異世界妖魔大戦〜転生者は戦争に備え改革を実行し、戦勝の為に身を投ずる〜

金華高乃

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第23章オチャルフ要塞決戦編(前)

第9話 全ては勝利の為に

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・・9・・
3の月17の日
午後2時過ぎ
オチャルフ要塞・統合軍前線総司令部総司令部棟
大会議室


 トルポッサ方面での作戦が一応の成功を収めて次段の作戦に移る事となった僕達統合軍は、早速次の作戦についての最終確認会議を開くこととなった。
 トルポッサはあくまで前哨戦。真の決戦は、今僕がいるこのオチャルフ要塞とその周辺で繰り広げられる事になる。
 作戦は大規模だから、オチャルフ要塞内にある前線総司令部棟の大会議室には将官クラスの面々と参謀本部の参謀達が一堂に会していて、大戦の趨勢を握る事となる作戦前だから熱気を感じられた。
 僕は大会議室の一番前にある、将官達と正面になるテーブルに座ると資料の準備をした。
 リイナは僕の副官として座り、エイジスはいつものように僕の隣でふわふわと浮いている。
 リイナは持っていた今日使う資料を僕に渡してくれると、話しかけてきた。

「久しぶりにオチャルフ方面の将官クラスが勢揃いしたわね」

「決戦前に集まれる最後の機会だからね。前衛で敵情視察とハラスメント攻撃を担当している前衛軍以外の将官や参謀以外は全員いるはずだよ。あ、そうだエイジス」

「どうかしましたか、マスター」

「大丈夫だと思うけど、前線の様子はチェックしておいて。あと、説明の時に使うデータは整えてある?」

「いずれもいつでも」

「さすがだ。よろしくね」

「サー」

 エイジスが微笑むと僕も微笑み返し、資料の再確認をする。リイナとあれこれ資料の中身について話していると、五分くらい経ってマーチス侯爵がやってきた。

「マーチス元帥閣下ご入室!   総員敬礼!」

 ある士官が言うと、総員が敬礼しマーチス侯爵が返礼する。
 マーチス侯爵が着席すると、全員が着席する。

「アカツキ、今日も頼んだぞ」

「はっ」

 彼と短いやり取りを交わすと、会議が始まった。
 まずはここに揃っているメンバーの中でも主要人物の紹介。僕も含まれている。
 その後にいくつかの内容が話されていき、会議はスムーズに進んでいく。
 それらが終わってから、僕の出番だ。今回の作戦についての説明をする。

「それでは、これより連合王国軍魔法中将アカツキ・ノースロード中将の作戦説明になります。アカツキ中将閣下、よろしくお願い致します」

 僕は頷いてから起立すると、一度呼吸を置き口を開く。

「統合軍マーチス元帥閣下が副官、連合王国軍魔法中将アカツキです。これよりオチャルフ要塞及び周辺部における作戦、『鉄壁の盾』の説明を始めます。資料をご覧ください。オチャルフ要塞に関する件の前にまず、前線展開部隊等から得た現状を説明致します」

 大会議室にいた面々は置いてあった資料に目を通し始める。
 現状について書かれているのは、ページの最初のあたりだ。大体がページに視線を移すのを見計らって話し始める。

「では、現況についてから。今日現在、妖魔帝国軍は北部方面に約六〇〇〇〇〇を、このオチャルフ方面には約六五〇〇〇〇を展開しているとみられており、南部方面の帝国軍はオチャルフより約七〇キーラまで前進しております。対して、我々統合軍は北部に約五六〇〇〇〇を、そしてこの南部には約四八〇〇〇が展開しております。後方より援軍が来てくれたことにより北部に関してはほぼ同数に、南部については未だ数的劣勢ではありますが、オチャルフ要塞がありますし質に関しては決して引けを取らずむしろ質的には我々の方がやや上回っていると言えます」

 帝国軍の数は相変わらず呆れるくらい多く、会議室にいる将官達もしかめっ面だ。キルレシオで言えば、こっちが一人殺られる時に帝国軍は四、五人は殺られているはずなのにそれでも総計約一二五〇〇〇〇。ここに推定でしか言えない後方予備まで含めたらどうなるか分かったもんじゃない。
 僕達統合軍は帝国軍の侵攻速度が遅かった分、始まる前までに予定より多くの兵は集まったけれどそれでも帝国軍には及ばない。これで後方予備が潤沢ならいいけれど、残念ながら余裕はない。
 僕はこうは言ったけれど、予断は許さない状態には違いなかった。

「なお要塞外縁部、つまり周辺に展開している前衛軍ですが、この約九〇〇〇〇については既にオチャルフ要塞より約五〇キーラに後退済みです。彼等には敵情視察とハラスメント攻撃を担当して貰っていますが、これも情報が揃い前進妨害の用意が完了次第オチャルフ要塞手前まで後退する予定です」

「まあ、そうなるだろうな」

「貴重な兵力だ。無理もする必要も無い」

「我等に比べれば貧弱な帝国の兵站に嫌がらせをしてくれれば十分だ」

 何人かの士官が言ったように、前衛軍の任務は敵の漸減ではない。今の任務を済ませればすぐに下げてもいいように前衛軍司令官には伝えてあった。

「敵戦力については以上になります。補足ですが、我々が警戒すべきリシュカ・フィブラは所在の確認が取れておりません。ただ、帝国軍総司令官シェーコフが北部方面に向かっていることから、間違いなくリシュカはこちらに来るでしょう。階級と立場からして北はシェーコフ、南はリシュカが指揮官かと予測されます」

「やはりこちら側に来たか……」

「平地での戦いや一般的な市街戦なら、シェーコフも慣れているだろうからな」

「連中も数が少なくなったとはいえ、航空偵察でこのオチャルフが地表から分かる表面上だけでも今までとは違う要塞とは勘づいているだろう。となれば、あの女がこちらに来るのもおかしくはあるまい」

 ムィトゥーラウ以降、不気味なくらいにあの人の足取りは掴めていなかった。間違いなく帝国軍の司令部にはいるんだろうけど、どこにいるかが全く分からない。それはつまり、航空偵察の範囲外かつエイジスの探知距離外にいることを示している。あの人の魔力隠蔽が完璧に近いのが、更に探知を困難にしていた。
 しかし、だからといって無理に探すつもりはない。戦力のリソースは限られているんだし。
 さて、話を変えようか。

「それでは本題に移ります。既に皆様はご存知だと思いますがこのオチャルフ要塞周辺部と、防衛線、防衛の鍵を握る兵器と作戦方針を最終確認致します」

 僕は資料のページをめくり、オチャルフ要塞についの部分を確認しながら、時にはエイジスの情報共有画面に表示された内容をちらりと見ながら話していく。
オチャルフ要塞についてまとめると、こんな感じだ。

【オチャルフ要塞及び周辺部における作戦とオチャルフ要塞概要、使用兵器について】

1,オチャルフ要塞の防衛線は五段階。オチャルフ要塞から東にある二本の川の内、枝分かれするチャイツ川の東の方を境とする第一防衛線。西の方を境とする第二防衛線。リャフク川を境とする第三防衛線。ここまでを外郭防衛線とする。第三防衛線より西側が内郭防衛線。オチャルフ丘陵を登った地点付近を第四防衛線。オチャルフ駅から東地点が最終防衛線となる。

2,オチャルフ要塞の北には大規模な沼沢・森林地帯が広がっており、存在を隠蔽しての大規模進軍は不可能である。ただし、奇襲に備えてオチャルフ要塞北部にある沼沢・森林地帯のうち、要塞近辺にはトラップ及び魔石地雷を敷設した他、防衛戦力も配備する。

3,オチャルフ要塞はオチャルフ丘陵とその麓を中心とする要塞である。よって、丘陵地帯など地形をフル活用した。第一から第三防衛線には塹壕の他に堡塁、トーチカ等を設置。第四防衛線はこれら防衛施設が特に多く、自然物などで隠匿して堡塁、トーチカ、砲台などを多数設置。さらに内郭防衛線は防衛施設各所を地下通路――計画では完全には難しかったが、帝国軍侵攻速度が遅かった点と、魔法やゴーレム等をフル活用して完成――などで結び、移動を可能としている。また、全防衛線で共通して砲陣地、機関銃陣地等は無数のクロスファイア地点があり、敵殺傷能力はかつてない程高まった構造となっている。

4,これら要塞内に置かれる重火力兵器は、臼砲・カノン砲・榴弾砲・重迫撃砲・ロケット砲など等多岐に渡る。特に遠距離砲撃は追加生産及び後方より移転した物も含め、二〇〇ミーラを越える大口径砲も多数設置。二一〇ミーラカノン砲、二三〇ミーラカノン砲、二八〇ミーラ臼砲など。また、L2AやL2Bロケットの他に、改良型の長射程型L2Cロケット、高威力型L2Dロケットも配備。地下に隠匿して然るべき時まで使用を待つ新型ロケットもあり。いずれもかなりがカモフラージュするか堡塁収納等して破壊を防ぐように置かれている。

5,4の重火力兵器は師団定数換算で通常の約八割増から約二倍程度が今回の決戦の為用意された。その為、兵数で劣っていても火力で撃ち負けることは無い。さらに砲弾等の補給は状況が許すまで行われる。

6,なおオチャルフ要塞での戦いにおい、四の月半ば発動予定のサンクティアペテルブルク強襲上陸作戦まで本要塞は死守とし、死守命令も出される。可能な限り兵力を温存し、サンクティアペテルブルク強襲上陸作戦成功後に、反攻作戦を決行する。

7,以上が『鉄壁の盾』作戦である。

「――以上となります」

 僕が説明を終えると、約三ヶ月半の間ずっと不利な戦いを強いられていたとは思えないくらい全員が自信に満ちていた。
 オチャルフ要塞は難攻不落。
 絶対死守し、反攻作戦で目にものを言わせてやる。
 彼等の瞳はまだ炎で満ちていた。
 隣にいたマーチス侯爵はその様子を見てから、静かに立つ。

「諸君。これは決戦である。人類諸国の存亡が懸かっている決戦である。もしここで我々が敗北を喫すれば、後方総司令部となっているオディッサしかなく、オディッサの失陥はすなわち遠征軍全ての機能喪失に等しく、帝国解放を願う諸種族連合共和国の滅亡でもある。そして、山脈を越えられれば我等が本土。そう、本国の滅亡だ」

 マーチス侯爵は事実を淡々と語っていく。彼の発言は全て事実だ。参謀本部の面々でなくても、指揮官でなくとも、その後起きるであろう惨劇など容易に想像出来てしまう。

「だが、我々にはまだ勝機が残されている。北部戦線と、このオチャルフ要塞だ。兵力はまだある。全ての補給も兵站司令部と現場の兵士達により定数以上を満たせている。そして何より、諸君等がいる。ならば我々はまだ負けてなどいない。オチャルフ要塞を死守し、北部戦線で耐え抜き、サンクティアペテルブルク強襲上陸作戦が成功したその時こそ、反撃の時だ。故に、諸君等にはまず一ヶ月耐え抜いてほしい。死守して欲しい。何故ならば、その先にこそ勝利と栄光と、未来の世代に送る平和が待っているのだから」

 マーチス侯爵は一度言い切り、一呼吸を置くと、

「人類諸国に栄光あれ!!    統合軍に栄光あれ!!   勝利と平和をもたらせ!!   諸君等の健闘を、俺は祈る!!」

『はっ!!!!』

 マーチス侯爵の高らかな宣言に、全員が席を立ち敬礼をする。
 人類諸国の興廃はこの一戦にあり。
 僕はこの言葉を胸に、戦い抜くと誓った。
 オチャルフ要塞攻防戦は、目前に迫っていた。
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