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第3部『血と硝煙と死体の山の果てに』第16章 春季第三攻勢作戦『電光の双剣』
第7話 援軍を信じて、最前線の将兵達は死地に身を投じる。
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・・7・・
午後1時05分
能力者化師団司令部・作戦指揮所
アカツキが能力者化師団司令部作戦指揮所を後にしてAブロックへ向けて北上している頃、一時的にこの最前線の司令部指揮所の指揮官を請け負ったアレゼル大将はこれまで蓄積してきた経験とアカツキが魔法無線装置を通じて送ってきた作戦書をベースにして次々と矢継ぎ早に命令を送っていた。並行して彼女はゴーレム軍団を召喚して指示を下しているあたりいかに彼女が優れているかが分かる場面でもある。
そのアレゼル大将は、ルミオール作戦参謀がアカツキの作戦書を地図に書き起こしたものを眺めながら感嘆していた。
「しっかし、よくもまあこの短時間で自軍状況不利を覆そうとする多方面作戦を思いつくものだねえ。でも、いずれも新兵器以外の真新しいものは見当たらないし、なんかこう戦術面では」
「王道、ですか」
「そうだねえ、それ」
アレゼル大将の感想に対してルミオール作戦参謀が返答する。
的を得た答えに召喚したゴーレムに逐次指示を与えつつアレゼル大将は頷くと。
「あれだけ大胆な改革を成し遂げて、新兵器の提案をして、運用方法も変えてって変革を生み続けてるアカツキ中将だけどさ。戦術面は奇抜さが意外に見られないよね」
「アカツキ中将閣下は、基本的に奇策は用いません。中将閣下曰く、奇策を用いる時点で負けの状態であって本来はドクトリンと戦略レベルで勝利をもたらすのが常道と仰っていました」
「なるほどね。だからこの包囲戦の対処も、あくまでドクトリンを忠実に守りながらもこれまで取ってきた作戦をいくつか混ぜて兵士達レベルでも動きやすいようにしてるわけなんだねえ」
「アカツキ中将閣下は、全く新しい兵科こそ中将閣下の助言なくして実現出来ませんでしたが、いざ作り上げられれば我々も改良策を生み出せる事が出来るのはその面があるからこそなのです。エイジス特務官や召喚武器持ちは例外として、特定の一人、例えば稀代の軍師じゃないと実現出来ない作戦はやられません」
「やっぱどこまでも、彼は『集』を重んじる軍人なんだねえ」
「はい。アレゼル大将閣下の仰る通りです」
「ま、だから私も経験則含めてこうやって代理が出来るわけさー。さ、戦場の様子を見よっかルミオール作戦参謀。ようやく通信網も混乱が落ち着いてきたし」
「はっ」
アレゼル大将はやはり感心した様子で言いながら、作戦書を見つつ作戦を通信要員へ伝えていき、それは前線に伝わっていく。
一通り落ち着いたところで、アレゼル大将はルミオール作戦参謀を伴って大テントの外に出た。
彼女達が語るアカツキの作戦書。それは以下のようなものであった。
1,包囲防止については根幹として前衛軍の砲火力及びロケットを全力投射し『ソズダーニア』銃砲兵の戦力を足留めまたは漸減させる。よってロケット火力のオディッサ向け投射は中止。砲火力は最速最大火力にて対応。
2,能力者化師団は小回りの利く特性を活かして一撃離脱戦法を軸とする。なお、接近する部隊の援護射撃として小隊統制射撃を基礎とする。
3,Cブロックについては法国軍に全権委任。マルコ大将緊急立案作戦――数時間限定の遅滞防御戦術――を基礎とする。
4,Bブロックはアレゼル大将閣下のゴーレムをタンク役として随伴歩兵を展開し敵の衝撃力を減衰させること。なお、全ブロック共通だが砲火力及びロケット火力に加えて航空火力を集中させる。
5,Aブロックについては小官直々に向かい、一個連隊及び一個大隊を援軍として現地急行。本件解決以降の作戦に一部制限が生じるものの、Aリミット1にて火力を集中。敵の攻勢を崩して最低でも包囲の阻止を目標とし、橋頭堡を敵攻勢前まで回復させる。
6,なお本緊急作戦はマーチス元帥閣下に対して事後承認とする。
アカツキが緊急立案した作戦は創作の世界の類にあるような、はたまた現実世界でも名軍師が繰り出したような奇抜な策ではなかった。
項目一から五に至るまで、あくまで連合王国のドクトリンたる複合優勢火力ドクトリンを踏襲している。
良く言えば兵士達に至るまで馴染み深い、悪く言えばアカツキにしては平凡過ぎる作戦と言えよう。
だが、それで良いのである。作戦が一時的に破綻仕掛けている現状で新たな、しかも無理のない作戦こそが立て直しを図るにはベストとまでは言わなくともベターな選択肢なのだから。
「砲兵とロケットの支援、増えてきたね」
「事態の収拾を図れているのでしょう。先程まで魔法無線装置はかなり情報が乱れていましたが、マーチス元帥閣下がアカツキ中将閣下の緊急立案作戦を事後承認。一本化されたのかと」
「マーチス元帥閣下はアカツキ中将に絶大な信頼を寄せているからね。義理の親としてではなく軍人としてねー。道理の通っている作戦だし即承認したんだよー」
「即刻情報を伝えられる魔法無線装置も偉大ですが、使う者も優れているからこそ。ですかね」
「そゆことそゆこと。さ、私達も彼に託されたBブロックを守り抜こっか。三日じゃなくてたった三時間半だもの」
「ええ、最長でも三時間半耐え抜けばいいならばいくらでもやりようはありますよ」
「でしょー。それにさ、私はSランク能力者でSSランク召喚武器所有者。ルミオール作戦参謀、貴方にその真髄を見せたげるよ」
アレゼル大将は長杖『ロッド・オブ・レアー』を左手に握って不敵に笑む。
さらにゴーレムを召喚する為に流麗な所作で長杖を振るい、澄んだ声で詠唱を始めた。
彼女を中心に広がる魔法陣は反撃を試みる妖魔帝国軍に対して、その企図を挫かんとする頼もしさを感じた。
・・Φ・・
午後1時15分
人類諸国統合軍南部統合軍橋頭堡・法国軍担当Cブロック最前線
「サージ大佐! 前方より新たに『ソズダーニア銃砲兵』が接近! 数は八!」
「ついさっき倒したばかりだってのにまたかよ!」
「大佐、随伴以外にも後方には敵二個大隊が控えています! 援護として野砲も存在! 我々一個連隊だけでは厳しいかと!」
「ったく次から次へと! 援軍が到着するまでは遅滞防御をせよとマルコ大将閣下は言っていた! 総員踏ん張れっ!」
『了解!』
所変わって法国軍が担当する南部方面Cブロックでも人類諸国統合軍と妖魔帝国軍の激しい戦いが繰り広げられていた。
法国軍が誇る神聖特務師団が食い止めていたからこそ戦線は大きく食い破られていないものの、損害は看過できないものになりつつあった。しかしサージ大佐達一個連隊が援軍として駆けつけた事により神聖特務師団は救われ、今は一時的に戦線を後退。代わりにサージ大佐達と比較的損害の少ない神聖特務師団隷下の部隊が協同で妖魔帝国軍の攻勢を食い止めていた。
聖十二守護衆――ヴァネティア以来二名欠員だったが休戦を経てSランク召喚武器の召喚を成功し、今は回復している――が一人、サージ大佐の到着は大いに法国軍の兵士達を勇気づけた。
だが、サージ大佐は肌身で感じ取っていた。
(妖魔帝国軍の野郎共、休戦前とはまるで違う。新兵器の化物共にも驚いたが、濃密な砲撃支援と的確な野砲の攻撃。質はともかくどいつもこいつも持ってる魔法銃とかの兵器類だけじゃねえ。統率力に至るまで全体的にオレ達法国軍やロンドリウムに引けを取らねえじゃねえか。)
サージ大佐は口にこそ出さなかったが、最前線で実感したのは妖魔帝国軍の精強さである。
サージ大佐はヴァネティアの戦い以降、ブカレシタの戦い以前までは前線に着任しており、マルコ大将のもとで撤退戦でも活躍しており以後は休息を含めて一旦本国へ帰還。再度前線行きを命じられる前に休戦となった。
多くの戦いに身を投じていたからサージ大佐は妖魔帝国軍をよく知っていた。
だからこそ、今目の前にいる妖魔帝国軍がとても以前戦った妖魔帝国軍のようには思えなかったのだ。
「北側面の三個大隊の各大隊長から連絡あり! 現防衛ラインの維持は困難になりつつあり。一キーラの後退を望むと!」
「南側面も同様です! 化物達の衝撃力に耐えきれないと!」
「くそっ、このままじゃ中央が突出して孤立するぞ! 両側面へ通達だ! 後退は許可するが七五〇メーラまでだ!」
『了解!』
「どうしますかサージ大佐。援軍到着まで今しばらくかかります。耐えきれるでしょうが、損害を考えると……」
「慌てんなよラルーダ中佐。もうこの世にいねえがあのクソ双子に比べりゃ化物共なんざ大したことねえ。逆襲の機会を得るまではこっちも出血覚悟で相手に出血を強要させろ。連中、次から次へと投入してきてるあたりこの一戦に賭けてる節がある。つまり――」
「援軍が来るまでに戦線が崩壊しなけらばこちらの勝利。ですか。確かにそうではありますが、いえ、深く考えるのは辞めにします。何せそれどころじゃ――、敵のカノン砲音を確認!!」
「ああもうクソッタレ!! 魔法障壁最大展開で退避だっっ!!」
サージ大佐の副官たるラルーダ中佐の警告から数秒後、妖魔帝国軍が後方から放ったカノン砲数発がサージ大佐達がいた付近に一斉に着弾する。
いくら堅牢な防御を誇る魔法障壁とはいえ、カノン砲の砲撃まで防ぐにはかなりの高ランク魔法能力者のそれではないと難しい。数人が巻き込まれて肉塊へと変わっていった。
「ちくしょう! ダメージレポート!」
「推定数名死亡! 負傷者十数!」
「再度『ソズダーニア銃砲兵』が加速! 突撃してきます!」
「ラルーダ中佐、隣を頼むぜ。兵共じゃ複数の化物共は手に余る。オレの護衛一個中隊で行くぞ。後方からの支援射撃はドリットル中佐に任せた」
「承知しました。後ろから援護します」
「うっし。てめえら! かつてリチリアを蹂躙しやがったバケモンをぶっ潰すぞ!」
『了解!』
「前方『ソズダーニア銃砲兵』の距離、一キーラを切りました! 敵推定射程圏内に既に入っています!」
「了解だぜ。バケモン共なら相手に不足なし! 主よ、我等に加護を与えたまえってな!」
サージ大佐は共に突撃を敢行する部下達を鼓舞する。そして、心中で祈った。
(さっき入った情報だと、アカツキ中将閣下が直々にAブロックの援軍に向かったはず。頼みますよ、ヴァネティアも救ってくれた英雄閣下)
「サージ大佐、行きますか?」
「…………おうとも。――最優先目標、敵『ソズダーニア銃砲兵』八! 総員、突撃っっ!!」
法国の聖戦士サージ大佐と部下達は一斉に駆ける。
彼等と共に死地を走り妖魔帝国軍を屠る事で、危機を切り抜けられる事を。
午後1時05分
能力者化師団司令部・作戦指揮所
アカツキが能力者化師団司令部作戦指揮所を後にしてAブロックへ向けて北上している頃、一時的にこの最前線の司令部指揮所の指揮官を請け負ったアレゼル大将はこれまで蓄積してきた経験とアカツキが魔法無線装置を通じて送ってきた作戦書をベースにして次々と矢継ぎ早に命令を送っていた。並行して彼女はゴーレム軍団を召喚して指示を下しているあたりいかに彼女が優れているかが分かる場面でもある。
そのアレゼル大将は、ルミオール作戦参謀がアカツキの作戦書を地図に書き起こしたものを眺めながら感嘆していた。
「しっかし、よくもまあこの短時間で自軍状況不利を覆そうとする多方面作戦を思いつくものだねえ。でも、いずれも新兵器以外の真新しいものは見当たらないし、なんかこう戦術面では」
「王道、ですか」
「そうだねえ、それ」
アレゼル大将の感想に対してルミオール作戦参謀が返答する。
的を得た答えに召喚したゴーレムに逐次指示を与えつつアレゼル大将は頷くと。
「あれだけ大胆な改革を成し遂げて、新兵器の提案をして、運用方法も変えてって変革を生み続けてるアカツキ中将だけどさ。戦術面は奇抜さが意外に見られないよね」
「アカツキ中将閣下は、基本的に奇策は用いません。中将閣下曰く、奇策を用いる時点で負けの状態であって本来はドクトリンと戦略レベルで勝利をもたらすのが常道と仰っていました」
「なるほどね。だからこの包囲戦の対処も、あくまでドクトリンを忠実に守りながらもこれまで取ってきた作戦をいくつか混ぜて兵士達レベルでも動きやすいようにしてるわけなんだねえ」
「アカツキ中将閣下は、全く新しい兵科こそ中将閣下の助言なくして実現出来ませんでしたが、いざ作り上げられれば我々も改良策を生み出せる事が出来るのはその面があるからこそなのです。エイジス特務官や召喚武器持ちは例外として、特定の一人、例えば稀代の軍師じゃないと実現出来ない作戦はやられません」
「やっぱどこまでも、彼は『集』を重んじる軍人なんだねえ」
「はい。アレゼル大将閣下の仰る通りです」
「ま、だから私も経験則含めてこうやって代理が出来るわけさー。さ、戦場の様子を見よっかルミオール作戦参謀。ようやく通信網も混乱が落ち着いてきたし」
「はっ」
アレゼル大将はやはり感心した様子で言いながら、作戦書を見つつ作戦を通信要員へ伝えていき、それは前線に伝わっていく。
一通り落ち着いたところで、アレゼル大将はルミオール作戦参謀を伴って大テントの外に出た。
彼女達が語るアカツキの作戦書。それは以下のようなものであった。
1,包囲防止については根幹として前衛軍の砲火力及びロケットを全力投射し『ソズダーニア』銃砲兵の戦力を足留めまたは漸減させる。よってロケット火力のオディッサ向け投射は中止。砲火力は最速最大火力にて対応。
2,能力者化師団は小回りの利く特性を活かして一撃離脱戦法を軸とする。なお、接近する部隊の援護射撃として小隊統制射撃を基礎とする。
3,Cブロックについては法国軍に全権委任。マルコ大将緊急立案作戦――数時間限定の遅滞防御戦術――を基礎とする。
4,Bブロックはアレゼル大将閣下のゴーレムをタンク役として随伴歩兵を展開し敵の衝撃力を減衰させること。なお、全ブロック共通だが砲火力及びロケット火力に加えて航空火力を集中させる。
5,Aブロックについては小官直々に向かい、一個連隊及び一個大隊を援軍として現地急行。本件解決以降の作戦に一部制限が生じるものの、Aリミット1にて火力を集中。敵の攻勢を崩して最低でも包囲の阻止を目標とし、橋頭堡を敵攻勢前まで回復させる。
6,なお本緊急作戦はマーチス元帥閣下に対して事後承認とする。
アカツキが緊急立案した作戦は創作の世界の類にあるような、はたまた現実世界でも名軍師が繰り出したような奇抜な策ではなかった。
項目一から五に至るまで、あくまで連合王国のドクトリンたる複合優勢火力ドクトリンを踏襲している。
良く言えば兵士達に至るまで馴染み深い、悪く言えばアカツキにしては平凡過ぎる作戦と言えよう。
だが、それで良いのである。作戦が一時的に破綻仕掛けている現状で新たな、しかも無理のない作戦こそが立て直しを図るにはベストとまでは言わなくともベターな選択肢なのだから。
「砲兵とロケットの支援、増えてきたね」
「事態の収拾を図れているのでしょう。先程まで魔法無線装置はかなり情報が乱れていましたが、マーチス元帥閣下がアカツキ中将閣下の緊急立案作戦を事後承認。一本化されたのかと」
「マーチス元帥閣下はアカツキ中将に絶大な信頼を寄せているからね。義理の親としてではなく軍人としてねー。道理の通っている作戦だし即承認したんだよー」
「即刻情報を伝えられる魔法無線装置も偉大ですが、使う者も優れているからこそ。ですかね」
「そゆことそゆこと。さ、私達も彼に託されたBブロックを守り抜こっか。三日じゃなくてたった三時間半だもの」
「ええ、最長でも三時間半耐え抜けばいいならばいくらでもやりようはありますよ」
「でしょー。それにさ、私はSランク能力者でSSランク召喚武器所有者。ルミオール作戦参謀、貴方にその真髄を見せたげるよ」
アレゼル大将は長杖『ロッド・オブ・レアー』を左手に握って不敵に笑む。
さらにゴーレムを召喚する為に流麗な所作で長杖を振るい、澄んだ声で詠唱を始めた。
彼女を中心に広がる魔法陣は反撃を試みる妖魔帝国軍に対して、その企図を挫かんとする頼もしさを感じた。
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午後1時15分
人類諸国統合軍南部統合軍橋頭堡・法国軍担当Cブロック最前線
「サージ大佐! 前方より新たに『ソズダーニア銃砲兵』が接近! 数は八!」
「ついさっき倒したばかりだってのにまたかよ!」
「大佐、随伴以外にも後方には敵二個大隊が控えています! 援護として野砲も存在! 我々一個連隊だけでは厳しいかと!」
「ったく次から次へと! 援軍が到着するまでは遅滞防御をせよとマルコ大将閣下は言っていた! 総員踏ん張れっ!」
『了解!』
所変わって法国軍が担当する南部方面Cブロックでも人類諸国統合軍と妖魔帝国軍の激しい戦いが繰り広げられていた。
法国軍が誇る神聖特務師団が食い止めていたからこそ戦線は大きく食い破られていないものの、損害は看過できないものになりつつあった。しかしサージ大佐達一個連隊が援軍として駆けつけた事により神聖特務師団は救われ、今は一時的に戦線を後退。代わりにサージ大佐達と比較的損害の少ない神聖特務師団隷下の部隊が協同で妖魔帝国軍の攻勢を食い止めていた。
聖十二守護衆――ヴァネティア以来二名欠員だったが休戦を経てSランク召喚武器の召喚を成功し、今は回復している――が一人、サージ大佐の到着は大いに法国軍の兵士達を勇気づけた。
だが、サージ大佐は肌身で感じ取っていた。
(妖魔帝国軍の野郎共、休戦前とはまるで違う。新兵器の化物共にも驚いたが、濃密な砲撃支援と的確な野砲の攻撃。質はともかくどいつもこいつも持ってる魔法銃とかの兵器類だけじゃねえ。統率力に至るまで全体的にオレ達法国軍やロンドリウムに引けを取らねえじゃねえか。)
サージ大佐は口にこそ出さなかったが、最前線で実感したのは妖魔帝国軍の精強さである。
サージ大佐はヴァネティアの戦い以降、ブカレシタの戦い以前までは前線に着任しており、マルコ大将のもとで撤退戦でも活躍しており以後は休息を含めて一旦本国へ帰還。再度前線行きを命じられる前に休戦となった。
多くの戦いに身を投じていたからサージ大佐は妖魔帝国軍をよく知っていた。
だからこそ、今目の前にいる妖魔帝国軍がとても以前戦った妖魔帝国軍のようには思えなかったのだ。
「北側面の三個大隊の各大隊長から連絡あり! 現防衛ラインの維持は困難になりつつあり。一キーラの後退を望むと!」
「南側面も同様です! 化物達の衝撃力に耐えきれないと!」
「くそっ、このままじゃ中央が突出して孤立するぞ! 両側面へ通達だ! 後退は許可するが七五〇メーラまでだ!」
『了解!』
「どうしますかサージ大佐。援軍到着まで今しばらくかかります。耐えきれるでしょうが、損害を考えると……」
「慌てんなよラルーダ中佐。もうこの世にいねえがあのクソ双子に比べりゃ化物共なんざ大したことねえ。逆襲の機会を得るまではこっちも出血覚悟で相手に出血を強要させろ。連中、次から次へと投入してきてるあたりこの一戦に賭けてる節がある。つまり――」
「援軍が来るまでに戦線が崩壊しなけらばこちらの勝利。ですか。確かにそうではありますが、いえ、深く考えるのは辞めにします。何せそれどころじゃ――、敵のカノン砲音を確認!!」
「ああもうクソッタレ!! 魔法障壁最大展開で退避だっっ!!」
サージ大佐の副官たるラルーダ中佐の警告から数秒後、妖魔帝国軍が後方から放ったカノン砲数発がサージ大佐達がいた付近に一斉に着弾する。
いくら堅牢な防御を誇る魔法障壁とはいえ、カノン砲の砲撃まで防ぐにはかなりの高ランク魔法能力者のそれではないと難しい。数人が巻き込まれて肉塊へと変わっていった。
「ちくしょう! ダメージレポート!」
「推定数名死亡! 負傷者十数!」
「再度『ソズダーニア銃砲兵』が加速! 突撃してきます!」
「ラルーダ中佐、隣を頼むぜ。兵共じゃ複数の化物共は手に余る。オレの護衛一個中隊で行くぞ。後方からの支援射撃はドリットル中佐に任せた」
「承知しました。後ろから援護します」
「うっし。てめえら! かつてリチリアを蹂躙しやがったバケモンをぶっ潰すぞ!」
『了解!』
「前方『ソズダーニア銃砲兵』の距離、一キーラを切りました! 敵推定射程圏内に既に入っています!」
「了解だぜ。バケモン共なら相手に不足なし! 主よ、我等に加護を与えたまえってな!」
サージ大佐は共に突撃を敢行する部下達を鼓舞する。そして、心中で祈った。
(さっき入った情報だと、アカツキ中将閣下が直々にAブロックの援軍に向かったはず。頼みますよ、ヴァネティアも救ってくれた英雄閣下)
「サージ大佐、行きますか?」
「…………おうとも。――最優先目標、敵『ソズダーニア銃砲兵』八! 総員、突撃っっ!!」
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