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第1章転生編
第6話 今日は屋敷の外へ出ます
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・・6・・
アカツキとして生きる事になってから三日後、二の月十六の日。朝はよく晴れていて、積もっていた雪もほとんど溶けていた。
起床してから室内で着るのとは別の服を着替え、ホテルのイングリッシュブレックファストのような朝食を採ってから一度自室に戻ると外出の準備を始める。
持っていくのは革製の立派な鞄。後は装飾が立派なサーベル。護身だけでなく身分にも由来する物品だ。
というのも、このサーベルは今の格好と行先に理由がある。
「軍服、十九世紀半ばのイギリス軍の士官用のに似ているな」
僕が今着用しているのは、アルネシア連合王国軍の士官用軍服だ。士官用らしく装飾が多く、一目で偉い階級と分かるくらいだ。
事実、階級は肩章の星の数で判別可能で銀色の下地に銀色の星が一つ。
「この歳で既に少佐か……。さすが貴族……」
そう、僕ことアカツキ・ノースロードは二十二歳にして既に少佐の階級なのだ。これは司令官を兼ねる貴族の家の生まれである要素が大きく、魔法が使えるのがさらにその理由を補強している。
とはいえ、この世界では十五歳で立派な成人扱いで、記憶によれば十八から形だけとはいえ軍の階級を貰いそれなりに活動はしてるので決してお飾りのというわけではないみたいだ。魔力値からして、能力はそれなりにあるんだしね。
話を戻そう。軍服にサーベルなのは今回の行き先が軍の駐屯地だからだ。なので、軍人でもある僕の格好も軍服になるわけだね。
「アカツキ様、失礼します」
「はーい。どーぞー」
僕が返事をすると入ってきたのはメイドのレーナだった。
「軍用コートをお持ちしました」
「ありがとね」
「お着せします」
「うん、よろしく」
本当は自分で着ればいいと思うのだけど、ここで断るとどうしたんだと思われかねないので素直に頷く。
レーナの手を借りてコートを羽織るとボタンを閉じてサーベルを腰からさげる。鏡の前にはいかにも偉そうな軍人の出来上がりだ。サイズは合っているはずなのに身長のせいで着せられてる感があるけどね!
「馬車の用意は整っております。ご一緒致しますね」
「うん。行こうか」
「御意」
用意も終わったので、レーナに鞄を持ってもらって僕は自室を出て屋敷の玄関に向かう。朝という事もあって屋敷の使用人達は忙しなく動いていた。途中、お爺様にあって挨拶をし、まだ寒いから気を付けるのじゃぞと言葉を掛けられてから外に出ると、確かにコートを着用していても寒かった。体感で言えば氷点下にギリギリいかないくらいだろうか。
「お待ちしておました、アカツキ様。お迎えの用意は完了しております」
玄関で待機していたのは同じように軍用コートを羽織った五十代手前の中肉中背の男性だった。オールバックの髪型は整っており、その所作はいかにも執事という感じだけどそれは半分間違っていない。
「待たせて悪かったね、クラウド」
「いえ、この寒さは北の国を思えばどうということはありませんな」
「ははっ、あっちはもっと寒いからねえ」
「その通りにございます」
彼の名前はクラウド・ボイル。アルネシア連合王国軍の大尉で、代々アルネシア家に仕えている軍人家系の人だ。彼も魔法が使えて才能もあったことからこの階級になっている。そして、クラウドは軍人ではあるけれど同時に僕の執事でもある。それは、彼がノースロード家の専属護衛部隊隊長でもあるからだ。僕付になっているのは年齢的にも当主受継ぎが近くなっているからだね。一度に移管すると大変だからだろう。僕にとっても楽ではあるね。
なお、父上は今回の王都行きに彼の部隊から一部を引き抜いて連れていっているみたい。
あ、そうそう。ちなみに彼は平民出身だけれど苗字はある。連合王国は妖魔大戦以降、システムを変えて平民でも苗字が持てるようになっている。理由は大戦で軍功ある者は苗字を名乗れるなんてしていたら大量に対象者が現れ、それならいっそ平民全員名乗れるようにしようという、なんとも面倒だからやったろそれ。というものだ。お陰で元々の対象者には追加で報奨を出したらしい。まあ、苗字によって家毎の戸籍管理把握は楽になったらしいからいいらしいけど。
なので、レーナにも苗字はあるんだよね。確か、レーナ・ブラウンだっけか。
この三日で様々な再確認をしておいて良かったと思いつつ僕はクラウドにとある提案をする。
「悪いんだけど目的地に向かうまでに経路を変更したい。いいかな?」
「はっ。時間に余裕はあるので構いませんが、何かありましたか?」
「通るだけだけど、街の視察もしておきたいんだ。次期当主として、さ」
「ご立派な考えでありますな。分かりました」
クラウドは微笑むと、快く了承する。主人が最もな理由の提案をすれば断るはずもないといった様子だった。
僕はクラウドとの会話を終えると、用意された馬車へ向かう。貴族の馬車だけあって、なかなか豪奢だった。かといって華美ではないのは軍人家系の貴族だからだろうか。僕が乗る馬車の前後には護衛として馬に乗る騎銃兵が数人控えていた。
「道中、よろしくね」
「は、はっ!お任せ下さい」
「護衛の君達も」
『ぎょ、御意!』
僕は馬車の御者である二十代前半の男性――護衛部隊が担当するので彼も軍服だった。階級は軍曹かな――に声をかけると、まさか自分が話しかけられると思ってなかったのか驚いていたけど、すぐに軍人らしく敬礼をして返答した。それは護衛の騎兵達も同じだった。
クラウドはそれを見てやや驚いている。あれ、もしかしてまずかった?
まあいいや。気にしても仕方ないかと思いつつ馬車に乗る。
「アカツキ様、いってらっしゃいませ」
「行ってくるよ。遅くても夕方までには戻るからよろしくね」
「かしこまりました。ご夕食の希望はございますか?料理長に取り次いでおきますので」
「何か温かいものかな。グラータンとか」
「グラータンですね。かしこまりました」
グラタンと同じような料理を所望すると、レーナは柔和に笑って了承し見送ってくれた。美人系にあたる彼女だけど、笑うと可愛いよねなんて思う。
クラウドも乗車して扉が閉まった馬車はゆっくりと動き出す。サスペンションがちゃんと機能しているからか、揺れはあまり無かった。
僕とクラウドを乗せた馬車は、護衛達数人を含めて屋敷の外へ出て目的地へと向かうのだった。
アカツキとして生きる事になってから三日後、二の月十六の日。朝はよく晴れていて、積もっていた雪もほとんど溶けていた。
起床してから室内で着るのとは別の服を着替え、ホテルのイングリッシュブレックファストのような朝食を採ってから一度自室に戻ると外出の準備を始める。
持っていくのは革製の立派な鞄。後は装飾が立派なサーベル。護身だけでなく身分にも由来する物品だ。
というのも、このサーベルは今の格好と行先に理由がある。
「軍服、十九世紀半ばのイギリス軍の士官用のに似ているな」
僕が今着用しているのは、アルネシア連合王国軍の士官用軍服だ。士官用らしく装飾が多く、一目で偉い階級と分かるくらいだ。
事実、階級は肩章の星の数で判別可能で銀色の下地に銀色の星が一つ。
「この歳で既に少佐か……。さすが貴族……」
そう、僕ことアカツキ・ノースロードは二十二歳にして既に少佐の階級なのだ。これは司令官を兼ねる貴族の家の生まれである要素が大きく、魔法が使えるのがさらにその理由を補強している。
とはいえ、この世界では十五歳で立派な成人扱いで、記憶によれば十八から形だけとはいえ軍の階級を貰いそれなりに活動はしてるので決してお飾りのというわけではないみたいだ。魔力値からして、能力はそれなりにあるんだしね。
話を戻そう。軍服にサーベルなのは今回の行き先が軍の駐屯地だからだ。なので、軍人でもある僕の格好も軍服になるわけだね。
「アカツキ様、失礼します」
「はーい。どーぞー」
僕が返事をすると入ってきたのはメイドのレーナだった。
「軍用コートをお持ちしました」
「ありがとね」
「お着せします」
「うん、よろしく」
本当は自分で着ればいいと思うのだけど、ここで断るとどうしたんだと思われかねないので素直に頷く。
レーナの手を借りてコートを羽織るとボタンを閉じてサーベルを腰からさげる。鏡の前にはいかにも偉そうな軍人の出来上がりだ。サイズは合っているはずなのに身長のせいで着せられてる感があるけどね!
「馬車の用意は整っております。ご一緒致しますね」
「うん。行こうか」
「御意」
用意も終わったので、レーナに鞄を持ってもらって僕は自室を出て屋敷の玄関に向かう。朝という事もあって屋敷の使用人達は忙しなく動いていた。途中、お爺様にあって挨拶をし、まだ寒いから気を付けるのじゃぞと言葉を掛けられてから外に出ると、確かにコートを着用していても寒かった。体感で言えば氷点下にギリギリいかないくらいだろうか。
「お待ちしておました、アカツキ様。お迎えの用意は完了しております」
玄関で待機していたのは同じように軍用コートを羽織った五十代手前の中肉中背の男性だった。オールバックの髪型は整っており、その所作はいかにも執事という感じだけどそれは半分間違っていない。
「待たせて悪かったね、クラウド」
「いえ、この寒さは北の国を思えばどうということはありませんな」
「ははっ、あっちはもっと寒いからねえ」
「その通りにございます」
彼の名前はクラウド・ボイル。アルネシア連合王国軍の大尉で、代々アルネシア家に仕えている軍人家系の人だ。彼も魔法が使えて才能もあったことからこの階級になっている。そして、クラウドは軍人ではあるけれど同時に僕の執事でもある。それは、彼がノースロード家の専属護衛部隊隊長でもあるからだ。僕付になっているのは年齢的にも当主受継ぎが近くなっているからだね。一度に移管すると大変だからだろう。僕にとっても楽ではあるね。
なお、父上は今回の王都行きに彼の部隊から一部を引き抜いて連れていっているみたい。
あ、そうそう。ちなみに彼は平民出身だけれど苗字はある。連合王国は妖魔大戦以降、システムを変えて平民でも苗字が持てるようになっている。理由は大戦で軍功ある者は苗字を名乗れるなんてしていたら大量に対象者が現れ、それならいっそ平民全員名乗れるようにしようという、なんとも面倒だからやったろそれ。というものだ。お陰で元々の対象者には追加で報奨を出したらしい。まあ、苗字によって家毎の戸籍管理把握は楽になったらしいからいいらしいけど。
なので、レーナにも苗字はあるんだよね。確か、レーナ・ブラウンだっけか。
この三日で様々な再確認をしておいて良かったと思いつつ僕はクラウドにとある提案をする。
「悪いんだけど目的地に向かうまでに経路を変更したい。いいかな?」
「はっ。時間に余裕はあるので構いませんが、何かありましたか?」
「通るだけだけど、街の視察もしておきたいんだ。次期当主として、さ」
「ご立派な考えでありますな。分かりました」
クラウドは微笑むと、快く了承する。主人が最もな理由の提案をすれば断るはずもないといった様子だった。
僕はクラウドとの会話を終えると、用意された馬車へ向かう。貴族の馬車だけあって、なかなか豪奢だった。かといって華美ではないのは軍人家系の貴族だからだろうか。僕が乗る馬車の前後には護衛として馬に乗る騎銃兵が数人控えていた。
「道中、よろしくね」
「は、はっ!お任せ下さい」
「護衛の君達も」
『ぎょ、御意!』
僕は馬車の御者である二十代前半の男性――護衛部隊が担当するので彼も軍服だった。階級は軍曹かな――に声をかけると、まさか自分が話しかけられると思ってなかったのか驚いていたけど、すぐに軍人らしく敬礼をして返答した。それは護衛の騎兵達も同じだった。
クラウドはそれを見てやや驚いている。あれ、もしかしてまずかった?
まあいいや。気にしても仕方ないかと思いつつ馬車に乗る。
「アカツキ様、いってらっしゃいませ」
「行ってくるよ。遅くても夕方までには戻るからよろしくね」
「かしこまりました。ご夕食の希望はございますか?料理長に取り次いでおきますので」
「何か温かいものかな。グラータンとか」
「グラータンですね。かしこまりました」
グラタンと同じような料理を所望すると、レーナは柔和に笑って了承し見送ってくれた。美人系にあたる彼女だけど、笑うと可愛いよねなんて思う。
クラウドも乗車して扉が閉まった馬車はゆっくりと動き出す。サスペンションがちゃんと機能しているからか、揺れはあまり無かった。
僕とクラウドを乗せた馬車は、護衛達数人を含めて屋敷の外へ出て目的地へと向かうのだった。
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