異世界妖魔大戦〜転生者は戦争に備え改革を実行し、戦勝の為に身を投ずる〜

金華高乃

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第7章一冬(ひとふゆ)の戦間期と祝福の結婚披露宴編

第7章第19話 約束の夜、交わる二人の愛情

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 ・・19・・
 午前0時30分
 アルネセイラ・ノースロード家王都別邸

 披露宴を存分に楽しんでから、僕とリイナは住処にしているノースロード家別邸に帰った。両家の親族は全員が揃うのは滅多とない機会だからとヨーク家別邸で前世で例えると二次会を開くことになり、このノースロード家にはレーラなど使用人の他には僕とリイナしかいない。
 そのレーラ達も日付が既に変わったから既に眠りについており、エイジスもメンテナンスと称して僕の書斎に向かっていた。つまり、起きているのは二人だけ。
 理由はついに迎えた約束の夜だから。これよりは、僕とリイナだけの時間なわけだ。

 「リイナとはいっつも寝床は一緒で慣れているはずなのに、初めての夜ってこんなに緊張するんだな……」

 湯に浸かって既に寝巻き姿の僕は寝室に向かいながら独りごちる。当然、言葉を返してくる相手は誰もいない。
 今世でのこの体はともかく、前世ではアレの経験はあるから勝手を知らない訳がないし気を張るようなことでもない。だというのに、まさか初夜がこれほど緊張するものだとは思わなかった。やっぱり、シチュエーションというのは心境に大きく作用するようだね……。
 いくら別邸が貴族の屋敷としては広い方に区分されるとはいえ、いつもの寝室にはそう時間がかからずに到着する。
 僕はドアの前に立つと、深呼吸をして平常心と心で唱えると扉をノックする。

 「リイナ、入ってもいいかな?」

 「ええ、いいわよ。旦那様」

 ドアを開けて入ると、そこにはいつものようなパジャマじゃなくてナイトガウンを羽織ってベッドの端に座っているリイナがいた。
 僕と同様に緊張しているのかと思いきや、彼女は妖艶に笑んで、

 「ふふっ、待ちに待った初めての夜ね。とっても、とっても今からが楽しみだわ」

 ちくしょう! 累計なら長生きしているのは僕の方なのにリイナの方が何枚も上手だった!
 艶やかに微笑む彼女の姿に思わず戸惑い、同時にくらりとしてしまう。
 いつもの薄暗い照明しかない寝室。いつも隣で一緒に寝ているリイナ。昨日と同じ環境のはずなのに、どうしてこんなに雰囲気がまるで違うのだろう。
 ん、雰囲気? そういえば、この部屋の雰囲気がいつもと変わっているのは何かが違うからじゃないのかな?
 ふと思いついた僕は五感を鋭くさせる。すると、そのうちの一つ、嗅覚が何かをキャッチした。

 「部屋の匂いが、いつもと違う……?」

 「気付いたかしら? この部屋に香料を使ったのよ。『そういう』雰囲気が出てるでしょう?」

 「……なるほど、それで」

 「今日を迎えるために、王都にある香料店で手配したのよ」

 道理で普段と違う匂いがこの部屋を満たしているわけだ。しかも、これから行う行為にバッチリ効果のある媚薬要素を伴う香りが。
 媚薬というと飲むものが一番有名だけれど、匂いの媚薬というのも歴史上には存在する。前世でもその手のお店で使われていたし、気分を高める為にはもってこいの手法だ。
 ああ、やばいぞこれは。別にもう我慢する必要もないけれど、理性の堤防が徐々に限界に近付いている。
 さらに、そこへリイナは追い討ちをかけてきた。

 「でもね、用意したのはこれだけじゃないのよ」

 彼女は蠱惑的な表情を見せると、ナイトガウンをするりと脱いだ。僕は思わず目を見開いてしまう。
 リイナがナイトガウンの下に着ていたのは、煽情的な、最早ベビードールと言っても差し支えない薄い布地でフリルが施された紫色のネグリジェだった。
 パジャマの他にたまに彼女が着用しているネグリジェは生地も厚く寝間着として正しいものだけれど、これは違う。丈は短くて太腿が半分も露になり、薄さも段違い。見えそうで見えないという魅力的な仕様。豊かな双丘は北半球が露出していて、今にも溢れんばかりだった。

 「オーダーメイドのネグリジェよ。旦那様が、好きそうな感じでしょう?」

 「好きも何も、大好きだよこんなの……」

 「ふふっ、気に入ってくれたようで何よりだわ。さぁ、初めま、きゃっ?!」

 僕の頭の中で、何かがプツンと切れる。もう限界だった。
 今日をどれだけ待っていたか。部屋の雰囲気も、彼女のその様も、僕の理性を崩壊させるには余りにも十分な威力だった。
 僕は彼女に近付くと、不意打ちを狙って押し倒す。
 目の前にはやや驚いたリイナの顔。けれど、すぐその面持ちは想定通りと言わんばかりの微笑みに変わる。

 「あらあら、理知的な旦那様が息を荒くしているわ。私はどうなってしまうのかしら?」

 「ここまでしておいてそんな事を言うの? とっくに分かっていて、望んでいるくせに」

 僕は口角を上げて彼女の瞳を見つめると、激しく口付けを交わす。
 これまで控えめにしていたのを取り戻すが如く、長く長く。何分だったかなんて分からない。互いの息が荒くなり限界になるまで舌と舌が交わった。

 「ぷはっ。今の旦那様、いつもからは考えられないくらいに、ケモノみたいね?」

 「当たり前でしょ。約束の夜までずっと我慢していたんだ。僕だって男だよ」

 「可愛らしいアナタもベッドではとってもオトコなの、存分に味合わせてちょうだい?」

 「言ったね。だったらまずは、いつも僕に挑発的に見せつけるようにしてるそこからだ」

 「ん、や、あっ! もう、乱暴なんだから、ひあぁ?!」

 「だーめ。リイナの顔をもっと見せてよ」

 「そんなこ、ひゃん! んんぅ!」

 リイナは弱点らしい箇所を攻められて矯正を上げる。彼女は経験は無いらしいけれど、感度はある方らしい。
 知ってしまえばあとはこちらが主導権を握るだけ。執拗に、されども緩急をつけて交合うのみ。
 それから僕とリイナは、これまでずっと抑えていた分を全て放出するかのように愛し合う。
 真冬の寒い深い夜に、熱い愛情を互いに注いだのだった。


 ・・Φ・・
 「…………これはひどい」

 眠りから覚醒すると小鳥の囀りが聞こえ、窓からは陽射しが注がれていた。
 だけど、太陽の光は朝にしては強くとっくに陽は上っているどころか明らかに昼を迎えている事を表している。朝を迎えてもこちらから何か言わない限りはここへ近付かないようにと人払いをしてあるとはいえ、初夜から色欲に塗れすぎていると寝起きのぼんやりとした頭で痛感した。

 「今何時なんだ……。というか、腰が痛い……」

 僕は上半身だけ起き上がり、寝室にある時計の方を向く。
 案の定時計の針は頂上を越えていて、午後一時を示していた。前世も今世も、日頃軍人として規則正しい生活を送っていたから怠惰にも程がある起床時刻だ……。
 喉に乾きを覚えたので、立ち上がろうとするけれど力が出ない。正確に言うならば腰に力が入らなかった。

 「本当に初めてかよって話だよね……。結局中盤から逆転されたし……」

 僕は立つことを諦めて、昨晩の事を思い出して頭を抱える。
 あれから途中までは僕が主導権を握っていた。攻勢権はこちら側にあった。
 はずだった!! そう、はずだったんだ!!
 リイナは初めてだから、最初のうちは慎重に優しくを心掛けていたんだけれど、慣れてきてからは彼女の反転攻勢は凄まじく、猛攻に次ぐ猛攻だった。
 その結果が腰痛であり、起きた時間に反映されたというわけ。そもそも朧気な記憶は終わりが外が明るくなり始めた頃だったのを覚えているしさ!
 ちなみに張本人であるリイナはすやすやと寝息を立ててまだ夢の世界だった。あれだけ動いていたんだから当然だ。
 僕は可愛い寝顔を見せてくれている彼女の頭を優しく撫でて微笑む。

 「ありがとう、リイナ」

 彼女は昨日の夜の為に色々と準備をしてくれていた上に、仕事への配慮もしていた。用意周到に、避妊魔法も付与していたんだ。
 避妊魔法は字の通り前世で言えば避妊薬の機能を持つ魔法で、確率はほぼ百パーセントと前世現代並の精度を有している。そこそこ古くからある魔法らしい。
 アレをする前に言ってくれた彼女曰く、本当はアナタの子供が欲しいけれど今は戦争で状況が許してくれない。だから使ったの。
 でも、戦争が終わりを迎えたら魔法無しでしましょう。旦那様の証を私の証に命中させてくださいな?
 とのこと。確かに立場上妊娠からの戦線離脱が許されるかというと微妙な所がある。連合王国は人材が豊富だけれどリイナくらいの立ち位置となるとなかなかそうはいかないからだ。故にリイナは軍務面に気を遣って避妊魔法を付与したらしい。それは今後も引き続くけれど、僕も戦争が終わったら魔法抜きでしたいとは思う。
 リイナと僕の子供は、僕だって欲しいから。

 「君の為にも、戦争に勝ってみせるよ。絶対に、さ」

 彼女と過ごしたかけがえのない約二年はこれからも続く。一生、ずっとね。
 守るべき大切な人が出来たこの世界で、僕はリイナの頬を撫でることで彼女の温かい体温を感じて改めて決意するのだった。
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