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しおりを挟む莉緒のもんなんて家具とかがあったワケじゃねえから。
俺の部屋の風景が特に変わったワケでもねえ。
それなのに。
なんだろうな、違和感がする。
ずっといたから。
俺の脳ミソん中で莉緒がいる風景がデフォルトになってんのかな。
キッチンのカウンターに今日の晩メシが置いてある。
冷蔵庫開けたら山積みのジップロック。
おいおい。
何日分だよ。
俺はそんな食えねえっていつも言ってるのに。
夜になって。
別にハラ減ってもねえけど。作ってあるから食うか。
まあ、アイツの作るメシは旨い。
旨えんだが。家でメシ食う時はいつも二人一緒だったから。
一人でメシ食うの久しぶりだな。
ああ、ちくしょう。
アイツがいねえから俺が皿片付けねえと。
アイツが夜までいりゃ良かったんだ。
夜までいたら。
多分明日まで、って思ったかな。
久しぶりに一人のベッド。
セミダブルだからホントは二人寝るのは狭い。
それに慣れてたからなんか物足りねえな。
アイツ、メールくれえしてきやがれ。
兄貴と一緒なのが嬉しくて俺の事忘れてやがんのか。
俺はもうお前の体温が懐かしいのに。
俺の今の気分はなんだろうな?
こう言うのを。
寂しい、って言うのかな。
眼覚めたらもう昼近い。
時間的には丁度良い。昼の仕事の客に昼休み狙って営業出来るしな。
客の割合は夜の仕事してるヤツらの方が多い。
そっちはもっと遅くて良いから風呂入ってから。
メシ、どうすっかな。
食べるの習慣なってたからな。
冷蔵庫から適当に出して。
食いながらプライベートの携帯チェック。
メールがたまってて。ほとんど莉緒。
朝イチのおはようから始まって。自分の食ったもんやら天気やら。お兄ちゃんがどうしたやらはいらねえ。
今メシ食ってる。
そう送ったら。
ちゃんと食べてくれてて良かった。
速攻で返信。
こんな風にメールとかした事無かったな。
いつも一緒だったからする必要無かったし。
お前の声が聞きたいとか。
無かったのに。
俺が仕事行く時はやっぱお前に言ってほしくて。
電話なんかしてしまうじゃねえか。
電話越しのお前の声案外可愛いな。
「俺、そろそろ出るわ」
『うん、行ってらっしゃい…あのね…』
「なんだ」
『また電話して?』
そんな事言わなくてもするのに。
「うん…明日またする」
俺は多分、こうやってお前に電話して仕事行くのが新しい習慣になるんだろうな。
けどな。
おかえりなさい。
って笑う顔が見れないのに慣れるまで。
少しだけ。
時間がかかりそうだよ。
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