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第5章 新召喚武器召喚編
第14話 勝利をその胸に誓う出征パレード
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・・14・・
8の月19の日
午前9時30分
アルネセイラ王城前
大空には晴天が広がる王都アルネセイラ。その中央に位置している王城、数万人は収容可能な大広場には非常に多くの軍人が集まっていた。集まっているのは士官以上の軍人で、全員が整列してこの場にいる。僕もその中の一人で、参謀長という役職もあって最前列でアルヴィンおじさんの隣にいた。
これから始まるのは出征にあたって国王陛下からのお言葉を頂戴する式典。その後には王城正門からアルネシア・アルネセイラ駅までのパレードが控えている。まずは前者が間もなく行われようとしていた。
「国王陛下、ご登壇っ!」
宮内大臣の言葉に全員が姿勢をただし、足を揃える。登場した陛下は式典用に着用する豪奢な衣服を身に纏い現れた。後方では広報用に撮影されているカメラのフラッシュが多く光っている。
そして、陛下が用意されていた他より数段高い場所に設置されている壇上にのぼるとマーチス侯爵は。
「総員、国王陛下へ、敬礼ッッ!」
ザッ、と一矢乱れぬ敬礼が行われた。陛下は満足気に見回して頷くと。
「我が王国が誇る精強なる軍人達よ! 諸君等はこれよりワルシャーへと赴き、二十六の日より歴史を変える瞬間を歩み始める選ばらし者達である! 『鉄の暴風作戦』、それは長年奪われ続けていた東方領の奪還! そして、人類、エルフ、ドワーフなど諸種族が手を組んで行う妖魔共に対する初の反攻作戦である!」
陛下は声高らかに宣言する。ここにいる誰もが、歴史に名を残すであるだろうと誇らしく。
「余はこの日を待ちわびておった! 先祖が祖国を蹂躙される中、当時神から授かりし召喚武器を用いて妖魔軍を押し退けるものの我々は多くの領土を失い過ぎた。特に当時の東部領に多く居を構えていたエルフ達にとっては屈辱の思いだったであろう。しかし! 此度の戦争は奪い返す戦争である! 兵共よ! 我々は二百五十年前とは違うのである! 兵器は大きく進化を遂げ、魔法を持たざる者でも一人一人が力を結集すれば魔法にも劣らぬ火力を持つに至り、魔法を持つ者も先祖から代々受け継ぎ研鑽を重ねてより強力な魔法を行使するようになった!」
先の大戦では防戦一方で、召喚武器を手にしたとはいえ当時は今より数も少ない。故に今の国境線で敵を抑え込み、妖魔側の突然の休戦に助けられたんだ。人類及び諸種族連合にとって敵に助けられる形となった屈辱的な戦争。だけど今回は違うと国王陛下は声を大きくして言う。
「さらにである! この作戦においては至宝の五極将軍の内、二人が参加する! エルフの長アレゼルと、新たに召喚武器を召喚させたアカツキである! アレゼルが顕現させる巨人は力強く鉄壁が如くの要塞! アカツキが隣に居るは神のように全てを見通し、我らを守護するであろうエイジス! またアカツキ自身は我が王国をより屈強にした立役者である! この二人がいる限り、余の王国に敗北は無いと確信しておる!」
僕はアレゼル中将と共に名指しされ、身を引き締ませる。参謀長でありながらSSランク持ちなんだ。その責任の重大さは計り知れない。でも、重圧に押しつぶされるつもりもない。
「行け! 連合王国軍の精鋭達よ! 掴み取るのだ! 勝利を! 失われし領土を取り戻し、野蛮な妖魔共に我らの力を見せつけよ!」
『おおおおおおおおおっ!!』
国王陛下が拳を空高く掲げると、僕も含めその場にいた全員達が大きく、大きく咆哮を放つ。必ず勝つと、国王陛下に誓って。
国王陛下の登壇と演説を終えると、次は王城からの華々しい出征パレードだ。陛下のお言葉通り初の反攻作戦だけあってその力の入れようは凄かった。選ばれて参加する将兵は参加兵力の五分の一にあたるおよそ三万人。軍楽隊による賑やかな演奏と、幾つも連合王国旗が掲げられる中で市民達に歓声の中迎えられて行進する。その中にはアレゼル中将の六〇一連隊もいるし、僕直轄のアレン大尉達一〇三特殊大隊――今回の作戦に伴い第五師団所属から僕直轄部隊に変更され、名称が変更されている。――もいた。
「連合王国万歳! 連合王国軍万歳!」
「この国に勝利を! 栄光を!」
「必ず生きて帰ってきて! そして笑顔をもう一度!」
「アレゼル様万歳! 我らがエルフに再び東方の地を!」
「アカツキ王宮伯爵バンザーイ! エイジスとと共にまた勝利を!」
「連合王国に、栄光を!」
王城から駅に向かう大通りはまるで凱旋パレードのように沢山の市民が連合王国の旗を振って、手を振って見送ってくれていた。アルヴィンおじさんやルークス少将、リイナと並んで乗馬しながら進む僕も彼等に笑顔で手を振り返す。
「まるで既に勝ったかのような見送りですね。これは勝利を掴まないといけません」
「アカツキくん、君ならやれるさ。僕らもやる。着実に、確実に勝利の道を歩むだけだよ」
「おうともよ。こっちにはアレゼル中将だけじゃなくてお前もいるんだ。少なくとも俺は負ける気がしねえな」
「旦那様なら大丈夫よ。私はその為のサポートをこなすのみよ」
「マイマスター。ワタクシに何なりと御命令を。ワタクシの存在意義はマスターを守り、マスターの軍務を果たす為にあるのですから」
「そうだね。今日みたいに華々しく、今度は凱旋パレードを行えるように戦おう。我らが高貴なる連合王国に勝利を」
『ロイヤル・アルネシアに、勝利を』
僕の言葉にみんなが笑顔で頷き、この国に勝利と栄光を誓う。
途中、このままワルシャーに向かうからと昨日も会ったけれど父上に母上やお爺様、使用人達総出で迎えられ、僕はリイナとアルヴィンおじさんと一緒に胸を高くして敬礼をする。
「アカツキ、気をつけて行ってくるんだぞ!」
「必ず帰ってくるのよ! 私も父も、貴方の無事を祈って待っています!」
「アカツキよ、勝つことも大事じゃが命を大事にするのじゃぞ! 儂に話を聞かせておくれ! その時はとびっきりのコーヒーと一緒にじゃ!」
「アカツキ様、私含め、使用人共々ご主人様のご無事を願って待っていますから!」
「ありがとう! 戻ってくる時には、この手に勝利を携えてきます!」
八の月十九の日。アルセセイラで挙行された盛大なパレードの後に僕達は戦地へと向かう。
そして八の月二十六の日はやってくる。第二次妖魔大戦の本格的な幕開けはもうすぐそこにあった。
8の月19の日
午前9時30分
アルネセイラ王城前
大空には晴天が広がる王都アルネセイラ。その中央に位置している王城、数万人は収容可能な大広場には非常に多くの軍人が集まっていた。集まっているのは士官以上の軍人で、全員が整列してこの場にいる。僕もその中の一人で、参謀長という役職もあって最前列でアルヴィンおじさんの隣にいた。
これから始まるのは出征にあたって国王陛下からのお言葉を頂戴する式典。その後には王城正門からアルネシア・アルネセイラ駅までのパレードが控えている。まずは前者が間もなく行われようとしていた。
「国王陛下、ご登壇っ!」
宮内大臣の言葉に全員が姿勢をただし、足を揃える。登場した陛下は式典用に着用する豪奢な衣服を身に纏い現れた。後方では広報用に撮影されているカメラのフラッシュが多く光っている。
そして、陛下が用意されていた他より数段高い場所に設置されている壇上にのぼるとマーチス侯爵は。
「総員、国王陛下へ、敬礼ッッ!」
ザッ、と一矢乱れぬ敬礼が行われた。陛下は満足気に見回して頷くと。
「我が王国が誇る精強なる軍人達よ! 諸君等はこれよりワルシャーへと赴き、二十六の日より歴史を変える瞬間を歩み始める選ばらし者達である! 『鉄の暴風作戦』、それは長年奪われ続けていた東方領の奪還! そして、人類、エルフ、ドワーフなど諸種族が手を組んで行う妖魔共に対する初の反攻作戦である!」
陛下は声高らかに宣言する。ここにいる誰もが、歴史に名を残すであるだろうと誇らしく。
「余はこの日を待ちわびておった! 先祖が祖国を蹂躙される中、当時神から授かりし召喚武器を用いて妖魔軍を押し退けるものの我々は多くの領土を失い過ぎた。特に当時の東部領に多く居を構えていたエルフ達にとっては屈辱の思いだったであろう。しかし! 此度の戦争は奪い返す戦争である! 兵共よ! 我々は二百五十年前とは違うのである! 兵器は大きく進化を遂げ、魔法を持たざる者でも一人一人が力を結集すれば魔法にも劣らぬ火力を持つに至り、魔法を持つ者も先祖から代々受け継ぎ研鑽を重ねてより強力な魔法を行使するようになった!」
先の大戦では防戦一方で、召喚武器を手にしたとはいえ当時は今より数も少ない。故に今の国境線で敵を抑え込み、妖魔側の突然の休戦に助けられたんだ。人類及び諸種族連合にとって敵に助けられる形となった屈辱的な戦争。だけど今回は違うと国王陛下は声を大きくして言う。
「さらにである! この作戦においては至宝の五極将軍の内、二人が参加する! エルフの長アレゼルと、新たに召喚武器を召喚させたアカツキである! アレゼルが顕現させる巨人は力強く鉄壁が如くの要塞! アカツキが隣に居るは神のように全てを見通し、我らを守護するであろうエイジス! またアカツキ自身は我が王国をより屈強にした立役者である! この二人がいる限り、余の王国に敗北は無いと確信しておる!」
僕はアレゼル中将と共に名指しされ、身を引き締ませる。参謀長でありながらSSランク持ちなんだ。その責任の重大さは計り知れない。でも、重圧に押しつぶされるつもりもない。
「行け! 連合王国軍の精鋭達よ! 掴み取るのだ! 勝利を! 失われし領土を取り戻し、野蛮な妖魔共に我らの力を見せつけよ!」
『おおおおおおおおおっ!!』
国王陛下が拳を空高く掲げると、僕も含めその場にいた全員達が大きく、大きく咆哮を放つ。必ず勝つと、国王陛下に誓って。
国王陛下の登壇と演説を終えると、次は王城からの華々しい出征パレードだ。陛下のお言葉通り初の反攻作戦だけあってその力の入れようは凄かった。選ばれて参加する将兵は参加兵力の五分の一にあたるおよそ三万人。軍楽隊による賑やかな演奏と、幾つも連合王国旗が掲げられる中で市民達に歓声の中迎えられて行進する。その中にはアレゼル中将の六〇一連隊もいるし、僕直轄のアレン大尉達一〇三特殊大隊――今回の作戦に伴い第五師団所属から僕直轄部隊に変更され、名称が変更されている。――もいた。
「連合王国万歳! 連合王国軍万歳!」
「この国に勝利を! 栄光を!」
「必ず生きて帰ってきて! そして笑顔をもう一度!」
「アレゼル様万歳! 我らがエルフに再び東方の地を!」
「アカツキ王宮伯爵バンザーイ! エイジスとと共にまた勝利を!」
「連合王国に、栄光を!」
王城から駅に向かう大通りはまるで凱旋パレードのように沢山の市民が連合王国の旗を振って、手を振って見送ってくれていた。アルヴィンおじさんやルークス少将、リイナと並んで乗馬しながら進む僕も彼等に笑顔で手を振り返す。
「まるで既に勝ったかのような見送りですね。これは勝利を掴まないといけません」
「アカツキくん、君ならやれるさ。僕らもやる。着実に、確実に勝利の道を歩むだけだよ」
「おうともよ。こっちにはアレゼル中将だけじゃなくてお前もいるんだ。少なくとも俺は負ける気がしねえな」
「旦那様なら大丈夫よ。私はその為のサポートをこなすのみよ」
「マイマスター。ワタクシに何なりと御命令を。ワタクシの存在意義はマスターを守り、マスターの軍務を果たす為にあるのですから」
「そうだね。今日みたいに華々しく、今度は凱旋パレードを行えるように戦おう。我らが高貴なる連合王国に勝利を」
『ロイヤル・アルネシアに、勝利を』
僕の言葉にみんなが笑顔で頷き、この国に勝利と栄光を誓う。
途中、このままワルシャーに向かうからと昨日も会ったけれど父上に母上やお爺様、使用人達総出で迎えられ、僕はリイナとアルヴィンおじさんと一緒に胸を高くして敬礼をする。
「アカツキ、気をつけて行ってくるんだぞ!」
「必ず帰ってくるのよ! 私も父も、貴方の無事を祈って待っています!」
「アカツキよ、勝つことも大事じゃが命を大事にするのじゃぞ! 儂に話を聞かせておくれ! その時はとびっきりのコーヒーと一緒にじゃ!」
「アカツキ様、私含め、使用人共々ご主人様のご無事を願って待っていますから!」
「ありがとう! 戻ってくる時には、この手に勝利を携えてきます!」
八の月十九の日。アルセセイラで挙行された盛大なパレードの後に僕達は戦地へと向かう。
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