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第四話 『敵』
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登場人物
カツイ(15・男)
トバ(15・男)
ゲッカ(13・男)
ハナ(13・女)
ソウマ(17・男)
ヒカル(18・男)
保育士H(女性)
保育士I(女性)
〇生徒会長室
机の上に写真を並べるソウマ
ソウマ「一年B組呉林月乃。一年F組呉林花乃。月乃は何も言わずに失踪。花乃はボディーガードにことづけをして家出をしています」
ヒカル「月乃ちゃんに花乃ちゃんか……」
ソウマ「会長?」
ヒカル「雪月花」
ソウマ「なんですか?」
ヒカル「なんでもない。ただ『雪乃』もいたら面白いかなって」
ヒカル「はあ……」
〇教室(一年F組)
SE(ガラッと扉を開く)
ソウマ「呉林花乃さんはいらっしゃいますか」
ざわつく教室内
ハナ(M)「あの人……こないだトバ先輩と逃げていた時に見かけた人だ」
ソウマ「呉林花乃さんは?」
SE(椅子から立ち上がる)
ハナ「あの、私ですけど……」
ソウマ「申し訳ありませんが、今から少々お時間を頂けますか?」
ハナ「困ります! 今は授業中ですよ!?」
ソウマ「問題ありません。担任の先生の許可は既に頂いています」
ハナ「なんてこと……」
〇廊下
SE(廊下を歩く二人の足音)
ハナ「あのっ、先輩こそ授業はいいんですか?」
ソウマ「ご心配なく。私はこの学校の生徒ではありませんから。そういえばご挨拶がまだでしたね。私は会長の善意で拾っていただいたソウマと申します」
ハナ「あの、えっと……会長って誰のことですか?」
ソウマ「高等部三年A組麻生光様です。今回貴方に用があるのは会長です」
ハナ「高等部の会長さんが私に?」
〇生徒会室
SE(ガラッと扉を開く)
ソウマ「会長。呉林花乃さんをお連れしました」
ヒカル「ああ。いらっしゃい。良く来てくれたね。僕が生徒会長の麻生光です」
ハナ「……呉林花乃です」
ヒカル「やっぱり思った通りかわいいんだね」
ハナ「あの……ご用件は何でしょうか?」
ヒカル「君のお母さんからね、今君が家出をしているという報告を受けているんだ」
ハナ「っ!」
ヒカル「別に君の家出そのものを咎めるつもりはないけどね。今君はどこで暮らしているのかな? 昨日はどこで寝たの?」
ハナ「そんな事……会長さんに関係ないじゃないですか」
ソウマ「呉林さん。口の利き方には気をつけなさい」
ヒカル「いいよ、ソウマくん。そうだね関係ないね。でも二年前にも同じように家出事件が起こっているのは知っていたかな?」
ハナ「二年前……」
ヒカル「もしかして……今、君はカツイくんとトバくんの所にいるんじゃないのかな?」
ハナ「……答えたくありません」
ヒカル「君のお母さんからはね、どんな手を使ってでも君を連れ戻せって言われてるんだ。それを承知の上でなら、どうぞ帰って貰って構わないよ」
SE(扉を閉める音)
ハナ「失礼しました……」
〇廊下
SE(再び扉が開く)
ハナ「ソウマさん? どうかしたんですか?」
ソウマ「貴方を中等部までお連れするよう、会長から仰せつかりました」
SE(足音)
ハナ「あの…」
ソウマ「はい」
ハナ「会長さんはカツイ先輩とトバ先輩のことを知っているんですか?」
ソウマ「存じてます。……二年前、今の彼らと同じ十五歳の男女と十四歳の女生徒が家出をしました。そのグループに家出仲間として後から加わったのが当時中学一年生だったカツイさんとトバさんなんですよ」
ハナ「あの、家出をするというのはそんなにいけない事なんでしょうか?」
ソウマ「さあ……私は中立的な立場ではないのでお答えできませんが……」
SE(足を止める)
ソウマ「会長は恐ろしい方です。逃げるのなら今のうちですよ」
ハナ「え……?」
SE(走る足音)
カツイ「ハナちゃん!!」
ハナ「カツイ先輩!」
カツイ「ほっ……良かった。教室行ってもいないから心配してたんだよ」
ハナ「ご心配おかけしてすみません」
カツイ「(ソウマを見て)ちっ」
ソウマ「(カツイを見て)ふっ」
SE(火花)
カツイ「行こうハナちゃん。いつまでもこんなヤツの近くにいたら君まで性格が歪んじまう」
ハナ「えっ、その、あの……」
ソウマ「それはこちらの台詞ですよ。呉林家のお嬢さんが貴方みたいなガサツな性格になったらどう責任を取るつもりですか」
カツイ「その時は責任を取って嫁に貰うよ」
ソウマ「はあっ……言ってなさい」
〇下校途中(夕)
SE(自転車を押す音)
カツイ「生徒会が動き出しやがったか。案外早かったな」
ハナ「でも、あのソウマさんという人……私にはそんなに悪い人には見えませんでしたけど……」
トバ「ソウマさん?」
ゲッカ「誰?」
カツイ「あははっ、悪い人には見えない? ハナちゃんアイツを買いかぶりすぎだよ!」
ハナ「え、え、でも……」
トバ「気にしなくていいよハナちゃん。カツイくんとソウマさんはいつもそうなんだ。会う度に喧嘩しててね。ウマが合わないっていうのかな?」
ハナ「は……はい」
ゲッカ「あ、先輩。もうこんな時間ですよ。ミナリくんの迎えに行かないと……」
カツイ「ああもうそんな時間か。悪いけど俺らこれからバイトだから。二人で迎えに行って先に家戻っててくれよ」
SE(家の鍵を手渡す音)
ゲッカ「分かりました」
カツイ「行くぞトバ!」
SE(自転車で走り出す音)
トバ「待ってよカツイくん!」
SE(後を追う足音)
ゲッカ「ホント、仲いいねぇあの二人」
ハナ「うん……」
ゲッカ「どうかした? ハナ。元気ないね?」
ハナ「ううん、なんでもないよ」
ゲッカ「それならいいけど……じゃあミナリくんのお迎えに保育園に急ごう」
ハナ「うん」
〇路上(夕)
SE(自転車で走る音)
運転はカツイ、後部座席にトバ
カツイ「やーっぱりアイツが出てきやがったな」
トバ「え?」
カツイ「会長秘書殿だよ」
トバ「ああソウマさん。ホント……何考えてるのか分かんないやあの人」
カツイ「そうだな」
トバ「あれ……ちょっと止まってカツイくん」
SE(キッとブレーキをかける音)
SE(地面に足を着く音)
カツイ「どうしたトバ? いきなり止まれだなんて」
トバ「カツイくん……会長の苗字って……『麻生』だったよね」
カツイ「そうだっけか……って、麻生だと!?」
〇保育園(夕)
ゲッカ「こーんにーちはー! ミナリくんを迎えに来ましたー!」
保育士H「あ、ミナリくんのお兄さんね。ちょっと待ってね」
ハナ「ねぇ、ゲッカ」
ゲッカ「うん?」
ハナ「ミナリくんの苗字って何なんだろうね」
ゲッカ「後で聞いてみようか」
SE(騒がしい声)
ゲッカ「何だろう? 行ってみよう」
SE(駆け足)
ハナ「あの~どうかしたんですか?」
保育士I「あ! ミナリくんの家族の人!?」
保育士H「ミナリくんがいなくなっちゃったのよ!!」
ハナ&ゲッカ「え……?」
ハナ&ゲッカ(M)「ミナリくんが!?」
カツイ(15・男)
トバ(15・男)
ゲッカ(13・男)
ハナ(13・女)
ソウマ(17・男)
ヒカル(18・男)
保育士H(女性)
保育士I(女性)
〇生徒会長室
机の上に写真を並べるソウマ
ソウマ「一年B組呉林月乃。一年F組呉林花乃。月乃は何も言わずに失踪。花乃はボディーガードにことづけをして家出をしています」
ヒカル「月乃ちゃんに花乃ちゃんか……」
ソウマ「会長?」
ヒカル「雪月花」
ソウマ「なんですか?」
ヒカル「なんでもない。ただ『雪乃』もいたら面白いかなって」
ヒカル「はあ……」
〇教室(一年F組)
SE(ガラッと扉を開く)
ソウマ「呉林花乃さんはいらっしゃいますか」
ざわつく教室内
ハナ(M)「あの人……こないだトバ先輩と逃げていた時に見かけた人だ」
ソウマ「呉林花乃さんは?」
SE(椅子から立ち上がる)
ハナ「あの、私ですけど……」
ソウマ「申し訳ありませんが、今から少々お時間を頂けますか?」
ハナ「困ります! 今は授業中ですよ!?」
ソウマ「問題ありません。担任の先生の許可は既に頂いています」
ハナ「なんてこと……」
〇廊下
SE(廊下を歩く二人の足音)
ハナ「あのっ、先輩こそ授業はいいんですか?」
ソウマ「ご心配なく。私はこの学校の生徒ではありませんから。そういえばご挨拶がまだでしたね。私は会長の善意で拾っていただいたソウマと申します」
ハナ「あの、えっと……会長って誰のことですか?」
ソウマ「高等部三年A組麻生光様です。今回貴方に用があるのは会長です」
ハナ「高等部の会長さんが私に?」
〇生徒会室
SE(ガラッと扉を開く)
ソウマ「会長。呉林花乃さんをお連れしました」
ヒカル「ああ。いらっしゃい。良く来てくれたね。僕が生徒会長の麻生光です」
ハナ「……呉林花乃です」
ヒカル「やっぱり思った通りかわいいんだね」
ハナ「あの……ご用件は何でしょうか?」
ヒカル「君のお母さんからね、今君が家出をしているという報告を受けているんだ」
ハナ「っ!」
ヒカル「別に君の家出そのものを咎めるつもりはないけどね。今君はどこで暮らしているのかな? 昨日はどこで寝たの?」
ハナ「そんな事……会長さんに関係ないじゃないですか」
ソウマ「呉林さん。口の利き方には気をつけなさい」
ヒカル「いいよ、ソウマくん。そうだね関係ないね。でも二年前にも同じように家出事件が起こっているのは知っていたかな?」
ハナ「二年前……」
ヒカル「もしかして……今、君はカツイくんとトバくんの所にいるんじゃないのかな?」
ハナ「……答えたくありません」
ヒカル「君のお母さんからはね、どんな手を使ってでも君を連れ戻せって言われてるんだ。それを承知の上でなら、どうぞ帰って貰って構わないよ」
SE(扉を閉める音)
ハナ「失礼しました……」
〇廊下
SE(再び扉が開く)
ハナ「ソウマさん? どうかしたんですか?」
ソウマ「貴方を中等部までお連れするよう、会長から仰せつかりました」
SE(足音)
ハナ「あの…」
ソウマ「はい」
ハナ「会長さんはカツイ先輩とトバ先輩のことを知っているんですか?」
ソウマ「存じてます。……二年前、今の彼らと同じ十五歳の男女と十四歳の女生徒が家出をしました。そのグループに家出仲間として後から加わったのが当時中学一年生だったカツイさんとトバさんなんですよ」
ハナ「あの、家出をするというのはそんなにいけない事なんでしょうか?」
ソウマ「さあ……私は中立的な立場ではないのでお答えできませんが……」
SE(足を止める)
ソウマ「会長は恐ろしい方です。逃げるのなら今のうちですよ」
ハナ「え……?」
SE(走る足音)
カツイ「ハナちゃん!!」
ハナ「カツイ先輩!」
カツイ「ほっ……良かった。教室行ってもいないから心配してたんだよ」
ハナ「ご心配おかけしてすみません」
カツイ「(ソウマを見て)ちっ」
ソウマ「(カツイを見て)ふっ」
SE(火花)
カツイ「行こうハナちゃん。いつまでもこんなヤツの近くにいたら君まで性格が歪んじまう」
ハナ「えっ、その、あの……」
ソウマ「それはこちらの台詞ですよ。呉林家のお嬢さんが貴方みたいなガサツな性格になったらどう責任を取るつもりですか」
カツイ「その時は責任を取って嫁に貰うよ」
ソウマ「はあっ……言ってなさい」
〇下校途中(夕)
SE(自転車を押す音)
カツイ「生徒会が動き出しやがったか。案外早かったな」
ハナ「でも、あのソウマさんという人……私にはそんなに悪い人には見えませんでしたけど……」
トバ「ソウマさん?」
ゲッカ「誰?」
カツイ「あははっ、悪い人には見えない? ハナちゃんアイツを買いかぶりすぎだよ!」
ハナ「え、え、でも……」
トバ「気にしなくていいよハナちゃん。カツイくんとソウマさんはいつもそうなんだ。会う度に喧嘩しててね。ウマが合わないっていうのかな?」
ハナ「は……はい」
ゲッカ「あ、先輩。もうこんな時間ですよ。ミナリくんの迎えに行かないと……」
カツイ「ああもうそんな時間か。悪いけど俺らこれからバイトだから。二人で迎えに行って先に家戻っててくれよ」
SE(家の鍵を手渡す音)
ゲッカ「分かりました」
カツイ「行くぞトバ!」
SE(自転車で走り出す音)
トバ「待ってよカツイくん!」
SE(後を追う足音)
ゲッカ「ホント、仲いいねぇあの二人」
ハナ「うん……」
ゲッカ「どうかした? ハナ。元気ないね?」
ハナ「ううん、なんでもないよ」
ゲッカ「それならいいけど……じゃあミナリくんのお迎えに保育園に急ごう」
ハナ「うん」
〇路上(夕)
SE(自転車で走る音)
運転はカツイ、後部座席にトバ
カツイ「やーっぱりアイツが出てきやがったな」
トバ「え?」
カツイ「会長秘書殿だよ」
トバ「ああソウマさん。ホント……何考えてるのか分かんないやあの人」
カツイ「そうだな」
トバ「あれ……ちょっと止まってカツイくん」
SE(キッとブレーキをかける音)
SE(地面に足を着く音)
カツイ「どうしたトバ? いきなり止まれだなんて」
トバ「カツイくん……会長の苗字って……『麻生』だったよね」
カツイ「そうだっけか……って、麻生だと!?」
〇保育園(夕)
ゲッカ「こーんにーちはー! ミナリくんを迎えに来ましたー!」
保育士H「あ、ミナリくんのお兄さんね。ちょっと待ってね」
ハナ「ねぇ、ゲッカ」
ゲッカ「うん?」
ハナ「ミナリくんの苗字って何なんだろうね」
ゲッカ「後で聞いてみようか」
SE(騒がしい声)
ゲッカ「何だろう? 行ってみよう」
SE(駆け足)
ハナ「あの~どうかしたんですか?」
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