制御不能なS級魔法使いは、パーティーのお荷物 ― ストレス解消に神々の領域で無双してきます ―

霧島

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3-4 闇月のルギウス ― 神王の決断

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第3章 魔神四天王との遭遇

3-4 闇月のルギウス ― 神王の決断

 神々の領域の最奥――。
 すべての光が届かぬ黒の空間。
 そこに、静かに佇む影があった。

 長い外套の裾が風もないのに揺れる。
 金の瞳がわずかに輝き、低く呟いた。

「氷も、理も焼き尽くすか。……人間が。」

 彼の名は、闇月のルギウス。
 魔神四天王の最後の一人にして、神王直属の“影の執行者”である。

 虚無を纏い、存在そのものを呑み込む力――《ナイト・イクリプス》。
 それは、神々の中でさえ恐れられる闇の絶対。

「我が力は“闇”ではない。
 ――“存在を否定する影”だ。」

 そして今、その力が、たった一人の人間を討つために解き放たれようとしていた。


---

 一方その頃、神界の中腹。
 温泉から上がったダイアは、干していたローブを軽く振りながら言った。

「ふぅ~。いいお湯でした。
 ……あれ、さっきの氷の人たち、どこ行っちゃったんだろ?」

 湯気の中で、突如として空気が重くなる。
 辺りの色が音もなく褪せ、明暗の境界が溶けていく。

「……ん?」
 ダイアが顔を上げた瞬間、世界の“彩度”が落ちた。

 草も、空も、自分の手さえも――影に呑まれていく。
 まるで墨を流したように。

「おや? また新しい演出ですか?」

 返事の代わりに、空間から声が響く。

「――我が名は闇月のルギウス。
 お前がこの世界の法を乱すというなら、我は秩序として、お前を“無”に還す。」

「む? 無って、何もなくなっちゃうやつです?」
「そう。光も音も、存在の記憶すら残らぬ、真の終焉だ。」
「うわ~、掃除しやすそうですね!」
「……は?」

 ルギウスが一瞬、間の抜けた声を出した。


---

「貴様……軽口を叩く余裕があるとはな。」
 闇が渦巻く。
 彼の掌から黒い波が広がり、神界の地面を飲み込んでいく。

 ダイアの足元まで闇が届く――その瞬間。

 彼女がぱちんと指を鳴らした。
「うわぁ……照明、落としすぎですよ。
 もうちょっと明るくしますね!」

「やめ――」

 言葉が終わるより早く、眩い閃光が爆ぜた。

「――エクス・ルーメン!」

 それは、ダイアが“試しに”使ってみた無属性光魔法。
 本来は洞窟探検の照明用。
 だがダイアの魔力で放たれたそれは、神界規模の太陽フレアとなった。


---

 眩光が闇を引き裂き、空そのものが白く燃え上がる。

「ば、馬鹿なっ……我が影が……光に焼かれるだと!?
 この領域は闇の支配下だぞ!!」

 ルギウスの体から煙が立ち上る。
 闇を再構築しようとするが、再生速度が追いつかない。

「ま、まて……これは理屈が違う……!」

 ダイアは首を傾げて言った。
「え、でも照明魔法なんですけど? ただのルーメンですよ?」
「そんな低位魔法が……神格闇を消滅させるかぁぁっ!」
「えっと……じゃあ“遠目のルーメン”にしてみますね!」
「また出たその謎単位ぃぃぃ!!!」


---

 再び、世界が白く弾けた。
 それはもはや“光”ではない。
 純粋な情報破壊――光子の奔流が、神界の座標そのものを塗り替えていく。

 闇が光に変わり、虚無が“明るすぎて存在できない”空白に変化した。
 神々の観測班が悲鳴を上げる。

「報告! 闇界、消失!!」
「今度は闇が光になってる!?」
「照度レベルが限界突破、観測魔眼が焼き切れます!!」
「もはや“暗闇”の定義が存在しません!!!」
「言葉の意味すら壊れてるんですけど!!!」


---

 光の中心で、ルギウスが片膝をついていた。
 外套は燃え、輪郭が崩れていく。

「……我は闇。
 闇が消えれば、秩序も平衡も失われる。
 貴様……何者だ……?」

「え? ただの魔法使いですけど?」
「……嘘だ……。お前は、“理外の神”か……それとも……」

 ルギウスの声が途切れた。
 闇が煙のように溶け、跡形もなく消える。

 世界に再び光が満ち、音が戻る。


---

 ダイアは手をかざして眩しさを遮りながら、ぽつりと呟いた。
「うーん……照明、明るすぎましたね。
 でも、神界の方々って、みんな体が丈夫で助かります!」

 そして、白くなった地面を眺めながら小さく笑う。
「次は……どんな属性の人が来るんだろう。雷? 風? それとも、邪神さん?」

 その言葉が、神王宮の玉座まで届いたかのようだった。


---

 その頃――神王宮。
 巨大な玉座の間で、魔神王アズモディアスは無言で映像を見つめていた。
 周囲の参謀たちは震えている。

「四天王、全滅……。
 氷界・理界・闇界、すべて消滅。
 陛下……どうかお言葉を……」

 沈黙が落ちる。
 やがて、アズモディアスはゆっくりと立ち上がった。

「……人間界の者が、ここまで我らの領域を壊すとは。
 ふむ。久方ぶりに、退屈が癒された。」

 彼は微笑みを浮かべ、背後に黒翼を広げる。
「――面白い。ならば、次はこの“魔神王”自らが相手をしよう。」


---

 神々の宮殿がざわめき、次元の扉が開く。
 その向こうに立つのは、のんびりと紅茶を淹れているダイアの姿。

 湯気の立つカップを片手に、彼女はつぶやいた。

「今度は、邪神さんでも攻めてこないかしら……?」

 その瞬間、天界全域に轟音が響いた。
 ギルドホールで書類を整理していたギルマスが、思わずくしゃみをする。

「おいダイア! 物騒なこと言うんじゃない!」
「えー、でもストレス解消にちょうど……」
「もう来るなよ!? 本当に来たらどうするんだ!!」
「……ストレス、解消されます♡」
「解消しなくていいぇぇぇ!!!」

 ――神界は今日も、彼女の手で平和(?)に包まれていた。


---

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