ダンガチャ! ~特殊ダンジョンばかりを引き当てる狂った運への決別を!~

乃神レンガ

文字の大きさ
28 / 34
第1章

028 最悪の予想

しおりを挟む
 イベントの二日目を迎えた早朝、俺と後から目覚めたペロロさんは朝の支度を終えた。

 やはり水を自由に使えるというのは、サバイバルではかなりの利点だろう。

 まだ戦闘ではあまり使えないが、こうした場面では役に立つ。

 そして身支度を整えて、俺とペロロさんは仮の拠点である木のうろから出た。

 この木のうろは、一日しか効果を発揮しない。

 効果を失った時荷物がどうなるのか不明なので、持っていくことにした。

 とりあえずの目標は、次の拠点に適した場所を探すことである。

「ねえクルコン君、なんかあの山、近くない?」
「やっぱり、そう思うか?」
「……うん」

 するとペロロさんが山を指さして、そう言ってきた。

 俺も薄々思っていたが、昨日よりも山の距離が明らかに近い。

「もしかすると、時間経過と共にダンジョンが狭くなっているのかもしれないな」
「だとすると、これは不味いね……」
「そうだな、ちょっと確認してみる」
「お願いするよ」

 俺は荷物を置くと、近くの木に登って周囲を見渡す。

 思った通りか……。

 昨日と比べて、ダンジョンを囲んでいる山々が明らかに近付いていた。

 これは、今日だけという事はないだろうな。

 明日も明後日も、ダンジョンは狭くなっていくことが予想できた。

 そして最終的に、プレイヤーとモンスターがダンジョンの中央にある塔に集まってくるのだろう。

 つまりプレイヤーは迫りくるモンスターの群れから、塔で防衛しつつイベントが終わるまで生き残る必要がある。

 結局、塔に行くことになるのか……。

 他のプレイヤーとは、出来るだけ関わりたくはない。

 このダンジョンを引いたのは俺だし、高確率で八つ当たりされるだろう。

 これまでの経験が、そう言っている。

 俺は溜息を吐くと、木から降りてペロロさんにこのことを伝えた。

「なるほど。それなら一度確認だけして、ダメそうなら他に手を考えるのはどうかな?」
「それが無難か……」
「うん。それでもどうしようもないなら、残念だけど僕たちのイベントはここまでだね」
「わかった。それで行こう」

 別に優勝は目指していない。嫌な思いをしてまで生き延び続ける必要はなかった。

 それに俺だけならまだしも、ペロロさんに辛い思いをさせたくはない。

 自決丸を使用すれば、苦痛なくイベントをリタイアできるだろう。

 とりあえず目的が決まったので、俺たちは行動に移す。

 まずは塔に向かうのではなく、ダンジョンを狭めている山がどうなっているのか確認することにした。

 仮拠点だった場所から山は想像以上に近くなっており、おそらく1エリア分近付いている。

 
 そして山の目の前までくると不思議と周囲は綺麗であり、土砂や押し流された木々などは存在しなかった。

 相変わらず、平らでツルツルとした崖がどこまでも続いている。
 
 最初見たときはなぜこのような崖なのかと思っていたが、登れないようにするためだったのだろう。

 するとペロロさんがおもむろにリュックからスコップを取り出し、崖の根元を掘り始めた。

「うーん。やっぱりダメだよね」

 ペロロさんは瞬く間に地面を掘っていくが、崖は地下深くまで続いているようだ。

「まあ、地面を掘ってやり過ごすのはダメという事だろうな」
「そうだよね。たぶん、あの地下洞窟にいても、無理だと思う」
「そう考えると、昨日のうちに脱出できて幸いだった」
「うん。出られなかったら、迫りくる壁に潰されていた気がするよ」

 あの地底湖に続く洞窟は、狂った難易度に加えて時間制限まであったということになる。

 おそらく元々クリアさせる気はなく、それ自体が罠だったのかもしれない。

 何というか、凄く悪辣あくらつだ。

 それに俺たちが脱出した方法は、正規ルートではない気がする。

 本来は仙人河童と怪魚を倒すことで、入り口も兼ねていた場所が開くのだろう。

 とんでもない無理ゲーだ。

 イベント仕様で、難易度が激増しているのかもしれない。

 これまでのダンジョンの常識は、捨てた方が良いな。

 何が起きても不思議ではない。

「ぶぎゃぎゃ!」
「がっぱ!!」

 俺とペロロさんがそんなやり取りをしていると、どこからともなくオタオークとオタガッパが現れる。

 当然俺たちは対処するために身構えるが、驚くべきことが起きた。

「ぶぎー!」
「ががっぱ!!」

 なんと、オタオークとオタガッパが争い始めたのである。

「えっと……」
「どうやら、こいつらは敵対しているみたいだな」

 そのまま様子を見続けていると、筋力と耐久力の勝るオタオークが勝利した。

「ぶぎゃぎゃ! ろりっ!」
「ふんっ!」
「ぐぎゃ!?」

 そして勝利したオタオークがこちらに襲い掛かってきたのだが、ペロロさん瞬殺してしまう。

 なんかペロロさん、昨日よりも強くなってないか?

 まあ、あれだけの激戦を乗り越えたのだし、当然か。

「ふふんっ! 安心してくれたまえ! クルコン君は僕が守るよ!」
「ああ、ありがとう」
「よろしいっ!」

 ペロロさんは両手を腰に当てて小さな胸を張ると、どや顔でそう言った。

 実際ろくな武器もなく、水魔法も戦闘であまり使えないので、戦闘はペロロさんの独壇場どくだんじょうだ。

 ちなみに現在の武器は、木のうろに置いていた初期装備の木剣である。

 男として少し情けなくもあるが、実際ペロロさんの方が強いし、これは仕方がない。

 できる方ができる方の役割を熟した方が、効率が良いという事もある。

「にしても、オタオークとオタガッパが敵対しているとなると、今後がある程度予想できるな」
「そうだね。たぶん、プレイヤーVSオタオークVSオタガッパの三つ巴の戦いになると思うよ」
「まあそうだろう……あっ」
「ん? どうしたんだい?」
「いや、ちょっと待ってくれ」

 俺は一言断りを入れると、あることを考え始めた。

 まず前提として、オタオークとオタガッパは敵対している。

 だがこれまでは西と東に分かれていて距離があった。

 しかしダンジョンの縮小で住処を追われ、接敵する機会が生まれてしまう。

 どちらも数が多く、当然群れをまとめる上位種がいる可能性が高い。

 オタオークなら、あのキーボードのような物を打って仲間をけしかけてきたやつだろう。

 なら、オタガッパの上位種は?

 どう考えても、あの仙人河童だ。

 つまりあの地下洞窟の難易度が狂っていて、クリアさせる気が無かったのはイベントの後半を見据えていたからだろう。

 それを何の因果か、俺とペロロさんはクリアしてしまった。

 上位種がいないオタガッパは、明らかに不利になる。

 しかも先ほどの戦闘を見るに、オタオークの方が強い。

 おそらく上位種が、それを補っていたのだろう。

 仙人河童は、単体でかなり強かった。

 その代わり、指揮能力が低いのかもしれない。

 逆にオタオークの上位種は、遠隔で仲間に命令できることから指揮能力が高いと思われる。

 つまりそれによって、両者はバランスがとられていたのだろう。

 だがその均衡は、既に瓦解している。

 三つ巴になっているからこそ、プレイヤー達は塔で防衛できるのかもしれない。

 しかしオタオークが早々にオタガッパを駆逐して、プレイヤー達に集中したらどうなる?

 どう考えてもイベント終了前に、塔が陥落かんらくする未来しか見えなかった。

 これはもしかして、不味いことをしてしまったのではないだろうか。

 俺たちの行動は、今も放送されている。

 イベント終了後も、見返すことはできるだろう。

 ……最悪だ。

 既に俺は悪評まみれなのに、このやらかしは戦犯級に違いない。

 黙っていてもバレるなら、今の内に知らせに行くべきだろうか?

 だが知らせれば、どのみち怒りをぶつけられるだろう。

 どの選択でも、ろくな未来が無い。

「く、クルコン君! 大丈夫だよ。落ち着いて」
「あっ……ペロロ……さん」

 俺の様子がおかしいと気が付いたのか、ペロロさんは俺の頭を両手で引き寄せると、自身の胸へと抱きこんできた。

 そして優しい言葉をかけながら、俺の頭を撫でる。

「一人で考えこんじゃダメだよ。僕は君の相棒だろう? 何に気が付いたのか、僕にも話してほしい。一緒に考えよう?」
「あ、ああ……」

 見た目は幼いのに、ペロロさんから母性を感じた。

 何だか、凄く安心する。

 少しの間俺はペロロさんに抱きしめられながら、頭を撫でられ続けた。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

好き勝手スローライフしていただけなのに伝説の英雄になってしまった件~異世界転移させられた先は世界最凶の魔境だった~

狐火いりす@商業作家
ファンタジー
 事故でショボ死した主人公──星宮なぎさは神によって異世界に転移させられる。  そこは、Sランク以上の魔物が当たり前のように闊歩する世界最凶の魔境だった。 「せっかく手に入れた第二の人生、楽しみつくさねぇともったいねぇだろ!」  神様の力によって【創造】スキルと最強フィジカルを手に入れたなぎさは、自由気ままなスローライフを始める。  露天風呂付きの家を建てたり、倒した魔物でおいしい料理を作ったり、美人な悪霊を仲間にしたり、ペットを飼ってみたり。  やりたいことをやって好き勝手に生きていく。  なぜか人類未踏破ダンジョンを攻略しちゃったり、ペットが神獣と幻獣だったり、邪竜から目をつけられたりするけど、細かいことは気にしない。  人類最強の主人公がただひたすら好き放題生きていたら伝説になってしまった、そんなほのぼのギャグコメディ。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

処理中です...