異世界妖魔大戦〜転生者は戦争に備え改革を実行し、戦勝の為に身を投ずる〜

金華高乃

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第24章 オチャルフ要塞決戦編(後)

第9話 分岐点

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・・9・・
 一八四七年四の月十六の日。
この日は妖魔帝国にとって悪夢の日となった。人類諸国統合軍が耐え難きを耐え遂に動き出したからである。
 兼ねてよりサンクティアペテルブルク強襲上陸作戦とほぼ同時に、主戦線でも反転攻勢に打って出るのが統合軍の方針だった。それが参謀本部やアカツキが考案していた中距離攻撃弾『L3ロケット』と長距離弾道魔導ロケット『L4ロケット』である。
 その中でも、まず『L3ロケット』は人類諸国統合軍の目論見通りサンクティアペテルブルクの件で対応に追われていた帝国軍の南北野戦司令部に直撃した。これにより帝国軍南北野戦司令部は完膚なきまでに叩かれ兵営だけでなく弾薬庫、食料庫、そして司令部機能に至るまで直撃弾を受け両司令部は完全にその機能を喪失した。
 ムィトゥーラウにある前線司令部がこの状況をキャッチするのはそう遅くはなかった。西方にある野戦司令部からの通信が全て途絶したからである。最初こそ機器の故障を疑ったものの、いつまで経っても返答がない上に両方とも同時に起きるとは思えず次第に異常事態を察知。当然ながら北部方面総司令官のシェーコフと南部方面総司令官のリシュカの消息は不明になってしまった。
 これによりただでさえサンクティアペテルブルクの件で混乱していたムィトゥーラウの帝国軍司令部は恐慌状態に陥る。帝国軍は事実上、戦闘機能のかなり失ってしまったといっていい状況になったのである。統合軍の大攻勢に晒される帝国軍将兵がいる中で、である。
 しかし、帝国にとって最悪の事態は何も一つでは無かった。
 もう一つの反撃の槍、『L4ロケット』の存在があるからだった。


・・Φ・・
同日
午後0時半過ぎ
妖魔帝国・帝都レオニブルク
皇宮

「一体何が起きたんだ!!」

「分からない!!   突然空から大きな物体が降ってきたと思ったら大爆発を起こしたって報告が大量に届いているんだ!!」

「一箇所だけじゃなくて二箇所で起きたんだよ!   一つは旧街区商業街の百貨店に、もう一発はよりにもよってチョトムキン侯爵閣下の邸宅だ!」

「チョトムキン侯爵閣下の!?   この皇宮からすぐだぞ!?   火災じゃないのか!?」

「違う!!   付近の貴族が命からがらの様子で報告してきたってついさっき報告が出ていた!」

「一体なんだって言うんだよ!!」

 帝国帝都レオニブルク、その中枢である皇宮は飛翔物によって歴史上かつてないほどに錯乱状態になっていた。皇宮内には緊急事態に宮廷女官や官僚、軍人に至るまでひっきりなしに行き交い走り回っている。しかし、まったく統制が取れていなかった。
 全ては人類諸国統合軍が放った、この世界初の長距離ロケット『L4ロケット』が原因である。
 アカツキが射程ギリギリな上に誘導弾ではないから帝都に着弾するかも分からないと話していた『L4ロケット』は、人類諸国統合軍にとっては幸運な事に、そして帝国にとっては極めて不運な事に二発ともが帝都レオニブルクの中心街に着弾した。
 帝国軍人達が話すように、一発は旧街区の百貨店に、そしてもう一発は帝国でも有名かつ粛清の嵐に巻き込まれなかった侯爵の邸宅を直撃した。
 『L4ロケット』の威力は、内蔵している魔石で底上げしても地球世界換算で一○トン爆弾程度の威力。帝国が開発し起爆させた『煉獄の太陽』とは威力は比べるべくもないが、この『L4ロケット』は帝都の住人達にとっては『煉獄の太陽』並に恐慌状態へと陥らせていた。何故ならば、ロケットは空から降ってきて爆発したからである。
 『L4ロケット』によって、商業街区に着弾した方は多数の死傷者を生じさせていたし、貴族街区に着弾した方は侯爵邸宅を跡形もなく吹き飛ばし、周辺の貴族邸宅にも被害を及ぼしていた。
 直接的な被害だけでも中々のものだが、恐怖はあっという間に軍官民を問わず広がっていく。
 官民にとって戦地は遠く向こうの話であり帝都は無縁だと信じていた。ところが明らかに帝国軍の物ではない兵器が飛んできたのだ。底知れぬ不安はふつふつと湧き出ても当然である。
 軍は官民より酷かった。特に『煉獄の太陽』を知る者の心境たるや、生きた心地がしていなかったの一言に尽きる。
 何せ帝国軍は人類諸国統合軍の中心たる連合王国の、それも王都に禁忌の兵器を行使したのである。自分達も同じように報復される可能性は検討されていた。だが、前線から帝都までは遠い。少なくともこの世界の兵器では届く距離ではない。そう信じられていた。
ところが、『L4ロケット』は帝都に直撃した。それも目撃者も多く隠蔽が出来ず、機能中枢に近い中心街に着弾した。
 この事実は軍人達を震撼させるには十分であり、次にこう想起させた。

「統合軍は我が帝都にまで届く兵器を開発した」

「帝都の中心街に着弾させた」

「ありえないと思っていたら現実になった」

「威力は爆弾程度だが、今回は試験的なものかもしれない」

「人類諸国統合軍のことだから、『煉獄の太陽』に近しい威力を持つ兵器を開発したかもしれない」

「今回飛んできた飛翔物に搭載出来るかもしれない」

「帝都だけではない。次は帝都までの全ての都市が対象になるかもしれない」

「帝都にまた落ちるかもしれない。そうしたら帝都は機能喪失だ」

「軍司令部も狙われるだろう。そうしたら軍は崩壊する」

 彼等は次から次へと悲惨な想定が生まれてしまっていた。次はどこだ。どこが狙われるんだ。帝国に無事な場所なんて無くなるんじゃないか。
 人というものは一度思考の落とし穴に嵌ると抜け出せなくなる。例え、人類諸国統合軍が『L4ロケット』については十数発も保有していないとしても。
 結果として、『L3ロケット』によって機能完全喪失を起こした南北野戦司令部したよりも酷く、前線だけでなく帝都からの指揮機能をも実質失ったムィトゥーラウよりも酷く、人々による混乱で帝国軍は実質的にその機能を停止させてしまっていたのであった。
 そのような時、皇帝レオニードの妻たるルシュカはなんとかこの事態を収拾、もしくは打開しようとしていた。
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