麻布先輩は俺のもの

rin of the chanchan

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かんだ、だん2

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にしても、不便だよなぁこっちにしか自販機ないのって。

まあ、俺にとっちゃ良い口実が出来て好都合だけど。

実際、自分でも思ってる。たかが1人の先輩の為に学校のレベル下げてまで何やってんだって。

カッコ悪い。

俺がこんな執着する人間だって、こうちゃんや秋葉にバレたくない。

…まふにはバレたけど。

アイツはいつも、どこか鋭い。
幼馴染というのもあるだろうが、ちょっと様子がおかしかった(本人曰く)からって、普通、その対象人物が麻布先輩だってことまで分かるか?

…俺、そんな分かりやすいんだろうか。
失敗した、アイツと隣の席になるとは。もっとまふの居ないところでじっくり眺めていた方が良かったか。

って、それどこだよ。俺の窓際の席から、ぴったり延長線上に麻布先輩がいる。
教室からの眺めが一番良いんだぞ。

そんな事を悶々と考えながら歩いていたら、あっという間に自販機の前まで来ていた。

財布を取り出して自販機の列を目で追う。

「えーと、コーヒーコーヒー…」

「麻布って気持ち悪いよな」

身体がピタッと止まった。

…え?

声の主であろう足音が、こちらに向かって近づいてくる。

「アザブ?ああ、あざぶちよ?二組の」

は?
きもちわるい?
だれが?

「そうそう、なんか、面でも被ってるみてぇじゃね?俺合唱委員で会う時あるんだけどさ、人と顔合わせる時、ずっとニコニコニコニコしてんの」

その二人組は歩みを止めて、俺の後ろに並んだ。

「あ、分かる分かる、笑ってるくせに目が笑ってない?つーか」

「それだわそれ!顔は良いけど、あの胡散くせー笑顔が気持ちわりぃ」

「俺も苦手だわ麻布って人。てか皆結構苦手意識持ってんじゃね、あの人に」

「はは、あーゆータイプ得意な奴いねーだろ」



 なんだ、こいつら。



ふざけてんのか。



俺は、財布から出した百円玉を、無意識に固く強く握りしめているのに気づいた。

いやいやいやいや。

落ち着け、落ち着け。

先輩だぞ。
そりゃ、人にも好き嫌いくらいあるだろ。当たり前じゃないか。
この人達に悪気はないんだ。

「でさ、こないだ松田にやらせてみたんだよ、『ウソコク』!」

…は?

「うそこく?何それ」

「は、お前知んねーの?!嘘の告白って意味の『ウソコク』だよ、罰ゲームとかでよくやるアレ」

「あー、あれか!え、やったの?」

「松田がな」

「え、麻布に?」

「そうそう!」

…は?

「まっじで?!え、どうなったのそれ」

いや、まてまてまて。どうなったのじゃねーよ。もっと他に言うことあるだろ。

「いや言ってもいいけどさ、お前絶対人に言うなよ!」

「言わない言わない俺口堅いもん!で、何どうなったの」

「…っぶ、はははっ、あはっ」



なんだ。



何笑ってんだ、こいつ。




「はあ?!何だよお前、焦らすなよ~。早く言えって…」

「あの」

俺はそいつらの肩に手をポンと乗せ、ニッコリと微笑んだ。自然と肩を掴む手に力が入る。

「空きましたけど」
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