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第1章転生編
第5話 魔法について調べてみた
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・・5・・
魔法。それは前世の世界ではファンタジーでしか有り得なかったけれど、この世界には現実として使われている存在だ。
有難い事に、その仕組みはRPGゲームなどにおける魔法に似ていた。
まず、魔法には種類がある。
「基本五属性、応用二属性、無属性の三種類か」
基本五属性は、『火・水(氷はここ)・風・雷・土』の魔法のことで魔法使用者の中では扱える人口が多い魔法だね。火や水については生活でも使える魔法がちらほらとある。
次に応用二属性。こっちは『光・闇』の二種類。光魔法には回復魔法も含まれている。対して闇魔法にはゲームでいうデバフ系のものが多い。
最後に無属性魔法。これは生活に関する魔法とかが多い。便利な魔法程度の存在が殆どだけど物体転移だとか興味深い魔法もここに分類される。大雑把な言い方だけど、基本にも応用にも属さない魔法はこっちという扱いみたいだ。
さらに、これらの魔法にはランクが存在する。
「ランクの低い順から『初級・中級・上級・戦術級・戦略級』の五分類だね」
初級は魔法を使いたての魔法能力者でも使える魔法で、威力はたかがしれている。それでも前世における小銃よりは威力があるんだから、やっぱり魔法はすごい。これが中級、上級になるにつれて威力が上がり、戦術級ともなれば戦場一つの戦況をひっくり返るのも可能だし、戦略級ともなれば戦争を変えられる可能性すら秘めている。ただ、戦術級と戦略級はおいそれとは出せない。それは何故か。
「戦術級・戦略級は単独では使わず集団で使う必要があり、さらに詠唱時間も長い」
僕は屋敷の資料室から見つけた『アルネシア魔法大典』のページを閲覧しながらそう呟く。
当たり前ではあるんだけど、魔法には詠唱が必要だ。初級・中級程度までなら詠唱時間は大した事がない。発動に必要な分節が少ないからだ。ところが上級から上の戦術級以降ともなると、式典のアホみたいに長い講話かよってレベルで必要になるしこれを個人ではなく集団でやるもんだから手間もかかる。戦術級魔法で平均三十分。戦略級で三時間。ううん、最前線ではとても使えないシロモノだな。戦略級に至っては前世の戦略級兵器、核弾頭搭載ミサイルの方がまだ撃つのが早いんじゃないかと思えるくらいだ。
だけど、戦術級や戦略級魔法が手間がかかるのはさらなる理由があった。
「また、戦術級・戦略級魔法は膨大な魔力を必要とする。よって個人ではなく集団で詠唱を行わなければならない。戦略級発動ともなれば魔法能力者一個大隊の魔力を総動員しなければならず、魔力光により位置は暴露され、詠唱中の能力者を守る為の部隊も必要となる、かあ」
何とも妥当な理由だった。魔法の発動には、ゲームでMPが必要だったように魔力が必要になる。
この魔力には二種類あって、空気中にある空気中魔法粒子と体内にある体内魔法粒子だ。空気中の魔法粒子は専ら自然回復専用で、発動に使うのは体内の魔法粒子。いわゆる魔力。こいつはゲームとかでもあったように個人差があって、多い人と少ない人の差が激しい。おまけに、さっきお爺様と話したように魔人は人間の五倍魔力を保有しているので人類はその点では不利だ。保有量に缶コーヒーと一リットルのペットボトル位の差があると言えば分かりやすいかな。
ちなみに魔力の測定には、タブレット端末のような外見を持つ魔力測定器具(アルネシア連合王国では、M1830測定器具を使っている。どうやら八年前に更新されたらしい)で計測する。
「という訳で持ってきました、測定器具。これで測ってみようじゃないか」
さすが貴族というべきか、結構高価なシロモノなのに測定器具がありました。まあ、領地を統べる者達の屋敷ならあっても不思議じゃないけどさ。
さて、僕ことアカツキは魔法が使える魔法能力者の一人である。アカツキとしての記憶では前回計測したのが一年前。その時の数値が1350だった。
「軍人魔法能力者の全平均値が800、軍人や職業魔法能力者以外の魔法を使える人類の全平均値が250と考えれば高い方だね。これは、血筋だろうなあ」
貴族は連合王国の歴史上、魔法能力者が多い。ノースロード家はその中でも比較的古くから続く家系なので、脈々と受け継がれた結果着々と魔法能力者としての力もつけている。無論、基礎力からどれだけ成長出来るかは本人次第だけど。
「えーっと、測定器具の起動の仕方は……。――システム起動」
測定器具に手をかざして言うと、その機械から小さな魔法陣が光り輝いてホログラムのような画面が出現する。魔法すごいな。流石物理法則やら何やらを無視しているだけある。
「魔力測定、開始」
『魔力測定を開始します。対象、アカツキ・ノースロード。アルネシア陸軍登録魔法能力者』
測定器具から機会音声が流れると魔法陣から発せられる光は僕の手を包んでいき、数値が動き始める。
『…………測定中。…………測定完了。アカツキ・ノースロード、魔力値1540。最高値を更新。推奨、登録ランクをB+からA-への移行』
「あれ、上がってる?」
測定器具から発せられた魔力数値に僕は首を傾げた。
通常、魔力の成長は個人差が大きいけれど多くて百から百五十程度だ。しかもこれは幼少期や少年期の伸び代のある時期の話。僕みたいな二十代になってからは珍しい。
ただ二百程の上昇値だと転生モノでお決まりのチートにしてはあまりにインパクトが無い。ちょっと成長率が良かった位で地味なもの。それはランクにも示されていた。
「確か、能力者ランクは『S・A+・A・A-・B+・B・B-・C・D・E』だったね。A-は上から四番目で、優秀ではあるけれどチートってレベルでは無い」
魔法能力者はランク分けがあって、これは軍人非軍人関係無い。Sランクはまさにチート級で、A+ランクでも英雄クラスだ。対して、僕がランクアップしたA-ランクは真ん中より少し上。努力すれば辿り着ける人もいるというランクで、二十代そこそこでここなら才能はある方だと言えるだろうね。
ちなみに今回の測定は公式ではないので、ちゃんと公証可能な場所――一番手っ取り早いのが領主である父上立会の元で測定して、軍の中央司令部に書類を送る――で測定し直さないといけないみたいだ。だから推奨で言われたんだね。
「にしても、異世界に転生したらチート貰い放題! とかあるけれど、現実はそうそうチートだらけではないよね。……いや、貴族の家に生まれてる時点で十分過ぎるか。おまけに経営順調な領地なんだし」
幾ら貴族の力が以前よりは弱くなったとはいえども、王政であり貴族が階級として残る国にそのみぶんになれたのは相当ラッキーだ。
僕があれこれしたい。ここを改善したらどうか。ここは変更して、より良くしていこう。などといういわゆる内政系は一般人に生まれるとなかなかやりづらいし時間もかかる。一般庶民の立場からだと決定権を持つ王様なり貴族へ打診しないといけないからだ。
けれど貴族ならば領地で実証が可能だし身分のお陰で行動もしやすい。もし、国王陛下に謁見して直接願い出る場合も伯爵の家の息子なら不可能ではないだろう。これはまさに幸いだった。
「魔法のある世界での魔法使いであり、貴族の息子。しかも跡継ぎ。前世の最期は悲惨だったし、部下も沢山失った。けれど、何故かは分からないけれど生まれ変わったからには、戦争が起こり得そうなこの世界で生き残れるように頑張らないとな……」
まだ前世の記憶が戻った初日ではあるけれど、大まかな目標は出来上がった。
もう一度生きる事を許されたのならば、後悔せずに生きたい。戸惑いはめちゃくちゃあるけれど、だからっていつまでもアタフタしていたって仕方ないんだ。現実、死んだはずがこうやって生きているんだし。
さあ、二度目の人生はどう過ごしていこうか。でも、その前に。
「さすがに疲れたな……。精神的疲労もあるし、今日はもうのんびりと過ごそうか……」
この半日で脳内に入れた情報量が膨大で気疲れも甚だしい。そろそろ頭を休めたいと思った僕は体を伸ばす為に両手を上にあげる。
「ていうか、もう夕方だ……。うん、休もう」
資料室の窓からは夕陽が眩しく入り込んでいた。もうじき暗くなる時間帯だし、夜になってしばらくしたら夕食の時間だ。
ひとまずある程度はこの世界の再確認と整理は出来たから続きはまた明日以降だね。
それに、外もいってみたいし。
僕は窓の近くまで歩いて屋敷の庭の景色を見渡しながらそう思うのだった。
魔法。それは前世の世界ではファンタジーでしか有り得なかったけれど、この世界には現実として使われている存在だ。
有難い事に、その仕組みはRPGゲームなどにおける魔法に似ていた。
まず、魔法には種類がある。
「基本五属性、応用二属性、無属性の三種類か」
基本五属性は、『火・水(氷はここ)・風・雷・土』の魔法のことで魔法使用者の中では扱える人口が多い魔法だね。火や水については生活でも使える魔法がちらほらとある。
次に応用二属性。こっちは『光・闇』の二種類。光魔法には回復魔法も含まれている。対して闇魔法にはゲームでいうデバフ系のものが多い。
最後に無属性魔法。これは生活に関する魔法とかが多い。便利な魔法程度の存在が殆どだけど物体転移だとか興味深い魔法もここに分類される。大雑把な言い方だけど、基本にも応用にも属さない魔法はこっちという扱いみたいだ。
さらに、これらの魔法にはランクが存在する。
「ランクの低い順から『初級・中級・上級・戦術級・戦略級』の五分類だね」
初級は魔法を使いたての魔法能力者でも使える魔法で、威力はたかがしれている。それでも前世における小銃よりは威力があるんだから、やっぱり魔法はすごい。これが中級、上級になるにつれて威力が上がり、戦術級ともなれば戦場一つの戦況をひっくり返るのも可能だし、戦略級ともなれば戦争を変えられる可能性すら秘めている。ただ、戦術級と戦略級はおいそれとは出せない。それは何故か。
「戦術級・戦略級は単独では使わず集団で使う必要があり、さらに詠唱時間も長い」
僕は屋敷の資料室から見つけた『アルネシア魔法大典』のページを閲覧しながらそう呟く。
当たり前ではあるんだけど、魔法には詠唱が必要だ。初級・中級程度までなら詠唱時間は大した事がない。発動に必要な分節が少ないからだ。ところが上級から上の戦術級以降ともなると、式典のアホみたいに長い講話かよってレベルで必要になるしこれを個人ではなく集団でやるもんだから手間もかかる。戦術級魔法で平均三十分。戦略級で三時間。ううん、最前線ではとても使えないシロモノだな。戦略級に至っては前世の戦略級兵器、核弾頭搭載ミサイルの方がまだ撃つのが早いんじゃないかと思えるくらいだ。
だけど、戦術級や戦略級魔法が手間がかかるのはさらなる理由があった。
「また、戦術級・戦略級魔法は膨大な魔力を必要とする。よって個人ではなく集団で詠唱を行わなければならない。戦略級発動ともなれば魔法能力者一個大隊の魔力を総動員しなければならず、魔力光により位置は暴露され、詠唱中の能力者を守る為の部隊も必要となる、かあ」
何とも妥当な理由だった。魔法の発動には、ゲームでMPが必要だったように魔力が必要になる。
この魔力には二種類あって、空気中にある空気中魔法粒子と体内にある体内魔法粒子だ。空気中の魔法粒子は専ら自然回復専用で、発動に使うのは体内の魔法粒子。いわゆる魔力。こいつはゲームとかでもあったように個人差があって、多い人と少ない人の差が激しい。おまけに、さっきお爺様と話したように魔人は人間の五倍魔力を保有しているので人類はその点では不利だ。保有量に缶コーヒーと一リットルのペットボトル位の差があると言えば分かりやすいかな。
ちなみに魔力の測定には、タブレット端末のような外見を持つ魔力測定器具(アルネシア連合王国では、M1830測定器具を使っている。どうやら八年前に更新されたらしい)で計測する。
「という訳で持ってきました、測定器具。これで測ってみようじゃないか」
さすが貴族というべきか、結構高価なシロモノなのに測定器具がありました。まあ、領地を統べる者達の屋敷ならあっても不思議じゃないけどさ。
さて、僕ことアカツキは魔法が使える魔法能力者の一人である。アカツキとしての記憶では前回計測したのが一年前。その時の数値が1350だった。
「軍人魔法能力者の全平均値が800、軍人や職業魔法能力者以外の魔法を使える人類の全平均値が250と考えれば高い方だね。これは、血筋だろうなあ」
貴族は連合王国の歴史上、魔法能力者が多い。ノースロード家はその中でも比較的古くから続く家系なので、脈々と受け継がれた結果着々と魔法能力者としての力もつけている。無論、基礎力からどれだけ成長出来るかは本人次第だけど。
「えーっと、測定器具の起動の仕方は……。――システム起動」
測定器具に手をかざして言うと、その機械から小さな魔法陣が光り輝いてホログラムのような画面が出現する。魔法すごいな。流石物理法則やら何やらを無視しているだけある。
「魔力測定、開始」
『魔力測定を開始します。対象、アカツキ・ノースロード。アルネシア陸軍登録魔法能力者』
測定器具から機会音声が流れると魔法陣から発せられる光は僕の手を包んでいき、数値が動き始める。
『…………測定中。…………測定完了。アカツキ・ノースロード、魔力値1540。最高値を更新。推奨、登録ランクをB+からA-への移行』
「あれ、上がってる?」
測定器具から発せられた魔力数値に僕は首を傾げた。
通常、魔力の成長は個人差が大きいけれど多くて百から百五十程度だ。しかもこれは幼少期や少年期の伸び代のある時期の話。僕みたいな二十代になってからは珍しい。
ただ二百程の上昇値だと転生モノでお決まりのチートにしてはあまりにインパクトが無い。ちょっと成長率が良かった位で地味なもの。それはランクにも示されていた。
「確か、能力者ランクは『S・A+・A・A-・B+・B・B-・C・D・E』だったね。A-は上から四番目で、優秀ではあるけれどチートってレベルでは無い」
魔法能力者はランク分けがあって、これは軍人非軍人関係無い。Sランクはまさにチート級で、A+ランクでも英雄クラスだ。対して、僕がランクアップしたA-ランクは真ん中より少し上。努力すれば辿り着ける人もいるというランクで、二十代そこそこでここなら才能はある方だと言えるだろうね。
ちなみに今回の測定は公式ではないので、ちゃんと公証可能な場所――一番手っ取り早いのが領主である父上立会の元で測定して、軍の中央司令部に書類を送る――で測定し直さないといけないみたいだ。だから推奨で言われたんだね。
「にしても、異世界に転生したらチート貰い放題! とかあるけれど、現実はそうそうチートだらけではないよね。……いや、貴族の家に生まれてる時点で十分過ぎるか。おまけに経営順調な領地なんだし」
幾ら貴族の力が以前よりは弱くなったとはいえども、王政であり貴族が階級として残る国にそのみぶんになれたのは相当ラッキーだ。
僕があれこれしたい。ここを改善したらどうか。ここは変更して、より良くしていこう。などといういわゆる内政系は一般人に生まれるとなかなかやりづらいし時間もかかる。一般庶民の立場からだと決定権を持つ王様なり貴族へ打診しないといけないからだ。
けれど貴族ならば領地で実証が可能だし身分のお陰で行動もしやすい。もし、国王陛下に謁見して直接願い出る場合も伯爵の家の息子なら不可能ではないだろう。これはまさに幸いだった。
「魔法のある世界での魔法使いであり、貴族の息子。しかも跡継ぎ。前世の最期は悲惨だったし、部下も沢山失った。けれど、何故かは分からないけれど生まれ変わったからには、戦争が起こり得そうなこの世界で生き残れるように頑張らないとな……」
まだ前世の記憶が戻った初日ではあるけれど、大まかな目標は出来上がった。
もう一度生きる事を許されたのならば、後悔せずに生きたい。戸惑いはめちゃくちゃあるけれど、だからっていつまでもアタフタしていたって仕方ないんだ。現実、死んだはずがこうやって生きているんだし。
さあ、二度目の人生はどう過ごしていこうか。でも、その前に。
「さすがに疲れたな……。精神的疲労もあるし、今日はもうのんびりと過ごそうか……」
この半日で脳内に入れた情報量が膨大で気疲れも甚だしい。そろそろ頭を休めたいと思った僕は体を伸ばす為に両手を上にあげる。
「ていうか、もう夕方だ……。うん、休もう」
資料室の窓からは夕陽が眩しく入り込んでいた。もうじき暗くなる時間帯だし、夜になってしばらくしたら夕食の時間だ。
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