異世界妖魔大戦〜転生者は戦争に備え改革を実行し、戦勝の為に身を投ずる〜

金華高乃

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第12章 ブカレシタ攻防戦決着編

第5話 マーチスの独自魔法の威力と、要塞内部への突入

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 ・・5・・
 「衝撃波到達まで五、四、三、二、一、今」

 「おおっ、魔法障壁を展開してもこれだなんて……!」

 「まだ目を覆っていてください、マイマスター。リイナ様」

 「了解」

 「分かったわ」

 目を閉じて覆っていても伝わるほどの眩しさと、前世のあらゆる通常兵器を凌駕する大爆音。これに匹敵するのは、戦術核以上じゃないだろうか。
 自動人形故に視覚保護があるからずっと見続けられていたエイジスから目を開けていいと言われてから広がっていた光景。
 それはまさに映像資料でしか見たことのない戦術核そのものだった。

 「これは……、とてつもないね……」

 「お父様が演習でも使えず、余程広い場所じゃないと危ないという意味がよく分かるわ……」

 「報告。『神光閃火』の発動により発動該当地域及び周辺の視認著しく低下。また、超高威力法撃により魔法粒子が撹乱しレーダー一時使用不能。魔法無線装置も一時利用不可能状態。状況改善まで約十分」

 「この威力なんだ、そうだろうね……」

 エイジスが淡々と言うように、ブカレシタ星型要塞とその周辺に至るまで魔法粒子が乱れているからレーダーの類から運用している魔法無線装置まで使えなくなったいた。エイジスの情報共有のレーダーにはエラーの単語が表示されていて、魔法無線装置についてはすぐに情報要員から報告を受けた。
 目の前に広がるまるで噴火でもしたかのような黒煙と粉塵を前に、将兵達は言葉を失っていた。恐怖の為ではない。凄まじい光景を前に適切な表現が見つからなかったんだ。
 数分後。ようやく壁のあたりを覆っていた煙が晴れてくる。そこにあったのは。

 「壁が、無くなってる……。何も無かったみたいに……」

 「推測、蒸発。該当地域周辺温度六十度。独自魔法の事後効果により、急速に温度は通常へ戻りつつあり」

 「あれだけのエネルギーを放って、もう元に戻っていってるのか……。話は聞いているからそうなるのは知っていても、理屈がよくわかんないな……」

 「原理不明。独自魔法の効果としか述べられません、マスター」

 「SSランクの召喚武器の独自魔法だからと納得するしかないわね。温度が下がっているなら、この後を考えれば好都合だけれども」

 「うん。総突撃の時間が比較的早いからね。っと、レーダーも回復したみたいだ」

 「肯定。ワタクシのレーダー類も回復。要塞防壁西側部分から東一キーラが爆心地。中心から半径二キーラの生命反応は完全に消失。要塞防壁も崩壊。または消失。範囲を広げ、探知中。半径四キーラ圏内、建造物の一部崩壊及び生命反応の著しい低下などを確認。要塞全体の西半分には大きな被害あり。推測、敵それは司令部にも一定以上の被害を与えたと思われます。目視及び検知爆発力からの妖魔帝国軍推定人的被害、約四万から五万」

 「よし。情報要員、今のエイジスの報告を総司令部に送って。たぶん、総突撃の命令がく下るはず」

 「りょ、了解!」

 これが前世の核爆弾なら兵士達への総突撃命令は自殺行為だけど、今の攻撃が魔法故に汚染物質は皆無。魔法粒子の撹乱もだいぶ収まってきていて、総突撃の頃には魔法無線装置の送受信に若干の遅延が起きるくらいになっているだろうから、マーチス侯爵は総突撃の命令を送るだろう。
 当然だけど、マーチス侯爵はこの独自魔法の行使により魔力を消耗している。総司令官故に前に出ることはないけれど、総司令部から動くことはないだろう。
 三分後、総司令部から返信があった。
 総突撃命令だ。ここからは、僕達の出番だね。
 僕は身体強化魔法と瞬脚を詠唱し、ツインダガーの『ツインリル』を抜剣する。リイナも『アブソリュート』を抜剣。
 僕は大きく息を吸うと、エイジスが拡声魔法をかけ終わったタイミングを見計らって。

 「旅団総員へ通達! 総突撃命令が下った! 我々の旅団は先陣を切り総司令部占領への突破口を開く一番手だ! 身体強化魔法の用意は? 魔法障壁の準備は出来たか?」

『出来ております!』

 「大変よろしい! ならば、最前線で戦争の時間だ! 総員抜剣、着剣! 総突撃、始め! 吶、喊!」

『うおおおおおおおお!!』

 旅団の兵士達の雄叫びと共に、僕とリイナにエイジスも総突撃を始める。周辺にいた多数の兵士達も突撃を開始する。
 一番手の僕達は全員が魔法で身体強化と瞬脚を付与しているから突撃速度は最も早い。馬で駆ける速さに近い速度で走り、徐々に要塞防壁のあった場所へ接近する。
 途中で隣に来たのは、アレン大尉だった。

 「アカツキ少将閣下、作戦通りお供します」

 「了解、アレン大尉。僕とリイナにエイジスは君の大隊を含む二個大隊で敵をすり潰す。左右側面は各一個連隊に任せて、正面は残りの最精鋭で食い破るよ」

 「了解しました」

 「言っておくけれど、ここで命令通り働いてくれればアレン大尉や戦功者には野戦昇進をさせるから、そのつもりで。既に具申してあるから生きていれば確実だよ」

 「ありがとうございます! 皆聞いたか! 戦果をあげれば昇進だそうだ!」

 「なら張り切るしかありませんね!」

 「ブカレシタの妖魔帝国兵に鉄槌を!」

 「我々は常にアカツキ少将閣下、リイナ大佐、エイジスさんと共にあり!」

 「それともう一つ。一番戦果を上げた大隊には個人全員にワインを、飲めない者には好きな物を渡すから通達しておいて」

 「なおさらやるしかありませんね!」

 駆けながらも部下達は大いに盛り上がる。旅団の各大隊に今の話が伝わり、付近に固まっている部下達からは大きく手を振る姿も見られた。
 敵陣突入前の士気上昇はこれくらいでいいかな。こういう時くらい大盤振る舞いしなきゃね。


 「マイマスター。防壁跡地まであと一キーラ。付近に敵影無し。最前方の敵部隊は早期に立て直した二個大隊。距離四八〇〇」

 「ありがとう。このまま速度は緩めず突っ込むかな」

 「続けて報告。要塞北東部に展開の友軍部隊から二つの強力な魔力反応感知。一つは突破用戦術級魔法。もう一つは魔力特定。ラットン中将。『死神大隊』の顕現」

 「うんうん、順調だね。いよいよラットン中将閣下の『死神大隊』が暴れる時が来たみたいだ。地獄を見せてやってほしいね。ならば、僕達も頑張らなきゃ。リイナ、背中をよろしく」

 「任せてちょうだい。旦那様には指一本触れさせないわ」

 リイナの自信に満ちた返答に僕は微笑んで頷く。
 防壁の瓦礫さえ残っていない空間へ、僕達は侵入を始めた。要塞内部は事前の航空偵察でかのりの建築物があったはずだけど最初から存在していないかのように更地が広がっていた。無の景色といってもいい。その先には最も威力が強まる部分から逃れられたのか、瓦礫と化したものが広がっている。
 複数の師団単位の突撃すら容易な程に広がった突破口へは続々と兵士達が突入していく。
 エイジスのレーダーによればこの先に待ち受けているのはやっとの事で集結させられたであろう敵部隊。二個大隊から一個連隊まで増えていた。恐らく続々と無事だったが集まってくるだろう。思ったより対処が早いと僕は感じた。
 でも、こっちは旅団規模だ。暫くの間、突破は容易いだろう。後ろに控える他の師団の兵士達も側面へ正面へと広がっていく。マーチス侯爵の独自魔法による攻撃の意図は単にこの魔法のみで敵に大打撃を食らわせるだけではない。迅速に突撃し占領地域を拡大。敵をひたすらに後手後手にさせるためだ。
 だから僕はどんどんと命令を下していく。

 「要塞内へただちに浸透! 敵の規模が小さければ踏み潰して突破! 規模が大きければ魔法無線装置で連携して包囲するか正面突破で叩くかの判断は連隊長や大隊長、中隊長の現場レベルに任せる! 奴らは奪われまいと必死だろうけど安心してほしい! 味方は北からも南からも、そして東からもやってくるのだから!」

『了解です、アカツキ少将閣下!』

 「最後にもう一つだけ。エイジスの観測でこの先、意図不明の地下に潜む魔法兵がいるみたいだ。伏兵には数が少ない。だから何か起こるかもしれないので頭にいれておくように」

『はっ!』

 エイジスが対地攻撃中に気付いた敵魔法兵についても注意を促しておく。こうやって伝えておけば突然何かが起きるよりずっと身を構える事が出来るからね。

 「マスター、敵部隊との彼我距離一四〇〇。ロックオンを完了。いつでも法撃可能です」

 「了解。去年から合間を縫って覚えた魔法も使う機会がありそうだ」

 「私はいつも通りやるだけね。『アブソリュート』の調子もいいし、魔力も十分」

 「なら、まずは目の前の一個連隊だ。アレン大尉、君は左側を。僕は右側を叩く」

 「了解しました。大隊総員、左を叩くぞ!」

 「僕と同行する者達は右側だ」

『了解しました!』

 「敵との距離八〇〇。間もなく敵も射程圏内」

 「総員突撃! 法撃始めッッ!」

 命令を合図にリイナが、エイジスが、部下達は一斉に銃撃と法撃を開始した。
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