上 下
98 / 159
そのじゅうよん

そのじゅうよん-4

しおりを挟む
鐘が鳴る。

ホテルに併設されたチャペル。

晴れて良かったな。

しかし。寒い。

なにも冬場に結婚式せんでもよかろうに。

「冬場は式場が安い」

と、恭平が言ったそうだ。

ヤツらしいな。

涼香と恭平は本日。

めでたく華燭の典を迎える。

親友二人がこうなった事はあたしにとっても。

この上なく嬉しい。

ウェディングドレス着た涼香は綺麗だ。

スタイルいいからマーメイドのドレス似合ってる。

涼香の誕生日。

「ほれ」

と恭平が投げて寄越したのは、立て爪のエンゲージリングだったそうだ。

「まあ、俺らもいいトシやし。お前も観念しろ」

変なプロポーズだな。

それでも。涼香は泣けたらしい。

誕生日プレゼントは別に買わせた。

涼香らしい。

「とうとう嫁にいくのかあ」

控え室でちょっと話した。

「まあね」

エグゼクティブは諦めたか。

「てか、みのり。あんたはどうなんよ」

「うっ」

「桂木、どうなってんのよ」

こないだ週刊誌に写真撮られた。

今度はあたしの素性もばっちし出た。

良いお友達です。

冬馬くんもあたしも。

それで通した。

松本氏は苦い顔で。

「まあ、しょうがないですね」

と言った。

「実際、どうなんよ?」

どうなんやろ。

冬馬くんから好きと言われたわけではないし。

友達以上。

ではあるかも知れんけど。

「ん、まあ今んとこ友達だよ」

もし、冬馬くんに言われたら。

あたしは。

右手のリングに応える。

の、かな。

「みのり。まだ忘れてないん?」

涼香が言った。

「なにを?」

あたしが言ったら、まあいいか、と涼香が言った。

教会の前に人だかり。

みなさん、ブーケトスをお待ちの様で。

案外みんな真剣にブーケ狙ってんだよな。

幸せそうな二人。

後ろ向いて投げたブーケは大きく弧を描いて。

あたしの手の中に。

落ちた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

赤毛の阿蘇利くん

BL / 完結 24h.ポイント:63pt お気に入り:39

【完】生まれ変わる瞬間

BL / 完結 24h.ポイント:241pt お気に入り:114

【完結】私が見つめていたのは貴方ではありません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:433pt お気に入り:1,297

【R18】幼馴染が変態だったのでセフレになってもらいました

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:149pt お気に入り:39

私の婚約者は、いつも誰かの想い人

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:109,065pt お気に入り:2,735

天使の分け前

BL / 完結 24h.ポイント:546pt お気に入り:1,853

処理中です...