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第1章

第14話 別れ

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 後10年くらいしか生きられない。2人に打ち明けた。

 反応は予想していたが、ルカを泣かせてしまったことは事実だ。宿屋の部屋が1つ空いたので、その部屋を取って、みんな1人1つの部屋でなった。

 シャワーを浴びて、布団を被る。なかなか寝付けなかった。もう2人は、寝たのだろうか。そんなことを思っていると、ドアがノックされた。布団から出て、ドアを開けてみると、そこにはリリさんが立っていた。

「少しお話できませんか?」

そう言われたので、無言で彼女を入れた。

「突然申し訳ありません。」

 小声で大丈夫と言う。何というか、話す気になれない。

「突然なんですが、私は今からこの宿屋を出ます。」

 本当に突然だなと思う。理由を聞いてみると、

「まず、私を自由の身にしてくれたことは、ありがとうございました。」

「いや、それが自分の仕事だからね。」

 本当に律儀な子だと思う。

「ふと思ったんだけどさ。」

 リリさんは、静かに頷く。

「あの日、リリさんを助けなかったら、ずっとあの家で奴隷として働くつもりだった。」

 リリさんは、少し考えた後、

「んー。分からないですね。けど多分そうしていました。私は1人では生きていけないと思うので。」

 そしてリリさんは静かに、昔の事を話し始めた。リリさんは生まれた時には父親が死んでしまっていたらしい。

 家には借金があって、母は一生懸命働いていた。だけど、それだけでは生きることができないので、リリさんも小さい頃から働いていたらしい。

 だが、それでも良くはならず、借金は増えていくばかり。母はついにリリさんを奴隷として売ったそうだ。

 確かに1人で生きるだけを考えるなら1番いい方法だ。売ったお金で借金を減らせるし、1人分の生活費がなくなるのだから。

「正直、売られた時は、裏切られたと思ってすごく悲しい気持ちになりました。でも今考えるとしょうがないのかなと思う気がします。もう許してますし。」

 その後、リリさんは、もうどうでもよくなったらしい。奴隷として生きていくことを決心した。

「けど、リョウさんに会って私は、変われました。。私の奴隷になって無くなっていた感情をまた取り戻すことができたんです。また自由を手にすることができたんですよ。」

 リリさんは、泣きながら言った。この時、自分は思った。

 あの時、20年という寿命になるが、お姉さんから魔法を継承したことを誇りに思う。

「だからずっとリョウさんに甘えるわけにはいかないんです。本当に命の恩人で、リョウさんのことは大好きですけどね。でもどうせ、ルカさんのことが好きですよね?」

「うん。ごめんね。本当に。」

 リリさんは、ずっと涙目だったが、しばらくすると、何かが吹っ切れた顔をして、

「さあ、私はこれで行きます。」

 宿屋の入り口まで、送っていってあげた。

「この後はどうするの?」

「そうですねー。まだ決めてないですけど。とりあえず母を探そうと思います。」

 本当に強い子だと思う。

「では、本当にありがとうございました。またどこかで会えたらいいですね。」

「後10年もあるからね。どこかで会えるよ。」

 そう言って、お互い笑顔で別れを告げた。
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