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そのきゅう

そのきゅう-6

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違うよ。

みのりさんはなにも悪くないんだよ。

全部俺が悪いんだよ。

だから。

「泣かないで…」

尊の小さな声。

あたしを抱く手が震えていて。

泣いてる。

て、思った。

尊は、小さな声で、話し始める。

俺はホントは、みのりさんが思ってるような優しい人間なんかじゃないよ。

俺のせいで借金作って消えた女なんて、リカの姉貴以外にも、他にもいるよ。

店に来なくなって、連絡取れなくなるのの、半分くらいはそんなのが理由。

でも、俺の仕事は金遣わせる事だから。女騙してる、って言われても、俺にはどって事無い。

消えたヤツにも俺は興味無い。

俺はそんなヤツなんだよ。

みのりさんに言えないような、汚い事もいっぱい、してる。

だから、みのりさんにだけはホントの俺、知られたくなかったんだ。

みのりさんといると、自分が良い人間でいられる様な気がして。

ずっと、そう思ってたかった。

でも俺、ロクなヤツじゃないから。

「みのりさんみたいな人、好きになって良いようなヤツじゃなかったんだよ」

なに、言ってるん。尊。

「俺みたいなヤツが、みのりさんと一緒にいちゃ、いけなかったんだよ」

どうしたん、尊?

「俺、汚い事してる分、敵になるヤツもいっぱい、いるから」

尊?

「みのりさんを好きになった時、何があっても、絶対みのりさんだけは守ろう、って決めたのに……」

言ってる事が。

「…守ってあげられなかった」

よく。

「俺が一緒にいたら、みのりさんが傷付くと思うから」

わかんない。

「俺、みのりさんの事、大好きだから。みのりさんには、いつも幸せでいて欲しいから」

尊?

「だから」

凄く辛そうな、声で。

「みのりさん…」

凄く苦しそうな、声で。

「別れよう…」

凄く悲しそうな、声で。

尊が。

言った。

どうして。

「リカは男使って、俺の客に絡んだり嫌がらせしてたけど」

なんで。

「みのりさんの事知ったら」

なんでよ。

「いつか、みのりさんになんかしてくると思ってた」

なんなんよ。

「また、こんな事、あるかも知れない」

だから。

「みのりさんは、俺の傍にいちゃいけない」

なに。

「みのりさんは、俺みたいなヤツに関わっちゃいけない」

言っとんじゃ!

「みのりさんに幸せでいて欲しいんだ。ホントは」

オノレは!!

「俺が、そうしてあげたかったけど…」

この。

「俺なんか、忘れてしまって。アイツと、桂木のヤロウと…」

大バカものっ!!

「幸せに…なって」

「た…」

「みのりさんが幸せでいてくれるなら。俺には、それだけで良い」

「た…けるが」

オマエが!!

肩がぷるぷる震える。

怒りで。

「あたしを…守るから、って…」

「…みのりさん」

「何があっても俺が守るからって…」

涙、出てくる。怒りで。

「たけるがっ…最初に言ったやんかっ」

「…でも、俺、出来なかった…」

この。

ばかやろおおおおおお!!

「じゃあ次からはちゃんと守ってよっ!!」

一回の失敗でメゲるんかっ、オマエは!!

「みのりさんっ…」

「今度からはちゃんと守ってよっ!!」

尊があたしの涙を、手で拭う。

「俺で…いいの…?」

顔を上げて尊の眼を見た。

半分、泣いてる、尊。

「…いや…だ」

「みのりさん…」

ため息つく尊。

「尊やないと嫌だっ!!」

尊の瞳が、真ん丸なった。

「みのりさん…」

あたしの眼を見つめながら。

「俺みたいなので…」

尊は尊やん!

「俺の傍に…」

どんな尊でも。

「いてくれるの…?」

だって。

「俺と一緒に…」

だって。

「いてくれるの…?」

だって!

尊が。

「尊が好きなんやもんっ!!」

「……」

ほっぺた撫でてた手が止まって。

尊が固まった。

なに、固まっとんじゃ!

大事なとこで!!

でも。

固まり過ぎかも。

おい?

だいじょぶか?

尊のほっぺたを、つんつんしてみた。

「あ……」

まだ生きてた。

「……どしたん」

「びっくりした…」

なんで。

「みのりさんが…」

あたしが?

「俺の事…好き、って」

うん。

「初めて言ってくれた…」

「……は?」

いつも言ってますけど!?

「だって、みのりさん」

「………」

「いつも俺が聞かないと、言ってくれないのに」

そ。そうだっけ?

「尊が好き、って…」

尊の瞳がお星さまみたいに。

キラキラして。

凄く嬉しそうに。

子供みたいに、笑った。

あたしが。

一番好きな顔。

身体、横向きに抱き合ってたのに。

あたしを押し倒して。

「みのりさん」

尊が上なって。

「セックスしよっ!」

にっこり笑った。

………って。

「いや、したやん」

マジで嫌になるほど。

「あんなの。セックスじゃない」

「………」

「やっぱりセックスには愛がないとね!」

あたしのほっぺたにキスする。

確かに。

あれは、愛、じゃない。

「だから。みのりさん」

「なに」

「セックスしよ!」

セックス。

て。

連呼すんじゃねえっ!!

「ね。みのりさん…」

「ふぁ…ん…」

首筋に触れる、尊の唇。

「…いっぱい、愛してあげるから…」

「ぁんっ…」

耳元で、息を吹きかけながら囁く。

両手に絡まる尊の指。

尊の手が動いて。

尊の片手に纏められる、あたしの手首。

「んっ…ふぅ…」

首筋を這う舌。

それはいつの間にか、あたしの唇に。

唇が重なれば、舌は唇を割ってあたしの中に。

尊に求められたら、あたしも同じように。

求める。

絡み合って。

確かめ合う。

尊のキスはあたしを。

潤ませる。

頭がぼんやりして。

尊の事しか。

考えられなくなる。

唇が離れて、薄く眼を開けば。

「みのりさん…可愛い」

あたしを見つめながら、少し息をつく、尊。

もう一度、唇を落とす。

今度は。

さっきよりも長く。

カチャカチャと金属の擦れる音。

………。

ん?

この音、なに?

手首に触れる冷たい感触。

ま。

まさか。

「んっ!んーーっ!!」

あたしを離さない尊の唇。

あたしの自由は。

奪われ。

てめえ。

手を動かせば、金属音。

一体、どこに。

隠してやがった!?

このやろおおおおおおお!!

く。

くそぅ。

完全に油断した。

微笑みながら、あたしを見下ろす、尊。

「あんっ!」

指がそこの割れ目をなぞる。

「どうしていつも…」

片手であたしの頭を撫でる。

「キスだけでこんなになっちゃうのかな」

微笑みながらあたし嘲る。

「イヤラシイ身体だよね。みのりさん?」

あたしの羞恥を刺激する。

「動けなくされるの、好き?」

んなワケないやろっ!!

「ちが…」

「だって。濡れてるよ?なんでなの?」

「あ…っん」

胸責められて声が漏れる。

「みのりさん…?」

尊の手が止まる。

「こっち向いて、眼、開けて」

眼を開ける。

「俺を見て…」

尊の眼を見る。

あたしを苛める顔じゃなくて。

少し。

不安そうな、顔。

なんで、そんな顔。

してるん。

あたしに顔、近付けて。

「もういっかい、言って…」

小さい声で言う。

「…なにを?」

なに、言わせる気だ。

このやろう。

「…さっきの」

「さっきの、って?」

さっきの。

尊の手がほっぺた撫でる。

「言って…?」

なにを。

「………」

あたしを、見つめる尊。

ああ。

なんだ。

さっきの。ね。 

「みのりさん…」

ばかたける。

なんで急に。

不安になるんよ?

少し、笑いそうになった。

「好き」

「もっかい。言って」

「尊が…好き」

尊があたしを抱き締める。

「みのりさん。好き」

うん。

わかった。

わかったから。

「尊…」

「うん?」

「大好きだから」

「うん」

「コレ。外してよ」

手首をガチャガチャ。

「ふふ…」

あう。

不穏なホホエミ。

あたしのおでこにキスしながら。

「終わるまで、ダメ」

て、言った。

………………………ドS全開。

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