ダンガチャ! ~特殊ダンジョンばかりを引き当てる狂った運への決別を!~

乃神レンガ

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第1章

004 男殺しのピンクパルチザン(携帯用)

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 これは……。

 鑑定虫メガネを通して性能を確認すると、このように表示された。


 名称:男殺しのピンクパルチザン(携帯用)
 レア度:R
【効果】
 起動することで本来の姿を現し、以下の効果を発揮する。
 肉体的男性に対して特攻効果。
 肉体的男性の尻に突き刺した場合、相手に快感を与えると同時に麻痺状態にする。
 肉体的女性に対しては威力が著しく低下する。
 男色系モンスターを魅了して引き寄せる。
 一定の確率でモンスターを男色に目覚めさせる。
 

「男殺しのピンクパルチザン……」

 効果だけを見れば、確かに強い。

 敵の性別で武器を使い分ければ、デメリットも解消される。

 しかし、後ろ二つのデメリットがひどい。

 ある意味、呪われた装備だ。

 特にこのダンジョンでは、危険だろう。

 何せここは、男色ゴブリンが闊歩かっぽしているのである。

 運が悪ければ、数十体の男色ゴブリンに追いかけられる可能性もあった。

 今回使うのは止めるか? いや、通常武器としては頼りになりそうだし……。

 くそ、どうするべきか。

 俺は悩みながらも、ひとまず筒にあるボタンを押せば本来の姿を現すようなので、一度押してみることにした。

 ちなみに、鑑定虫メガネは既に煙となって消えている。

 そして俺がボタンを押すと、筒は一瞬光り真の姿を現す。

「おおっ!」

 気が付けば、俺の手におよそ1.8mほどの槍が現れる。

 名称の通り、パルチザンという槍なのだろう。

 形はとてもカッコいい。

 それだけに、この色調だけが残念でならなかった。

「なんで、ピンク一色なんだよ……」

 槍は上から下まで全てが、ドギツイピンクの蛍光色である。

 これはとてつもなく目立つ。

 まあ男色ゴブリンが持っていた槍もピンク色だったし、これは仕方がないか。

 俺は見た目について諦めると、槍にも中心付近にスライド式の隠しボタンを見つけた。

 おそらくこれを押すことで、元の筒に戻るのだろう。

 一先ずこの状態では男色ゴブリンが引き寄せられるので、俺はボタンを押して元の筒に戻す。

 伸び縮みする姿から、まるで西遊記に出てくる如意棒にょいぼうを彷彿とさせた。

 長物を小さくできるというのは、大変便利だ。

 俺の場合頬袋にしまう関係上、長いと取り出すのが不便である。
 
 なのでこの機能は、普通にありがたかった。

 そうして俺は、左頬の空きスペースに筒を収納する。

 デメリットの問題はあるが、目の前に男色ゴブリンが現れたときにさっそく使ってみることにしよう。

 何はともあれ、俺は新たな武器を手に入れたことで頬が緩む。

 色調以外が思ったよりも、カッコ良かったからかもしれない。

 そして部屋を出ると、ダンジョン攻略を再開するのであった。



「ぐぎゃ!?」

 俺の突き出したピンクパルチザンが、男色ゴブリンの腹部を貫く。

 特攻効果があるだけに、面白いように倒せてしまう。

 しかしそこで、調子に乗らないようにすることが大事だ。

 今も近くから、男色ゴブリンたちが寄ってきている。

 俺はすぐさまピンクパルチザンをしまうと、その場から走り出す。

 もちろん、男色ゴブリンの気配がしない方向に。

 そして単独や隙のある二人組を見つけては、少しずつ狩っていく。

 だいぶ倒せたな。モンスターが補充されている気配もないし、この調子で殲滅せんめつしよう。

 俺がちまちまと男色ゴブリンを狩るのには、理由があった。

 まず1に倒せば倒すほど金になる。

 2にダンジョンにもよるが、このダンジョンでは男色ゴブリンが補充されないので、多く倒すことで不意に囲まれる可能性が減少する。

 3に手に入れたピンクパルチザンの使い勝手を確かめるため。

 4に男色ゴブリンの攻撃パターンや行動を覚えることで、上位種が出てくる可能性が高いボス戦にある程度備える。

 5にストレス発散。

「おりゃ!」
「ぎぎぁ!?」

 男色ゴブリンの血しぶきが飛び、俺の顔を汚す。

 だが男色ゴブリンを倒すと、顔に付着した血も一緒に消える。

 なので汚れる心配はなかった。

 楽しい。

 客観的に見ても、今の俺はイキった異常者だろう。

 しかし、こんな世界でまともな方が逆におかしい。

 そもそも俺は今後、孤独にダンジョンを攻略し続ける可能性が高かった。

 戦闘に怯えて引き籠ってしまうよりも、よっぽど良い。

 なによりこの世界で一番不味いのは、うつになって自ら命を絶ってしてしまうことだ。

 ダンジョンで死亡しても、復活することができる。

 けれども自殺したら、生き返ることは無い。

 既に自殺者は結構な数が出ており、動画での不穏な言動や、音信不通の者が続出した。

 そして何よりも信憑性しんぴょうせいが増したのは、その者たちのチャンネル名が半透明に変化していることだろう。

 普段は黒文字であるチャンネル名の色の変化を見て、俺は自殺した者が復活しないということを確信した。

 動画の更新も無いので、この考えは間違っていないだろう。

 なので鬱になるくらいなら、少し狂ったくらいが丁度良いのだ。

 またこれは、俺がソロで活動する理由の一つでもある。

 俺が引き当てた特殊なダンジョンで精神が病んで自殺された場合、確実に俺も病んでしまう。

 そうした意味からも、俺はソロの方が良い。

 かくして俺は、男色ゴブリンを一方的にほふることに楽しみを見出している。

 真面目なやつほど病みやすい。

 優しいやつほど病みやすい。

 良いやつほど病みやすい。

 既に日本の倫理観など、等に捨てた。

 でなければ、俺は確実に自ら命を絶ってしまうだろう。

 「ぐぎゃっ!?」

 そしてまた、男色ゴブリンを刺し殺した。



 あれからしばらくして、ダンジョン内で男色ゴブリンをほとんど見かけなくなった。

 後半ではピンクパルチザンの扱いにも慣れて、一度に四体を相手に勝利を収めている。

 もちろん普通に特攻したのではなく、激臭の水鉄砲で隙を作ってからになるが。

 それもこれも、主力武器を手に入れたのが大きい。

 やはり初期装備の木剣は弱かったのだと、今更考えてしまう。

 特攻効果があるピンクパルチザンは、正直以前に買った武器よりも強かった。

 また繰り返しになるが、その武器は爆竹と泥棒の森で泥棒リスに盗まれている。

 何度思い返しても、あれにはかなり落ち込む。

 それはそうと今俺がいる場所は、あのとき逃げ出した最初の部屋である。

 当然中でフィーバーしていた男色ゴブリンたちは、既に倒していた。

 この部屋のせいで、体中がぬるぬるである。

 男色ゴブリンたちは海でカップルが行うように、俺へぬるぬるした液体をすくって飛ばしてきたのだ。

 更にこのぬるぬるは部屋の罠の一種なのか、男色ゴブリンたちを倒しても消えることはなかった。

 くそ、あの男色ゴブリンたちが何故か部屋から出てこないかと思ったら、これが狙いなのかよ。

 これならあの時、急いで逃げる必要はなかったかもしれない。

 俺は大きな溜息を吐くと、生気を失った瞳で今手に持っているアイテムを見る。

 それはこの部屋にもあった宝箱に入っていたもので、見た目は先のとがったボトルだった。

 もちろんとがった上部はピンクであり、透明な下部の容器には何やらどろっとした液体が入っている。

 その見た目に嫌な予感はしたが、念のため鑑定してみるとこのようになっていた。


 名称:ぬるぬるすっきりポーション
 レア度:R
【効果】
 飲むことで即座に全てを排泄してすっきりすることができる。
 直接塗ることで内部を浄化して保護する。
 時間経過で自動的に補充される。


 明らかにアレするための道具である。

 地味に高性能なのが憎たらしい。

 けれども便秘の時や怪我した時に使えると思うので、取っておくことにする。

 そうして俺は、このぬるぬるに満ちたヤバイ部屋を出た。

 出た後はすぐに右頬にしまっていた小さなバッグからタオルを取り出すと、全身に付着したヌルヌルを必死に落とす。

 その時全裸になったが、視聴しているものには謎の光で肝心なところは見えないから、問題はない。

 もちろん男色ゴブリンが現れる可能性もあったので、気配には常に気を使った。

 さて、これくらい落とせば十分か。

 やれることはやったし、そろそろボスに挑もう。

 身支度を整えると、俺は既に発見していたボス部屋へ向けて歩き出すのだった。
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