異世界妖魔大戦〜転生者は戦争に備え改革を実行し、戦勝の為に身を投ずる〜

金華高乃

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第3章第二次妖魔大戦開戦編

第11話 ルブリフ丘陵の戦い2~魔石型遠隔作動式地雷~

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 ・・11・・
 戦場を支配する大爆発と轟音、そして爆発によって生じた衝撃波は僕達がいるルブリフ丘陵にも到達する。あまりの衝撃にアルヴィンおじさん始め、僕とリイナにルナ中尉を除いた全員が驚く。

「うおぉ、魔法障壁を展開してもこれかよ!」

「魔法障壁一枚が衝撃波によりロスト! 二枚目にはヒビが入りました!」

「妖魔軍、爆炎と粉塵で確認出来ず!」

「大規模爆発により空気中魔法粒子が撹乱! 一時的に魔法無線装置使用不能!」

「予想の範囲内だよ、落ち着いて。ルナ中尉。計算では通信回復にどれくらいかかるかな?」

「ふぇ……!? 想定通りの威力でしたから、三分もあれば戻るかと……。視界が晴れると同時になると思います」

「だそうだよ。司令要員はそのまま待機。観測要員は視界が晴れ次第効力確認を」

『りょ、了解!』

「こいつはまさに驚天動地モンだな……」

「まるで戦術級魔法のようね……」

「アカツキくん曰く、地雷だったよね」

「はい。これだけの威力だと地雷というよりかは最早爆弾ですが」

 眼前に広がる連鎖的大爆発の光景。
 僕の秘策というのはこれの事であり、名付けて『魔石型遠隔作動式地雷』で、通称は魔石地雷だ。
 そもそもこの世界には地雷の原型こそありはしても実戦が無かった上に魔物討伐にこんな代物は使わない。魔法または通常兵器で普通に攻撃した方が手っ取り早いからだ。故に地雷は文献上でしか語られる事は無かった。
 けれど、僕は魔石についてとある点に着目した。魔力暴走によって爆発を引き起こす点だ。
 魔石というのは文字通り魔力を貯め込む事が可能な石であり、魔法無線装置も魔石を活用して使われている。この魔石なんだけれど、魔力を過剰に貯め過ぎると魔力暴走を引き起こすんだよね。それを目撃したのは研究所に視察に行った時で、ルナ中尉がたまたま実験でほんの小さい魔石を魔力暴走させてしまい、危険じゃない程度の爆発――爆発と言っても水素の実験でポンッとさせるあれくらいのもの――をしてしまったんだ。これ自体は研究所じゃ割とよくある事らしいんだけど、僕はここで閃いた。
 もしかして、魔石って爆弾や地雷として使えるんじゃないかと。
 そうして出来上がったのが魔石地雷で、もし大軍が押し寄せて来た時に備えて作ったのが魔石型遠隔作動式地雷なんだ。
 今回はこれを四十個用意。それなりの大きさの魔石なので一個あたりの有効直径は三百メーラで南北十二キーラに渡って爆発したわけだ。まさに戦術級兵器だね。

「す、凄い威力……。理論上は可能ですけど、まさか戦術級兵器になるなんて思いませんでした……」

 ルナ中尉は、この規模はぶっつけ本番なのでさっきまで不安だったけれど今は周りと同じく驚愕を隠せないという様子だった。

「戦術級兵器に変えられたのはルナ中尉のお陰だよ。魔石には術式を内蔵出来るから遠隔作動術式の組込にセントラルの制御術式、本来は爆発しない魔力において魔石を意図的に爆発させる術式も君の開発成果さ」

「そ、そんな畏れ多い……。わたしはただ従来からある術式を応用しただけなので……」

「応用出来る時点で大したもんだぜ。こんなん思いつくアカツキもアカツキだけどよ」

「魔力暴走による爆発を用いた新兵器。モノは考えようとはまさにこの事だね」

「防衛兵器だけじゃない、使い方次第では攻撃用としても使えるわ」

「そうですよ! アカツキ大佐の方が凄いです! これまで事故でしか起こらなかった魔石の爆発を兵器に転用するなんてわたし達じゃとても考えつきませんから」

「あ、ありがとう。まさかそんなに褒められるとは思わなかったよ……」

 どうやら研究者にとっても画期的な発明らしく、さっきまでの顔つきが嘘かのようにまるで先生を見るかのようなキラキラとした眼差しをルナ中尉から送られて僕は少し戸惑う。前世にも遠隔作動するタイプの地雷はあったからそれをちょっと魔法のある異世界に合わせて考案してみただけなんだけどな……。

「粉塵、間もなく晴れます!」

 しかし、どうやらお話の時間もここで終わりのようだ。観測要員の発言通り、爆煙はおさまり舞っていた視界もだいぶ晴れてきた。さあ、魔物達はどうなったかな?

「視界クリア! …………す、すごい! 前列に展開した魔物は軒並み全滅です!」

「通信回復! 各連隊や師団から相次いで連絡! 爆発の圏内にいた魔物は即死! 付近にいた魔物も死亡または行動不能!」

「妖魔軍の前進、一時停止です!」

「よし、よし、よし! サモナーフライヤーズをすぐに発進! 妖魔軍に与えた被害を報告させるように!」

「了解しましたぁ!」

 平原に広がっていたのは地雷によって形成された四十のクレーターと大量の魔物の死体、身動きの取れなくなった、死体以上の数の魔物だった。
 つまり地雷の効果は抜群で、連合王国軍は一兵も失わず妖魔軍に大損害を与えたわけだ。この景色に部屋の中は大歓声に包まれ、僕も喜びを露わにする。砦の中も、砦の外からも展開していた師団から歓声が聞こえてきていた。

「やったなアカツキ! 初っ端から妖魔軍にとてつもなく痛いのをぶっ食らわせてやったぜ!」

「大戦果だよアカツキくん! 素晴らしい! 素晴らしいよ!」

「凄いわ旦那様! 魔物の大軍が文字通り木っ端微塵じゃない!」

「秘策が成功して良かったです。これで相当な被害を奴らに食らわせられたはずですよ」

 アルヴィンおじさん、ルークス少将、リイナも喜色を浮かべてそれぞれが僕を称えてくれる。僕もこの時ばかりかは笑顔で彼らに言った。
 けれど、僕より褒められるべき人物がいる。それは。

「ルナ中尉、本当にありがとう。君の開発した術式のお陰で血を流さず大きな一手を打てたよ」

「ふえぇ!? わたしですか!? 」

「うん。君だよ」

 僕の言葉に続きアルヴィンおじさんやリイナ、ルークス少将だけじゃなくて司令要員や観測要員の兵達も僕の言葉に肯定の意味で頷く。

「うぇ、うぇぇぇ、ありがどうございまずうぅぅぅ……。成功して良がっだぁぁぁ……」

 ルナ中尉は自身開発の術式が成功した安心と皆に賞賛されて褒められた嬉しさが入り混じってその場で泣き崩れてしまった。すぐにリイナがフォローに入り、ハンカチを渡すとルナ中尉は涙でぐしゃぐしゃになった顔を拭う。

「サモナーフライヤーズより報告入りました! 第一から第三飛行隊それぞれが、魔物には推定一万から一万五千の損害を与えたであろうとのこと! 行動不能も含めれば、約二万!」

「二万だと!? くはははっ、そいつはすげえや!」

「これで妖魔軍も流石に撤退するだろうね! 何せ全体の二割以上が使い物にならなくなったんだ!」

 総勢の二割以上がたった一度の地雷群によって消え去った。普通の軍隊なら即撤退モノだし、最低でも進撃は停止する。この時点で連合王国軍の勝利は確定となる。
 はずだった。
 どうやら妖魔軍とやらはそんなに甘くはないらしかったんだ。
 その知らせが入ったのは、室内にいた全員どころか軍全体が早々に戦勝ムードになっていた時だった。

「……ん? 報告あり? ――う、嘘だろ!? サ、サモナーフライヤーズ第二飛行隊より一報! 妖魔軍中央が再進撃を開始しました……」
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