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第九話 マイホーム購入

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街を歩いているとすれ違う人が振り返る。

「おい見ろよあの三人、すごい美人だぞ」

その三人の内に僕も含まれているわけね。
昨日までの違和感がやっと分かったよ。



「いらっしゃいませ」

「家を探しています。とにかく安い家。一番安い家」

僕は店に入ると開口一番要件を伝えた。

「本当に一番安い家で良いのですか」

担当の女性がうつむき少し笑っている。
うつむいているから、顔が影になって少し雰囲気が恐ろしい。

「は、はい」

「では、こちらになります」

「な、なんですかこれは」

その家は広い敷地に、巨大な家、金貨八百枚が消されて、銅貨九枚になっている。

「あははは、じょ、冗談です。さすがに美女三人にすすめる家ではありません」

家の案内用紙を引っ込めようとするので。

バン

用紙を平手で叩くように押さえつけた。
もう、いわく付き物件に違いない。
僕はこう見えて廃墟マニアだ。
こんな物件を見逃すわけが無い。

「こ、これでお願いします」

「本当によろしいのですか」

担当者が後ろの、ローズとユーリさんの顔を見ているようだ。
たぶん、ローズは苦笑い、ユーリさんはキョトンとしているに違いない。

「では、こちらにご記入をお願いします」

ふふふ、僕はもう、ウキウキが止まらない。





「ぎゃーーー、こわい、こわい」

ユーリさんが僕の買ったばかりの家を見て怖がっている。
まあ、普通の人なら絶対近づかないようなお化け屋敷がそこにあった。

「あの、ユーリさん、ユーリさんはゾンビですから、こういう家で脅かす側ですよ」

「そそそ、そんなこと言われても、恐いものはこわいのじゃーー」

家に入ると驚いた。
ゴーストが十体いる。
そして、家の地下からはごそごそ物音がする。

「ちょっと、行ってみますか」

「いやじゃー、行きたくない、行きたくないのじゃー」

「くすくす、じゃあ置いて行きますよ」

笑っては失礼だけど、廃墟に行くとこうやって怖がってくれる人が居ると楽しい。

「ぎゃーー、置いて行かないで欲しいのじゃー」

こうやって結局付いてくるしね。
地下に降りて、入り口のドアを開ける。

ガチャリ

「ウ、ウガヤー、レターー」

もう何を言ってるのかすら分からない。
ゾンビがいる。
しかも、結構な数だ。
振り返ったらローズが居ない。

「あれ、ローズが居ない」

「ぎゃーあーあー!!」

ユーリさんはもう何でも怖がる状態になっている。

「クスクス、ユーリさんは可愛いですね」

なんだかユーリさんが真っ赤な顔をしてゆらゆら揺れている。
そして大きな胸が、すごく揺れている。

地下のドアをしめて、階段を上ると玄関のホールの真ん中に、ローズは上を向いて立っていた。
窓から差し込む光が、ローズに向かって線を引き、もともと清楚な美しさを持つローズの姿が、幻想的でより一層美しかった。
そのローズの目が少し潤んでいて、キラキラしている。

「……う、美しいです」

ユーリさんがため息を吐くようにつぶやいた。

「ノコ様は最低です」

ローズは階段を上がった僕に向かって、いきなり口を開いたと思ったらそんなことを言いやがった。
意味が分からない。

「はーーっ」

「あの本当に分からないのですか」

僕はうなずいた。
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