魔力ゼロのセブン王子、キスで無限パワー!

霧島

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4−4 永遠の祈り ――そして、新たな夜明けへ

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第4章4-4 永遠の祈り ――そして、新たな夜明けへ

 夜が明ける前の空は、深く静かな群青だった。
 窓の外に星が一つ、まだ消えずに残っている。
 王都の再建は日々進み、焦げた屋根の上には新しい瓦が並び始めていた。
 かつて廃墟だった広場には花が咲き、人々の笑い声が絶えない。
 王城の塔から見下ろせば、光がいくつも瞬き、まるで大地そのものが呼吸しているようだった。

 セブンはその景色を見つめながら、静かに息を吐いた。
 「……やっと、朝が来たんだな」
 彼の声は穏やかで、どこか少年らしい。
 けれど、その横顔には確かに“王”としての威厳が宿っていた。
 長い戦いの傷跡は、心にも体にもまだ残っている。
 けれど、その痛みさえもいまは“生きている証”として彼を支えていた。

 「もう起きていたのね」
 背後からサリーナの声がした。
 彼女は薄手のローブを羽織り、まだ眠たげな瞳で彼を見上げる。
 「君こそ、もっと休んでいいのに」
 「王の隣で眠っているのに、ぐっすりなんて眠れるはずがないわ」
 冗談めかしたその言葉に、セブンは思わず笑みをこぼした。

 サリーナは窓辺に寄り、夜明けの空を見上げる。
 「もうすぐ夜が明けるわね」
 「うん。……君と見る朝日は、きっと今日が初めてだ」
 「そんなこと、よく覚えているわね」
 「君のことだけは、全部覚えてる」
 その言葉に、サリーナは小さく息を呑み、そっと彼に視線を向けた。
 その瞳に、ほんのわずかな照れと、深い想いが混ざる。

 沈黙が訪れる。
 けれど、それは不自然なものではなく、互いの鼓動が交わる穏やかな時間だった。

 サリーナはやがて、彼の隣に並んで外を見た。
 遠くで、朝の祈りの鐘が鳴り始める。
 王都の修道院から響くその音は、まるで新しい時代の始まりを告げるようだった。

 「セブン」
 「ん?」
 「あなたはこれから、どうしたいの?」
 サリーナの問いに、彼は少しだけ考えてから答えた。
 「王としてなら――この国を誰も恐れない場所にすること。
  でも、ひとりの人間としてなら……君と、同じ朝を見続けたい」
 その言葉に、サリーナの唇がわずかに震える。
 そして小さく笑い、彼の肩にもたれた。
 「あなたは、本当にずるいわね」
 「え?」
 「そんなことを言われたら、もう離れられないじゃない」
 「離さないよ」
 「……ええ、そうね。離れたくない」

 外の空がゆっくりと明るみ始める。
 雲が朱に染まり、金色の朝日が地平線を照らす。
 セブンはその光を見つめながら、静かに言った。
 「僕が“魔力ゼロ”だった頃、ずっと思ってたんだ。
  力なんていらない。ただ、誰かを守れる強さが欲しいって」
 「それを、いまは持っているのね」
 「うん。でも、それは僕の力じゃない。……君がくれたものだ」
 サリーナは彼の手を取ると、そっとその指を重ねた。
 「違うわ。あなたの中にあった光を、私が見つけただけ」
 「じゃあ……ありがとう。見つけてくれて」

 窓の外、金色の光が二人を包み込む。
 柔らかな風がカーテンを揺らし、花の香りが流れ込む。
 その香りの中で、セブンはゆっくりと彼女の方を向いた。
 サリーナもまた、微笑みながら顔を上げる。
 唇と唇が、朝の光の中で触れ合った。

 それはかつての“封印解除のキス”とは違う。
 世界を救うためではなく、ただ“愛する人と共にある”ためのキス。
 力も魔法も介在しない、純粋な誓いの口づけだった。

 「これでまた、力が出るのかしら?」
 サリーナが軽く笑う。
 セブンは少し頬を赤らめて答えた。
 「……たぶん、君とだから出るんだ」
 「ふふ、つまり私は“王の魔力供給源”というわけね」
 「違うよ。君は僕の……心臓そのものだ」
 その言葉に、サリーナの瞳が揺れる。
 やがて、彼女は静かに微笑んだ。
 「なら、これからも鼓動を止めないようにしないとね」

 窓の外では、王都の街に朝日が降り注いでいた。
 人々が活動を始め、子どもたちの笑い声が広がる。
 セブンはその音を聞きながら、そっと呟いた。
 「君と歩いたこの道を、僕たちの子どもたちもきっと歩いていく」
 「ええ、きっと。彼らが見る未来は、私たちよりもっとまぶしいはずよ」
 サリーナは彼の肩に頭を預け、目を閉じた。
 光が二人の頬を照らし、静かな幸福が部屋を満たしていく。

 やがて、遠くの鐘がもう一度鳴った。
 それは“祝福の鐘”――光の王と祈りの姫を讃える音だった。

 セブンは小さく息を吸い、目を閉じた。
 「さあ、行こう。今日もまた、新しい一日が始まる」
 「ええ、陛下」
 「……いや、セブンでいい」
 「ふふっ、わかったわ。セブン」

 朝日が差し込み、二人の影が重なって伸びていく。
 その影の先には、まだ誰も知らない未来が広がっていた。

 ――こうして、世界は再び光を取り戻した。
 魔力ゼロの王子は、キスで無限の力を得た。
 けれど本当の“無限”とは、魔力ではなく――
 愛し、赦し、信じ合う心のことだった。

 そして、空は金色に染まり、
 新しい時代の幕が、静かに上がった。

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