異世界妖魔大戦〜転生者は戦争に備え改革を実行し、戦勝の為に身を投ずる〜

金華高乃

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第3部『血と硝煙と死体の山の果てに』第16章 春季第三攻勢作戦『電光の双剣』

第6話 危急の事態にアカツキは

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 ・・6・・
 午前11時55分
 人類諸国統合軍南部統合軍
 能力者化師団司令部・作戦指揮所

「Aブロックに出現の敵新兵器約一二〇、座標H6及び付近に所在する連合王国軍能力者化師団隷下一個連隊と衝突! 応戦するも背後には敵一個師団がおり苦戦中!」

「前方にいた一個大隊とは通信途絶!」

「Cブロックにも同様と思われる敵新兵器群約一三〇が法国軍神聖特務師団とぶつかりました! こちらも後方に一個師団が控えており対処困難! 押されてます!」

「SFより報告あり! Aブロック及びCブロックから侵攻の敵軍は各一個師団の後方に予備のもう一個師団がそれぞれ控えているとのこと!」

「このままだとまずい! 前衛軍より追加で各方面に追加で各一個師団の援軍を要請!」

「了解しましたアカツキ中将閣下!」

 報告は突然だった。
 僕とリイナが朝から前衛軍の司令部で定例会議を終えて戻ってきた直後の十一時過ぎ、最前線の大隊からある通信が入ったんだ。

『リチリアで出現した化け物『ソズダーニア』と類似する約二メーラから二メーラ五〇の化け物が出現。ただし、砲のように大きい推定四〇ミーラ程度の大きな銃を携行している』

 この報告はすぐに各所から司令部に上がってきた。その各所も直後には通信途絶になっている。
 つまり、形成していた戦線が妖魔帝国軍の生物兵器『ソズダーニア』の新型の強襲によって食い破られていているわけだ。しかも現在進行形で事態は悪化している。
 既に現時点で二個大隊の消息が不明で、AブロックとCブロックのそれぞれ能力者化師団隷下の一個連隊が応戦しているものの戦死傷者が続出。すぐに後方に控えていた能力者化師団隷下一個連隊を送り、次いで前衛軍からも一個師団ずつを投入。
 だけど進撃は食い止められておらず中央のBブロックへの侵入を、最悪の場合敵に包囲される可能性すらも出てきていた。

「エイジス、索敵は」

「明らかに魔力波長の違う反応は報告とほぼ一致。速度約二〇で侵攻中。申し訳ありません。直前まで捉えられませんでしたマスター」

「気にしないでエイジス。空中索敵でも引っかからなかった上に直前まで隠蔽していたんだろうから。とはいえ、このままだと包囲されてしまうね……」

 僕は不意打ちを見抜けなかった自身の不甲斐なさに爪を噛みながらも、思考回路をフル稼働させて対処策を考える。精鋭の能力者化師団ならある程度は応戦出来るだろうけれど、協同で前線にいる通常編成師団はそうはいかないだろう。現に僅かな時間で推定で約一五〇〇の部隊が消息不明。恐らくは散り散りになってしまったか、そういうことだろうね……。
 しかし、ソズダーニアだけでも厄介だっていうのに化け物が砲のように大きい銃を持ち快速で蹂躙するだなんて――。

(ソズダーニアは機甲師団クラスの速度で、アレ程ではないにしても防御力が高い。さらに携行している武装が戦車砲のような大口径。前世で例えるなら、戦車のような……。いや、相手が直立二足歩行の時点でもっとタチが悪い……。まさか妖魔帝国軍が生物兵器で機甲戦力もどきを組織してくるとは……。)

 機甲部隊じみた敵の新戦力の登場は確実に戦況に悪影響を及ぼしている。
 人的資源の面において妖魔帝国軍に劣る僕達が早晩甚大な損害を出せば作戦そのものが頓挫する。絶対にそれだけは避けなければならない。
 でも、どうやって打ち崩す?
 ……やめよう。考えるより、行動だ。ベストじゃなくてベターな選択。
 そもそも敵が包囲を企図しているのならばBブロックの正面に何らかの行動を仕掛けてくるはず。
 堂々巡りになりかけた思考回路を切り替えると、先程まで通信要員達の方にいたリイナが戻ってきた。

「旦那様、友軍はかなり混乱しているわ。Aブロックの能力者化師団が新型兵器携行ソズダーニアを抑えようと必死になっててCブロックも似たような様子よ。あと、ちょうどBブロックの部隊からもこの連絡が。エイジス、貴女も今察知したでしょうけど」

「サー、リイナ様。Bブロック正面の二個師団に攻勢の意図あり。間違いなくワタクシ達をさらなる混乱に陥れる為の行動かと」

「僕が敵なら同じ手を取ってたろうから、両翼へ援軍到着まで前線各所には踏ん張ってもらうしかない。ルミオール作戦参謀、援軍はあとどれだけで到着する?」

「はっ。先鋒はあと二時間ほどです。本隊はさらに一時間半後かと。何せ前衛軍も強襲に手を割かれておりますので……」

「最低二時間、本隊含めれば三時間半か……。敵は化け物銃砲兵隊が約二五〇。後続に二個師団。さらに後方予備に二個師団。こちらは四個能力者化師団と前衛軍展開が五個師団。数は上だけど、一時的な統制喪失。だとすれば」

「法国軍総司令官マルコ・グイッジ大将閣下より入報!」

 即席の作戦を頭で組み上げていく。
 すると、通信要員が法国軍のマルコ大将閣下から連絡があると告げる。
 この緊急下になに?
 けれど通信要員の表情からすると悪い報告ではなさそうだ。

「読み上げて」

「『我々法国軍は至急前衛軍よりSクラス召喚武器保有者、サージ大佐を含む即応一個能力者連隊を組織し派遣。到着まで三〇分。Cブロックは任せてください』とのこと!」

「よし、懸念が一つ消えた」

 サージ大佐というと、ヴァネティアの時に救ってくれた命の恩人だ。今回も助けられることになってしまったね。後で礼を言わないと。


「アカツキ中将! お待たせ援軍の到着だよ!」

「アレゼル大将閣下!? それにエルフの皆さんも!」

 司令部に現れたのは少し息を切らしているけれどフル装備のアレゼル大将閣下とエルフ兵士達。随分前に演習をした面々だった。
 もしかして援軍ってこれのことだったのか。

「アレゼル大将閣下、援軍ですか?」

「危急事態に落ち着いてるね、アカツキ中将。いんや、違うよー。ほとんど独断。一応マーチス元帥閣下には進言したけど、返ってきたのが独断不問とし、事後承認とするってねー。数は一個連隊だけど後でまだ師団の残りもやってくるから」

「助かります。アレゼル大将閣下、Bブロックをお願い出来ますか? このままだと敵の一番大規模部隊が接近、この司令部が危機に陥りかねません。アレゼル大将閣下のゴーレムで援軍到着まで食い止めてくだされば」

「よゆーよゆー! 任せて!」

「ありがとうございます、アレゼル大将閣下」

「いいのいいの。アカツキ中将には恩もあるしさ。ねえ、みんな?」

「はい。故郷を取り戻したのは、アカツキ中将閣下のお陰ですから」

「マンノール中佐……」

 あの演習の時、少佐だった彼は中佐に昇進している。マンノール中佐は胸を叩いて僕を安心させてくれる。

「能力者化師団の総司令官は私が代理で一時預かるから行ってきなさい、アカツキ中将。ていうか、元からそのつもりだったんでしょ? 私のゴーレムはここから遠隔でも操作出来るし、任せて」

「感謝します」

「さー、ほらほら行きなよ。北は任せたからさ」

「はい……! リイナ、エイジス」

「ええ、行きましょう旦那様。友軍を救う為に」

「サー、マスター」

「アレゼル大将閣下、エイジスを通じて魔法無線装置で作戦をお伝えします。何卒」

「ほいほい。じゃ、貴官等に武運と無事を」

「はっ!」

 僕は通信所にいる全員に向けて敬礼をすると大テントの外に出る。
 外には既にアレン中佐が控えていた。

「アカツキ中将閣下、司令部付の我々大隊は準備完了しています。また、予備の一個連隊もすぐにでも出撃出来るとのこと」

「仕事が早くて助かるよ。僕達の目標はAブロックの救援。少なくとも前衛軍からの援軍到着の二時間後まで敵の侵攻を食い止めなくちゃいけない。やれるね?」

「はっ。我々はいつでも中将閣下のお傍にあります」

「よし。なら行くよ」

「了解しました!」

 僕はまずアレン中佐と一個大隊を引き連れ、整列していた一個連隊と合流。連隊長はパースクの時に南方面で一緒だったロフト大佐だ。

「アカツキ中将閣下、通信でご命令は耳にしております。いつでも行けます」

「分かった。作戦は伝えてある?」

「既に」

「じゃあ手短に話すよ」

「はっ! 連隊傾注!」

 ロフト大佐の言葉に、全員が直立し敬礼をする。
 僕は答礼をすると。

「連隊諸君への命令は単純明快。奇襲により苦戦を強いられているAブロックへ援軍として急行する。それだけだ。ただし、敵には我々にとって初遭遇となる『ソズダーニア』の銃砲兵隊が存在している。でも、諸君達なら何の問題もないだろう。何故ならば、最精鋭だからだ」

『我々は最精鋭でありますアカツキ中将閣下!』

「故に我々に撤退の二文字は存在しない。救援に駆けつけた我々に後退は許されない。後退すれば多数の味方が包囲されるからだ。それは断じて許されない。戦え。以上だ」

『はっっ!!』

「では連隊諸君、再び戦争の時間だ!」

 連隊はすぐさま進発。
 最も苦戦を強いられ死闘を繰り広げているAブロックへと向かった。

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