魔法紹介者が人々を救うお話

第1章

第3話 魔法変更

「どういうことですか?」

　女性の頭の中はおそらく？マークでいっぱいだ。

　ゆっくり説明しようとすると、

「騙してごめんなさい。」

　ルカが先に話した。

「実はあなたが政府のスパイなのではないのかと疑っていたんです。」

「つまり魔法を変えることができるの?」

「はい！」

　ルカがここまで張り切るのも珍しいと思っていると、女性は早くしろと言わんばかりの顔をしていた。

　まあ騙していたのだから気分は良くないか。

「じゃあ魔法を紹介するにあたって2つの条件があります。1つは魔法を変更する際、この街には来れなくなります。もう1つはこの店に来たという記憶がなくなり元の魔法が何だったのかも思い出せなくなります。それでも構いませんか?」

　女性は少し考えて、

「構わないわ。」

「分かりました。ではどのような魔法を希望しますか?」

　女性は残ったコーヒーを全部飲み、

「出来るだけすごい魔法にしてほしいわね。」

　少し驚いてしまった。政府に捕まる危険があるのになぜそのようなことを望むのか。

「それはなぜですか?」

　女性はまた考え込み、しばらくすると、

「私はアール家の娘なの。」

　アール家といえばこの国ではかなり有名な財閥の1つだ。

「私は3人姉妹の末っ子なんだけどね、姉2人はかなりの魔法使いなの。もちろん政府に捕まる可能性があるから魔法はほとんど使わないわ。その中でも私は魔法はかなり弱いほうで家での立場がないの。」

　上流階級ならではの悩みだと思う。

「だからと言って政府に捕まる危険があるにもかかわらず、強い魔法にするんですか?」

「構わないわ。」

　彼女の目は覚悟を決めた人間の目をしていた。ふとルカの方を見る。彼女はまだカフェの皿洗いをしていた。

「まああなたが望むなら変えてあげましょう。ただし責任は取りませんよ。」

「分かってるわ。」

　そして、魔法を変えるための部屋に案内する。

「ここの椅子にかけてください。そして目を閉じてください。始めた瞬間に眠くなります。目を覚ましたときにはあなたが外にいれば成功した証拠です。そのまま自由に過ごしてください。因みにお代は百万セルしますがよろしいですか?」

　女性は黙って頷いた。因みに百万セルは1人が贅沢せずに暮らして、3ヶ月くらいは余裕で暮らせれる程の金額だ。

「それでは始めますよ。」

　その声とともにいろいろな色の魔法が出てきた。

　魔法を変更するというのはかなりの時間と体力がいる。実際その魔法を変えるのに5時間くらいかけてしまった。

■　■　■

「意外でした。」

　ルカが2日後の朝に話しかけてきた。因みにそれまでずっと疲れて寝ていた。

「政府に捕まる危険があるのに魔法を変えたこと?」

　ルカが頷く。

「まあ正直迷ったけどね。彼女が本気だったのと、…自分も彼女の気持ちがなんとなく分かるからかな。」

　ルカはキョトンとした顔で見ている。

「まあいいです。カフェ、少しは手伝ってくださいよ。」

「正直めんどくさいけどねー。まあ今日くらいはいいよ。」

　そう言うとルカはとても嬉しそうな顔をした。

「もしかして、嫉妬してた?」

　そう聞くと、ルカは図星だったのか、

「ち、ちがいますよ。」

　少し頬を膨らまして言った。

「そういうことにしといてあげるよ。」

　また2人の日常が始まろうとしていた。