54 / 56
番外編 ピロートーク(修視点)7話
七* 不慣れ
しおりを挟む
「ん……修さん?」
「ん?」
一瞬、どこにいるのかわからなかった。
目を開けると自分のマンションの部屋で、ベッドでふたり抱き合っている。どうやら少し寝ていたみたいだ。
徹平くんは、眠たげに目をしょぼしょぼさせつつ、僕を見つめている。
「どうしました?」
「んと、徹平くんとの、むかしのこと思い出してた」
そうだ、初めてのときのことを思い返していたんだ。
島根で徹平くんと付き合っていた、あのふたりだけの世界がなつかしい……。
付き合いはじめて、毎日一緒に過ごして、いろんな場所でデートして、食事も楽しんで……。
ずっと光の中にいたような、たった三ヶ月の出来事。
あのとき僕は、好きな人と恋人になるという幸せのすべてを味わった。
別れてからの台北は抜け殻だった。
あの頃、仕事があってよかったな。新天地にはやることが山積みで、おかげさまで、何も考えずに済んだ。
仕事に邁進していたら、感情がどんどん鈍くなり、徹平くんといた鮮やかな世界は遠くなって、視界に映るものすべてがモノクロのように思えたのだった。
食事は餌、休日は寝るだけ。あの単調な時間が、ドン底の僕を助けてくれた。
だけど。
本社に戻ると決まり、三年ぶりに徹平くんの配属先を恐る恐る調べ、「結川徹平 本社(管理部総務課労務チーム)」になっているのを見て、なんだかわけのわからない感情が溢れて、泣いてしまった。
大好きだった。
別れたくなかったよ。徹平くんを大切にしていたはずなのに、僕はいったい、どの時点で、何を間違えてしまったんだろう。
僕にとって、ほんの少し触れるだけで泣けてしまうほど、大切で幸せだったあの眩しい日々が、徹平くんにとってはなかったことでも大丈夫と断言できる程度の価値しかなかったという現実は、三年という年月をかけても、到底受け入れられなかった。
誤解でよかったなぁ……。
三年ぶりに再会して、紆余曲折の末、徹平くんとよりを戻せた。いろいろとショックだったな。望んでもいない婚活をさせられたりさ。
でも、切り替えが早いはずの徹平くんも、別れた直後の異動先で落ち込んでいたらしいと知れた。
二度と離さないように徹平くんの手を握る。
相変わらずかわいいな……。
徹平くん。
まつげ長いね。イタチに似てるけど、イタチより百倍かわいい。髪がさらさらでくすぐったい。いいにおい。
「むかしのこと? どんなですか?」
「初めてしたときのことだよ」
「……修さんのえっち」
「徹平くんが言ったんだもん。あのときの徹平くんもかわいくて……すごくよかった」
三年前の情事の子細をまざまざと思い出してしまい、結果、半勃ちになっている。
当時、初めてのセックスで、お互いに相性抜群だとわかり、若かったのも手伝って何度も求めあった。
たしかに、三回泊まった。僕の部屋二回、徹平くんの部屋一回。
金曜の夜から日曜日の夕方ぐらいまで一緒にいて、盛りのついた猿のようにやりまくったのだ。本当に気持ちよくて、股間が溶けるかと思った。
僕の数え方は……自分は十八回だと思っている。もう出ないというほど出した。
「初めてのときかぁ。とにかく無我夢中で……」
徹平くんのほうは二泊三日を一回と数えているらしい。
細かい部分は記憶していないのだろうか。
そんなことある?
細かくなくない?
あんなにやりまくったんだよ??
自分は淡泊だと思っていたのに、絶倫じゃないかと認識をあらためたほど、ほとんどの時間を全裸で過ごしたんだよ??
僕たち、ずっとつながってたよね??
「まだ不慣れですけど、修さんとするの気持ちいいので……これからも、たくさんしたいです」
徹平くんは恥ずかしそうに頬を染めて言う。
うん。
僕としては、徹平くんとすでにたくさんしているつもりなのだけど、徹平くんは、不慣れでまだたくさんではないという認識なのだろうか。
もしそうなら……。
不慣れではなくなったとき、たくさんするとして、いまよりさらにたくさんするのかな。
それは幸せなことなんだけど。
僕、からだ保つのかな。
「うん。しようね」
「はいっ! 修さん大好き!」
「僕も。徹平くん大好き」
うう、かわいすぎる。三回でも十八回でもなんでもいいや。僕の恋人が、こんなにかわいいんだもん。
ぎゅっと手を繋いで、明かりを消してキスをして、おやすみ。また明日。
よし、徹平くんの無尽蔵体力に負けないように、頑張って鍛えよう……。
<ピロートーク(修視点) 終わり>
お読みいただきありがとうございました。
「ん?」
一瞬、どこにいるのかわからなかった。
目を開けると自分のマンションの部屋で、ベッドでふたり抱き合っている。どうやら少し寝ていたみたいだ。
徹平くんは、眠たげに目をしょぼしょぼさせつつ、僕を見つめている。
「どうしました?」
「んと、徹平くんとの、むかしのこと思い出してた」
そうだ、初めてのときのことを思い返していたんだ。
島根で徹平くんと付き合っていた、あのふたりだけの世界がなつかしい……。
付き合いはじめて、毎日一緒に過ごして、いろんな場所でデートして、食事も楽しんで……。
ずっと光の中にいたような、たった三ヶ月の出来事。
あのとき僕は、好きな人と恋人になるという幸せのすべてを味わった。
別れてからの台北は抜け殻だった。
あの頃、仕事があってよかったな。新天地にはやることが山積みで、おかげさまで、何も考えずに済んだ。
仕事に邁進していたら、感情がどんどん鈍くなり、徹平くんといた鮮やかな世界は遠くなって、視界に映るものすべてがモノクロのように思えたのだった。
食事は餌、休日は寝るだけ。あの単調な時間が、ドン底の僕を助けてくれた。
だけど。
本社に戻ると決まり、三年ぶりに徹平くんの配属先を恐る恐る調べ、「結川徹平 本社(管理部総務課労務チーム)」になっているのを見て、なんだかわけのわからない感情が溢れて、泣いてしまった。
大好きだった。
別れたくなかったよ。徹平くんを大切にしていたはずなのに、僕はいったい、どの時点で、何を間違えてしまったんだろう。
僕にとって、ほんの少し触れるだけで泣けてしまうほど、大切で幸せだったあの眩しい日々が、徹平くんにとってはなかったことでも大丈夫と断言できる程度の価値しかなかったという現実は、三年という年月をかけても、到底受け入れられなかった。
誤解でよかったなぁ……。
三年ぶりに再会して、紆余曲折の末、徹平くんとよりを戻せた。いろいろとショックだったな。望んでもいない婚活をさせられたりさ。
でも、切り替えが早いはずの徹平くんも、別れた直後の異動先で落ち込んでいたらしいと知れた。
二度と離さないように徹平くんの手を握る。
相変わらずかわいいな……。
徹平くん。
まつげ長いね。イタチに似てるけど、イタチより百倍かわいい。髪がさらさらでくすぐったい。いいにおい。
「むかしのこと? どんなですか?」
「初めてしたときのことだよ」
「……修さんのえっち」
「徹平くんが言ったんだもん。あのときの徹平くんもかわいくて……すごくよかった」
三年前の情事の子細をまざまざと思い出してしまい、結果、半勃ちになっている。
当時、初めてのセックスで、お互いに相性抜群だとわかり、若かったのも手伝って何度も求めあった。
たしかに、三回泊まった。僕の部屋二回、徹平くんの部屋一回。
金曜の夜から日曜日の夕方ぐらいまで一緒にいて、盛りのついた猿のようにやりまくったのだ。本当に気持ちよくて、股間が溶けるかと思った。
僕の数え方は……自分は十八回だと思っている。もう出ないというほど出した。
「初めてのときかぁ。とにかく無我夢中で……」
徹平くんのほうは二泊三日を一回と数えているらしい。
細かい部分は記憶していないのだろうか。
そんなことある?
細かくなくない?
あんなにやりまくったんだよ??
自分は淡泊だと思っていたのに、絶倫じゃないかと認識をあらためたほど、ほとんどの時間を全裸で過ごしたんだよ??
僕たち、ずっとつながってたよね??
「まだ不慣れですけど、修さんとするの気持ちいいので……これからも、たくさんしたいです」
徹平くんは恥ずかしそうに頬を染めて言う。
うん。
僕としては、徹平くんとすでにたくさんしているつもりなのだけど、徹平くんは、不慣れでまだたくさんではないという認識なのだろうか。
もしそうなら……。
不慣れではなくなったとき、たくさんするとして、いまよりさらにたくさんするのかな。
それは幸せなことなんだけど。
僕、からだ保つのかな。
「うん。しようね」
「はいっ! 修さん大好き!」
「僕も。徹平くん大好き」
うう、かわいすぎる。三回でも十八回でもなんでもいいや。僕の恋人が、こんなにかわいいんだもん。
ぎゅっと手を繋いで、明かりを消してキスをして、おやすみ。また明日。
よし、徹平くんの無尽蔵体力に負けないように、頑張って鍛えよう……。
<ピロートーク(修視点) 終わり>
お読みいただきありがとうございました。
689
あなたにおすすめの小説
魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由
スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。
これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。
無自覚両片想いの勇者×親友。
読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる