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第十二章
419 試合会場への移動
しおりを挟むハンスの屋敷を出た俺は、用意されていた馬車に乗り、移動を開始した。
向う先は昨日も行った、町の外にある会場である。やはり試合をするのであれば、そこになるようだ。
そうしてしばらくして、俺は町の外にある会場へと到着した。
馬車を降りると、そのまま初老の執事に案内される。
ふむ。人が多いな。よくこの短期間で、観客を集めたものだ。いや既にある程度は、この会場にいたのかもしれない。
毎日何かしらの試合が行われているようだし、この町では人気のある娯楽の一つだったのだろう。
耳をすませば、これからハンスたちが大きな試合を行うことについて、噂している者が多かった。
また試合時間も近いので、会場に向かう者が周囲には溢れている。酷い人ごみになっていた。
しかし不思議なことに、俺の周りには人がいない。正確には初老の執事を避けるように、人波が割れている。
見れば初老の執事の手には、ハンスのメダルが握られていた。
この町では既に、誰もが知る模様となっているのだろう。だがそれはジンジフレ教のシンボルマークなので、少々複雑な気持ちだ。
そうして会場を進むと、まるで大量の階段のような観客席が、円状に並べられている場所へと辿り着く。
中心部分はとても広く、除草されているのか一本も草が生えていない地面だった。
ふむ。これは闘技場を意識しているのかもしれないな。
また観客席の近くには何やら箱状の物が置かれており、係りの者なのか何やら調整を行っていた。
あれは何となくだが、観客席を守るための魔道具のような気がする。一応そういう配慮は、できているらしい。
ちなみに観客席はほぼ満員であり、観客たちは今か今かと、試合を待ちわびている。
そうして初老の執事に案内をされるまま、闘技場の中心まで案内された。当然注目の的であり、様々な視線が突き刺さる。
好奇心を向ける者や、邪な視線を向ける者、中には俺を見て、茶番だと呆れる視線も混ざっていた。
加えて概ね、俺が負けると思われているようである。完全に闘技場の空気は、俺にとってはアウェイだった。
そして闘技場の中心地では、当然のようにハンスが仲間を引き連れて待っている。ハンスの横には、四人の人物がいた。
一人目はやはりガマッセであり、昨日の雪辱を晴らそうと思っているのか、嗜虐的な笑みを浮かべている。
続いて二人目は、俺も知らない熟女だった。おそらくこの女性も、親衛隊なのだろう。
青と白を基調とした騎士風の服を身に纏っている。中心部分には、ジンジフレ教のシンボルマークが描かれていた。
これは親衛隊の制服なのか、ガマッセも身に纏っている。昨日はオフの日だったのか、着てはいなかった。
そして三人目は、ハンスの父親であるハプンである。
一応ハプンは親衛隊の隊長も兼任しているらしいので、まあいてもおかしくはない。
またハプンがここにいるということは、四人目は当然のように、サマンサである。
ちなみにサマンサも、親衛隊の相談役だとガマッセから聞いていた。
この町に来る途中で見たサーヴァントは、どちらもCランクだったので、この場に呼ばれるだけの力はあるのだろう。
そんな二人は俺を見て、少々困ったような表情をしている。だが引く気は無いようで、ハンス側として戦うようだ。
ちなみに闘技場の隅には、親衛隊がズラリと並んでいる。中には冒険者風の者も何人かおり、こちらの様子を窺っていた。
おそらく俺が勝った時に、いちゃもんをつけて突撃させるための人員だろう。
ハンスが心の中で言っていた通り、この短期間で集結させたようだ。
そして俺が闘技場の中心地に辿り着くと、初老の執事は一礼した後に、俺とハンスから少し距離を取る。おそらく、このあと審判役もするのだろう。
結果としてこの場に残されたのは、俺とレフ、あとはハンスたちのみである。
するとハンスはニヤニヤしながら、口を開いた。
「覚悟はできたか? 今なら土下座すれば、無かったことにしてやってもいいぜ?」
(まあ土下座した後に、やっぱ無しって言うがな! 今更謝っても、もう遅いぜ!!)
ハンスは口ではそう言うが、無効にする気は内心全く無いようである。
「いや、このまま試合を始めよう。覚悟は十分だ」
「チッ、そうかよ。精々足掻くことだな! 勝つのはジンジフレ様に選ばれた、この俺、ハンス様だ!」
(お前の情報は、ガマッセから既に得ているんだよ! Cランクごときでイキりやがって! 覚悟しやがれ!)
やはりソイルセンチピートの情報は、既に得ているようだった。しかしそれについては、俺も予想済みである。
むしろBランク以上を出すとは、思っていないのだろうか? こちらを侮っているのなら、それはそれで別に構わない。
そうして話しが終わると、お互いに離れて闘技場の地面に描かれた枠の中に移動する。
ちなみに枠は離れた位置にあり、闘技場の出入口から少し進んだところにあった。なので中心地から、そこまで戻る。
また枠の近くには先ほど見た四角い魔道具があり、枠の中に入ると係りの者が起動した。
その瞬間、枠を覆う半透明な壁のようなものが周囲に現れる。
一応罠かもしれないと超鑑定をしてみると、普通に無属性魔法のシールドを発生させる魔道具のようだった。罠は無いようである。
加えてこの枠にいる者の声を、同じ魔道具に届け、更に拡声する効果があるらしい。
しかし距離はそこまで無いらしく、また色々と制約があるようなので、遠くへの通信手段としては使えないみたいである。
けどこれは、意外と凄い魔道具だ。いったいハンスは、これをどこで手に入れたのだろうか。
そんなことを思っていると、観客席やハンスたちも同様に、その魔道具によって守られた。
試合の余波によって、怪我などをしないための対策なのだろう。ここには、かなり金をかけたようである。
そして審判役である初老の執事が、マイクのような魔道具を取り出して、説明を始めた。
内容は五対五のチーム戦であり、全滅か代表者の敗北宣言で勝敗が決まる。
また選手の紹介もされ、俺は自称サーヴァントを複数召喚できる流浪の者と言われた。
するとその瞬間、観客席からやかましいほどにブーイングの嵐が巻き起こる。
詐欺師やサモナーという内容も、まぎれて聞こえてきた。
タイミングが良すぎるので、おそらくサクラを用意したのだろう。それにつられて、他の観客も俺のことを怪しみ始めた。
それを見て、ハンスはニヤニヤと笑みを浮かべている。計画通りといった感じだ。
しかし観客に何を思われようと、俺としてはどうでもよかった。事が上手く進めば、全てがひっくり返るだろう。
ちなみにハンス側も、自己紹介がされた。熟女の親衛隊員は、カザーセという名前らしい。まあ、どうでもよかった。
そして最後に、お互いに勝利した際に求める内容が知らされる。
まずハンスが勝てば、俺はハンスに絶対服従を誓わなければいけないらしい。内容が少々改変されていた。
また俺が勝った場合は、かなりの大金が支払われるようだ。俺が大金を求めたという感じにされており、またしても金に汚いなどというヤジが飛んでくる。
金銭など求めてはいないのだが、ハンスの求める内容に合わせて、なおかつ印象が悪くなるように改変したみたいだった。
どうやら俺のことを、金に汚い詐欺師という印象を周囲に植え付けたいみたいである。
もはやハンスは俺を利用するよりも、陥れることの方を優先しているみたいだ。
どの道ハンスは俺に奴隷の首輪をはめるつもりらしいので、俺の評判などはどうでもいいのだろう。
それよりも、俺が苦しむ姿が楽しいようである。ここからでは距離があるため、心の声は聞こえない。
だが既に勝利を予感しているのか、終始ニヤついている。しかしその笑みがいつまで続くのか、ある意味見ものだろう。
そうしていよいよ時間が来たのか、初老の執事によって試合の開始が宣言される。
会場の盛り上がりは、耳が痛いほどにより一層増していく。
そして宣言により、手持ちの配下をお互いに繰り出すフェーズへと移行した。
故に俺は昨日のようにカードを偽装して、配下たちを召喚する。
「出てこい。頼んだぞ」
そう言って俺は、サン、ソイルセンチピート、ネクロオルトロス、マッドウォーリアー、ハイレイスを繰り出す。
「ギギッ!」
「キシャッ!」
「ウォン!」
「……!」
「――!!」
五体の配下たちはやる気を漲らせて、それぞれ姿を現した。
「にゃんにゃ!!」
レフも配下たちを、俺の横で応援している。
対してハンスたちも、それぞれのサーヴァントを召喚し始めるのだった。
そしていよいよ五対五の試合が、今始まる。
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