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第2章 改革と戦争の足音編
第15話 法国の法皇と大司教
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・・15・・
11の月26の日
イリス法国・首都イリス
法皇庁・法皇執務室
冬の足音が聞こえつつある十一の月の下旬。アカツキ達が暮らすアルネシア連合王国では場所によっては雪も降りそうな程に冷え込むようになった頃。連合王国の南部に位置する、人類諸国が信仰しているヨルヤ教の総本山があるイリス法国は、温暖な気候の恩恵によりまだ比較的暖かい日が続いていた。
その法国の首都イリスの法皇庁法皇執務室。今年で御年七十七となったヨルヤ教の最高伝導者であり国家最高指導者であるベルヘルム十五世は部下よりあげられた報告書を興味無さげに見つめていた。
「法国東部国境付近、魔物増加の報告とな」
「はい、法皇陛下。第八神聖師団や第十二神聖師団から四ヶ月前より魔物の出現が増えていると知らせてきました」
法皇に淡々とした口調で説明をしているのは三十代後半と若くして大司教の位を示す法衣を身に纏う男、リハエルであった。
「所詮魔物じゃろう。わざわざ余に伝えるほどのものと?」
「通常であれば陛下にお見せするほどではありませんが、増加している数がやや異常でしたのでお耳に入れて頂こうかと判断しました」
「ふむ。なら申せ。どれ程増えおった」
「今月二十の日までに、前年同月比十六パルセント増でございます」
「十六はちと多いのう。四ヶ月前から今月までに割合としてはどれ位増えておるのじゃリハエルよ」
「四ヶ月前からであれば、出現数は約二割の増加でございます法皇陛下。数自体はそれほど多くはごさいませんので両師団が対処出来ない訳ではありません」
「ならばお主らで対象法を裁決すれば良いではないか」
「ですが法皇陛下。問題は魔物の強さと統率の取れた行動でございます」
「強さはともかくとして統率? 魔物はケモノも同然じゃぞ。低脳な連中が統率ある動きをするなぞ有り得ぬではないか」
ベルヘルム十五世は吐き捨てるように言う。七十代後半と老齢の彼は悪い意味で固定観念が頭にこびりついており、魔物の常識外の行動を否定する。だがそれでもリアエル大司教は説明を止めなかった。
「私としても当初は我が耳を疑いましたが、現場にいる者達が虚偽の報告をする理由もありません。内容も、大型の魔物であるオーガやオークも増え、連携の取れた動きをする等と事細かに記載されておりましたから……」
「余は兵達を信じておらぬわけではない。じゃが、知能の低い醜いバケモノ共が小賢しく人間の真似事をするのが信じられぬと思うておるだけよ」
「ですが、現実でありますので……」
「もう良い。話は聞いた。余は年末の祭事で忙しい。追加派遣の要望が来ておるのならば大司教や軍で決めよ」
「……かしこまりました、法皇陛下」
「他には?」
「ありません」
「なら下がれ。ご苦労じゃった」
「…………失礼します」
若干の沈黙を置いてからリアエル大司教は言うと、法皇執務室を後にした。
彼が出ていってしばらくして、ベルヘルム十五世は呆れたようにため息をつく。
「増加数はちと異常じゃがたかが魔物程度で余の耳にいれるなぞ、必要無かろうに。リアエル大司教は心配が過ぎるの」
ベルヘルム十五世はリアエル大司教が持ってきた資料を執務机の端に置き、彼がこの部屋を訪れる前から見ていた来月の予定表に目を通す。ベルヘルム十五世の言う通り、確かにスケジュールは詰まっていた。
「魔人が出現したなり、先の大戦のように押し寄せてくるならともかく、余はそれどころではないのだ。第一、我が国は国民の半数が魔法能力者。軍も同様じゃ。さらには召喚武器を授かりし者共もある。妖魔帝国如きに負ける国ではあらぬ。それよりか、次の月の予定の方がよっぽど重要じゃて」
ああ忙しい忙しい、と彼は独りごちる。
戦争の足音は、着々と近付いていた。
11の月26の日
イリス法国・首都イリス
法皇庁・法皇執務室
冬の足音が聞こえつつある十一の月の下旬。アカツキ達が暮らすアルネシア連合王国では場所によっては雪も降りそうな程に冷え込むようになった頃。連合王国の南部に位置する、人類諸国が信仰しているヨルヤ教の総本山があるイリス法国は、温暖な気候の恩恵によりまだ比較的暖かい日が続いていた。
その法国の首都イリスの法皇庁法皇執務室。今年で御年七十七となったヨルヤ教の最高伝導者であり国家最高指導者であるベルヘルム十五世は部下よりあげられた報告書を興味無さげに見つめていた。
「法国東部国境付近、魔物増加の報告とな」
「はい、法皇陛下。第八神聖師団や第十二神聖師団から四ヶ月前より魔物の出現が増えていると知らせてきました」
法皇に淡々とした口調で説明をしているのは三十代後半と若くして大司教の位を示す法衣を身に纏う男、リハエルであった。
「所詮魔物じゃろう。わざわざ余に伝えるほどのものと?」
「通常であれば陛下にお見せするほどではありませんが、増加している数がやや異常でしたのでお耳に入れて頂こうかと判断しました」
「ふむ。なら申せ。どれ程増えおった」
「今月二十の日までに、前年同月比十六パルセント増でございます」
「十六はちと多いのう。四ヶ月前から今月までに割合としてはどれ位増えておるのじゃリハエルよ」
「四ヶ月前からであれば、出現数は約二割の増加でございます法皇陛下。数自体はそれほど多くはごさいませんので両師団が対処出来ない訳ではありません」
「ならばお主らで対象法を裁決すれば良いではないか」
「ですが法皇陛下。問題は魔物の強さと統率の取れた行動でございます」
「強さはともかくとして統率? 魔物はケモノも同然じゃぞ。低脳な連中が統率ある動きをするなぞ有り得ぬではないか」
ベルヘルム十五世は吐き捨てるように言う。七十代後半と老齢の彼は悪い意味で固定観念が頭にこびりついており、魔物の常識外の行動を否定する。だがそれでもリアエル大司教は説明を止めなかった。
「私としても当初は我が耳を疑いましたが、現場にいる者達が虚偽の報告をする理由もありません。内容も、大型の魔物であるオーガやオークも増え、連携の取れた動きをする等と事細かに記載されておりましたから……」
「余は兵達を信じておらぬわけではない。じゃが、知能の低い醜いバケモノ共が小賢しく人間の真似事をするのが信じられぬと思うておるだけよ」
「ですが、現実でありますので……」
「もう良い。話は聞いた。余は年末の祭事で忙しい。追加派遣の要望が来ておるのならば大司教や軍で決めよ」
「……かしこまりました、法皇陛下」
「他には?」
「ありません」
「なら下がれ。ご苦労じゃった」
「…………失礼します」
若干の沈黙を置いてからリアエル大司教は言うと、法皇執務室を後にした。
彼が出ていってしばらくして、ベルヘルム十五世は呆れたようにため息をつく。
「増加数はちと異常じゃがたかが魔物程度で余の耳にいれるなぞ、必要無かろうに。リアエル大司教は心配が過ぎるの」
ベルヘルム十五世はリアエル大司教が持ってきた資料を執務机の端に置き、彼がこの部屋を訪れる前から見ていた来月の予定表に目を通す。ベルヘルム十五世の言う通り、確かにスケジュールは詰まっていた。
「魔人が出現したなり、先の大戦のように押し寄せてくるならともかく、余はそれどころではないのだ。第一、我が国は国民の半数が魔法能力者。軍も同様じゃ。さらには召喚武器を授かりし者共もある。妖魔帝国如きに負ける国ではあらぬ。それよりか、次の月の予定の方がよっぽど重要じゃて」
ああ忙しい忙しい、と彼は独りごちる。
戦争の足音は、着々と近付いていた。
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