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第3章2節 勇者たちの再会と、耳に届く“最悪の噂”
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第3章2節 勇者たちの再会と、耳に届く“最悪の噂”
灰色の雲が垂れ込める午後。
ギルド本部の喧騒の中、勇者レオンの姿はどこか沈んでいた。
「……報酬、まだ保留か?」
カウンター前で、受付嬢が苦笑しながら答える。
「討伐証明の不備が解消されるまで、お支払いはできません」
「だから何度も言ってるだろ! 俺が倒したって言ってるんだ!」
「規則です」
「くそっ……!」
後ろでルナとカインが顔を見合わせる。
「もう何度目だっけ、こういうの」
「七度目。……最近はギルドの人たちも慣れてきたみたいだな」
ルナはため息をつき、椅子に沈み込む。
「私たち、いつからこんな扱いになったのかしらね」
かつて“王国最強”と讃えられた勇者パーティー。
ギルドの看板依頼を請け負い、名声と富を集めていた日々は、今や遠い昔。
装備は傷だらけ、支給も遅れ、次第に依頼主からの信頼も薄れていった。
「まあ、気にすんな。俺たちはまだ強い」
レオンは虚勢を張るように拳を握る。
「運が悪い日が続いてるだけだ」
その時だった。
ギルドの奥でざわめきが起こった。
冒険者たちが口々に名前を囁く。
「アルテミスが帰ってきたぞ!」
「Sランク昇格試験、合格だって!」
「しかも“支援士ユウマ”がすげぇって話だ!」
レオンたちの動きが止まる。
聞き慣れた名前が、耳の奥を刺した。
「……ユウマ?」
ルナが呟く。
カインも苦々しく顔をしかめた。
「まさか、あのユウマか?」
「同じ名前なんて珍しくないだろ」
レオンは鼻で笑ったが、その声はかすかに震えていた。
「でも“支援士ユウマ”って言ってたぜ。
噂じゃ、支援した仲間のステータスを三倍に上げるスキル持ちらしい」
近くの冒険者が無邪気に言葉を続ける。
「AランクパーティーをS++まで押し上げたとか! 今じゃギルドの期待の星さ!」
「三倍……?」
ルナが小さく呟いた。
「……聞いたことがある気がする。昔、ユウマが何かそんなことを——」
「やめろ」
レオンの声が低く響いた。
「そんな話、あいつの自慢だろ。どうせ誇張してたんだ」
「でも……」
「黙れ!」
周囲の冒険者たちがレオンの怒鳴り声に一斉に振り向く。
レオンは舌打ちし、拳を握りしめた。
「……くだらねぇ。荷物持ちが何様のつもりだ」
カインが視線を逸らしながら呟く。
「……でも、俺たちが追い出した後、どうしてあいつだけ……」
「運だ。たまたま拾われただけだ!」
「でも、俺たちはたまたま落ちぶれたのか?」
「うるさいって言ってんだろ!!」
怒声が響き、椅子が倒れる音が鳴った。
ギルドの空気が一瞬で冷え込む。
レオンは深呼吸をし、額を押さえた。
「……チッ、悪い。ちょっと外に出る」
扉を乱暴に押し開け、外気に触れる。
冷たい風が頬を打ち、彼の怒りをさらに煽った。
(ふざけやがって……。あの腰抜けが、今さら英雄気取りか)
(どうせ、女どもにチヤホヤされて勘違いしてるだけだ)
(俺が本気を出せば、すぐに——)
しかし、拳を握る手が震えていた。
力の抜けた指先。
それが、“自分が本当に弱くなっている”という事実を雄弁に語っていた。
---
一方その頃。
ギルドの2階ラウンジでは、アルテミスのメンバーたちが昇格祝いの席を囲んでいた。
大きな丸テーブルの上には、香ばしい焼き肉と果実酒。
ミリアとエルフィが早速盛り上がっている。
「わぁー! これSランク祝いの料理!? 豪華~!」
「見てこのお肉、分厚い! あぁ、頑張って良かった!」
アリーナは穏やかに笑いながらグラスを掲げた。
「ユウマ、あなたにも乾杯させて」
「え、俺も?」
「当然でしょ。あなたがいなきゃ、私たちはここまで来られなかった」
ユウマは少し照れくさそうにグラスを持ち上げた。
「……ありがとう。みんなのおかげです」
「真面目すぎ~」ミリアが笑う。
「いいのよ、その真面目さがアルテミスの強みなんだから」
エルフィも頷いた。
「ええ。それに――」
「それに?」
「ユウマくんの“支援フィールド”の心地よさって、本当に癖になるのよ」
「ちょっと、それ褒め方おかしくない?」ミリアが吹き出した。
笑い声が広がり、アリーナも柔らかく笑った。
「ねぇユウマ。あなた、これからどうしたい?」
「……え?」
「Sランクになった今、目標を聞かせてほしいの」
ユウマは少し考えてから答えた。
「みんなを支えるのが俺の役目です。
このチームが“最強”って呼ばれるまで、全力でサポートします」
その真っ直ぐな言葉に、三人の女性は一瞬、息を呑んだ。
そしてミリアがニヤリと笑う。
「うわ、そういうの言われると惚れそう」
「ミリア、飲みすぎ」エルフィが軽くツッコミを入れる。
笑い合う彼らを、周囲の冒険者たちが憧れの目で見つめていた。
「すげぇ……本物のSランクって、オーラが違うな」
「特にあの男、支援士のくせにまるでリーダーみたいだ」
その言葉を耳にしながら、ユウマは小さく息を吐いた。
(俺なんかが、リーダーみたいなんて……)
だがその瞳は、どこか誇らしげでもあった。
---
夜。
宴が終わり、街を歩くユウマの耳に、ふと遠くの怒鳴り声が届いた。
「てめぇら、何見てんだ!」
「ひっ……!」
その声に聞き覚えがある。
街灯の陰から覗くと、そこには――レオンたち勇者パーティーの姿があった。
彼らは酔いつぶれ、通行人に絡んでいた。
「チッ……くだらない」
ユウマは一瞬足を止めたが、すぐに背を向けた。
“彼ら”はもう、自分の知っている仲間ではなかった。
月明かりの下を歩きながら、ユウマは心の奥で呟いた。
(ありがとう、レオン。
君たちが追い出してくれなかったら、俺はここにいなかった)
静かな夜風が吹き抜けた。
それはまるで、過去との決別を告げる祝福の風のようだった。
---
灰色の雲が垂れ込める午後。
ギルド本部の喧騒の中、勇者レオンの姿はどこか沈んでいた。
「……報酬、まだ保留か?」
カウンター前で、受付嬢が苦笑しながら答える。
「討伐証明の不備が解消されるまで、お支払いはできません」
「だから何度も言ってるだろ! 俺が倒したって言ってるんだ!」
「規則です」
「くそっ……!」
後ろでルナとカインが顔を見合わせる。
「もう何度目だっけ、こういうの」
「七度目。……最近はギルドの人たちも慣れてきたみたいだな」
ルナはため息をつき、椅子に沈み込む。
「私たち、いつからこんな扱いになったのかしらね」
かつて“王国最強”と讃えられた勇者パーティー。
ギルドの看板依頼を請け負い、名声と富を集めていた日々は、今や遠い昔。
装備は傷だらけ、支給も遅れ、次第に依頼主からの信頼も薄れていった。
「まあ、気にすんな。俺たちはまだ強い」
レオンは虚勢を張るように拳を握る。
「運が悪い日が続いてるだけだ」
その時だった。
ギルドの奥でざわめきが起こった。
冒険者たちが口々に名前を囁く。
「アルテミスが帰ってきたぞ!」
「Sランク昇格試験、合格だって!」
「しかも“支援士ユウマ”がすげぇって話だ!」
レオンたちの動きが止まる。
聞き慣れた名前が、耳の奥を刺した。
「……ユウマ?」
ルナが呟く。
カインも苦々しく顔をしかめた。
「まさか、あのユウマか?」
「同じ名前なんて珍しくないだろ」
レオンは鼻で笑ったが、その声はかすかに震えていた。
「でも“支援士ユウマ”って言ってたぜ。
噂じゃ、支援した仲間のステータスを三倍に上げるスキル持ちらしい」
近くの冒険者が無邪気に言葉を続ける。
「AランクパーティーをS++まで押し上げたとか! 今じゃギルドの期待の星さ!」
「三倍……?」
ルナが小さく呟いた。
「……聞いたことがある気がする。昔、ユウマが何かそんなことを——」
「やめろ」
レオンの声が低く響いた。
「そんな話、あいつの自慢だろ。どうせ誇張してたんだ」
「でも……」
「黙れ!」
周囲の冒険者たちがレオンの怒鳴り声に一斉に振り向く。
レオンは舌打ちし、拳を握りしめた。
「……くだらねぇ。荷物持ちが何様のつもりだ」
カインが視線を逸らしながら呟く。
「……でも、俺たちが追い出した後、どうしてあいつだけ……」
「運だ。たまたま拾われただけだ!」
「でも、俺たちはたまたま落ちぶれたのか?」
「うるさいって言ってんだろ!!」
怒声が響き、椅子が倒れる音が鳴った。
ギルドの空気が一瞬で冷え込む。
レオンは深呼吸をし、額を押さえた。
「……チッ、悪い。ちょっと外に出る」
扉を乱暴に押し開け、外気に触れる。
冷たい風が頬を打ち、彼の怒りをさらに煽った。
(ふざけやがって……。あの腰抜けが、今さら英雄気取りか)
(どうせ、女どもにチヤホヤされて勘違いしてるだけだ)
(俺が本気を出せば、すぐに——)
しかし、拳を握る手が震えていた。
力の抜けた指先。
それが、“自分が本当に弱くなっている”という事実を雄弁に語っていた。
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一方その頃。
ギルドの2階ラウンジでは、アルテミスのメンバーたちが昇格祝いの席を囲んでいた。
大きな丸テーブルの上には、香ばしい焼き肉と果実酒。
ミリアとエルフィが早速盛り上がっている。
「わぁー! これSランク祝いの料理!? 豪華~!」
「見てこのお肉、分厚い! あぁ、頑張って良かった!」
アリーナは穏やかに笑いながらグラスを掲げた。
「ユウマ、あなたにも乾杯させて」
「え、俺も?」
「当然でしょ。あなたがいなきゃ、私たちはここまで来られなかった」
ユウマは少し照れくさそうにグラスを持ち上げた。
「……ありがとう。みんなのおかげです」
「真面目すぎ~」ミリアが笑う。
「いいのよ、その真面目さがアルテミスの強みなんだから」
エルフィも頷いた。
「ええ。それに――」
「それに?」
「ユウマくんの“支援フィールド”の心地よさって、本当に癖になるのよ」
「ちょっと、それ褒め方おかしくない?」ミリアが吹き出した。
笑い声が広がり、アリーナも柔らかく笑った。
「ねぇユウマ。あなた、これからどうしたい?」
「……え?」
「Sランクになった今、目標を聞かせてほしいの」
ユウマは少し考えてから答えた。
「みんなを支えるのが俺の役目です。
このチームが“最強”って呼ばれるまで、全力でサポートします」
その真っ直ぐな言葉に、三人の女性は一瞬、息を呑んだ。
そしてミリアがニヤリと笑う。
「うわ、そういうの言われると惚れそう」
「ミリア、飲みすぎ」エルフィが軽くツッコミを入れる。
笑い合う彼らを、周囲の冒険者たちが憧れの目で見つめていた。
「すげぇ……本物のSランクって、オーラが違うな」
「特にあの男、支援士のくせにまるでリーダーみたいだ」
その言葉を耳にしながら、ユウマは小さく息を吐いた。
(俺なんかが、リーダーみたいなんて……)
だがその瞳は、どこか誇らしげでもあった。
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夜。
宴が終わり、街を歩くユウマの耳に、ふと遠くの怒鳴り声が届いた。
「てめぇら、何見てんだ!」
「ひっ……!」
その声に聞き覚えがある。
街灯の陰から覗くと、そこには――レオンたち勇者パーティーの姿があった。
彼らは酔いつぶれ、通行人に絡んでいた。
「チッ……くだらない」
ユウマは一瞬足を止めたが、すぐに背を向けた。
“彼ら”はもう、自分の知っている仲間ではなかった。
月明かりの下を歩きながら、ユウマは心の奥で呟いた。
(ありがとう、レオン。
君たちが追い出してくれなかったら、俺はここにいなかった)
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