「偽りの聖女」と追放されたけど、帝国で最強になったので王国には二度と救いを与えません

霧島

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第3章:帝国境への道――刻まれる宿命の足音

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 辺境の村でならず者たちを追い払った翌朝、アストリッド(偽名:アストリン)は朝日に照らされる村の家々を眺めながら、静かに深呼吸をした。
 初夏の柔らかな陽光が、土壁の家々を淡く金色に染めている。昨日の騒ぎの名残か、村人たちはまだ少し落ち着かない様子だが、それでも穏やかな空気が流れていた。
 ――もう、この村には自分たちが留まる理由もない。彼女はクラリッサとともに、荷物をまとめて出発する準備を整えた。
 村長や古老たちは名残惜しそうに見送ってくれる。彼らからすれば、突如現れた“魔法を使える娘”に助けられた形だが、アストリッドにとってはただの偶然の行動だった。
 しかし、村長が深々と頭を下げ、ハラハラと涙をこぼす姿を見ると、やはり複雑な感慨に包まれる。

「お若いのに、あんな連中を追い払ってくれて……本当にありがとうございました。今後、また戻ってくることがあれば、ぜひゆっくりしていってくださいね」

 アストリッドは淡く微笑み、そっと首を振る。
「いえ、もうここに戻ることはないと思います。もし奴らが再び襲ってきたら……そのときは、私のことなどあてにしないでくださいね。自衛手段を考えてください」

 そう言い切る彼女の瞳は少し冷たい。昨日、ならず者たちを追い払ったのは“アストリッドの気まぐれ”に過ぎない。
 ――かつての“聖女”ならば、もっと積極的に人々を守ろうとしただろう。だが今は違う。彼女には、復讐の炎が胸の底で静かに燃えているからこそ、二度と「無償の奉仕」をするつもりはなかった。
 村人たちは戸惑ったように視線を交わしながらも、アストリッドの本質までは知り得ない。ただ、“彼女には深い事情があるのだろう”と察するだけだ。

「それでも、お礼をさせてください。少ないですけれど、これは旅の糧になるかと……」

 そう言って差し出されたのは、干し肉や乾燥野菜などの食糧、それからほんの少しのコインだった。クラリッサが恐縮しながら受け取る。
「ありがとうございます。わたしたち、これから長い道のりになりそうなので……本当に助かります」
「ご無事を……」

 村人の祈りを背に、二人は村を出た。しばらくは舗装の甘い街道をひたすら西へ。時折、東風が背中を押すように吹き、朝の爽やかな香りが鼻をくすぐる。


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1.無法地帯の風聞

 村を出てから数日後。
 アストリッドとクラリッサは幾つもの小さな町や集落を巡りながら、少しずつ帝国との国境へ近づいていた。辺境地帯というだけあって、住民は王都以上に情報に飢えている反面、外の世界には詳しい。
 雑談の中で耳にする話によると、どうやら王国と帝国の国境付近には、いわゆる“無法地帯”と呼ばれる地域が存在するらしい。そこは王国の領土でありながら統治が行き届いておらず、強欲な領主や盗賊団、あるいは魔物たちが跋扈(ばっこ)しているという。
 アストリッドは、追放されて以来ずっと王国の名声など気に留めていなかったが、そこまで荒れ果てているとなると、少し意外ではあった。
「王国は中央部ばかり目を向けて、辺境を放置しているのかもしれないわね」
「そうでしょうね。昨日泊まった宿の主人も、『近頃は王城からの支援がまったくない』と嘆いていましたし……」

 クラリッサの言葉に、アストリッドは皮肉げに唇を歪める。
「追放されて分かったけど、王国がいかに聖女の力――いいえ、人を使い捨てにしてきたのか、なんとなく見えてくるわ。もし真の聖女だとやらが王都で本当に活躍しているなら、辺境の惨状も救ってやればいいのに」
 自分を切り捨てた者たちが、結局こうして国境地帯を放置しているのだと思うと、呆れるばかりだ。
 同時に、“本物の聖女”とされるミレーユという少女が、国の隅々まで目を向けていない現状を思い描くと、胸に黒い感情がじわりと広がる。

「――まあ、私には関係のない話だけどね」

 そう呟くアストリッドの瞳は冷たく、クラリッサも返す言葉を失う。
 彼女には“かつてのアストリッド”の面影がまだ残っている――人を助けたい、という優しさが。だが今は、“王国を救いたい”という気持ちを捨て去り、ただ静かに前へ進むしかない。


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2.国境の町・ランフレア

 さらに数日をかけて旅を続け、ようやく一つの大きな町にたどり着いた。ここは、王国と帝国を結ぶ主要街道が交差する交易拠点。ランフレアという名の国境の町だ。
 周囲を高い塀で囲まれ、町の入り口には監視塔がそびえ立っている。明らかに先ほどまで巡ってきた小さな集落とは違う、しっかりした防備が整えられている様子だ。
 正門には衛兵が数人立ち、旅人や商人の馬車をチェックしていた。アストリッドとクラリッサも順番を待って列に並ぶ。
 いざ番が来ると、衛兵の一人が素っ気なく言う。
「名前と目的を言え。あと入場税として銀貨2枚だ」

 アストリッドは偽名で「アストリン・ユーレイア」と名乗り、クラリッサも「クラリス・ユーレイア」と、便宜上は姉妹ということにした。そもそも、二人の容姿はそこまで似ていないが、偽名ということで深く追及されないだろう。
 衛兵はとりあえず税を受け取り、そのまま手をひらひらと振るだけだ。
「通れ。滞在日数が長引くなら追加で宿泊税がかかるから覚えておけ」
 投げやりな態度に、クラリッサは少し面食らった表情をするが、アストリッドは気にせず町の中へ足を踏み入れた。

 ランフレアの町は、それまでの辺境とはまるで違っていた。道はそこそこ整備され、多くの露店や宿屋が並ぶ。商人や旅人、冒険者風の武装集団があちこちにおり、まるで小さな王都のような賑わいがある。
 ――しかし、どこか荒っぽい空気も漂っている。人通りが多いということは、それだけトラブルも増えるのだろう。道端には隠し武器を持っていそうな男たちがたむろしていた。

「ここで新しい情報を集められそうね。帝国への道や、途中の危険地帯なんかも」
「はい、お嬢様……いえ、アストリン様。まずは宿を取りましょう。ゆっくり腰を落ち着けて話を聞いた方がいいかと思います」

 アストリッドは軽く頷く。ランフレアほど大きな町なら、まずはちゃんとした宿に泊まって身を休めつつ、地図や噂話を集めることが先決だ。
 二人は道案内をしていた少年に小銭を渡し、評判の良いという宿屋へ向かった。


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3.宿屋での小競り合い

 案内されたのは「風薫るランフレア亭」という、三階建ての立派な宿屋。外観からしてそれなりに高級そうだが、幸い部屋は空いているらしい。受付の女性はニコニコと対応し、愛想が良い。
「いらっしゃいませ、お二人様! お部屋は二階の奥になります。食事付きで銀貨五枚が一泊分ですけれど、よろしいですか?」
「ええ、構いません」
 追放生活を始めてからの節約もあって、資金に余裕はそれなりにある。ここでの情報収集が大事だと考え、アストリッドは多少高くても快適な宿を選んだ。

 フロントで鍵を受け取り、二階の奥へ続く階段を上がる。廊下には柔らかな絨毯が敷かれ、壁には装飾が施されている。辺境とは思えないほどの内装だ。
 部屋に入り、クラリッサがカーテンを開けると、外には広い中庭が見えた。そこでは旅人らしき人々が談笑しており、木陰にはポツンと小さな野外ステージがある。何やら余興でも行われるのだろうか。
「なんだかすごいですね……。王都から離れているのに、こんなに立派な宿屋があるなんて」
「交易で潤っているのかもね。この町は帝国との通商が活発らしいし」

 アストリッドはベッドに腰掛け、軽くため息をつく。少し身体がだるい。長旅の疲れが溜まっているのかもしれない。
 ――そして、彼女の中でうずく奇跡の力もまた、不安定に揺れている。ほんの些細なきっかけで治癒の光が現れたり、まったく出なかったり。まるで彼女の精神状態に左右されているように思えた。

「とりあえず今日は、街を歩いて情報を集めましょう。帝国へ抜ける道や通関手続きとか……」
「はい、わたしも一緒に参ります。お嬢様ひとりで歩くのは危険ですから」

 支度を整え、二人は宿を出ようと廊下に戻る。そのとき、階下のフロント付近から、どこか険悪な気配が伝わってきた。男の怒声と、宿の受付女性の慌てた声が混ざり合っている。

「おい、あの女を見なかったか? 俺たちが探している奴なんだがな……」
「だ、誰のことか分かりません! 他にもたくさんお客さんはいますし……」
「誤魔化すんじゃねえ。髪の長い、金色の……」

 金色の髪――というフレーズを耳にした瞬間、アストリッドの脳裏に嫌な予感が走る。まさか、自分たちを探す者がもう出てきたのか?
 しかし、まだ確定ではない。アストリッドはクラリッサに目配せをし、こっそり二階からフロントを覗き込んだ。
 そこには、数人の男たちが居丈高(いたけだか)に受付に詰め寄っている。いずれも粗野な服装で、腰に剣や棍棒をぶら下げ、まるで自警団か盗賊団のような雰囲気だ。

「お嬢様……」
「少し様子を見ましょう。私たちが追われる覚えは……いや、あるかもしれないわね、あのならず者の一派かもしれないし」

 そう呟いた矢先、男の一人がドスの利いた声で怒鳴る。
「ちっ、見つからないか。まあいい、俺たちはこれからもしばらくここに泊まる。もしあの女を見かけたら、すぐに知らせろよ?」
「は、はい……」

 男たちは受付の横を通り抜け、階段に向かってくる。アストリッドはクラリッサの手を引き、自分たちの部屋へ戻ると、鍵をかけて息を殺す。
 ――足音が近づいてくる。どうやら同じ二階の部屋を取ったようだ。廊下を通る男たちが喋る声が聞こえる。

「金色の髪といえば……王都から追放された女貴族だって噂があるがな」
「へえ、そいつが辺境に紛れ込んでいるってわけか? 俺たちが捕まえれば一攫千金って噂もあるじゃねえか」
「でも、そこまで騒ぐ理由がよく分からん。偽りの聖女だか何だか知らねえが……とにかく、金になるならいいがよ」

 それを聞いた瞬間、アストリッドの背に冷たいものが走る。――どうやら本当に自分を狙う連中らしい。彼らの話す“偽りの聖女”という言葉が、何よりの証拠だ。
 たかが追放された女ひとりを捕まえて、どこに売り込むつもりなのか。王国が裏で懸賞金をかけているのか、それとも誰かが私的に情報を流しているのか――まだ分からない。
 だが、アストリッドとしては非常に厄介だ。もし顔を合わせれば、ろくなことにはならないだろう。

「お嬢様……どうしましょう」
「落ち着いて。今は部屋にいても危険かもしれないわ。でも、街に出れば彼らに見つかる可能性もある……」
 行動するにしても、リスクはつきまとう。このままここに留まるのも得策ではなさそうだ。
 ――しかし、この町を出てすぐ帝国へ向かうには、手続きが必要と聞く。国境通行証や税金の支払い、さらに帝国側の検問もあるらしい。下調べなしで突っ込めば、かえって怪しまれるだろう。

 数分の沈黙の後、アストリッドは決断した。
「街に出て、急いで帝国への通行手続きを進めるわ。ここにもう長く留まっても危ない」
「でも、お嬢様の金色の髪が目立ちますし、あの男たちに見つかったら……」
「……隠せばいいわ。適当な布を買って頭を覆いましょう。目立つ格好はもうやめる」

 幸い、アストリッドは追放の際に高価な装飾品やドレスはほとんど処分してきた。地味なワンピースと外套なら、髪さえ隠せば人混みに紛れやすい。
 彼女は部屋の鏡でさっと髪をまとめ、白い布を頭に巻いて隠す。それだけで大分印象が変わるものだ。

「行きましょう、クラリッサ。……もし、見つかったときは――私が何とかする」
「はい……。気をつけましょう、お嬢様」

 そっとドアを開け、廊下の様子をうかがう。男たちの気配はすでに奥の部屋へ引っ込んだようだ。今のうちにと、二人は足音を忍ばせながら階下へ降り、宿を抜け出した。


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4.帝国へ抜けるための“手続き”

 ランフレアの町の中心部には、大きな掲示板が設置されている。そこには国境通行の手続きや、冒険者向けのクエスト情報などが貼り出されていた。
 アストリッドたちは道行く人の邪魔にならないよう端に寄り、掲示板を熟読する。
 ――帝国へ渡るには、いくつかの方法があるらしい。

1. 正式ルート:王国の出国許可証(通行証)を取得し、国境の関所で帝国側の入国審査を受ける。税金や審査料がかかるが、合法的に国境を越えられる。


2. 商隊に混ざる:大きな商隊は手続きを一括で行うため、個人よりスムーズに越境できることが多い。ただし信用のある商人と契約する必要がある。


3. 裏ルート:密輸や不正通行を斡旋する闇商人もいるようだが、危険が大きい上に法を破ることになる。



 追放されているアストリッドにとって、王国の正式な手続きはやや不安がある。身分を詳細に調べられた場合、偽りの聖女=アストリッド・フォン・ラルディアだとバレる可能性があるからだ。
 しかし、裏ルートに手を出すのはリスクが高すぎる。帝国の検問に捕まってしまえば、そこでも詰む。
 ――となると、“商隊に紛れ込む”方法が比較的安全かもしれない。大きな商隊であれば個々人を深く詮索しないことが多いし、帝国側も商人の信用を重んじるため、スムーズに通るケースが多いと聞く。

「……問題は、商人さんが見つかるかどうか、ですね。わたしたちのような正体不明の二人組を信用してくれるでしょうか」
「お金さえ払えば、あまり深くは問わない商人もいるわ。逆に堅物の商人だと審査が厳しいかもしれないけど……」

 二人は市場へ向かい、商人たちが店を構える区画へ足を運んだ。そこには色とりどりの布や香辛料、帝国の珍しい工芸品などが並んでいて、まるで異国の風が吹き込んでいるようだ。
 あちこちの露店を覗きつつ情報収集していると、「もうすぐ帝国へ向かう大きな商隊がある」という噂が耳に入った。
 ――噂の出所は、ミカトという名の行商人。やや肥満気味の中年男性で、がらがらと荷車を引きながら行き来している。

「帝国に行く商隊? ああ、知ってるぜ。もうすぐこの町を出る予定だが、かなり多くの荷を運ぶらしい。人数も多いから護衛も兼ねて、いろんな奴らを雇っているみたいだ。隊列の規模はそこそこ大きいはずだ」
「その商隊の主(あるじ)はどなたかご存知ですか?」
 クラリッサが丁寧に訊ねると、ミカトは「ファーレン商会だな」と答える。
「ファーレン商会は帝国との取引で大きくなったとこだ。比較的誠実と言われているが……ま、商人に誠実も何もねえさ。結局はカネ次第だ。金さえ払えれば、余計な詮索はしないんじゃないか?」

 商会の信用度がそこそこ高いなら、逆に身元を厳しく見られる可能性もある。しかし、今は選んでいる余裕はないし、不誠実な商人に騙される危険性の方が大きいかもしれない。
 アストリッドは顎に手を当て、しばし考え込む。――できれば、ファーレン商会の隊列に参加を申し込んで、早めに帝国へ向かいたい。ここで例のならず者集団に見つかったら面倒だ。

「ありがとう、ミカトさん。ファーレン商会はどこに行けば会えるのかしら?」
「ああ、町の西側に大きな倉庫がある。そこに商隊をまとめているはずだ。……お嬢ちゃんたち、気をつけろよ? ランフレアは賑わってるが、奴ら“追跡屋”って連中も結構うろついてる。噂によれば、金髪の女を捜しているそうだが」
「そ、そうなんですね。情報ありがとう」

 クラリッサが慌ててお礼を言い、アストリッドとともにその場を立ち去った。――やはり動向が筒抜けになっている可能性は高い。
 急いでファーレン商会へ向かおうと決めた二人は、通りの人波に紛れ込むように歩く。途中でさっと外套のフードを深く被り、さらに目立たないよう気を配った。


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5.ファーレン商会との交渉

 西地区の外れ。周囲は倉庫や馬車の整備工房、荷物を積んだ荷車がずらりと並ぶ物流の拠点となっていた。
 その一角に、確かに“ファーレン商会”と書かれた木製の看板が掲げられた建物がある。入口から見える敷地は広く、大型の馬車が何台も止められていた。まさに大手の商会という印象だ。
 アストリッドは倉庫の門番らしき若い男に声をかける。
「すみません、ファーレン商会の方に会いたいのですが。商隊に加えていただけるか相談したいのです」
 門番の男は訝(いぶか)しげに二人を見やったが、すぐに「待っていろ」と奥へ消える。しばらくすると、身なりの整った初老の男性が出てきた。

「商隊への参加希望、だって? ふむ……申し遅れた。私はこの商会の副長を務めるグレンという者だ」
 グレンと名乗る男性は、落ち着いた表情で二人を見回す。地味な衣装を着た若い女性二人――戦闘要員には見えないし、旅慣れていない雰囲気だが、それなりに品の良さも感じるという印象かもしれない。
「それで、あなた方は一体何者かな? 我々の商隊は、帝国のギルドとの正式な契約に基づき出発する。身元不明の者を無条件で乗せるわけにはいかないんだが」

 当然の質問だ。だが、本当のことを答えられるはずもない。アストリッドは表情を崩さないよう、あらかじめ考えていた偽名と設定を差し出す。
「わたしたちは姉妹です。王都の方で小さな店を営んでいたのですが、事情があって店を畳みまして……。帝国の都市で再出発を図ろうと考えているんです。まだ具体的な商売の予定はありませんが、いずれ帝国で落ち着きたいと思っていて」
 すると、グレンは鼻を鳴らす。
「ほう、商売を畳んだとは、よほどのことがあったのだろうな。では、帝国に移り住む理由は?」
「王都ではあまりうまく行かなかったんです……。客足が伸びなくて。帝国は活気があると聞きましたから」

 明確な嘘ではないが、もちろん事実とも違う。だが、それなりに筋は通っているだろう。グレンは腕を組んで考え込み、やがて「ふむ」と頷いた。
「で、我々の商隊に参加するには、それなりの費用を負担してもらう。護衛の賃金や国境手続きの書類作成など、いろいろと経費がかかるのだ。分かっているか?」
「はい、そのあたりは承知しています。できるだけお支払いしたいと思いますが、いくら必要でしょうか?」

 グレンは腰から小さな手帳を取り出し、すらすらと金額を走り書きして見せる。その数字を見て、クラリッサが息を呑む。
 ――正直、高い。馬や馬車を利用して安全に越境するのだから、安くはないと覚悟していたが、想像を超える額だった。
 だが、アストリッドはここで躊躇している暇はないと判断し、すぐにうなずいた。
「分かりました。その額をお支払いします。出発はいつでしょう?」

 グレンは少し目を見張る。よほど金を持っているのか、それとも無謀なのか。
「実は明後日には出発する予定だ。帝国側の関所で検問を受ける日程も決まっている。……ただし、あなた方が我々の商隊に加わるなら、最低限の注意事項を守ってもらう必要がある。例えば、商隊の隊列を乱さないこと、トラブルを持ち込まないこと……等々、細かい規則があるがよろしいか?」
「承知しております」

 こうして、ひとまずファーレン商会の商隊に参加する話はまとまった。出発は二日後の朝。指定された時間に倉庫へ来て、荷馬車に同乗するか、自分たちの馬を連れて合流するという形だ。
 アストリッドとクラリッサは契約金の一部を先払いし、残りは出発当日に渡すことを約束する。
 グレンは書類を簡単に作成し、アストリッドらに渡した。そこには商会の印章が押され、隊員として登録された証明になるらしい。国境での手続きもこれがある程度カバーしてくれるという。
 ――こうして、帝国へ向けての大きな足がかりを手に入れることができた。

 グレンからの説明を聞き終え、二人は倉庫を出る。外の空気を吸い込みながら、クラリッサがほっとした表情になる。
「やりましたね、お嬢様! これで帝国へ安全に渡れそうです」
「まだ油断はできないわ。あの“追跡屋”たちのせいで出発前に見つかる可能性もあるし、商隊の中にどんな人がいるかも分からないもの」
「そ、そうですね……」

 それでも、一歩前進したのは確かだ。アストリッドは胸を撫で下ろし、「とりあえず宿に戻りましょう」とクラリッサに告げる。――早く帰って、余計なトラブルを招く前に身を隠した方がいい。


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6.再会と動乱の予兆

 夕暮れが迫るランフレアの町。オレンジ色の光が建物の影を長く引き伸ばし、人々の一日を終わりへと導いている。
 アストリッドとクラリッサはなるべく裏通りを通り、慎重に宿へ戻ろうとした。主要な大通りだと“追跡屋”がうろついている可能性があるためだ。
 しかし、裏道に差しかかったところで、アストリッドはハッと足を止める。――視線を感じたのだ。どこか懐かしい、鋭さを帯びた眼差し。

 次の瞬間、薄暗がりの路地から黒い外套の男が姿を現した。
「久しぶりだな、アストリン――いや、アストリッドと呼ぶべきか?」

 低く響く声。漆黒の長い外套に、その下には鋭い剣の柄が覗いている。
 ――そう、間違いない。かつて魔獣に襲われかけたとき助けてくれた、あの青年・ジークだ。
 クラリッサは驚きのあまり声が出ない様子。アストリッドも唖然としてしまう。

「あなた……ジーク……。どうしてここに……」
「俺もいろいろあってな。帝国へ向かう途中、この町に立ち寄っていた。そしたら“金髪の女”を捜している厄介な連中がいると聞いてね。もしやと思って、探してみたら案の定、引っかかったというわけだ」

 ジークはあのときと変わらぬ落ち着いた表情で、視線だけで二人を安心させるような雰囲気を纏っている。
「……偶然かしら? わざわざ私を探す理由なんてあるの?」
 アストリッドが問いかけると、ジークは苦笑めいた笑みを浮かべた。
「さあな。別に借りを返してほしいわけじゃないが、君の力には興味がある……と言ったら、信じるか?」
「力……?」

 以前、魔獣から少年を守ろうとした際に、アストリッドは青白い光を放ち、その場を凌いだ。ジークはそれを見ていた。
 しかも、あれはかつての聖女としての癒しの光とは少し違う、不思議な力だった。ジークの目には強く印象に残ったのだろう。

「お嬢様……この方、大丈夫でしょうか」
 クラリッサが心配そうに囁く。ジークとの関係を知っているとはいえ、彼の素性は依然として謎に包まれたまま。それに、彼が“追跡屋”と結託している可能性も皆無ではない。
 アストリッドはジークをまっすぐ見つめ、言葉を選ぶ。
「……私の力に興味があるなら、何をするつもり? 私にはもう、王国を救う義理なんてないし、あなたに協力する気も――」
「勘違いするな。俺は自分の目的のために動いている。君の事情には口を挟むつもりはない。だが、俺が知りたいことがあるんだ」

 ジークは外套の内側から、古びた文書の切れ端のようなものを取り出した。そこに描かれているのは不思議な紋章と文字。王国の言語とは違う、古い文字体系のように見える。
「これについて心当たりはないか? どうも“聖女”や“神殿”にまつわる古文書らしいんだが、俺の知り合いにも解読できない。王国の高位聖職者なら分かるかもしれないが、そう簡単に尋ねられないからな」

 アストリッドは文書の切れ端を覗き込む。そこには円環状に並んだ文字や記号らしきものが描かれている。微かに思い当たる節がある。
 ――かつて神殿で学んだとき、古代の聖女に関する伝承文献に似たような記号があった気がする。
 だが、詳細までは思い出せない。それに、今は自分がそんなことに協力する義理もない。

「さあ、知らないわね。私、神殿の人間じゃないもの」
 素っ気なく言い放つと、ジークは瞳を細める。
「そうか。ま、いいさ。これから帝国へ行くつもりなら、またどこかで会うだろう。そのとき、もし協力する気になったら声をかけてくれ」

 言いたいことだけ言って、ジークはひらりと身を翻す。だが、数歩進んだところで、ちらりと振り返った。
「ところで、奴ら“追跡屋”が動いているのは確かだ。あちこちで君と同じ特徴――金髪の女を探している。今夜あたり、町の周囲を固めるかもしれない」
「……! そんな……」

 アストリッドの顔が強張る。もし本当に町の出入口を封鎖されたら、商会の倉庫にも行きづらくなる。出発が明後日なのに、それまでに捕まったら何もかも台無しだ。
「まあ、頑張れよ。俺も今は“追跡屋”を相手にしている暇はないからな」

 ジークはそれだけ言い残すと、宵闇の路地へと紛れ込むように姿を消した。

「……お嬢様、今の方は敵なのか味方なのか……」
「さあ、分からないわ。でも、私に直接危害を加える気はなさそうね。それに、あの人は確かに強い。魔獣を一瞬で仕留めるほどに……」

 アストリッドはほんの少し胸を騒がせながら、ジークが指摘した“今夜中に町を封鎖されるかもしれない”という事実に焦りを覚える。
 ――どうする? 明後日の商隊出発まで、ここで隠れ切るのは難しいかもしれない。ならば、今夜のうちに動くべきか。

 だが、商会の出発は明後日と決まっている。今すぐ無理やり帝国との国境を越えても、正式な手続きなしでは危険すぎる。
 考えあぐねていると、クラリッサが意を決したように口を開く。
「お嬢様、わたしたち、一度宿に戻りましょう。もし今夜のうちに行動するにしても、ちゃんと荷物の整理が必要ですし……」
「……そうね。余計な迷いを断つためにも、一度帰って計画を練るわ」

 覚悟を決め、夜の街を宿へと急ぐ二人。その背後には、既に不穏な影がちらついていた。ランフレアの町は、夜の闇とともに緊張感を増していく――。


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7.夜襲と決断

 宿へ戻ったのは、すっかり日も落ちた頃だった。通りには明かりが灯されているが、昼間の賑わいとは打って変わって、まばらに人影が行き交うだけ。
 アストリッドとクラリッサは周囲に警戒を怠らず、どうにか宿の二階へたどり着いた。ドアを開けて、中に転がり込むように入り、鍵をかける。

「ふう……無事に戻れましたね」
「ええ。だけど、気が抜けないわ。あの追跡屋たちが今夜中に動けば、明日には完全に封鎖されるかも……。商会の人たちは大丈夫なのかしら」

 不安と焦りで頭が混乱してくる。商隊が潰される可能性だってあるし、自分たちが捕まるのも時間の問題かもしれない。
 アストリッドは頭を振って、意識をはっきりさせる。――いざとなれば、自分の力を使ってでも突破しなければならない。

「クラリッサ、今夜は交代で寝ましょう。私は先に少し休むから、あなたは起きていて。2、3時間したら交代して」
「はい、分かりました……。お嬢様、どうか無理はしないでくださいね」

 そうしてアストリッドはベッドに横になり、できるだけ警戒を緩めずに浅い眠りに落ちる。クラリッサはランプを小さく灯したまま、ドアの前で椅子に座り、時折窓の外を覗きながら夜の帳を見守った。

 ――それからどれくらい経っただろうか。夜更けも深まり、町の灯火が一層静かになった頃、廊下の先でドスドスと重い足音が響き始めた。

「……! お嬢様、起きてください!」

 クラリッサの呼びかけに、アストリッドははっと目を覚ます。すぐに立ち上がり、荷物の袋を手に取る。
 足音は複数。外から宿に入ってきたのか、階段を上がり、何かを探しているようだ。男たちの低い声が聞こえる。

「金髪の女が泊まっているはずだ……部屋を片っ端から当たれ」
「へへ、また一山当てられるかもしれねえな」

 ――来た。追跡屋か、あるいは彼らの仲間だろう。ドアを破られれば、もう逃げ場はない。
 クラリッサは震えながら小声で呟く。
「ど、どうしましょう……お嬢様」

 アストリッドは胸の奥の奇跡の力を意識する。何度か実戦で使ったが、今の自分にどれほどの威力があるか分からない。治癒魔法が中心のはずが、なぜか攻撃的な火花を帯びることもあった。
 ――もし襲いかかられたら、多少強引でも切り抜けなければならない。

(落ち着いて……魔法なんて大層なものじゃない。けれど、少しでも相手をひるませるぐらいはできるかもしれない)

 ドアの外で、男たちが扉をひとつずつ開けながら確認している気配がする。隣の部屋の住人が悲鳴を上げ、罵声が飛び交う。いよいよ時間の問題だ。

「……クラリッサ、窓から逃げられるかしら」
「二階ですし、下に目立つような足場は……あっ、でも、裏庭側に古い蔦(つた)が這っていました。そこを伝って降りられるかもしれません」

 僅かな望みにかけ、アストリッドとクラリッサは急いで窓へ向かう。カーテンを開けると、確かに壁に沿って蔦のような植物が伸びている。夜目で確認する限り、太さもそこそこあり、慎重に降りればなんとかなるかもしれない。
 一方、ドアのすぐ外からは男の声が聞こえてくる。
「ここだ。まだ確認していない部屋は……」

 アストリッドは喉がカラカラになるのを感じながら、窓枠に足をかける。
「クラリッサ、私が先に降りるから、あなたも続いて……!」
「は、はい……」

 二人が窓から身を乗り出した瞬間、部屋のドアがガン! と大きく叩かれた。
「おい、いるんだろ! 開けろ!」
 返事をしなければ、すぐにでも破られるだろう。

 アストリッドは恐怖を必死に抑え、蔦に手を伸ばして慎重に外壁を降り始める。夜風が顔に当たり、心臓が爆音を立てている。
 ――ドアを破る音が聞こえた。奴らが勢いよく突入してきたのだろう。

「いないじゃねえか……? 窓……くそっ、逃げたか!」

 男たちの怒声が聞こえる。いつ外に飛び出してくるか分からない。アストリッドは歯を食いしばりながら、できるだけ素早く蔦を伝う。
 下まで数メートルほど。足を滑らせそうになるが、何とか着地できる位置まで降りる。
 地面は草地で、そこまで硬くはなさそう。深呼吸して心を決め、最後は飛び降りる。

「っ……!」

 着地の衝撃で膝を打ったが、何とか踏みとどまる。すぐ上を見上げると、クラリッサも必死に降りてきている。
 ――だが、そのとき。宿の窓から男が顔を出して、こちらを見下ろした。
「いたぞ! 下だ! おい、回り込め!」

 乱暴な声が響き、上階から別の男が飛び降りてこようとしている。逃げ場はすぐに囲まれてしまうかもしれない。
 アストリッドはクラリッサの腕を引き、「走って!」と叫ぶ。暗い裏庭を抜け、石壁の隙間を抜ければ、町外れへ続く路地に出られるはずだ。
 足音と怒号がすぐ後ろまで迫ってくる。もう、魔力を使って相手をひるませるしかないか――と思いかけたとき。

「……そっちだ! 行かせるな!」
「はああっ!」

 不意に、横合いから素早い影が現れ、追っ手の男たちを薙ぎ払うように剣を振るった。
 月明かりの下に浮かぶ黒い外套――ジークだ。

「まだこんな夜中に行動するとは、ずいぶん手回しがいいじゃないか」
 ジークは低く呟きながら、ひらりと身を翻して男たちの攻撃をかわす。鋭い斬撃が夜の空気を切り裂き、複数の男を一度に怯ませる。
 そのあまりの華麗さに、アストリッドもクラリッサも一瞬見とれてしまう。追っ手たちは凶暴なわりに統率が取れておらず、ジークに次々と打ちのめされていく。

「今のうちだ。早く行け!」
 ジークが短く叫ぶ。アストリッドはハッと我に返り、クラリッサとともに裏庭の外れを突破した。

 真夜中のランフレアの街を駆け抜け、息を切らしながら物陰に身を潜める。どうやら追手はジークが引き受けてくれたのか、追ってくる気配はない。
 クラリッサが肩で息をしながら、「はぁ、はぁ……助かりましたね……」と声を絞り出す。アストリッドも心臓の鼓動がなかなか収まらない。
「ええ……あの人、どうして……」

 ジークが追っ手と戦う動機は分からないが、彼がいなければ捕まっていたのは確実だ。
 ――しかし、ここに留まるのはもう限界だろう。宿に戻るのも不可能。商隊の出発は明後日のはずなのに、それまで身を隠す場所がない。

「もう、こうなったら……商会の倉庫に行きましょう。あそこなら荷馬車が並んでるし、警備もいるはず。ファーレン商会の副長さんに相談して、一日早く出発させてもらえないか頼んでみるとか」
「で、でも、そんな無茶をして大丈夫ですか? 契約があるにしても、勝手に予定を変えられないんじゃ……」
「……それでも、じっとしていたら捕まるだけよ。もし商会がダメなら、私たちは別の道を探すまで」

 暗闇の中、二人はしっかり手を握り合う。どんな危険があっても、一緒に切り抜けると誓ったからだ。
 アストリッドはもう一度、深い呼吸で心を落ち着かせ、裏通りを使ってファーレン商会の倉庫を目指し始める。今はただ、そこに逃げ込むしか術がない。

 ――夜のランフレアは、まるで夜盗の住処(すみか)のように不気味な静寂に包まれていた。明け方までまだ数時間。追跡屋たちの検問が敷かれる前に、ファーレン商会へ辿り着くことができるのか――彼女たちの足音が、宿命を刻むように石畳を打ち鳴らした。

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