17 / 37
十七話
しおりを挟むそれから毎日特訓したが良い結果は出ない。
どうしたものかと考えていると通りがかった部屋の扉が少し開いていたのでダメじゃないかと閉めようと手を伸ばす。
すると中から何やら話し声が聞こえてきた。その会話の中に気になる単語が出てきたので思わず手を止める。
「ベルティアお嬢様もおかしな方ですわよね、あんな恐ろしい子を側におくんだから」
「案外もう精神をどうにかされて操られてたりして」
あり得るわねーと可笑しそうに笑う使用人達。
そんな事ないのに。何でみんなわかってくれないのかな。
レイはすごく優しいって、頑張ってるって。
「ベルティア様どうしたんですか?」
後ろから声をかけられる。振り返ると予想通りの人物がいた。レイとルミだ。
「ど、どうもしてないわよ」
これは聞かせられない。特にレイには。
この場をさっさと離れなくてはと移動しようとしたがその前にレイが近くに来てしまった。
「何かあるんですか?」
そう言って扉の前に立つ。
「ベルティアお嬢様がもしすでに操られてたらどうする?」
「え、どうしよう。ベルティアお嬢様にも近付かない方がいいんじゃない」
間違いない!と笑っている。
「…っ。そんな事…」
ま、まずい!と思いレイを見ると悔しそうに顔を歪めている。綺麗なお顔が台無しよと場違いな事を思ってしまった。
そして今にも乱入しそうな勢いだったので急いで止める。
「だ、だめよ!私は気にしてないから」
「そうよ。今何か問題を起こすのは良くないわ」
レイの立場がさらに悪くなるとルミも止める。
とにかくこの場を離れなければとルミと協力してレイを宥めて移動する。
私たち三人は部屋に戻った。
「何でベルティア様まで悪く言われなきゃいけないんだ!」
部屋に入るとレイは大きな声を出す。
何で、何で!と…。
「レイ…落ち着いて」
ルミが落ち着かせようとそっと触れる。
「全部僕のせいで」
「レイ…」
「うるさい!」
レイはルミの手を乱暴に振り払う。
振り払われたルミは少し悲しそうな顔をしたが構わず落ち着いてよと声をかける。
「ねえ、レイのせいじゃないでしょ!ベルティア様だってそんな事一言も言ってないわ」
「ルミには…ルミには分からないよ!」
「レイ…」
「ルミはいいさ。光の魔力があってみんなに歓迎されて」
頭に血がのぼっているのかかなり興奮したレイは普段言わないような事も言う。
むしろ今まで我慢していたことが爆発したようだった。
「もう、嫌なんだ!みんなからバケモノを見るような目を向けられて、さらにはベルティア様まで悪く言われた」
「レイ!だから今から…」
「もう放っておいてよ!」
そう言うと部屋から出て行ってしまった。
「レイ!」
ルミが追いかけようとするが止める。
「待って、私が行くよ。今ルミが追いかけてもさっきと変わらないと思うの」
そう言うと「そう…ですね。お願いします」と任された。
正直私で元気を取り戻してくれるか分からないがやるだけやる。
私はレイを探す。人がいないところだよな、どこだろう…。
レイが行きそうな場所か…。
こういう時あの場所に違いないってなればいいんだけど正直さっぱりわからない。
でも今はその方がいいのかもしれない。かなり興奮していたので少し頭を冷やす時間も必要だろう。
しばらくあちこち探すと目的の人物を見つけた。
人目のつかない庭の端の方にいた。ちょうど木に囲まれて見つけにくい。
よく見つけたと自分を褒めながらレイに近付いた。
0
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく
犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。
「絶対駄目ーー」
と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。
何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。
募集 婿入り希望者
対象外は、嫡男、後継者、王族
目指せハッピーエンド(?)!!
全23話で完結です。
この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる