異世界妖魔大戦〜転生者は戦争に備え改革を実行し、戦勝の為に身を投ずる〜

金華高乃

文字の大きさ
65 / 390
第4章法国遠征編

第13話 ヴァネティア平野の戦い7〜アカツキ・リイナVSチャイカ姉妹〜

しおりを挟む
・・13・・
 直前までただの広場だった空間は殺し合いの闘技場と化した。
 正面には今か今かと待ちわびている様子の双子の魔人、ラケルとレーラ。対して僕とリイナはいつ開戦してもいいように魔法障壁を多重展開し、召喚武器を手に持つ。
 周囲は僕達が戦闘中の際に被害が及ばぬよう周りを防護する為魔法能力者達が魔法障壁を展開し、歩兵達も不測の事態に備えて銃を構える。ルークス少将や参謀達はいくらA+のリイナがいるとはいえ不安げに見守っていた。ルークス少将に至っては気が気でない様子だ。

「用意はいいかしらぁ? 人間。アカツキ・ノースロードに、あなたはリイナ・ノースロードよね?」

「そうよ。あんた達の墓場をここにしてあげる人物なのだから覚えておきなさい。――降り注ぎなさい、氷槍惨禍」

 リイナは言い切ると細剣を抜刀、呪文を詠唱する。
 唱えたのは初手から氷槍惨禍だった。彼女の頭上には多数の魔法陣が現れ、氷槍はチャイカ姉妹へと降り注ぐ。
 リイナの氷槍惨禍発動と同時に僕は動き出した。身体強化呪文の「瞬脚」を発動し加速。目標をラケルに定めて突撃する。

「開幕から本気だなんて最高に楽しいじゃない!」

「けど、その程度じゃ姉様もわたしも倒せないわあ」

 予想はしていたけれど、二人は僕達に接近しながら回避しつつ命中した氷槍は全て彼女等が展開していた魔法障壁によって防がれてしまう。
 リイナもそれは分かっていたようで、僕が動き出した直後には援護に回る形で後を追う。

「あなたの相手は、わたしぃ! 黒双剣顕現しなさぁい!」

「ちぃ! いいわ、かかってきなさい!」

 しかし双子の魔人が僕達の好きなようにさせてくれるわけがない。姉と併走していたレーラは禍々しい黒の双剣を手に持ち進行方向を変えて、僕を無視してリイナを目標とする。

「となると、僕とお前が」

「直接対決ねえ。戦いはあの子ほど得意じゃないんだけどぉ」

「どの口が言うか! 炎を纏い燃やせヴァルキュリユル!」

 リイナの援護が受けられないとなると厳しい戦いになるけれど、彼女の無事を祈りつつ僕はラケルと一対一の命の懸合いを挑む。
 斜め後ろからは初撃から激しい剣戟の音が聞こえる中でヴァルキュリユルから二発の炎の弾丸を放つ。

「ぬるいわねえ。たった二発だなんて。獄炎よ焼き尽くさなさぁい!」

「まだに決まってんだろっ! 放て、逃さず爆ぜよ! 追尾式爆砕!」

「追尾式だなんてやらしい子。でも当たらなければいいんでしょう? 焔の壁」

「だったらこれだ! 炎弾は八重に分かれ風を乗せ、逃さず穿てヴァルキュリユル!」

 ラケルを逃さず捉えるはずだった二発はどす黒い炎の壁にのまれるけれど諦めるわけがない。さらに続けて僕は呪文を詠唱しまた二発撃つ。炎属性と風属性の複合魔法に弾丸が一発につき八発に分裂し計十六発となってラケルに飛翔する。

「追尾の次は分裂だなんて! これだから召喚武器持ちは面白いわ!」

「クソっ、ちょこまかちょこまかと避けやがって!」

「それは貴方も同じでしょう?」

 ラケルはけらけらと笑いながら余裕綽々の様子で回避していく。焔の壁を壊すのに四発、それでも十二発が残ったもののひらりと躱されるか魔法障壁の一部を破壊するに留まり、しかも魔法障壁はすぐに元の枚数に戻るからキリがない。
 それはラケルの言う通り僕も同じで、避けては攻撃、魔法障壁で防いでは攻撃、隙を見て障壁を再展開を繰り返していた。

「ったくこれじゃあ埒が明かない!」

「えぇ? 私はとっても愉しいわよぉ? けど貴方は大丈夫かしら? 余裕が無さそうだけどぉ」

「うっさい!」

 何度も何度も装填を行い、苛烈な魔法能力者戦同士の呪文の乱れ撃ち合いを経てようやく相対しての膠着状態となる。
 戦いを固唾を飲んで見守る兵士達からすると僕とラケルの戦闘は互角のように見えるかもしれないけれど、癪に障ることにあちらの表情には余裕があった。

「このままじゃ魔力差で押し負ける……」

 僕は奴に聞こえない程度の小声で呟く。
 魔力保有量に優れる魔人のラケルに対して、自身の残存魔力は全力で戦うには心許なくなっていた。ヴァルキュリユルで中級魔法を連発し破壊された魔法障壁を戻し、瞬脚をパッシブ状態にしていれば魔力の消費は激しくなる。
 いくらリイナとの訓練を経て魔法能力者ランクがAに上がってもモノには限界がある。これがかつて流行ったようなチート主人公なら圧倒的魔力でゴリ押しなんて芸当も可能だけど、生憎世の中そんなに甘くはなくて僕にはそんな魔力はありやしない。
 消耗戦では不利。いいや下策だ。となれば次の行動で決めるしかない。
 僕は体感で三割を切ったであろう魔力でどうすべきか、リイナの方をちらりと見て未だに激し
 い一騎討ちをしており僕を援護する余裕など何処にもないと判断を下したら頭を巡らせ、決断する。

「アカツキ・ノースロードぉ? 突っ立っているなら私から仕掛けるわよぉ?」

「黙れ。次で決めてやるよ。慢心した事、後悔させてやる」

「…………次で決める? 慢心? 後悔? ……あははっ!! あははははははははははっっ! 良く言い放ったわ人間! アカツキ・ノースロード! 貴方のその蛮勇に免じて先手を譲ってあげるわ。かかってらっしゃいな?」

「とことん舐め腐りやがって……! 」

 人差し指のみを下から上に動かして挑発するラケルと、その行動をきっかけとして僕は勝算のある賭けに出る。

「瞬脚、二重展開ダブルアクセル。炎の八重はさらに分かれよ、風を乗せ敵を切り刻め!」

 駆け始める第一歩で瞬脚を二重掛けして先程より加速度を高める。引き続いて呪文を詠唱してヴァルキュリユルから二発の弾丸を撃つ。解き放たれた弾丸はそれぞれが八発に分裂したかと思うとさらに分裂して十六発へ。合計三十二発と化した銃弾は一斉にラケルへ襲いかかる。

「ふうん、まだ増えるのね。でも無駄無駄、無駄よ。障壁反転、指向性攻勢防壁へ」

「ちくしょうなんでもありかよ!? 幻影陽炎!」

 ラケルを貫く事は叶わなかったにしても破壊したはずの魔法障壁数枚はラケルの呪文によって性質が転換。突如として爆発を引き起こし魔法障壁だったものの破片が自分めがけて飛んでくる。
 僕は対して咄嗟の判断で幻影陽炎を発動して偽の自分を作り出してデコイとして用い、偽の自分に破片は集中なんとかやり過ごす。

「幻を作り出す魔法まであるのねえ! それならこれはどうかしらぁ!」

「当たってたまるか! 魔法障壁固定複数展開! 障壁は防御以外にも、使えるんだよっ!」

「あらあらあら面白いわ面白いわ!」

 ラケルの詠唱の直後数十もの魔方陣から火球が不規則な位置から飛び出すが、僕は魔法障壁を一つずつ展開し、それを蹴って跳躍する。
 魔法障壁は実体化している。だから踏み台にする事だって可能だ。
 身を守る為ではなく、移動手段にする多分誰も試したことの無い工夫した活用法。
 焼き殺さんとする火の球をさらに跳躍して回避し、回避しきれない分は魔法障壁を身代わりにして行き先には障壁を展開。最終的に上空二十メーラ程度まで上がっていく。
 ここからが勝負だ。最大高度まで到達し、降下が始まる瞬間に背後に魔法障壁を蹴って一気に接近しようとする。

「それじゃあ狙ってくださいって言っているようなものよお? これでおしまいねぇ」

「いいやこれでいいんだよっ!」

 ラケルが時間差で二発の火焔球を放つと一発は残り二枚になった魔法障壁に衝突。一枚は粉々に砕け散った。もう一発へは腰の鞘から抜いた二本のダガーを投擲させた。
 投げたのはただのダガーじゃない。リイナが付与してくれた氷属性の魔法付きのダガーだ。
 火と氷。ぶつかり合えば必然的に引き起こされるのは現象は水蒸気爆発だ。
 爆発による衝撃波で最後の魔法障壁が壊れるけれど、代わりにラケルの視界は奪われる。

「もぉ、鬱陶しいったら!」

「遅い! もらったあぁぁぁぁ!」

「な――」

 ラケルが風属性の魔法で煙を払った頃には僕とラケルの間は五メーラを切っていた。魔法を唱えて行使するにはもう遅い。
 どう足掻いてもヴァルキュリユルの銃弾はラケルの心臓を貫ける距離だ。外すはずがない。
 僕は勝利を確信したし、見守っているルークス少将もリイナだってそう思っていただろう。
 だけど。
 世界というのはかつて前世で命を奪われた時のようにつくづく理不尽だった。

「ーんてね。座標固着ぅ」

 目線が合った刹那に、ラケルは思惑通りと歪に口角を曲げてわらう。
 奴が唱えた呪文。僕は自分に何が起きたか理解が出来なかった。
 座標固着という初めて耳にする魔法。
 それにより僕は宙に浮いたまま一ミーラ足りとも動けなくなってしまった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

ステータス画面がバグったのでとりあえず叩きます!!

カタナヅキ
ファンタジー
ステータ画面は防御魔法?あらゆる攻撃を画面で防ぐ異色の魔術師の物語!! 祖父の遺言で魔女が暮らす森に訪れた少年「ナオ」は一冊の魔導書を渡される。その魔導書はかつて異界から訪れたという人間が書き記した代物であり、ナオは魔導書を読み解くと視界に「ステータス画面」なる物が現れた。だが、何故か画面に表示されている文字は無茶苦茶な羅列で解読ができず、折角覚えた魔法なのに使い道に悩んだナオはある方法を思いつく。 「よし、とりあえず叩いてみよう!!」 ステータス画面を掴んでナオは悪党や魔物を相手に叩き付け、時には攻撃を防ぐ防具として利用する。世界でただ一人の「ステータス画面」の誤った使い方で彼は成り上がる。 ※ステータスウィンドウで殴る、防ぐ、空を飛ぶ異色のファンタジー!!

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

処理中です...