復讐の天使 〜盲目の心理捜査官〜

心符

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1. 傷跡

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~アフガニスタン~

東部パンジシール州。
ミック隊長率いるアメリカ第47部隊は、反タリバン勢力に協力し、この地区を堅守していた。

ただ…タリバン勢力の侵攻を阻止しているのは、広大な荒野に点在する、アメリカ軍ではなかった。

古い時代に、ソビエト連邦の侵略を防ぐべく敷き詰められた、数十万の対人地雷である。

それは同時に、反タリバン勢力の反撃の妨げにもなっていた。

「全く、こんな何もない荒地を、守る意味があるとは思えないぜ」

副隊長のジニーがボヤく。

各地から届く米軍撤退の知らせに、部隊の士気も落ちていた。

「せっかく遥々来てやったんだ、タリバン野郎を殺らなきゃ意味がない。とにかくあの丘まで行くぞ」

地雷処理を得意とするヘンリーが、スタスタと歩き出す。

「おいおい、ヘンリー。勝手な行動をするな。お前を失うわけにはいかないからな」

「た、隊長!」

ミック隊長の声に焦るヘンリー。
彼は、最前線で幾つもの勝利を収めていた。

「す、すみません」

本国では、英雄と呼ばれるミック隊長。
その実態は、大勢の犠牲によるものであった。

「ドローンが戻るまで待ちますか?」

「いや…丘の向こうが気になる」

ミックが、昨日着いたばかりのモリス・ターナーを見る。

「入隊式だモリス、行け」

隊長の命令は絶対である。

「で、でも…地雷が…」

「ヘンリー、どうだ大丈夫だよな!」

「え…あぁ、多分…大丈夫です」

その歯切れの悪さに、彼の能力を知っている仲間達が不安を抱いた。

ヘンリーが戻る。
モリスとすれ違い様。

「神に祈れ」
その呟きは危険を示していた。

「行け!男を見せてみろ、新米」

ヘンリーが止まった位置から、あと5m。
行くしかないと悟った。

ゆっくり歩き、残り5m。
一歩が重たい。

「ザッ」(ふぅ~)

「ほら、あと少しだ、さっさと行け!」

(もしかして…隊長は大丈夫と知っていて、自分を試しているのか?)

「ザッ、ザッ」

「やるじゃねぇか」
ミックが囃《はや》し立てる。

「ヘンリー…?」
部隊唯一の女性戦闘員、マーガレットが小声で確認する。

目を合わせたヘンリー。
その目は絶望感に満ちていた。

(やはり試されてるだけだ)「ダメッ❗️」

モリスが一歩踏みだすのと同時に、マーガレットが叫んだ。

「カチャ」
乾いた金属音がした。

「チッ!ツキのねぇ野郎だ。ヘンリー!」

「モリス、動くなよ!」
叫んだヘンリーが向かいかけた瞬間。

「ターンッ!」

丘から覗いたヘンリーの顔面を、狙撃手の放った弾丸が貫いた。

「伏せろ!」「ドーン💥」

倒れるモリスの足下で地雷が爆発した。

伏せた隊員の周りに、さっきまで人であったものが、バラバラと降ってきた…




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