異世界帰還組の英雄譚〜ハッピーエンドのはずだったのに故郷が侵略されていたので、もう一度世界を救います〜

金華高乃

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第8章 CT大群決戦編

第8話 堕天使VS空翔ける猛者達

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 ・・8・・
『敵性飛行体、エンザリアCTをフライエンザリアCT、FECT1~7と呼称確定』

『FECT全七体の予想進路判明。想定進路、綾瀬・小菅DBと新小岩DBの中間地点。彼我の距離、約一五〇キロ。到達まであと九分半!』

『立川HQより高射砲科、誘導弾各部隊へ。迎撃せよ』

『八王子より立川HQ。即時誘導弾発射準備中!   諸元入力完了、発射まであと三分半!』

『練馬高射特科了解。射程圏内に入り次第発射する』

『立川HQより各DBフェアル部隊へ。迎撃せよ』

『セブンスより立川HQ。現在臨時編成中。残存魔力に余裕のある一〇名を編成する。私も出る』

『ウェストウィザードより立川HQ。こちらも臨時編成中。自分を含め一〇名を編成し迎撃にあたります』

『立川HQよりセブンス、ウェストウィザードへ。高射特科、誘導弾各部隊は即時対応可能。ただし戦闘機部隊は先の戦闘までに出払うか戻っており即時行動不可。横田からすぐに出せる部隊の発進は一五分後で間に合わない。それまで対処せよ』

『セブンス了解』

『ウェストウィザード了解』

 二三式マト弾の投入よって勝ちが見えていたはずの各戦線に再度、緊迫した空気が支配する。ドラゴンやエンザリアCTを警戒して高射特科と対空誘導弾部隊は配備されているものの、どれだけ相手に効果があるかは未知数だ。となると、万が一対空攻撃網を抜けられた時に直接戦う部隊が必要となる。

 既に一般的なフェアル部隊は限界が近く、飛行可能時間が心許ない。さらに敵の飛行速度は約九五〇とドラゴン以上に早い。そうなると対応可能なフェアル部隊はさらに限られる。となれば、璃佳達や今川達の部隊が出番となるのは必然だった。
 しかし、彼女らとて万全ではない。

「熊川、私が上がる。お前は地上を頼むよ」

「了解しました。既に皆が消耗してます。もちろん、あなたも」

「分かってる。でも、誰かがやらないと堕天使共がやってくる。エンザリアなら恐らく光線系魔法を使ってくるだろうし、それが空を飛ぶんだから悪夢みたいなもの。絶対に潰す」

「……ご武運を」

「さんきゅ。――高富少佐、八人の選抜は終わった?」

『終わりました。魔力切れもやむ無しであれば一五分から二〇分なら全力空戦が可能です』

「お前は」

『二〇分ならいけます』

「頼んだ。私も飛ぶ。空戦は第二大隊ほど手馴れてないから、やや遠目から援護に徹するよ」

『了解しました』

『ウェストウィザードよりセブンスへ。我々も選抜終了。葛西よりそちらに向かいます』

「セブンスよりウェストウィザード。おっけー助かる。そっちは何分全力空戦が可能?」

『大体二〇分なら。それまでにカタをつけます』

「ありがとう。頼んだよ」

『任せてください』

 璃佳はこうは言ったものの、魔力切れもやむ無しで最小一五分は危ない橋を渡ることになるのを強く自覚していた。恐らく、いつも通りの実力を出せるのは一〇分がいいところだろう。そこから先は墜落が現実に近づく非常に危険な戦いになる。残存魔力の少なさがここで仇となっていた。

 そこで璃佳は保険をかけることにした。

「セブンスよりキャスター1。応答せよ」

『こちらキャスター1。自分はどうすればいいですか』

「綾瀬・小菅に四人とも移動しろ。万が一私達が取りこぼした時は何とかして欲しい」

『了解しました。陣地転換します』

「ああそれと、キミの三〇ミリってあと何発ある?」

『三発なら残ってます』

「射程延伸術式と誘導術式でどれくらいやれる?」

『高度約二〇〇〇、距離は六五〇〇なら一発で当てます』

「ははっ、相変わらず凄いね。なら、頼んだ。それもダメだったらキャスター2とキャスター4に任せるよ。キャスター3は地上に降りられたらゴーレムを盾にして。こんな命令をするのは、同じ召喚士として心苦しいけど」

『キャスター3よりセブンスへ。大丈夫っす。盾役なら本望っすよ』

「ありがとう。――さぁ、お前達!!    堕天使を叩き落とすぞ!!」

 FECT到達まであと六分。璃佳や今川など二〇名が迎撃に離陸した。

『立川HQよりセブンス。彼我の距離約九〇キロ。間もなく対空誘導弾の射程内』

「セブンスより立川HQ了解。こちらは谷塚・竹ノ塚上空にて迎撃する」

『立川HQよりセブンスへ。了解』

 FECTの到達まであと五分。まずは対空誘導弾十四発が発射された。

『誘導弾発射。現在目標に向けて全弾飛行中。命中まであと一分半』

 対空ミサイルは順調に飛行を続けていた。しかし、命中の直前に璃佳が予想していた攻撃がFECTより行われる。

『FECTより高魔力反応を探知!    推定光属性魔法光線系!   発射された!   数は七!』

『一四発中七発が迎撃された!    続けて高魔力反応!    四発のミサイルがFECT3と5に命中!   五体は健在!   依然飛行を続けている!』

「五体残ったか……!    総員攻撃準備!」

 璃佳達は魔力を練り上げ、呪文を唱えていく。準備詠唱だ。

『立川HQよりセブンス。先のFECTの法撃分析完了。従来のエンザリアCTより攻撃力は五〇パーセント高く、射程距離は約一〇〇〇〇と推定される。並の魔法障壁は貫通します。また、魔法障壁硬度はAランク並み。厳重警戒を』

「セブンスより立川HQ。情報感謝する。――迎撃総員、敵の法撃火力は従来のエンザリアCTより高い。私達が一〇枚展開しても危うい。当たるな」

『了解!!』

(くそっ、一発でも貰ったら被撃墜だなんてシャレにならないっての。こちとら魔力も少ないから攻撃リソースと飛行リソースに気をつけなきゃいけないのに……!)

 FECT到達まであと一分半。もうすぐ敵は璃佳達を射程におさめる頃だ。
 そして、あと一分を切って彼我の距離は約一〇〇〇〇に。

『全FECTより高魔力反応!』

「総員散開後法撃開始!!」

 FECT五体の光線系魔法が放たれた。幸い追尾式ではないが凄まじい威力だ。璃佳達はこれを難なく回避すると、各々が法撃を開始する。

『セブンス、ウェストウィザードの法撃が一部命中。魔法障壁大破。ただし撃墜に至らず』

『FECT6、集中法撃を受けて撃墜!』

『高魔力反応再び!!   来る!!』

 四体になったFECTは回避行動を取ると、フェアル部隊並の機動力を持って反転し再び光線魔法を放った。

『やばっ!!』

『しまっ!!』

 FECTの法撃は正確だった。第一特務と西特大の一人ずつに光線が向かう。二人は緊急回避行動を取るが、光線が二人のすぐそこを掠った。

『白川!!   無事か!!』

『伊自良少尉!!』

『白川、無事ですが魔法障壁全てを持ってかれフェアルが不調!    離脱します!』

『同じく伊自良、魔法障壁全損。耳鳴りが酷いです。フェアルも不調。離脱します』

『白川と伊自良をカバー!!』

 掠っただけで魔法障壁が全損という威力は空を舞う一八人にとって寒気しかしない現実だった。すぐさま二人ずつが白川と伊自良のカバー回り、残りは反撃に移る。

『再び高魔力反応!!』

「くそったれリキャストタイムが早い!!」

 今までのエンザリアCTと比較にならないほど、FECTの再法撃時間が早かった。璃佳達といえど反撃の機会が中々作れない。いつもならこうはならないのだが、体力と魔力の消耗が全力を出せない原因になっていた。

『警告、残存魔力三〇パーセント。注意域』

「分かってるっての!!」

 賢者の瞳の無機質な声が璃佳の耳に入る。時速約一〇〇〇近い飛行に加えて法撃は相応に魔力を消費する。魔法障壁の密度を上げたことでなおさら魔力を使っていた。

『FECTは谷塚・竹ノ塚空域に留まるも、総員の全力戦闘限界まであと六分』

(ちぃ、空戦限界があっという間に迫ってくる……!)

 璃佳はFECTの光線系魔法をギリギリで避けながら反撃する。闇属性の鋭い槍がFECT4に命中した。

『FECT4撃破!』

『再び高魔力反応!!』

「回避!!」

 璃佳が無線から叫ぶ間もなくFECTの法撃が発射される。今度は一発の光線魔法が第一特務の一人を掠めた。

『及川、魔法障壁全損しました。フェアルは無事ですが、空戦限界まであと二分半!    あと二、三回法撃したら攻撃不可になります!』

「下がれ及川!   次は死ぬぞ!」

『了解……!    すみません!』

 これで三人の離脱。残りは一七名。FECTは残り三体になったものの、まるで数の不利を感じさせない。確実に倒してるはずなのに、押されているのではという錯覚すら璃佳は一瞬とはいえ感じていた。

 まだ空戦慣れしていない孝弘達四人を出すべきか。いや、この法撃力では下手に近づけば彼らとて無事では済まない。

 どうする。次の一撃に賭けるか。
 璃佳が残り少ない時間で危ない賭けに出るべきかどうか迷っていた時だった。

『……は!?    え!?    了解!!   ――立川HQより空戦各員!!    三〇秒後に指定空域から急速離脱!!』

「はぁ?!   なんで?!」

『フレンドリーレポートです!!』

『ノースマジシャンよりウェストウィザード、セブンスへ!     北海道での借りを返しに来た!    ウェストウィザード、これでチャラだぞ!』

『ノースマジシャン……、蓼科中佐?!』

 どうしてここに現れたのかは分からない。
 援軍が来る予定なんて聞いていなかった。
 そもそも北方特務戦闘団は再編成を終えたばかりでは?
 今川にとって聞きたいことは山ほどあった。
 ただそれでも、ギリギリのギリギリで何物にも変え難い心強い援軍が来てくれたのは確かだった。

『おうともさ!!   さぁさぁクタクタのモノノフ達は退いた退いた!!    こちとら命の恩人に死なれちゃ困るんだ!     北方特務戦闘団空戦部隊二〇、総員吶喊だ!!』

『応ッッ!!』

 勇猛果敢に二〇人の空翔ける魔法仕掛けの羽を持つ猛者つわもの達がFECTのいる方へ突っ込んでいく。
 FECTは大量に新手が現れたのを警戒して散開しようとしていたが遅かった。

『斉射ァ!!』

 五〇の射程延伸型火属性爆発系魔法が放たれる。
 一つ一つの法撃は璃佳や今川には及ばない。だが、彼等は精鋭の北方特務戦闘団だ。しかも二〇人全員が北海道の激戦をくぐり抜けた猛者達。一体、また一体とFECTを撃破し、そして最後の一体も。

『ノースマジシャン、ラスト一体討ち取ったり!!』

『立川HQより各員、ノースマジシャンがFECT1を撃破!!    全FECT、撃破確認!!』

 北方特務戦闘団の彼等は、見事残りのFECTを屠ってみせたのだった。
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