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古河さかえ

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第五話 『大切なモノ』

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登場人物

 カツイ(15・男) 
 トバ(15・男) 
 ゲッカ(13・男) 
 ハナ(13・女) 
 ソウマ(17・男) 
 ヒカル(18・男) 
 ミナリ(2・男) 
 サクラ(16・女)

 保育士I(女性) 
 保育士J(女性) 
 男K(男性)ヒカル宅のボディーガード

〇保育園(夕) 
保育士I「さっきお迎えの時間に沢山保護者の方が来て。私たちも一人一人確認していられなかったの。それで今見たらミナリくんが……」 
SE(バタバタバタ……) 
SE(ガラッ) 
保育士J「ミナリくんのお迎えの呉林花乃さんいますか!!」 
ハナ「は、はいっ!」 
保育士J「お電話です」 
ハナ「電話……?」 
   受話器を手渡される 
ハナ「もしもし……?」 
ヒカル「やあ、呉林花乃さん」 
ハナ「会長さん……!?」 
ヒカル「君達の大事なミナリくんは今僕らの所にいるよ」 
ハナ「どういうつもりですか! 幼いミナリくんを人質にするなんて!」 
ゲッカ「ハナ……? どうしたの何、その電話……」 
ヒカル「取引しようか」 
ハナ「取引……?」 
ヒカル「君が両親のもとに帰るのならミナリくんは無傷で返すよ」

〇(回想)学校の廊下 
ソウマ「会長は恐ろしい方です」 
(回想終わり) 
ハナ(M)「ソウマさんのあの時の言葉……」 
ヒカル「それとね、君だけじゃないよ」 
ハナ「え……?」 
ヒカル「今側にいる君のお兄さん、呉林月乃くんも一緒じゃないとね」 
ハナ「ッ!! ……分かりました。二人で会長さんの家に行けばいいんですね」 
ヒカル「話の分かる子で嬉しいよ」 
SE(電話を切る) 
ゲッカ「ハナ? 何があったの? ミナリくんは?」 
ハナ「あの人……知ってる」 
ゲッカ「え?」 
ハナ「あの人、私とゲッカが双子の兄妹だって知ってる!!」 
ゲッカ「ええっ!?」 
ハナ「どうして……私たちの家出は上手くいかないのよ……」 
SE(床に座り込む音) 
ゲッカ「ハナ……ね、落ち着いて。先輩に相談しよう」 
ハナ「ゲッカ……」

〇カツイのバイト先 
SE(携帯のバイブレーション) 
カツイ「はいはーいもしもしー?」 
ゲッカ「先輩? ゲッカです」 
カツイ「おう、どうした」 
ゲッカ「ミナリくんが……会長に誘拐されたらしいんです」 
カツイ「は!? なんでだよ!」 
ゲッカ「すいません! 僕がもっと早く到着していれば!!」 
カツイ「怒ってる訳じゃねーけどよ……ちょっと待ってろ。おい、トバ! ちょっとこっち」 
トバ「どうしたの? カツイくん」 
カツイ「ミナリが会長に誘拐されたらしい」 
トバ「え?」 
カツイ「サクラにすぐ電話入れろ」 
トバ「分かった」 
SE(足音) 
〇保育園 
ハナ「ゲッカ、大丈夫だよ。ミナリくんが無事に戻ってくる方法が一つだけあるから」 
ゲッカ「何? どうしたらいいの?」 
ハナ「私と……ゲッカが家に戻ればいいの」 
ゲッカ「そんな事……」 
〇カツイのバイト先 
カツイ「おい! 何考えてんだ! 家に戻るとかそういう事考えてんじゃねーぞ!! 聞いてんのか!? ゲッカ、ハナちゃ……」 
SE(プーップーッ) 
カツイ「くそっ……切りやがった」 
サクラ「(電話口)え……ミナリが誘拐?」 
トバ「はい、どうなされますか?」 
サクラ「……いや、あいつがどうなろうと関係無い。二人の無事を優先して」 
トバ「……了解しました」 
SE(プーップーッ) 
カツイ「トバ!! 今すぐ会長ン家行くぞ! あいつら自分の自由と引き換えにミナリのこと助ける気だ!」 
トバ「サクラさんからは、『二人の無事を優先して』って言われたよ」 
カツイ「っああ何だそりゃ! 取り敢えず行くぞトバ!」 
トバ「うん!」

〇移動中 
SE(自転車音) 
カツイ「トバ」 
トバ「なに?」 
カツイ「もしもの話だけどさ。会長の『麻生』と、アノ『麻生』って何か関係あると思うか?」 
トバ「さあ……でもサクラさんならもしかしたら知ってるかもよ? ほら二年前のことについてならサクラさん詳しいだろうし」 
カツイ「サクラか……見た事もないゲッカとハナを自分の子供より優先しろだなんて何考えてんだあの女」 
トバ「カツイくんは……」 
カツイ「あ?」 
トバ「知らないの? ミナリくんの父親のこと」 
SE(自転車のブレーキ音) 
カツイ「なに? お前知ってんの?」 
トバ「……知らない」 
SE(自転車から降りて走り出す) 
カツイ「あ、テメー知ってんだろ! 待てコラ!」 
SE(自転車音)

〇ヒカル宅 
ヒカル「わざわざ足を運んでくれてありがとう呉林花乃ちゃんに呉林月乃くん」 
ハナ「ミナリくんを無事に返してくれる約束です」 
ヒカル「君達のご両親からね、懸賞金が出ているんだよ。もう少し焦らせばもっと上がるかな」 
ゲッカ「懸賞金とか……パパとママならやりかねないけど」 
ハナ「焦らすって一体何を……」 
SE(パチンッと指を鳴らす)

〇地下牢 
SE(ピチャン 水音) 
ゲッカ「で。結局僕達はこう地下牢みたいなところに捕まってる訳なんだけど」 
ハナ「悪かったわねっ! 私の安易な考えで!」 
ハナ「はあっ……ミナリくん……大丈夫かな」 
SE(足音 カツ……カツ……) 
ゲッカ&ハナ「!?」 
ゲッカ「足音が聞こえる。誰か来るみたい」 
ハナ「ゲッカ……怖いよ……」 
SE(ぎゅっと服を掴む) 
ゲッカ「大丈夫。ハナの事は僕が守るから。お姉ちゃんの代わりに」 
SE(足音) 
ミナリ「だぁ……あきゃっ」 
ゲッカ「ミナリくん!! 無事だったんだね!」 
ハナ「ソウマさん……どうしてミナリくんをここに連れてきてくれたんですか」 
ソウマ「全く、早く逃げなさいと言ったでしょう。彼はこの通り無事ですよ」 
   外からヒカルの声が聞こえる 
ヒカル「騒がしいよ、何があったんだ」 
男K「分かりません、突然少年たちがやってきて他のガードの奴らを手当り次第……」 
ゲッカ「カツイ先輩たちだ」 
ハナ「私たちのこと助けに来てくれたんだ」 
ヒカル「あれ……そういえばソウマくんがいないな。ソウマくーん? どこー?」 
ソウマ「ミナリくんをよろしくお願いしますね」 
ハナ「あ、はい」 
SE(カツカツ) 
ゲッカ「いい人……なの? あの人」 
ハナ「どうなんだろう……」

〇ヒカル宅(屋外) 
SE(地面に男が倒れる) 
カツイ「よお会長サマ。俺らの大事なハナちゃんとゲッカとミナリを迎えに来たぜ」 
ヒカル「野蛮人めが。人の家で暴れやがって……」 
ソウマ「会長、お探しですか?」 
ヒカル「あ、ソウマくんそこにいたのか」 
ソウマ「騒がしいですが何があったんですか」 
ヒカル「カツイくんだよ。あの二人を取戻しに来たんだ。ソウマくん。彼を追い返して。殺しちゃってもいいから」 
ソウマ「……かしこまりました」 
カツイ「ほらほらもう相手になるのはいねえのかあー?」 
SE(ジャリッ……足音) 
ソウマ「それでは最後に私がお相手しましょう」 
カツイ「ッ……!!」 
ソウマ「お手合わせしましょうかカツイさん」 
SE(上着を脱いで地面に落とす) 
カツイ「ケッ、上等だ。三分で沈めてやるぜ」 
SE(指関節ぽきぽき) 
ソウマ「フッ、では三十秒で終わらせてあげましょう」
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