんとすでにたくさんしているつもりなのだけど、徹平くんは、不慣れでまだたくさんではないという認識なのだろうか。
 もしそうなら……。
 不慣れではなくなったとき、たくさんするとして、いまよりさらにたくさんするのかな。
 それは幸せなことなんだけど。
 僕、からだ保つのかな。

「うん。しようね」
「はいっ! 修さん大好き!」
「僕も。徹平くん大好き」

 うう、かわいすぎる。三回でも十八回でもなんでもいいや。僕の恋人が、こんなにかわいいんだもん。
 ぎゅっと手を繋いで、明かりを消してキスをして、おやすみ。また明日。
 よし、徹平くんの無尽蔵体力に負けないように、頑張って鍛えよう……。




<ピロートーク(修視点) 終わり>


 お読みいただきありがとうございました。
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