15 / 37
十五話
しおりを挟む人の情報網はすごく家の者全てにレイの魔力が闇だと知れ渡った。
今まで気さくに話しかけてきた人も怯えるようになってしまった。
父様がいつも通りにするようにと言ったのであからさまに嫌な事を言ってきたり逃げるような人はいない。
それでもヒソヒソと怖ろしいとか言っている。
「ベルティア様、僕やっぱりここにいない方がいいんじゃ…」
無言で睨めつける。
ルミは叩いていた。意外と手が早い。
「なんでレイはそんなに後ろ向きなの?」
「そうよ!私たちが必死に良い方法を考えているのに」
レイも何か考えなさいよ!と女二人に言われてはいと弱々しく返事をした。というより頷くほかなかったのかもしれないが。
とりあえず作戦会議のため私の部屋に行こうとすると母様がやってきた。
「あっ、いたわ。ルミあなたにお客様よ」
「私にですか…」
母様はレイに怯えない貴重な人だ。有難い。
「まあ、光魔法関係でしょうね」
「ですよね…」
ルミはレイとは反対に誰からも歓迎されている。
魔力鑑定の場にいなかった貴族たちがこぞってルミを養女に迎えたいとやってくる。
基本的にその場で追い返しているがどうにもそれが出来ない者たちもいる。
ルミはため息を吐きながらもお客様が待つという客室に向かった。
「ルミは、いいな…」
ポツリとレイが呟く。悲しげに目を伏せながら自分とは全然違う、どうして双子なのにこんなにも差が出てしまったのだろう…そう言いたげだ。
「ルミはルミ。レイはレイだよ」
それはどうやっても変えられないし変える必要もないと私は思う。
「ねえ、ルミは一旦抜けちゃったけど作戦会議しましょうよ」
気持ちを入れ替えるようにレイに提案する。ここで悩んでいても仕方がない。
「はい」
私はレイの手を掴んで引きずるように部屋に向かった。
扉は少し開けておく。子どもとはいえ一応男女二人きりになるからだ。
「でも、僕に何ができるんでしょうか」
部屋に着くなりまた弱気な事を言う。そんなレイの頬を両手でペシッと軽く叩く。
「もう!だからそんな弱気にならないで!」
レイは最近どうにも考えが後ろ向きになる。
そんな事では出来ることも出来なくなると思う。
「私はね、絶対に闇の魔法も悪いものではないと思うわ。いやない!」
私は断言する。
「そもそもどんな力だって使い方と加減なのよ」
「使い方、加減…?」
そうと頷くと私は例えばと続ける。
「薬。あれって病気や怪我を治してくれる有難いものだけどそれって正しい使い方と量を守った場合よね」
「はい」
「それと同じだと思うの」
毒とされているものその使い方によっては病気の治療に使われているものもある。量を調節する事で薬にも毒にもなるのだ。
それは他の分野でも言える事ではないか。
体に良いとされる食べ物でも食べ過ぎは良くないし睡眠は良い事だが寝すぎると立ちくらみを起こしたりする。
全ては使う人次第だと強く言うとなんとか納得する。
「でも、そうだとしても闇の魔法の使い方なんて」
「ねえ、精神を壊すとかなんとか言ってたじゃない?」
怖ろしい力ですとレイは落ち込む。
精神を壊すと言うことは精神に関与できるということだ。
「それってつまり使い方を変えれば気持ちをを落ち着かせたり、元気にしてあげられるんじゃないかな」
「え?」
「つまり精神…心の治癒よ!」
精神と心って一緒の意味といえば一緒だしちょっと違うといえば違う、難しいね。
まあ、それはいいんだ。
心が弱っていたらどんな事にも負けてしまう。病は気からとも言うし。
その他にも使い方次第ではかなり様々な事ができるのではないだろうか。
今は特に思いつかないけど。
「どうかな」
「たしかに…それなら」
できるかもしれないと少し希望が見えたのか表情に明るさが戻る。
レイもやる気になった事だしそれならば!
「早速特訓よ!ささ、私を落ち着かせてみなさい」
「え、ベルティア様に?」
何を言っているんだと、正気かと驚きの目を向けている。
正気である。
「いや、だって実験台は必要でしょう?」
「だからってベルティア様がなる事ないです!」
レイは突然声を荒らげる。びっくりした、レイがこんなに大きな声を出すのは滅多にない。というより見たことないかもしれない。
「だいたい失敗したらどうするんですか!」
もっと自分のことを大切にしろと今まで見たこのないくらいに怒っている。正直怖い。
「ご、ごめんなさい」
素直に謝るとハッとしたレイは悲しげな表情をして大きな声を出してすみませんと頭を下げた。
「ベルティア様に何かあったら僕は…」
「もう言わないからそんな顔しないで?」
なんとか機嫌を戻してもらおうと必死になる。笑ってくれ、怖いのだ。悲しそうな顔をしないで辛いんだよ。
一発芸でも披露するか?そんなものないわ。
と一人思案しているとレイが顔を上げた。
「本当にもう言いません?」
「もちろん」
絶対ですよと念を押されたがなんとか納得してくれたようだ。よかった。
「でも、何かしらは必要よね」
もうあれしかないなと思いレイの手を引っ張って移動した。
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する
春夏秋冬/光逆榮
恋愛
クリバンス王国内のフォークロス領主の娘アリス・フォークロスは、母親からとある理由で憧れである月の魔女が通っていた王都メルト魔法学院の転入を言い渡される。
しかし、その転入時には名前を偽り、さらには男装することが条件であった。
その理由は同じ学院に通う、第二王子ルーク・クリバンスの鼻を折り、将来王国を担う王としての自覚を持たせるためだった。
だがルーク王子の鼻を折る前に、無駄にイケメン揃いな個性的な寮生やクラスメイト達に囲まれた学院生活を送るはめになり、ハプニングの連続で正体がバレていないかドキドキの日々を過ごす。
そして目的であるルーク王子には、目向きもなれない最大のピンチが待っていた。
さて、アリスの運命はどうなるのか。
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
王子様とずっと一緒にいる方法
秋月真鳥
恋愛
五歳のわたくし、フィーネは姉と共に王宮へ。
そこで出会ったのは、襲われていた六歳の王太子殿下。
「フィーネ・エルネスト、助太刀します! お覚悟ー!」
身長を超える大剣で暗殺者を一掃したら、王子様の学友になっちゃった!
「フィーネ嬢、わたしと過ごしませんか?」
「王子様と一緒にいられるの!?」
毎日お茶して、一緒にお勉強して。
姉の恋の応援もして。
王子様は優しくて賢くて、まるで絵本の王子様みたい。
でも、王子様はいつか誰かと結婚してしまう。
そうしたら、わたくしは王子様のそばにいられなくなっちゃうの……?
「ずっとわたしと一緒にいる方法があると言ったら、フィーネ嬢はどうしますか?」
え? ずっと一緒にいられる方法があるの!?
――これは、五歳で出会った二人が、時間をかけて育む初恋の物語。
彼女はまだ「恋」を知らない。けれど、彼はもう決めている――。
※貧乏子爵家の天真爛漫少女×策略王子の、ほのぼのラブコメです。
※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。
辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~
香木陽灯
恋愛
「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」
実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。
「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」
「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」
二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。
※ふんわり設定です。
※他サイトにも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる