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第7章一冬(ひとふゆ)の戦間期と祝福の結婚披露宴編

第18話 祝福の結婚式と披露宴3〜多くの人々に祝いの言葉を貰う披露宴〜

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 アルネセイラ大聖堂での結婚式を終えて披露宴の開催地アルネセイラ・ロイヤルホールまでの数百メートルでは豪華な馬車に乗ってのパレードが行われた。大通りには大聖堂の大広場にいた人数を遥かに上回る市民達が駆けつけて祝ってくれていた。
 パレードを終えると到着した、披露宴が行われるアルネセイラ・ロイヤルホールは王城にほど近い位置に所在する連合王国の有名な施設で、貴族や大富豪クラスの披露宴はここでよく行われてきた。
 ここへ僕とリイナが入場したのは午後零時。それからリイナが披露宴用の紫色のドレスに着替えたりと準備を経て開会したのは午後二時になってからだった。ちなみに披露宴は招待客が千五百名を越える規模なのと、気軽にこの場を楽しんで食べて飲んでをしてほしいからと立食形式だ。もちろん、座って歓談したり飲食出来る様にと会場の広さを活かしてかなりのテーブルも用意されている。
 さて、僕とリイナが新郎新婦の席について開会の宣言がされて少しすると、司会役をかって出てくれた宮内大臣がマイクのような形をしている拡声器の魔導具の前に立つと。

 「アカツキ准将とリイナ中佐のめでたき結婚式典の日、エルフォード陛下たってのご希望でこれより祝辞を頂戴する事となった。エルフォード陛下、ノーラッド王太子殿下、エレジア王太子妃殿下、ローレンス王子殿下、ご入場」

 陛下達王族が入場される事で、僕とリイナは起立し他の皆と同じように臣下の礼を取る。
 入場口から複数の歩く音がしばらく聞こえ、止むと。

 「皆の者、おもてを上げよ。此度はアカツキとリイナが主役故に、これ以上余達に畏まらなくとも良い」

『はっ!』

 顔を上げると、僕とリイナのいる席から近い場所に礼服姿の陛下や王太子殿下、王太子妃殿下に王子殿下がいた。王子も初めて会話した頃からそろそろ二年が経ち、当時のようにオドオドなさっておらず堂々としていたのには成長を感じた。
 エルフォード陛下と目が合うと彼は微笑み、僕は頭を下げる。
 それからすぐに、陛下は拡声器魔導具の前に立って口を開いた。

 「一八四〇年二の月十八の日。この日は我がアルネシア連合王国にとって歴史に残る一日となるであろう。なぜならば、今ここにおるのは英雄の二人。不埒にも人類諸国に対し戦争を仕掛けてきおった妖魔帝国の軍を退け、勝利をもたらした英雄達の結婚式典なのである。皆も知っての通り、新郎であるアカツキ・ノースロードはA号改革の立案者であり我が国に良き変革をもたらした功績者の一人でもある。余は、この者が愛する者と結ばれる日がついに訪れた事を真に嬉しく思う」

 A号改革を提案して約二年弱。僕の想定より早く開戦した第二次妖魔大戦ではその効果を発揮した。
 もし改革が行われずに戦争に突入した場合を参謀本部は分析した事がある。その場合、故郷なノイシュランデやリイナの故郷である南部ミュルヘルが戦場と化していた可能性があった、戦死者もかなりの数になっていたのではないかという結果が出た。この時は出された予測に心底ゾッとしたし、攻勢計画なんて夢物語だっただろう。
 だから僕にも改革提示者として自負があったし、故に陛下にこのように公の場でお褒めの言葉を頂けるのはとても嬉しかった。

 「リイナ・ノースロードは余が非常に信頼しておるマーチス・ヨークの娘。かねてより余も名を知っておる魔法の使い手であり、聡明なる人物と思うておった。故に、この者がアカツキと結婚する話を耳にした時は互いにとって相応しく理想の夫と妻になるであろうと感じたものである。リイナ・ノースロードの活躍はアカツキと同様に誰もが知る所であろう」

 陛下のお言葉に会場にいる多くの人達が頷く。
 リイナは僕が転生してアカツキとして生きていく事になった前から、連合王国でも結構有名な人物だった。普通なら期待の重圧もかなりの大きさで精神的にも大変なのだろうけれど、彼女は良い意味で人の視線を気にしない我が道を行く動じない性格だ。
 だから僕が取り乱したり冷静さを欠きかけた時のような場面でも彼女はとても冷静で浮き足立たず、いつも支えてくれていた。今では誰にも変え難い愛する存在だ。

 「二人はこれまで、ルブリフ・法国遠征・鉄の暴風作戦において輝かしい活躍を放ってきたまさに我が国の希望の象徴。その二人が結婚の日を迎えられた事を祝そうではないか! 皆の者、グラスを持ち若き英雄のアカツキとリイナに祝福を!」

『若き英雄に祝福を!』

 陛下のスピーチは乾杯の音頭で終わり、それからは大いに会場は盛り上がった。
 元々この披露宴は僕とリイナの希望で格式張るような堅苦しいものにせず、誰もが心より楽しめるようにかなり自由なスケジュールを組んである。だから美味しい料理や上質なお酒などに舌鼓を打ったり、僕とリイナがファーストダンスを披露した後は招待客の多くがダンスを楽しんだりしていた。
 歓談の時間ではかなりの人に祝福の言葉を頂いたけれど、やっぱり心に残ったのは肉親など親族とのやり取りだ。
 転生して前世の記憶を持ちあわせているとはいえ、それより前の記憶もしっかりと保有してある自分にとっていかに両親やお爺様、アルヴィンおじさんに大切にしてもらっていたかは知っているし、転生してから二年弱だけでもとてもお世話になった。

 「父として、息子の結婚式を迎えられたのはとても嬉しいし、記憶に残る日になる。本当におめでとう、アカツキ」

 「母は貴方が愛する人を見つけて結婚式を行えた事を幸せに思うわ。戦争はまだ続いてしまうでしょうけれど、どうか体を大切にするのよ? そして、召喚武器のエイジスと共に妻のリイナさんを守ってあげなさい」

 お父様とお母様は涙ぐむ時もあったけれど、笑顔で僕にこう言葉を送ってくれた。

 「生きておる間に孫の結婚式が見られて儂は幸せ者じゃよ。美しく優しい良い妻を貰ったのじゃから、無理はするのではないぞ? アカツキや、おめでとう」

 「お前とリイナの仲睦まじさは時折見かける機会があったが、やっぱこうして式に参加させてもらうと肌で感じるな。春には第二攻勢も控えているから新郎新婦には何かと苦労をかけちまうかもしれねえが、これからもよろしく頼むぜ? それと、無茶だけはしてくれるなよ? 見てるこっちはヒヤヒヤもんだからな」

 お爺様にはリイナを大切にするようにと、アルヴィンおじさんには戦場で共に行動する機会もあるが無茶はするなと苦笑いをされたけど、二人に祝福の言葉を貰い、僕とリイナは感謝の言葉をそれぞれ返した。
 さらに披露宴についてはノースロード家の使用人も特別に参加を認める形にしたから、メイド服ではなく着飾ったレーナからも、

 「ご主人様、奥方様。使用人の私もめでたき式典に参加させて頂きまして感謝の極みにございます。これからもお二方が屋敷におられる際には精一杯務めを果たさせて頂きますので、今後も末永くよろしくお願いします。そして、本当におめでとうございます」

 とお祝いの言葉を貰った。
 他にも連合王国の貴族や大富豪、国外の要人や外交官などとも会話を交わしていった。新郎新婦という立場上飲食はあまり出来なかったけれど、幸せを強く感じられる披露宴であった。
 披露宴はこの後夕食会も挟んだから午後九時過ぎまで行われて大賑わいだった。
 僕とリイナは終了直前に退出させてもらった。
 なぜならこの後、約束の初めての夜を迎えるのだから。
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