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五話
しおりを挟む目を輝かせていると手を取られ中に入る。
「ちょっと!」
「早く入ろうよ!」
急に引っ張られたため驚いて抗議するも店内に入った瞬間騒がしい音に迎えられた。文句を言うのも忘れるくらいだった。
店内にはリズムゲームで遊ぶ人、クレーンゲームで遊ぶ人様々だ。一人で遊んでいる人や友達など沢山の人と遊んでいる人もいる。みんな共通してとても楽しそうだ。財布の中を覗いて悔しそうにしている人もいたが…。
「何したい?」
私が呆然と店内を見ていると月城くんが話しかけてきた。
「え?あのね!えっと…わかんない!!」
私が元気よくそう答えると月城くんに笑われた。
「そんなウキウキした声で分かんないって言われるとは思わなかったよ…あはは!」
ツボに入ってしまったのか爆笑している。
仕方がないじゃないかゲームの種類もやりたいものも沢山ありすぎて最早何がしたいのかわからなくなってしまったのだ。私は悪くない。
「だって!色々あり過ぎてどれから手をつけて良いのか全くわからないの!そんなに笑わなくても良いじゃない!」
キョロキョロと店内を確認すると車のハンドルを操作している人達が目に入った。
「ねえ!あれは?あれは何!?」
「どれ?」
「あの車のやつ!」
「ああ、レースゲームだね。やりたいの?」
「やりたい!」
レースゲームにも種類が沢山あったので迷った結果親しみやすいキノコの出てくるレースゲームにした。
アイテムを投げたりして邪魔できるのが楽しい。邪魔されると少し腹立たしいけど…。
ちなみに開始後すぐに逆走した。隣で月城くんがまたも爆笑している。
でも、私も楽しくなって一緒に笑ってしまったが。
何回かやったが全敗した。月城くんは手加減してくれようとしたが手加減されて、それでも負けたらショックで立ち直れなくなりそうなので全力で来い!って言ったらボコボコにされた。情けも容赦もなかった。自分で頼んでおいてなんだが悔しい!
ちなみにお金を出してくれると言われたがそんな義理はないのでしっかり自分で払った。
「あはは!楽しい!ゲームセンター初めて来たんだけど凄く楽しいね!」
「え?初めてなの!?珍しいね」
初めて来たと言うところに少し驚いたようだ。
「雨音がこういう場所あまり好きじゃないから来れなかったの…いつも私達姉妹と幼なじみで一緒にいたから。」
月城くんに軽く説明する。
「え、いつも一緒なの?」
「うん。双子だし幼なじみだから」
「そんな理由?」
月城くんはとても不思議そうにしている。
「変かな?」
「うーん。ちょっと変かなとは思うよ。だってそんなんじゃ三人だけの世界になっちゃうよ。もっと広い世界見なきゃ!他の人の良いところとか見逃しちゃうよ!」
三人だけの世界…。たしかに私はクラスで話すくらいの友達はいるけど一緒にお出かけしたりするような人はいない…。
よくよく考えたらなんで双子と幼なじみだからっていつも一緒に行動していたのだろうか。別にそんな必要は無かったのではないかと気付いた。
私達は別々の人間なんだからそれぞれ好きな事をしたら良いのではないのだろうか…。一緒に行動しなくたって私達が双子と幼なじみであることに変わりはないのだから。
もしかして私は…いや、私達は月城くんの言う通り今までとても狭い世界にいたのかもしれない。
私と雨音そして歩夢。いつも三人で行動していたけどもうそれもやめた方がいいのかもしれない。
もっと広い世界を見たほうが良いだろう。
そう思うと二人と一緒にいられないと思って憂鬱だった心が少し軽くなった。
この事に気付けたのは悔しいがこのチャラ男の月城光樹のおかげだ。
「じゃあこれからどんどん遊ぼう!」
「そうだね…あの、その…色々とあ…ありがとう…」
「なんて?」
「だから!ありがとう!!」
私は恥ずかしくて顔を逸らした。
「どういたしまして。二回もお礼言われちゃった」
「最初のも聞こえてたの!?一回目で答えてくれてもよかったじゃない!意地悪!!」
「あはは!」
またも爆笑している。悔しい!!私が怒っていると月城くんが笑いながら話しかけてきた。
「これからは俺みたいに色んな人と交流しよう!」
「月城くんはちょっとどうかと思うけど」
「えー!なんで!?」
「なんでって…遊び方がね。女の子泣かせてるとなんとか」
そう言うと月城くんは少し焦ったように言う。
「確かに泣かせちゃった事はあるけど一回だけだよ!それに俺ちゃんと謝ってたよ!分かってもらえるまでちゃんと!ほんとうに!!」
「え、そうなの?」
「そうだよ!大体なんでそんな噂…あっ!あいつか!あいつ面白がって泣かせたーとか茶化してきたから!」
あいつが誰かわからないが本気で怒ってなさそうなので友達か何かだろう。
友達と話しているときに偶々他の人が聞いてそれが噂として広まってしまったのだろか。気の毒に…。
確かにそう言われてみれば月城くんが元々苦手って人はいるけど、恨んでるって女の子の話は聞いたことがない。むしろ男女共に人気がある気がする。ちゃんとしていたからか。それは申し訳ない事をした。
「噂だけで変なこと言ってごめん…」
「分かってくれたならいいよ!それよりせっかく来たんだからもっと遊ばないと」
「うん、そうだね。私もいっぱい遊ぶ!いつも真っ直ぐ家に帰ってたからお小遣いが貯まってるから沢山遊べるの!」
なにそれとまたも笑われた。ちょっと君笑いすぎだ。
その後もリズムゲームで遊んだり格闘ゲームで遊んでみたりとゲームセンターを堪能した。正直めちゃくちゃ楽しい。
次はこれ今度はこっち!と月城くんを振り回した。
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