『勇者パーティーを追放されたが、俺のスキルは“通常の3倍”強かった』

霧島

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第2章4節 新たな雑用係、そして裏切り

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第2章4節 新たな雑用係、そして裏切り

「ようやく、まともな奴が来たな」
 勇者レオンは、満足げに腕を組んだ。

 彼の視線の先に立つのは、黒髪をきっちり撫でつけた青年――“ゼイド”。
 年齢は二十代前半、落ち着いた物腰と丁寧な口調が印象的だった。

「改めまして、ゼイドと申します。前は商隊で物資管理と帳簿をしていました。皆様のご負担を減らせるよう尽力いたします」

「よし、気に入った!」
 レオンは満面の笑みを浮かべる。
「聞いたかルナ、今度こそ外れじゃねぇぞ!」
「ほんとに? 前の子は荷物を全部落として逃げたわよね」
「アイツは根性がなかっただけだ。ゼイドは違う、目が真面目だ」
「そうね……目つきは悪くないわね」

 ルナは慎重に彼を観察した。
 礼儀正しいが、どこか目の奥に冷えた光がある――そんな印象を受けた。
 しかし、疲弊しきったパーティーにとって、彼のような“しっかり者”は渡りに船だった。

「俺、弓の手入れとか苦手だから助かるぜ。矢の残数管理、頼めるか?」
「もちろんです、カイン様。矢羽根の角度まで揃えておきます」
「おお、完璧じゃん!」

 “ゼイド”は瞬く間に信頼を得ていった。
 食料の在庫管理、装備の修繕、依頼の申請、報酬の受領。
 今までユウマが黙々とこなしていた仕事を、彼は完璧にやってのけた。

「よく動くし、口も利かねぇ。理想的な雑用だな!」
「おいレオン、言い方!」
「褒めてんだよ!」

 軽口が飛び交い、久しぶりにパーティーに笑いが戻った。


 ---

 三日後。
 パーティーは再び山岳地帯へ向かっていた。

 今回はSランクに近い任務――“双頭のサーペント討伐”。
 二つの頭を持つ巨大な蛇で、毒の息と尾の一撃が脅威だ。

「前回の反省を活かして、今回はゼイドが後方支援だ」
「了解しました。物資と魔石の記録もリアルタイムで行います」
「お前、有能すぎるな……うちに来て正解だったぜ」

 レオンは笑い、仲間も同調する。
 彼らの中に、もはやユウマの名を思い出す者はいなかった。

 森を抜け、湿地帯に入る。
 腐臭と霧が漂い、ぬかるんだ地面に足を取られる。

「警戒を怠るな! 奴はこの辺に——」
 レオンの言葉を遮るように、地面が揺れた。

 ズズズ……ッ!

 水面を割って、巨大な蛇が頭をもたげる。
 片方の頭が毒霧を吐き、もう片方が牙を剥いた。

「来るぞッ!」

 剣が唸り、矢が放たれ、光の盾が展開する。
 激しい戦闘が始まった。

 最初は順調だった。
 レオンの剣は鋭く、ルナの回復も正確、カインの矢も確実に急所を捉える。
 だが——

「ポーションが……足りない!?」
 カインが叫ぶ。
「嘘だろ!? 今朝確認したはず!」
「僕が補給した分は、確かに十本ありましたが……」
 ゼイドが淡々と応える。
「おかしいですね。袋の底を確認してみてください」

 焦りながら袋をひっくり返す。
 出てきたのは、空の瓶と偽物の回復薬だった。

「なっ……誰がこんなことを!」
「落ち着け、後で調べる! 今は戦うぞ!」

 レオンが前に出ようとした瞬間、剣の重心がズレた。
「おい、剣が……おかしい!」
 視線を落とすと、柄の留め具が緩んでいる。
 戦闘中にそんなことが起こるはずがない。

 ロックリザードの尾ではない。
 これは“人為的な仕込み”だ。

 だが、気づいた時には遅かった。
 サーペントの尾がレオンの体を叩き、彼は岩に激突した。

「リーダーッ!」
 ルナが駆け寄るが、すぐに毒霧が広がる。
「ぐっ……う、動けない……」

 カインが矢を構えるも、弦が突然切れた。
 彼の表情が凍る。
「嘘だろ、さっきまで整備したばかりなのに……!」

 絶望が広がる中、ゼイドだけが冷静に呟いた。
「なるほど……勇者パーティーと呼ばれるのも、今は昔、ということですね」

「ゼイド……?」
 レオンが呻きながら顔を上げる。

「あなた方の評判を落とすよう依頼された者です。
 “勇者パーティーを地に落とせ”――それが私の任務でして」

「な……んだと……!」

 ゼイドは肩をすくめ、淡く笑った。
「荷物と一緒に、装備、薬、資金、全ていただきます。
 どうかご安心を。命までは取りません」

「裏切ったな……っ!」
「裏切るほど、信頼されていた覚えはありませんよ」

 そう言うと、ゼイドは軽やかに跳び退き、木立の影に消えた。
 荷袋の金具が開き、中のアイテムが一気に吸い取られるように消える。
 転送魔法――。

「アイツ、転移持ちか!?」
「そんな……どうやって入手したの!?」

 残された三人は、立つこともできなかった。
 毒霧が薄れ、サーペントが森の奥へと姿を消す。
 獲物を取り逃がしたが、彼らにはそれを追う力も気力も残っていなかった。


 ---

 夜。
 かつて“勇者パーティー”と呼ばれた彼らは、安宿の片隅に座っていた。
 テーブルの上には、金貨が数枚。
 ポーションも、食料も、全て失われていた。

「……また、最悪の日だな」
 レオンが呟く。
 誰も返事をしない。

 ルナは拳を握りしめて震えていた。
「私たち、どうしてこうなったの……」
「運が悪いだけだ。たまたまだ」
「まだ言うの? もう三連敗よ。偶然で片づけられる問題じゃない!」
「じゃあ、何だって言うんだよ!」
「……私たちが、“何か”を失ったからじゃない?」

 沈黙。
 その“何か”が何なのか、誰も言葉にできなかった。
 彼らの記憶の奥に、かつていた“ただの荷物持ち”の姿が一瞬よぎる。
 だが、意地とプライドが、その名を口にすることを許さなかった。


 ---

 翌朝、ギルドの掲示板に新しい張り紙が貼られた。

 > 【勇者パーティー Bランク降格】
 最近の任務失敗および管理不備による評価見直しのため。



 それを見た瞬間、レオンの拳が震えた。

「……Bランクだと……? 俺たちが……!」

 周囲の冒険者たちが囁く。
「ほら、聞いたか? あの勇者パーティー、もうBランクだってよ」
「ま、荷物持ちに全部押し付けてたツケだろ」

 その言葉に、ルナの顔が蒼ざめる。
「荷物持ち……」

 だが、レオンは耳をふさいだ単語ルビ
……黙れ……!」
 怒鳴り声がギルドに響く。だが、その声には、も

 そして、彼らが失った“ただ一人の男”こそ、今や別の場所で、
 S++ランクのチームを支える“最強の支援者”として名を上げ始めていたの
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