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第3部『血と硝煙と死体の山の果てに』第16章 春季第三攻勢作戦『電光の双剣』
第5話 順調な進軍は挫かれる
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・・5・・
6の月11の日
午前10時半過ぎ
オデイッサより北西12キーラ・戦線北部Aブロック
人類諸国統合軍南部統合軍がオディッサから西の街パースクを占領した頃、北部統合軍もやや予定より遅れているものの第一目標地点であるキャエフから西四〇キーラまで近付きつつあった。
アカツキが不安視していたロンドリウム協商連合軍はいくら政争が巻き起こり将官クラスも利権争いに身を投じていたとはいえ、現場は関係の無いことであり休戦前の精強さを保っていた。
妖魔諸種族連合共和国軍についてはアカツキも感心する程の高い士気を持って常に最前線に身を投じていた。彼等は祖国解放という旗印があるからか連合王国軍よりも戦意旺盛で、北部統合軍総司令官のアルヴィン大将も彼等を褒め称えていた。
作戦開始から三日が経過した11の日。ここまでは作戦は順調と言って差し支えなく、例えば南部統合軍戦線北部Aブロックのこの地では兵士達が束の間の休息を取っていた。
今もとある軍曹と伍長や兵長、上等兵ら十数人が次の前進開始を待つ間に煙草を吸ったり水を飲んだりして語らいあっていた。
彼等は最前線に立つ能力者化師団の後方に控えている一般的な能力者兵である。
「トゥール軍曹、妖魔帝国の抵抗は激しいですけど新しい能力者化師団でしたっけ? あいつら凄いですよね。あっという間にオディッサまであと少しですもん」
「全くだロイス伍長。あいつらには頭が上がらん」
「この調子なら一週間もしないうちに占領出来ちゃったりして。そう思いませんか、トゥール軍曹?」
「あぁ、このままいけば割と早くオデイッサで落ち着けるかもしれないなロットン兵長」
「だからって余裕ぶっこくなよ、ロットン?」
「ってるっての、テーロン。初っ端から負傷して後方送りなんてされたくねえさ。ロイス伍長もそうでしょう?」
「当たり前だ。我等が英雄閣下に無敵自動人形殿もおられるんだ。オデイッサに意気揚々と乗り込みたいもんだ」
「お前らのやる気はよーく分かった。能力者化師団に続いて包囲した連中を殲滅するか、同じく最前線に立つのが我々の役目だ。たっぷりこき使ってやる」
『了解です、軍曹殿』
笑い声を出しながら軍曹の言葉に返答する彼等は、すぐそこが前線にも関わらず本国と同じような調子でいた。
作戦開始三日目の午前中には既に先頭を行く能力者化師団や仲間達の師団はオデイッサから北西約一〇キーラまで進んでおり、今もその方角からは絶え間なく砲撃音や銃声、法撃の音が響いていた。
時折上空を舞うのはSFやSAの召喚動物、それに彼等にとっても真新しい戦闘機。ある程度の後方であれば戦闘機のパイロットも返答するかのように翼を上下に振ってくれていて、地上にいる兵士達にとっても励ましになっていた。
まだ三日目とはいえ、ここまでは比較的予報通りの前進。兵士達に気の緩みは無いが、オデイッサの早期陥落という希望はあちこちで話されていた。
「ところでトゥール軍曹、今日の夜飯ってなんでしたっけ?」
「法国の師団がすぐそこにいるだろ。共に戦った絆の証にあいつら、糧食を分けてくれるらしくてな。しかも、温かいスープもあるそうだ」
「本当っすか!?」
「ああ本当だ、チェイカー上等兵。法国の糧食は美味いらしいぞ?」
「よっし!! 今日のこれからが励みになりますね!」
「だな。俺も楽しみだ」
連合王国の糧食が不味い訳では無いのだが法国の糧食は美味いと連合王国軍の兵士達の間で話題になっている。
戦闘糧食はお世辞にも美味くはない。だが、温かい飯となると話は変わってくる。戦場において食は何よりの楽しみ。非常に重要な要素なのだ。故に彼等の表情もにこやかなものになっていた。
時刻は午前十一時前。軍曹は上官にあたる小隊長に呼ばれ一度集団の輪から外れていった。
一時解散の待機となり、テーロンとロットンは煙草を片手に話を続ける。
「なあロットン。確か鹵獲品は貰っちまってもいいんだよな?」
「おう。砲みてえなデカブツはともかく、魔法銃や杖なら私物化してもいいらしいぜ。こんだけ大規模なんだ、上も細けえのまでは管理出来ねえってよ」
「なら妖魔帝国兵からぶんどった武器は本国に土産で持ってけそうだな」
「なんだテーロン。お前、もうそのつもりでいるのか。昨日の戦闘でもう魔法銃持ってんじゃねえか」
「いいじゃねえかもう一丁くれえ。どうせ大量に転がってんだから自分の切らした時にも使えるしよ」
「確かにな。連中、オレらより能力者が多いってのに全員魔法銃持ちだからそっこら中に転がってやがるからな」
「だろ?」
二人が話すように妖魔帝国兵は人類諸国統合軍で例えるのならば法国並に能力者が多く、しかも魔力保有量も妖魔帝国兵の方が平均して五倍と言われている。これは人類諸国の兵士達も周知の事実だ。
能力者が多ければその分一般的なライフルに比べて高価な魔法銃も大量に必要になる。しかし、妖魔帝国はその高価な魔法銃を今の所全員が所持していた。
彼等は最前線だから集中配備でもされているんだろうと考えていたが、真相は少し違う。性能は人類諸国統合軍のそれより劣るものの大量生産にシフトしているのだ。だからこそ全員が装備に至っている。
なお、報告を受けたアカツキは集中配備ではなく量産重視と見立てていており彼の予測は的中していた。
ただし、量産重視にシフトさせたのがリシュカであることは知らないが。
アカツキが脅威に感じる点はあれども、戦場は人類諸国統合軍有利。
だがこの後に、兵士達の一時的な平穏は覆される事になる。
きっかけはちょっとした変化だった。ロットンとテーロンも異変を感じ取り始めていた。
「……おいテーロン。前線の方がちょっとうるさくなってねえか?」
「言われてみれば確かに。さっきから激しくなってんな。軍曹からはなんにも聞いてねえけど、オレらが知らないだけで昼前に攻勢でもかけてんのかもな」
「じゃねえか? にしちゃあ、音が近付いてる気がするがよ」
テーロンは小首を傾げる。彼の言うように、何故か音が近付いてるのである。
なんだろうなと二人が話していると、周囲から下士官組が一斉にあちこちへ駆けていく。それもかなりの慌てようだ。彼等の上官トゥール軍曹も焦った様子でやってきた。
そこそこ軍歴の長い二人は勘づく。まさか、なと。
二人の予測は的中する。
「ロットン!! テーロン!! 戦闘準備だ!!」
「はい!? なんだって言うんですか!?」
「詳しくは後で説明する! 部下共を集めさせろ!」
「りょ、了解!」
「了解です!」
トゥール軍曹の動揺ぶりに二人は訳を聞かなくても良くない事態になりつつあるのを感じ取りまずは部下達を集める。
装備点検し、構築された陣地に兵士達は走り回っていく。
急変する事態の中、命令通りに部下を集めて配置につかせたロットンは何が起きたのか気がかりであるからトゥール軍曹に聞いた。
「トゥール軍曹、一体何があったんすか!?」
「お前、リチリアは知っているよな?」
「死んだ協商連合の女閣下が戦った場所ですよね? それがどういう――」
「あの地で現れた化け物が出てきやがったんだ!! それも、砲みてえにでけえ銃を携えてな!! そのせいで前線が押されている!! もうすぐここにもやってくるぞっっ!」
6の月11の日
午前10時半過ぎ
オデイッサより北西12キーラ・戦線北部Aブロック
人類諸国統合軍南部統合軍がオディッサから西の街パースクを占領した頃、北部統合軍もやや予定より遅れているものの第一目標地点であるキャエフから西四〇キーラまで近付きつつあった。
アカツキが不安視していたロンドリウム協商連合軍はいくら政争が巻き起こり将官クラスも利権争いに身を投じていたとはいえ、現場は関係の無いことであり休戦前の精強さを保っていた。
妖魔諸種族連合共和国軍についてはアカツキも感心する程の高い士気を持って常に最前線に身を投じていた。彼等は祖国解放という旗印があるからか連合王国軍よりも戦意旺盛で、北部統合軍総司令官のアルヴィン大将も彼等を褒め称えていた。
作戦開始から三日が経過した11の日。ここまでは作戦は順調と言って差し支えなく、例えば南部統合軍戦線北部Aブロックのこの地では兵士達が束の間の休息を取っていた。
今もとある軍曹と伍長や兵長、上等兵ら十数人が次の前進開始を待つ間に煙草を吸ったり水を飲んだりして語らいあっていた。
彼等は最前線に立つ能力者化師団の後方に控えている一般的な能力者兵である。
「トゥール軍曹、妖魔帝国の抵抗は激しいですけど新しい能力者化師団でしたっけ? あいつら凄いですよね。あっという間にオディッサまであと少しですもん」
「全くだロイス伍長。あいつらには頭が上がらん」
「この調子なら一週間もしないうちに占領出来ちゃったりして。そう思いませんか、トゥール軍曹?」
「あぁ、このままいけば割と早くオデイッサで落ち着けるかもしれないなロットン兵長」
「だからって余裕ぶっこくなよ、ロットン?」
「ってるっての、テーロン。初っ端から負傷して後方送りなんてされたくねえさ。ロイス伍長もそうでしょう?」
「当たり前だ。我等が英雄閣下に無敵自動人形殿もおられるんだ。オデイッサに意気揚々と乗り込みたいもんだ」
「お前らのやる気はよーく分かった。能力者化師団に続いて包囲した連中を殲滅するか、同じく最前線に立つのが我々の役目だ。たっぷりこき使ってやる」
『了解です、軍曹殿』
笑い声を出しながら軍曹の言葉に返答する彼等は、すぐそこが前線にも関わらず本国と同じような調子でいた。
作戦開始三日目の午前中には既に先頭を行く能力者化師団や仲間達の師団はオデイッサから北西約一〇キーラまで進んでおり、今もその方角からは絶え間なく砲撃音や銃声、法撃の音が響いていた。
時折上空を舞うのはSFやSAの召喚動物、それに彼等にとっても真新しい戦闘機。ある程度の後方であれば戦闘機のパイロットも返答するかのように翼を上下に振ってくれていて、地上にいる兵士達にとっても励ましになっていた。
まだ三日目とはいえ、ここまでは比較的予報通りの前進。兵士達に気の緩みは無いが、オデイッサの早期陥落という希望はあちこちで話されていた。
「ところでトゥール軍曹、今日の夜飯ってなんでしたっけ?」
「法国の師団がすぐそこにいるだろ。共に戦った絆の証にあいつら、糧食を分けてくれるらしくてな。しかも、温かいスープもあるそうだ」
「本当っすか!?」
「ああ本当だ、チェイカー上等兵。法国の糧食は美味いらしいぞ?」
「よっし!! 今日のこれからが励みになりますね!」
「だな。俺も楽しみだ」
連合王国の糧食が不味い訳では無いのだが法国の糧食は美味いと連合王国軍の兵士達の間で話題になっている。
戦闘糧食はお世辞にも美味くはない。だが、温かい飯となると話は変わってくる。戦場において食は何よりの楽しみ。非常に重要な要素なのだ。故に彼等の表情もにこやかなものになっていた。
時刻は午前十一時前。軍曹は上官にあたる小隊長に呼ばれ一度集団の輪から外れていった。
一時解散の待機となり、テーロンとロットンは煙草を片手に話を続ける。
「なあロットン。確か鹵獲品は貰っちまってもいいんだよな?」
「おう。砲みてえなデカブツはともかく、魔法銃や杖なら私物化してもいいらしいぜ。こんだけ大規模なんだ、上も細けえのまでは管理出来ねえってよ」
「なら妖魔帝国兵からぶんどった武器は本国に土産で持ってけそうだな」
「なんだテーロン。お前、もうそのつもりでいるのか。昨日の戦闘でもう魔法銃持ってんじゃねえか」
「いいじゃねえかもう一丁くれえ。どうせ大量に転がってんだから自分の切らした時にも使えるしよ」
「確かにな。連中、オレらより能力者が多いってのに全員魔法銃持ちだからそっこら中に転がってやがるからな」
「だろ?」
二人が話すように妖魔帝国兵は人類諸国統合軍で例えるのならば法国並に能力者が多く、しかも魔力保有量も妖魔帝国兵の方が平均して五倍と言われている。これは人類諸国の兵士達も周知の事実だ。
能力者が多ければその分一般的なライフルに比べて高価な魔法銃も大量に必要になる。しかし、妖魔帝国はその高価な魔法銃を今の所全員が所持していた。
彼等は最前線だから集中配備でもされているんだろうと考えていたが、真相は少し違う。性能は人類諸国統合軍のそれより劣るものの大量生産にシフトしているのだ。だからこそ全員が装備に至っている。
なお、報告を受けたアカツキは集中配備ではなく量産重視と見立てていており彼の予測は的中していた。
ただし、量産重視にシフトさせたのがリシュカであることは知らないが。
アカツキが脅威に感じる点はあれども、戦場は人類諸国統合軍有利。
だがこの後に、兵士達の一時的な平穏は覆される事になる。
きっかけはちょっとした変化だった。ロットンとテーロンも異変を感じ取り始めていた。
「……おいテーロン。前線の方がちょっとうるさくなってねえか?」
「言われてみれば確かに。さっきから激しくなってんな。軍曹からはなんにも聞いてねえけど、オレらが知らないだけで昼前に攻勢でもかけてんのかもな」
「じゃねえか? にしちゃあ、音が近付いてる気がするがよ」
テーロンは小首を傾げる。彼の言うように、何故か音が近付いてるのである。
なんだろうなと二人が話していると、周囲から下士官組が一斉にあちこちへ駆けていく。それもかなりの慌てようだ。彼等の上官トゥール軍曹も焦った様子でやってきた。
そこそこ軍歴の長い二人は勘づく。まさか、なと。
二人の予測は的中する。
「ロットン!! テーロン!! 戦闘準備だ!!」
「はい!? なんだって言うんですか!?」
「詳しくは後で説明する! 部下共を集めさせろ!」
「りょ、了解!」
「了解です!」
トゥール軍曹の動揺ぶりに二人は訳を聞かなくても良くない事態になりつつあるのを感じ取りまずは部下達を集める。
装備点検し、構築された陣地に兵士達は走り回っていく。
急変する事態の中、命令通りに部下を集めて配置につかせたロットンは何が起きたのか気がかりであるからトゥール軍曹に聞いた。
「トゥール軍曹、一体何があったんすか!?」
「お前、リチリアは知っているよな?」
「死んだ協商連合の女閣下が戦った場所ですよね? それがどういう――」
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